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ロックされています  パワプロss(オリジナル) 〜運命の打球音〜  名前: MDO  日時: 2013/08/09 02:37 修正6回   
      
SSって小S説Sですよね?
新参ですが頑張ります。
感想スレッドもつくるんで感想お願いします♪

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ロックされています   Re: パワプロss(オリジナル) 〜運命の打球音〜  名前:MDO  日時: 2013/08/09 17:22  No. 1    
       
まだ肌寒い3月下旬、今はまだ高校に入学する前で、ダラダラと中学で出来た友達と暇を潰している。
今はゲームセンターでみんなイマイチ上がらぬテンションを上げようとクレーンゲームをしている。
確かにここに来たときよりは盛り上がっている。
というかなんでこんな難易度の高いクレーンゲームやってんだよ。
現在俺を除く5人が3000円近くの金をつぎ込んだががまったく取れそうな気配がない。
カプセルを取るなんてほぼ不可能だと俺は思っているので現在クレーンゲームから離脱しているがそれもここまでになってしまった。
「雄輝、おまえのやれよ!」
雄輝とは俺のことだ。櫻樹 雄輝(さくらぎ ゆうき)。中学に入ってこの名前について思ったことは「画数多っ!!」だった。
まあ、とりあえず俺も一回やってみるかな? クレーンゲーム。

「4番はPSPか……よし狙おう」
「いやいやいや、狙うんなら5番のPS3にしろよ!」
武内 京介は俺の肩を掴んだ。俺はその手を払いのけてレッツ・クレーンゲーム!。
「あ……」
「どうした雄輝?」
ガコンという音がした。そして数秒後、俺の手には5番の紙の入ったカプセルが握られていた。
5人全員が驚愕の表情を浮かべる。
俺がカプセルを開けると小さな鍵が出てきた。
「こいつすげえ……」
運が良かったな。
俺は結構、運がいい。



翌日の朝、目覚まし時計より先にケータイの着信音が鳴った。
「なに?」と投げやりに問う。電話を掛けてきた相手は奈賀 拓也(なか たくや)。中学では野球部の主将をやっていた。
『ごめん、怒ってる?』
「怒ってるよ。何時だと思ってんの?」
平然と『5時』と返してきた拓也には腹が立ったが声に出して怒るのは面倒くさい。
『単刀直入に言うな。それとこれ命令だから絶対来いよ。9時に市民球場な!』
「はあ!?」
もう切れてるし……。今日暇だし、まあいっか。
俺はもう一度眠りについた。
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ロックされています   Re: パワプロss(オリジナル) 〜運命の打球音〜  名前:MDO  日時: 2013/08/10 12:40  No. 2    
       
現在9時20分、俺は言われたように9時前には球場に到着した。
どちらかと言うと乗り気でこの球場に来た。来いと言われたときの気分は悪かったが時間が経つと次第に気分は良くなっていった。
だがそこで目にしたものがある。ヤツだ。





辻本 侑大(つじもと ゆうだい)、中学時代、公式戦だけでも9本の本塁打を放っているらしい。
俺は辻本に2打席連続で被弾した。2打席ともあそこまで飛ばされるなんて思ってもいなかった。
俺の球は遅くない、むしろ周りと比較すると速い。130キロは出ないがその手前の120台中盤くらいの球速は出ていた。
いや、速球よりも変化球を打たれたショックのほうが大きい。スライダー、ドロップ、チェンジアップ、どの球種も見極められて、決め球のドロップをスタンドに運ばれた。
それより、なぜこいつがここに居るんだ?。

「悪いな雄輝、説明なしで来させて」
拓也はユニフォームを着ていた。右手にはアンパン、左手には瓶の牛乳。そして口からは咀嚼音。
「朝飯くらい食って来い」
「いや、時間なくてさー」
こいつ5時に電話掛けてきたよな? まあいいや、あーだこーだ言い合うのは面倒くさい。口喧嘩負けるし。
俺が「サッサと説明しろよ」と言うと拓也は頷き咀嚼音が止んだ。
「北中のやつら硬球で試合組んだのはいいけどさ、相手が人手足りないって言って助っ人連れてくるって言ったんだよ、だからこっちも我西中唯一の硬式野球出身のおまえを助っ人に呼んだわけ」
俺、あの助っ人とやらに被弾してるんだが……それも二発……まあ過去にやれたんなら、今はこっちがけちょんけちょんにブッ倒してやるよ!。

拓也に試合開始時間を聞くと10時だそうだ、なんだかめずらしく闘争心が湧いてきた。
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ロックされています   Re: パワプロss(オリジナル) 〜運命の打球音〜  名前:MDO  日時: 2013/08/11 02:55 修正1回 No. 3    
       
めずらしくやる気になったというのに、世界は無慈悲だね〜。スコアボードを見てみよう。5回裏ツーアウトで四対二、二点ビハインド尚もランナー二塁(辻本)。俺のやられた四失点のうち一失点は自責点に入らないものだが…ってそんなことはどうでもいい!。
なんで、こんなに簡単に打てるんだよ……。2番ファースト辻本、今日3打数3安打1本塁打4打点。
また、こいつ一人にやられるのかよ。くそ! 腹立つ! なぜ? なぜこいつは抑え込めないんだ? 今までこんな感覚一度もなかった……。
俺はたとえ10点取られてもなんとも思わず投げ続けたこともある。4の4をやられたこともある。でも、こんな感覚にはなったことがない。
これが、本当の悔しさなのか? 俺は今まで悔しいと思っても、次の日の朝には忘れてた。なのにこの感覚は……忘れれそうにねえ。
せめて一回くらいは、打ち取ろう。

俺はグローブを脇に挟み、両手でボールを拭う。グローブを左手にはめると手の中でボールを数回回した。
前屈みになって捕手の鬼塚 宏人(おにつか ひろと)のサインを覗き込む、出たサインに頷く。
今考えると宏人って投げやすいな、体はデカイしミットの構えも大きい、シニアの捕手よりレベル高いんじゃないのか?。
それで打たれたってことは俺は辻本の足元にも及ばないってわけだ。……ははは、辻本死ねばいいのに、てか俺より上手いやつ全員死ね!。
って、そんなこと実際起きても考えても悲しいだけだな。
俺は辻本を一度目で牽制してセットポジションに入る。それから数回、無駄に辻本を睨みつけ味方からも「早く投げろ!」っと野次を飛ばされたところで投球動作をスタート。
ノーワインドアップから足を上げるとその足を前に蹴り出し、出来るだけ打者にボールが見えないように意識して頭の後ろまで手を持ってくる。柔軟性のある俺は他人と比較して長い時間ボールが体に隠れているらしい。これだけでも打ちにくいのだがそれに追加される球持ちの良さ。この球持ちの良さはフィニッシュの後腕を体に巻きつけるようなイメージでないとイマイチ自分でしっくりこない。
まあこんなの気休めみたいなもんだよね?。
俺の投じた球は宏人の構えた外角低めに強烈なスピンの効いたストレートが決まった。
ノリノリの球審の右手が上がる。
うん、この瞬間は気分がいい。
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ロックされています   Re: パワプロss(オリジナル) 〜運命の打球音〜  名前:MDO  日時: 2013/08/11 16:49  No. 4    
       
もう一球行こうか、うん、宏人も同じこと考えてた。なんか今日はいい感じなんだけどなー。ボコスカ打たれてるよ。
今度は無駄に辻本を睨みつけず、いつものテンポで投球した。今度は構えた所に行かなかったがストライクカウントは増えた。
宏人のサインは外に逃げるスライダー、ぶっちゃけ辻本が相手のとき以外首を振る気はない。だって打たれた時宏人の所為に出来るんだもん。
俺は三球目ちょっとふざけてトルネード投法で投げた。思いのほか制球が定まり、いい感じのコースにスライダーが決まった。それに加え打者はスイングしている。三振だ。えーっと、今日……4つ目?。
「へいへい、打たれてるねー」
こいつは昨日のクレーンゲームでの一番の課金者大友 忠(おおとも ただし)、中学ではショートを守っていたらしい。今日2打数ノーヒット。
「うるさいな。相手結構打つぞ」
「そうだよなー、俺のリードで打たれるってことは…雄輝がヘボか相手がすごいかだな」
俺は会話にいきなり入ってきた宏人の背中をブッ叩いた。
「おまえのリードがヘボいか相手がすごいかだボケナス!」
「相変わらず口悪いね〜」
こいつは松田 廉(まつだ れん)、太めのファースト。少年野球時代は打撃もなかなか出来ていたが今は分からない、今日2打数ノーヒット。
「思ったんだけどさ、おまえら三人今日ノーヒットじゃん」
この直後、三人のチョップが同時に俺の頭に降り注ぐ。そして
「おまえもな!!」
ナイスはもり……。頭いて……。
「とりあえず俺…打席行くわ」
頭を抑えながらベンチへ戻り、ちょっときついヘルメットをかぶり、普段使っていたバットより少し短いバットを手に、打席へ向かう。
俺は右打席に入って考えた。何を狙うべきか? 相手投手の持ち球はスライダーと落ちないフォークと曲がらないカーブとチェンジアップ。
速球、制球力はなかなかのもので、平均よりはレベルの高い投手。
って、そんなこと考えてる間に投球動作に! こんにゃろ〜、少しくらい待てよーーー!!。
ストレートが来た、コースはやけくそになりすぎて分からない。ただただ無心じゃなくて怒りでスイングした。
我に返ると鋭い打球音が響き、ライナーでセンターとレフトの間を抜けた。
それを確認した俺は「よっしゃーー! 一安打(長打)!」と叫んでみた。
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ロックされています   Re: パワプロss(オリジナル) 〜運命の打球音〜  名前:MDO  日時: 2013/08/11 23:18 修正1回 No. 5    
       
この打球はフェンスまで到達した。三つ狙うか? とも考えたが思いのほか中継プレイが上手く、セカンドベースを大きくオーバーランしたところでストップした。
次の打者は左の4番山下 快斗(やました かいと)、今日最初の打席はフォアボールだったため1打数ノーヒット。
山下はオープンスタンスで構えた。投手もセットポジションに入り一度目で俺を牽制しゆったりとしたモーションから山下に対する初球を投じた。
あ、高い。そう思った直後、金属音が静かな球場内を占拠する。
俺も山下も走らず打球の行方を見据えていた。ライト方向へ鋭く、高弾道で飛ぶ。約7秒、その7秒でボールはライトスタンドまで到達した。
ボールはフェンスの向こう側の芝で一度跳ね上がり、ホームランとなった。
「まじか」
思わず声が漏れた。だがまあ、一点差に追い上げたわけだし、まあ許すか。


6回表終了、スコアは六対四となり二点リードとなった。
6回裏の先頭打者は右打席に入った、轍楊 鶯魔(てつやなぎ おうま)だ。って相手ずるくね? シニアのメンバー2人いるじゃん!。
こいつは名前にインパクトがあるから今思い出した。確かこいつは今日2の1か。うん、なんとかなるな。
俺は普段どうり、特になんの警戒もなく初球のスライダーを投じた。わずかに甘く入った。そう、わずかだ、本当にわずかなんだ。
轍楊の豪快なスイングはわずかに高いスライダーを真芯で捉え、レフトポール際へ豪快に引っ張った。
だが、助かった。ボールはわずかにポールの左、ファールとなった。
こいつもやばい、普段どうりに投げたらやられる。本気出さないとな、轍楊…か。結構打つな、こいつも。
俺はボールを受け取ると宏人のサインに頷き、投球動作をスタートする。
こいつからは、三振を取る。
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ロックされています   Re: パワプロss(オリジナル) 〜運命の打球音〜  名前:MDO  日時: 2013/08/13 00:52  No. 6    
       
ストレート!。
エネルギーマックスでキャッチャーミットめがけて投球した。
ボールは轍楊のバットをすり抜け真ん中高めに決まる。今の球は良かった、めっちゃ指に良く掛かった。120台後半は出てたな。……たぶん。
宏人からの返球を受け取ると轍楊の様子を見る。
落ち着いてるな。カウントはツーナッシングか…遊び球混ぜてもいいか。
俺は宏人から出る三球勝負のサインに首を振り、自分の投げたい球のサインが出るのを待つ。チェンジアップのサイン、ようやく出たな。何回首振ったっけ? まあ、どうでもいいや。
見逃せよ〜見逃せよ〜見逃せ!!。
チェンジアップを低めに外れるように投じた。上手くボールの勢いは死んでおり、コースもほぼ狙いどうり、心の中で完璧だ! とガッツポーズした。
「やっと来た」
刹那、轍楊の振り下ろした黄金色のかなり古めのバットが、100キロを切った速球でホームベースを通過しようとする白球をジャストミートした。
すぐ近くで風の音がした。このとき認識した。ピッチャーライナーだ。当たる。
次の瞬間周囲に響いた音はゴッ……ではなくボンッだった。
なんとかグローブでガード出来た。ボールが目の前に落ちかけたので、右手でボールを一塁側にはたいた。
すると驚き、ツーバウンドでファーストベースまで到達した。無論それをファーストが捕球し一塁ベースを踏んだ。なんとかアウトにとった、手はひりひりするけど。
続く二人の打者を打ち取り三者凡退で6回裏を切り抜けた。手はひりひりするけど。
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ロックされています   Re: パワプロss(オリジナル) 〜運命の打球音〜  名前:MDO  日時: 2013/08/14 02:43  No. 7    
       
イニングは進む、8回裏、ノーアウトランナー二塁で辻本を迎えた。
宏人がタイムを掛けてマウンドに駆け寄って来た。それを見た内野陣がマウンドに集まる。
宏人は俺の左肩に右手を置き、溜息を吐いて「敬遠するか?」と言ってきた。
「はぁ? バカじゃねえの、やられっぱなしで終わるかよ」
そう言った直後、後ろから右肩をポンポンと叩かれたので振り返ると京介がいた。京介は俺を睨んでいた。
「おまえがやられてやり返すとこなんてほとんど見たことないんだけど、おまえただ個人的にあいつをライバル視してるだけだろ? 悪いけど今はそのどうでもいい個人的な思考は捨ててチームにとっての最善策とれよ。俺たちはこの試合で負けた方がこの後の会の食費払わねえといけねえんだよ」
しばらく沈黙が続いた。そこで俺がその流れを断ち切った。
「そっちのほうがどうでもよくね?」
こう言った直後、廉が「おまえはな」っとツッコミを入れた。
しばらく、いやかなりの時間無駄なやりとりが続いた。結局敬遠するかしないかはジャンケンで決めるという最終手段で決めてしまった。
結果は俺が勝利し、勝負という結論になった。よっしゃーー! 絶対! 打ち取る!。
既に全員守備位置に戻っている。宏人からのサインを確認する。二度首を振ったが三度目のサインには頷いた。
セットポジションから初球を投じた。
球速が遅い。ボールの軌道はホームベースの前でフッと落ちた。ドロップだ。このボールに辻本のバットはピクリとも動かなかった。
コースがやや低かったのか、ボールの判定。宏人からの返球を受け取り、サインを決める…のが長い。
サインが決まった直後にランナーを全く気にせず投球する。この二球目を投じた感覚は轍楊の三打席目の二球目のときの感覚とほぼ同じ、むしろ今の感覚のほうが良かった。
辻本もスイングした。だがバットには当たらず、ボールは低めに構えていたが今は正反対のコースの高めに激しく動いたキャッチャーミットに収まる。
ワンエンドワン、次はタイミングをずらす、チェンジアップだ。
初球、二球目のサインのやりとりは非常に長かった。だがかの三球目のサインは一発でアッサリと決まってしまった。
それには理由がある。それは、三球目のサインではないからだ。
俺は体をターンさせ、セカンドベースに入ったショートに鋭いボールを投げつけた。
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ロックされています   Re: パワプロss(オリジナル) 〜運命の打球音〜  名前:MDO  日時: 2013/08/16 01:42 修正1回 No. 8    
       
宏人は三回、手を開いては握る、この行為を繰り返した。
これはフラッシュのサイン、フラッシュとはシュートがセカンドベースに入って出る、その直後に…いや、秒数を決めてそのタイミングで牽制するほうが正しいか? 単純に表現すればショートがベースカバーに入るがそのタイミングでは牽制せず、シュートがベースから離れるとセカンドがベースカバーに入る。そのタイミングとほぼ同時に牽制球を投げる。ちなみに投手は本塁側を見ていなければ効果は薄くなる。
それはつまり、刺す牽制であることを意味する。
つーかこいつらのフラッシュサイン複雑過ぎ、ふつうショートがフェイクでセカンドが本命だろ。こいつら逆じゃねえか。シュートが本命だとランナーにバレやすいだろ。しかもフラッシュサインがキャッチャーから出るって、なんなの? ふつうショートからピッチャーに出すもんだろ。

牽制球はシュートがベースカバーに入ったタイミングとドンピシャだった。だがこのやりかただとフラッシュの成功率は下がっている。セーフになるんじゃないか思っていた。
だが結果は見事に刺殺、アウトカウントを一つ増やしたうえに、スコアリングポジションに居たランナーは消えた。最高の結果になった。邪魔者はいなくなった、振りかぶって投げれる。状況、条件、流れのすべてが、俺に味方している。必ず、勝てる。辻本を完璧に抑えれる筈だ。
サインも一発で決まり、テンポよく三球目を投じた。コースはアウトハイ、ストレートだ。
辻本はこの球にも手を出す。まあストライクゾーンだから当然だが。
短い金属音の後、ボールは角度を上げバックネットを越えてバックネット裏の天井の上に当たり鐘を鳴らしたような音がした。
それより、ワンエンドツー、追い込んだ。それに今回は追い込み方がいい、ストライクカウントを取った球はいずれもストレート。初球にドロップを使ったが、ストレート二つの後だ、十分に使える。次は、何を投げるべきか……。
俺を瞑り、ここまでの辻本への配球をよく思い出してみた。今日打たれたのはアレとアレか。その他で決めに行くのが安全策だろうか? いや、冷静に考えろ。状況まで思い出して考えろ。
____よし、腹括ろう。
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ロックされています   Re: パワプロss(オリジナル) 〜運命の打球音〜  名前:MDO  日時: 2013/08/17 14:13 修正1回 No. 9    
       
ああ、やっぱりミスだったか……。逃げの投球のほうが良かった。
……だってそうすれば、現実をはっきりと自覚しなかったのだから。
確かに現実を知ることは悪いことではないと思う、むしろ俺は知るべきだった。
すべてが曖昧で信念や意思などは一切ない、現に宏人とのサインのやりとりも長引けばどうでもよくなり軽く流される。
それにもうこの試合も辻本もどうでもいい、なんだか頭が冴えない……。いや、そんなことよりこのことのほうが問題だ。
体が重い、ていうかなんで俺ずっと空見てんの? しかも空が赤い…あれ? なんでみんな集まってんの? みんな俺より上にいるってことは浮いてんのかな? それよりなんでみんなさわいでんの? おい拓也、試合中に電話掛けんなよ。ってか、なんで喋れねえんだよ。今さらだけど頭いてえ……。
「えっと! 救急車って110だっけ? 119だっけ!?」
「ばか! こんなときにボケてんじゃねえ! 早く救急車呼べよ!」
「それより二者連続でピッチャーライナーってすげえよな?」
「確かに、結果的には雄輝勝ててよかったよな?」
「バカかよ、こいつのこの口元を見ればわかるだろ? こいつ、負けたと思ってるよ」
あ、わかった。状況が理解できた。辻本の打球が当たったのか……この感じだと、俺死ぬな。
ははは、俺の人生短いなー。……まあいいや、でも、この短かった人生のなかで、ひとつだけわかったことがあるし。


数分前までカラフルだった景色は数十秒前に真っ赤に染まり、今この瞬間、真っ黒に変わった。
俺の耳に届いた最後の言葉は、おそらく辻本の声だった。
「おまえとの対決はおも__」
言葉がここで切れた、おも、なに?。

もし、生まれ変わるのなら、辻本に負けないくらいの、力が欲しい。もう誰にも負けたくない。
このとき何かに俺が吸い込まれた。
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