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ロックされています  大空の彼方へ  名前: ガルベス  日時: 2016/02/10 20:51 修正1回   
      
 その昔、パワプロ小説系掲示板に投稿していた文をリメイクしてみた。しっかり完結できるようにがんばります。
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ロックされています   大空の彼方へ ―プロローグ・1―  名前:ガルベス  日時: 2016/02/10 21:47 修正2回 No. 1    
       
―1月1日―

今日は新年最初の日。一年の計は元旦にありと言うわけで様々な思いを胸に神社へと向かうこの一本道は着物で着飾った他人でごった返していた。都心にしては珍しく前日から雪が降り続き、道路脇には土埃と交じり汚れてしまったそれが片されていたものの今日のこの様子だと徒労におわりそうだ。天気予報によるとこの日も冷え込むそうではあるが、神社に集まった人々の表情からはそんなことへの不満は微塵も感じられず晴れやかであった。いや、中には何か重要な願掛けをするのか少々硬い表情をしている人物もチラホラ見えている。そんな集団のなかにあるグループがあった。男3人、女1人の計4人。年の頃は十代半ばと言ったところか。

「うへぇ、やっぱり人が凄いな。」

4人の中でもどことなく幼さの残る顔をした一人がうんざりしたような表情でつぶやいた。

「そう言うなって。そもそも、初詣に行こうって言ったのは省吾だろ?」
「そりゃ、そうだげどよ。」

呟きを聞いた集団の中で一番の長身の少年が、省吾と呼ばれた少年をたしなめるように話した。4人で待ち合わせし出発してかれこれ2時間は経っており、これならば家に残って受験勉強の続きをすれば良かったとちょっとだけ後悔した。とは言え、言い出しっぺというのは事実でありここまで来て引き返すのも何か癪に障る。

「・・・そう言えば淳平。寮にはいつ頃入るんだ?」
「卒業式が終わって2,3日してからかな。でも、揃えないといけない物もあるしな。」
「わ、結構ドタバタじゃない。」

4人とも同じ中学3年生で受験があるものの、このうち淳平ともう一人は推薦入学で既に進路が決まっており、紅一点の少女は志望校の合格ラインには楽に届いている。つまりはこの中で進路が危ういのは省吾ただ一人。

「大輔! 淳平! 舞! お前ら、俺の合格祈願まともにする気あるのかよ!?」

省吾は切羽詰まっている自分を後目に悠々綽綽と話している他の3人に涙混じりに怒鳴りつけた。物心付いてから一緒にいる4人、うれしい時も悲しい時も4人で分かち合ってきた。だがしかし、幼馴染3人の答えは―――

「無ぇな。」
「無いな。」
「無いわね。」 

心無いものだった。

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ロックされています   大空の彼方へ ―プロローグ・2―  名前:ガルベス  日時: 2016/02/17 20:34  No. 2    
       
4人はじゃれあいを続けながら神社の境内を目指し歩いて行った。相変わらず北風は冷たく空も少しづつ曇り始めている。もしかしたら予報よりも早く雪が降ってくるかもしれない。早いところお参りを済ませたい所ではあるがいかんせん人の数が多い。おしゃべりを続けていると会話の内容は自然とお互いの進路についてになってしまうのは受験生の悲しい性なのだろうか。

「でもよ〜、淳平が帝王実業行くのはともかく、大輔は何で恋恋高校なん?」
 
省吾がふと呟くと、3人の視線が自然と大輔に集まった。淳平の進学する帝王実業高校は春夏合わせて30回の甲子園出場、うち6度の全国制覇を成し遂げた名門校。今度の春の甲子園にも出場を決めており優勝候補の最右翼だ。エースの山口は140`を超える速球と鋭く落ちるフォークボールを武器に昨年の夏、一年生ながら堂々とした投球でチームの全国ベスト4入りに貢献した。雑誌では早くもドラフト上位候補として取り上げられている。それに引き換え、大輔の進学する恋恋高校は名門女子高として名高かったものの、昨今の少子化の煽りを受ける形で来年度より共学化することになった学校だ。もちろん野球部もないどころか、男子生徒が集まるかも危うい。

「どうせなら、さ。一から自分でやってみたかったんだよ。」
「創部からか?」

空を見上げながらつぶやいた大輔に淳平が聞き返した。その問に大輔はその目を見据えて力強くうなずくのみだった。出会いは幼稚園、同時期に省吾を交えた3人で同じリトルリーグのチームに入り示し合わせたようにシニアリーグでも同じチームへ。都合5年間同じチームで切磋琢磨し続けた3人にはこれ以上の言葉はいらなかった。

「大輔がそう決めたのなら、俺からは何も言わないよ。だから、これだけは言っておく。」

少し寂しそうな表情を見せた淳平だが、気持ちを切り替えたかのように声を低くした。

「俺は春からスタメンマスクを狙う。いや、獲る。」

普段はどちらかと言えば穏やかで利口な淳平の力強い宣言にやや驚いた他の3人だが、ああ、そう言えば淳平は小さい頃から少し頑固なところもあったなと思い出した。

「・・・わかった。先に甲子園で待ってろよ。」
「大口叩いて3年間補欠でした〜、じゃ許さねぇからな。」
「頑張ってね淳平くん。」 

3人の励ましに淳平は力強く頷いた。
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ロックされています   大空の彼方へ ―恋恋高校―  名前:ガルベス  日時: 2016/03/17 16:17  No. 3    
       
淳平の元日の宣言から早くも3か月が過ぎ、世間では入学式の季節となった。帝王実業の野球部寮は携帯電話の所持や使用に関してはかなり厳しいようで入寮以来、淳平からの連絡は無い。省吾は正月あとの猛勉強の末、何とか舞と同じ県立パワフル高校への入学を決めることができた。そして、大輔はと言うと・・・。

「ほんじゃ、行ってきます。」

恋恋高校指定のブレザーに身を包んだ大輔はまだ少し眠たそうな表情をしながら玄関を開いた。今日はこれから3年間通うこととなる恋恋高校の入学式である。学校はバスを経由しておよそ30分ほどのやや高台にありその緩やか坂道の両脇には桜が植えられ、時期になればとても鮮やかな通学路となる。その中を真新しい制服に身を包んだ新入生と思われる生徒や、付き添いの父兄がやや緊張した面持ちで歩いている。やはり共学化となって最初の年と言うこともあってか見渡す限り女子生徒だらけだ。本来ならば健全な男子生徒としては喜ばしいことなのだろうが、いかんせん割合があまりにも違いすぎる。

 「マジで女子ばっかかよ・・・。」

その光景を目にした大輔もさすがに圧倒されたように立ち尽くした。その間抜け面とも言える表情はなかなか滑稽なものだがただ一人の男子生徒は目立つのか遠巻きに此方を観察するかのような視線をヒシヒシと感じた。若干早まったかと思った大輔であったが、不意に後方より声が掛けられた。
 
 「お〜い、そこのお前。なにブツブツ呟いているんだよ。」

驚きながらも振り返った大輔の眼には自分と同じ制服に身を包んだ男子生徒が一人立っていた。背丈は大輔よりやや小さいぐらい。散髪されたばかりと思われる短髪が爽やかな印象を与えている。

「まぁ、こんな風景を見たらフリーズするのも無理ないけどな。」

校門に入る前に早くも数少ないと思われる他の男子生徒に遭遇した大輔はますます混乱してしまったが、気を取り直すとその男子の両肩に手を置くと開口一番、叫んだ。

「俺と野球やろうぜ!!」
「・・・はぁ!?」

いきなり始まったその光景に周囲の冷ややかな視線が突き刺さった。
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