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記事閲覧  プロ野球・鯉の陣!U  名前: 広さん  日時: 2012/10/21 18:00 修正26回 HOME  
      
【プロ野球・鯉の陣!U】
〜プロローグ〜
広島東洋カープに1位指名された18歳、川井隆浩。彼の夢であったプロ野球を舞台に
笑いあり、熱狂ありの燃える試合を繰り広げる!
あの男の電撃トレード、ギャラを巡っての大騒動、主力の不振。まさに人生、森羅万象!!

※本小説は閲覧のみとなっております。作者以外の書き込みを固く禁止します。
【目次】
>>1   第1話・新たなる鯉伝説
>>2   第2話・隆浩の憧れ、カープの4人衆登場!
>>3   番外編・大波乱ギャラ騒動
>>4   第3話・お金に恵まれた(?)休日
>>5-8  第4話・オープン戦
>>9-12  第5話・独特の技術
>>13   第6話・新しい仲間
>>14-18 第7話・越えなければならない滝
>>19-20 第8話・立ち上がれ大引!
>>21-25 第9話・対中日戦
>>26   第10話・な・ん・だ・と―――――っ!?
>>27   第11話・大波乱
>>28-29 第12話・対喜多川戦
>>30-32 第13話・進化した喜多川
>>33-37 第14話・喜多川の新球種
>>38-40 第15話・歓喜
>>41-44 第16話・協力
>>45   第17話・ムラッ気の28歳
>>46   第18話・休養日
>>47-48 第19話・大鞆の打撃師匠
>>49-52 第20話・その男、マックス・サムス
>>53-55 第21話・レイズの獰猛な鷹、マックス・サムス登場!
>>56-64 第22話・対巨人戦
>>65-66 第23話・Mr.iron man
>>67-70 第24話・死球
>>71-85 第25話・He is new read-off man
>>86-91 第26話・帰ってきた助っ人
>>92-94 第27話・怪物、天海陽介降臨
>>95-96 第28話・天性のセンス、飯田海翔復活
>>97-98 第29話・暴れ馬
>>99-111 第30話・最速の称号
>>112-115 第31話・ホームスチール!?
>>116-120 第32話・終盤戦
>>121-127 第33話・ルイスと沢村
>>128   第34話・大引のルーツ
>>129-138 第35話・決着
記事修正  スレッド終了
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/08/20 19:52  No. 80    
       
野球とは本来、『楽しむスポーツ』。
高校野球であろうがプロ野球であろうが関係ない。
野球は変わらず『楽しむスポーツ』なのである。

二宅の言葉、それはつまり、「初心にかえれ」と言うことを意味していたのである。

そして第四球目。 インコースのストレート。
隆浩のバットは、まるで滑っているかのように素早く、かつ力強く振られ、
ボールはバットの芯で捉えた心地良い音とともに、マツダスタジアムの上空を舞った。そして…

ガコォン!

ボールはカープ側観客席の空きイスに当たった。
隆浩は、1番打者の重圧と緊張の中、飯田の役割でもあった先制点を、遂にその手で掴んだ!
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/08/23 19:04 修正1回 No. 81    
       
「よっしゃー! よーやったで隆浩!」
二宅は外野にいても聞こえるほどの声で喜んでいる。
本当に俺は打った。飯田さんの代わりに、この手で…
隆浩は、飯田の代わりを達成できて嬉しかった。
そして、ホームを踏んだ瞬間、隆浩の顔からは笑顔が戻った。
2番の御村は粘りながらも差し込まれ、ファースト正面のゴロに倒れた。

3回の裏から試合は白熱してきた。
工藤の右腕から放たれるカットボールが、6番打者の右腕に当たりノーアウト1塁。
次の7番、鵜山にレフト前へ運ばれノーアウト1,2塁となった。
清水は工藤を休ませるために3回で降板させ、
2番手としてベテランの梅津をマウンドへ上げた。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/09/15 14:56 修正1回 No. 82    
       
梅津はフォアボールを1つ出しながらも、持ち前のタフさで後続を見事断ち切り、チェンジとした。

4回表、カープの攻撃は、隆浩を励ました3番の石井からの好打順。
1打席目は球筋を分析しているかのような見逃し三振をしている。
つまり、1度もバットを振っていないのである。

そして第1球目。アウトコースへの直球を、石井は見逃した。ノーボール1ストライク。
2球目のアウトコースへのカーブはボールとなり、
1ボール1ストライクとなった。
石井さんには何か策があるのか? 隆浩は首をかしげた。
確かに、今の石井からは打ちそうな気配が全くしていない。
「正直打ちそうにないと思ってるだろう、隆浩よ」
バッターボックスから水を飲みにベンチへ戻ってきた大引が言った。
「はい、1打席目も1度もバットを振ってませんでしたし、手が出せないのかな……と」
「それは違う。あいつは元々厳しい球に対し、うかつに手を出さない奴だ。ああして甘い球を待ってるのさ」
次の瞬間、爽快な音を響かせ、石井がレフト前へボールを運んだ。
「しかも、あいつの凄い所は野手の間を狙って打てる事だ。そうして今までヒットを打ってきたのさ。今のだって少し浮いてた棒球だからな」
なんて凄い人なんだ、甘い球を見逃さず、的確にとらえて野手の間を抜くなんて。
隆浩は、とても自分には出来ないバッティングを見て、改めて石井を尊敬した。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/09/21 17:30  No. 83    
       
打順はいい形で4番の大引へ。大引は7月現在、セ・リーグで本塁打数1位を走る32本。
セ・パ両リーグで第2位と絶好調の結果を残していた。ちなみに、両リーグで1位の本塁打数は、
中村剛也(西武)の34本である。

大引はバットにはめていたおもりを外し、軽く素振りをしてから堂々と打席に立った。
無死一塁の場面。大引としては長打を狙い、チャンスを広げたい。
堂々としたその構えからは、まさにそんなオーラが溢れていた。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/09/29 09:00 修正2回 No. 84    
       
そして第一球目、大引のひざ元を直球が通り過ぎストライク。大引は、一度打席を出て深く深呼吸をし、再び打席に立った。
「あんなにまだ本塁打を打てそうな大引さんが、どうして今年限りで引退するんだ……?」
御村は、唖然として大引を見ている。そこへ岡本が、
「大引の引退は、記録や運動能力とは関係のない理由があるのさ」
と一言言った。
「どういう事ですか?」
と御村は岡本に聞き返す。それに同感するように、隆浩も首を縦に振った。
「大引は、心臓病の親父さんと過ごす時間を、少しでも増やしてやろうと思ってるんだよ」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/10/08 17:54 修正1回 No. 85    
       
「お前らも知っている通り、大引はかなり誠実な男だ。人生の優先度というものを分かっている」
と岡本は腰をおろして続けた。
「大切な時間か野球……どちらを取るかと問われたら、お前たちも流石に時間と答えるだろう」
そう言って岡本は黙り込む。

「大引……さん……?」
ベンチの奥に座っている飯田が微かに呟く。
「ん? 飯田、どないしたんや? って今、お前もしかして……大引て言うたんか?」
隣で付き添っていた二宅がハッと気付く。
「まさかお前、大引の事思い出したんか!?」
「え、ええ……まあ……」
二宅は思った。これはチャンスじゃないか、と。

「監督、ちょっと来て下さいや」
二宅は清水を呼んで、飯田の前へ連れてきた。
「二宅、飯田がどうかしたのか?」
「監督、飯田を代打で出しましょうや!」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/10/10 19:18 修正2回 No. 86    
       
〜第26話・帰ってきた助っ人〜
ベンチ内は騒然となった。
「飯田を……代打起用……?」
「そうや! 飯田は段々と感覚と記憶を取り戻しつつある。これほどのチャンスはめったにあらへんで!」
清水は葛藤していた。確かに、飯田をこの際に出してみるのもいいかもしれない。だが、
なぜ二宅はこれをチャンスだと受けたのか。それに、なぜ代打起用なのか……
清水はなかなか決断を下せない。その時、
「監督さん、俺行きます!」
飯田の声だった。
清水はおろか、二宅までもが驚いた。確かに飯田自信、記憶がなくとも野球は好きだと言っていた。
しかし、ここまで気迫と決心に満ち溢れた飯田の顔は見た事がない。
清水はさらに考え込んだ。しかし、段々と清水の目の色が変わってくる。そして、腕組みを外して言い放った。
「よし飯田、ノーサインだ! 思う存分打ってこい!」
その瞬間、大引のバットから快音が響き渡り、ライト線を破った。
大引は辛くも2塁でセーフ、無死2,3塁のチャンスを迎えたのである。
そして、ついに出番がやってきたのである。

『広島東洋カープ、選手の交代をお知らせいたします。
バッター岡本にかわりまして、飯田。背番号8』
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/10/11 23:12  No. 87    
       
1万5000人にも上る観衆が一気に歓声を上げた。
揺れている。1万5000人による歓声で、マツダスタジアムが揺れている。
「頼むぞ……飯田……!」
「飯田! 打ってやれ!」
「頑張って下さい飯田さん!」
そして、カープベンチからも飯田を後押しする声が聞こえる。
飯田は不思議な気分になっていた。興奮してもいないが、なにか燃えたぎるものがある。
飯田は確信した。これが勝負に生きるものの感情、つまりは、集中……
二宅は、この感情を思い出すタイミングとして、記憶が戻りつつあったこの場面での起用を考えたのである。
「ワシが飯田を代打で出したんは、打撃に期待しとるからやない。
打席に立ちたいっちゅう気持ちが、目を通して伝わってきたからや
結果にこだわらんでも、選手の気持ちが相当なもんなら、ワシなら出すで」
「流石にお前には敵わんな」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/10/13 00:33  No. 88    
       
二宅の言葉通り、飯田の目は本気だった。
そして、高々とマツダスタジアムの上空を見上げ、大きな深呼吸をした。
絶対に打って見せる。飯田は打席に入ると、バットをトップに持っていき、堂々と構えた。
その時だった。ソフトバンクの新監督小久保がベンチを出たのである。投手交代だ。
ベンチの奥から、ヌッと長身の大男が姿を現し、首元が隠れるほどの顎ひげを撫で下ろしながらマウンドへ向かってきた。
『福岡ソフトバンクホークス、選手の交代をお知らせいたします。
ピッチャー石川に変わりまして、舘石(たていし)。背番号21。
ソフトバンクのベテラン中継ぎエース舘石は、天を突く程の長身から投げ下ろす切れの良い直球を中心とし、
頭の上から落ちてくるようなフォークボール、スプリットを駆使して、決して連打を与えない投手であった。
「舘石、相手は飯田だ、気を引き締めて行けよ」
小久保は、舘石の肩を軽くポンと叩き一言言った。それに対して、ベテランの貫録が出ている舘石は、
「任せて下さい。このピンチ、必ず脱して見せます!」
落ち着いた様子でやる気満々に返した。

飯田は、舘石の威圧感を感じつつあった。そして第一球目、
舘石はセットポジションから、素早い体重移動で投げ込んだ。
内角低めに食い込むようなストレートに対し、飯田は手が出ず見逃した。
速い! 飯田の頭の中にその一言が飛び散った。
第二球目、頭上からドロンと落ちるようなフォークを見逃し、これはボールであった。
「なかなかやるじゃないか。流石は不動のトップバッターだな」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/10/14 01:13 修正5回 No. 89    
       
その頃、巨人対ロッテの1戦は……

試合は7回裏。0−4で巨人はロッテに4点差を付けられていた。
「むう……この回こそは得点を……」
監督の阿部はうなっていた。今日の巨人は打線が沈黙。ロッテの唐川に1安打に抑えられていた。
「畜生! 何で打てないんだ……!」
「くそ……バットに当たらねえよ……」
「改造ボールでも使ってんじゃないのか!?」
巨人のベンチは雰囲気も最悪であった。本拠地の東京ドームであるにもかかわらず、
一人ひとりが貧打線に対する愚痴と文句のオンパレード。これでは打てなくて当たり前である。
しかも、唯一打った1本のヒットも、相手のエラーのようなものだったのだ。
「やばいな、このままじゃ選手の連携が崩れっちまうぜ……」
これには井浦も相当困っていた。かと言って、下手に怒鳴りつけても逆に士気が落ちるかもしれない。
この状況を打破する方法が開けないでいた。そんな時……
「相変わらずだナ。俺がいなかったらそんなもんなのカ?」
聞いた事のある声だった。発音が多少外国人っぽく、かつ懐かしい。この声の主は……
「ル、ルイス!? ルイスじゃねえか!」
そう、かつて井浦のライバル的存在であり、自分の1番の相棒、ルイス・デュランゴである。
そのルイスが、ベンチの入り口から入ってきたのだ。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/10/18 20:21 修正1回 No. 90    
       
「お前……ヤンキースの1番打者になって活躍してるんじゃなかったのか?」
井浦は動揺していた。まさか、この場面でルイスが自分の目の前にくるとは想像すらしていなかったのだ。
それに、ルイスは都合で帰国してからは、ずっとヤンキースでプレイすると明言していたのである。
「まあ、いてもたってモ居られなくなってナ」
ルイスはあまりにも動揺している井浦を制し続けた。
「やっぱり、お前とクリーンナップを組まないと燃えられんからナ。もう一度……お前とクリーンナップを組むために帰ってきたんダ」
「ルイス……」
井浦は思った。今こんなことをしている場合ではない。口で言えなければプレーでやる気を引き出せる、と。
そして、もう一度ルイスと4,5番を組むためにも、それにふさわしい打撃をしたい、と。
そして、2アウトとなったこの場面で、井浦の打順が回ってきた。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/10/20 10:18 修正1回 No. 91    
       
井浦は燃えていた。自分と本塁打を打ち合うためにルイスがアメリカから帰って来たのだ。
それに、ベンチからルイスに見られている。井浦として、この場面で凡打を打つ訳にはいかない。
マウンド上の唐川は、対井浦対策として、緩急を付けるピッチングを鍛えてきた。
一筋縄ではいかない相手だと言う事は井浦自身も良く分かっている。
しかし、唐川の新球種であるスローカーブにタイミングが全く合わず、2打席連続で凡打に抑えられているのである。
そして、唐川はワインドアップから第一球目を投じた。
147km/hの速球が井浦のバットの上をすり抜けストライク。この試合での最高速度である。
井浦は一度打席を外し、何回か素振りをしてから打席に戻った。
第二球目はカーブ。これは外れてボール。そして、第三球目は内角高めのストレートをカットし1ボール2ストライク。
そして、しつこく球に食らいついて行った井浦は、11球ものファールを出して粘りカウントもフルカウント。
ここで監督の阿部は井浦に、軽く流してヒットに徹しろと指示を出した。
しかし、なんと井浦は首を横に振って、そのまま打席に立った。
「い、井浦……? どうして指示を聞かないんだ……?」
阿部は唖然としていた。ルイスが帰国して以来、井浦は監督の指示には絶対に従っていた。
しかし、今日の井浦はまるで入団当時のサインを聞かなかった頃の井浦だった。
「監督さんよ……確かに俺はチームの為にサインには従ってきたよ。
だが……ルイスが帰ってきた今、そんな野球はいらねえ!
やっぱり俺には、以前のように自由に本塁打を打ちまくりてえんだ!」
第十七球目、唐川は渾身の力を振り絞り、外角低め一杯にストレートを投じた。
井浦は腰を思い切り回し、膨大な遠心力のかかったバットを、外角のボールに合わせた。
そして当たった瞬間、強引にレフト方向へ引っ張った。
「行けえ―――!!」
井浦は打った瞬間、バットを放り投げて吠えた。
その声に反応するように、打球はぐんぐんと伸びていく。
そして、ロッテファンに染まったスタンドへ叩きつけたのである。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/10/22 22:48 修正5回 No. 92    
       
〜第27話・怪物、天海陽介降臨〜

ここで、今年ロッテの監督に就任した里崎がベンチを出た。投手交代である。

『千葉ロッテマリーンズ、選手の交代をお知らせいたします。
ピッチャー 唐川に代わりまして、天海。背番号18』

まるで先程の本塁打は無かったかのように、ロッテ側のスタンドが沸く。
ロッテは、脅威の1年目で18勝4敗を打ちたてた怪物、天海陽介をリリーフとして送ってきたのである。
「こ、この場面で天海かよ……」
井浦は天海を見て、額から汗を流しながら言った。
そこへ、現在は打撃コーチの小笠原が、
「知ってるとは思うが、奴は舞空高校を全国制覇へ導いた天才……いや、怪物だ。奴の約187pの長身から繰り出される直球は160km/hをゆうに超えると聞く」
井浦は、飲んでいたスポーツドリンクを吹き出した。
「ひゃ、160km/hを軽々と超えるだと!?そんなに速かったのか!?」
井浦の手からスポーツドリンクが落ち、中身がベンチの床にこぼれる。
驚くのも当たり前だ。現在の日本記録は由規(ヤクルト)の161km/h。160km/hをゆうに超えるとなると。
確実に161km/hの記録は塗り替えられるのである。
「ああ、しかも奴はスタミナ、コントロール共に最高級だ。その上変化球も多いと来た」
小笠原は、天海との対戦は無いが、見た事はあるのである。
地をいつまでも這うような伸び。重力が作用しているのか疑わしいほどの変化球。
すべてがハイレベル。まさに「怪物」……
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/10/27 19:39  No. 93    
       
天海の投球練習は圧巻だった。150km/hは出ているであろう剛速球を軽く投げ込んでいる。
その投球練習に、巨人ベンチは唖然としていた。
これほどの投手がロッテに、しかも中継ぎ、抑えとしても場面に応じて出陣する。
天海は、怪物としか言いようがないほどの投手であった。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/11/16 22:34 修正2回 No. 94    
       
打順は5番の佐藤。1年前にドラフト2位指名で巨人軍に入団した期待のスラッガーである。
佐藤は足元を固めたあと、チラッと天海の方を向いた。
本人はマウンドを均しているだけのつもりなのだろう。しかし、天海の体からは、
静かに燃える、青き炎のようなオーラが漂っていた。
佐藤は少々怖気づいたのか、少し身震いした。
「な、なんて奴だよ……体が大きく見えやがる……」
佐藤から見た天海は、まるで3m(大袈裟だが)ほどあるのでは、と思うほど天海が大きく見えた。
そして第一球目。豪快なワインドアップから、天海の直球が放たれた。
手から離れた瞬間にミットに入ったと思うほど、天海の直球の精度と速度は尋常ではなかった。第一球目はボールだったが、
キャッチャーが天海にボールを返した後も、佐藤は見送った構えからなかなか戻れなかった。手を出す暇もないほどの速球なのである。
何だったんだ。佐藤の顔から冷や汗が滴る。
完全に低めの直球だと確信した。しかし、天海の直球は、失速など俺の辞書にはないとでも言っているかのように、
少しの失速もない一直線の軌道を描いた「ストレート」だった。

「この人も……本気で投げるまでもないのかな……」

天海はそう呟くと、静かにロージンバックを手に取った……。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/11/23 16:19 修正1回 No. 95    
       
〜第28話・天性のセンス、飯田海翔復活〜
一方、広島対ソフトバンクの一戦は、代打で出場した飯田が、
ソフトバンクの中継ぎエース舘石から、計17球のファウルボールを出し、粘りに粘っていた。
「な、なんだよコイツ……俺のフォークをなかなか空振りしない……どんなバットコントロールしてんだよ……」
舘石がそう思うのも無理はない。実際、舘石のフォークボールは、決して当てようと思って当てれる代物ではない。
それに、あの長身から繰り出すだけあって落差も相当なはずだ。
それなのに、飯田は舘石の緩急を活かしたピッチングに屈していない。
並の打者なら、もうとっくに三振していてもいいはずだ。
飯田は、打席に立った瞬間から、妙なものを感じていた。なぜか体が自然と球についていく。
身に染み込むほど猛練習した訳でもない。しかし、何かが飯田の体には染み込んでいる。
第十九球目、アウトコースの低めに、舘石のフォークが投じられた。
その瞬間舘石は目を見開いて驚いた。投手から見て、ベース側に飯田の体が信じられない程傾いているのだ。
それでも、飯田はバランスを崩すことなく本来のシャープな振りで、ライトのライン際へヒットを放った。
そして、バットの感覚で飯田は遂に思い出した。自分の名前は飯田海翔、広島の1番打者。センターの飯田海翔……。
飯田は、にやりと笑みを浮かべながら、なんと1塁ベースを蹴って2塁へ向かった。
ライトはこれを見て、急いで2塁へ送球した。タイミングは完全アウトである。
しかし、飯田はタッチに向かってくるグラブをスライディングしながら沈み込んでかわし、そのまま足をベースに伸ばした

「セーフ!」

飯田の野球センスは完全に復活した。
実際、飯田のスライディングがそれを物語っていた。
広島ベンチはまるで優勝したかのような大騒ぎ、この間に3塁の石井はホームイン、大引も後に続いてホームインした。
飯田は、2打点となる2ベースヒットを放ったのである。
3−0、広島は試合の流れを一気に掴んだ!
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/11/23 23:15 修正1回 No. 96    
       
「やっぱり、飯田の体にはセンスと言う名の天性のモンが染み込んどるな」
二宅は静かに微笑み、頑張れよと呟いた後、ベンチを後にした……

記憶喪失から復活した飯田、臨時の1番隆浩、そして主砲の大引が中心となり、6回裏、広島打線は爆発した。
打ちに打ちまくり、それでも乱打戦になることなく投手はきっちりと抑える広島のワンサイド気味に試合は進んだ。

そして9回裏。抑えに回った工藤が、ソフトバンク打線を三者三振に抑え、広島は11−0で勝利を収めたのである!

「よーし! 今日もよく頑張ったぞー!」
「日曜日もいい試合見せろよー!」

ファンからは応援の言葉が飛び散った。
「しかしなにか気分がいいですね。たったペナントレースの1戦を勝っただけなのに」
隆浩はバットをバッグにしまいながら言った。
「そうだな、まあ1試合と言っても色々あったからな」
と大引は満足げに言った。
「よし、寮に帰ったら今日は盛大に飲みに行くか! もちろん、神庭のおごりでな!」
「わ、ワシは金持ってませんのー!」
「いや、見たぞ。立派に8万ほど入れてただろうが!」
「大引さん、いつの間に神庭さんの財布覗いてるんですか!」

広島ベンチに笑顔が戻った。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/12/10 18:19 修正2回 No. 97    
       
〜第29話・暴れ馬〜
広島の選手達は明日の試合に向け、マツダスタジアムで練習を行っていた。
「あ、暑い……」
隆浩はランニング20周の時点で早くもダウン寸前であった。
「どうした隆浩、7月はまだ始まったばっかりなのにそんなのでへばってたら試合で使ってもらえないぞ?」
と飯田は暑さをまったく感じさせない清々しい表情で言った。
「この後は打撃練習だ。とにかく、あと2周だから頑張れ」
と、飯田は早くも20周を走り終えてベンチへ戻った。そしてこのあと、隆浩もようやく走り終えた。

そしてバッティング練習。大引の豪打は早くも柵越えを量産。飯田のバットコントロールも光っていた。
隆浩は、そんな2人に負けまいと必死に打ったが、暑さのせいか打球が伸びなかった。とそんな時、
「力んどるぞ川井!」
いきなり背後から指摘され、振り向くとそこにはごっつい胸板の男が立っていた。
「肩の力を抜け、そして素振りと同じ感覚でボールに合わせるんだ。そんな基本的な事をもう忘れたのか?」
この男、高橋一峰(たかはし かずみね)。暴れ馬と言う異名で豪快なアーチを描く選手兼コーチである。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2014/06/21 16:30 修正1回 No. 98    
       
「その力みがとれんのなら……俺と一緒にスタジアムの外を20周ほど走るか?」
そう言って鋭い目で睨んでくる。
冗談じゃない! スタジアム内でのランニングでさえ死ぬほど大変なのに、スタジアム外を20周だなんて無茶だ。
「わ、分かりました」
そして一旦打席を外し、大きな深呼吸を3回。すーはー。
肩を回して、自然体に近い形で楽に構える。
その構えのまま、いつもの素振りを打撃投手の球に合わせ、振り抜く。
バットに当たったボールは、先程までとは比べ物にならない程に伸びていった。
「周りの奴らが簡単に打ってるだけあって焦るのも分からんものでもないがな、力めば力むほど打球ってもんは伸びねえぞ」
そして、ドヤ顔でベンチに入って行った。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2014/11/01 17:51 修正2回 No. 99    
       
〜第30話・最速の称号〜

初夏の太陽がマツダスタジアムを照らす。
空は雲一つない青に染まり、そこに飛行機雲が線を描く。
球場にはなんと2万人を超える数の観客が詰めかけ、試合の開始をまだかまだかと待っていた。
カープ投手陣最速160km/hを誇る剛腕・工藤と、巨人の誇る本塁打製造機・井浦の対決を見るためである。

「おうお前ら、しばらくぶりだな」
ポケットに無造作に手を突っ込んだ井浦が、カープベンチの前までやってきた。
「あ、井浦、久しぶり」
飯田もバットをボックスの中へ入れて井浦に応える。
性格の違いゆえかあまり知られていないが、飯田と井浦は同期である。
「工藤さんの調子はどうよ? 俺ぁ160キロ近いスピードボールを場外にかっ飛ばすために毎日死ぬほど振ってんだからな」
「場外ってまた大袈裟だな……もし打てたら何でも奢ってやるよ」
「よーし言ったな!?」
そう言うと井浦は自分のベンチへと歩いて行った。
飯田は現在盗塁王争いのトップをひた走り、井浦は本塁打ランキング2位と好調。
今日先発の工藤は、防御率・奪三振数共に現在1位という圧巻の成績を叩き出していた。
因みに、奪三振数第2位は倉田、最高防御率2位は喜多川となっている。
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