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ロックされています  プロを目指せ  名前: 疾風騎士  日時: 2012/10/27 23:27 修正9回   
      
このHN、そして小説サイト…ずいぶん久々な気がする。正直半年以上のブランクは痛い、この小説はかつて、他のサイトで書いていたが閉鎖により保存していなかったため、残念ながらほぼ全ての話を消滅させてしまった…。
ならばここで書き直すまで…
※このスレでは私以外の書き込みを禁じます。

第1章〜氷水高校へ〜 >>1-30
第2章〜夏の大会編1年〜 >>31-65
第3章〜荻野中学編〜 >>66-82
第4章〜主戦力の穴と新戦力編〜 >>83-100
第5章〜2年生編〜 >>101-
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/08/29 13:42  No. 120    
       
第120話〜4番センター〜

「ルナ、ちょっと来い。」
黒木はベンチに戻ると吉村を呼び出す。

「お前さっきの菅原に対するリードなんなんだ?ふざけてるのか?」
黒木はいつもでは見られない珍しく真面目な口調で吉村に問う

「それは俺が聞きたいです。あそこはカーブを続けるべきなのになぜ勝手にシュートを…!」
吉村も食い下がらず黒木に反論する。

一歩間違えればお互いに殴り合いかねないほどの緊張感が二人から伝わってくる。

黒木は苛立ちを隠しながら
「あぁ?野郎が少しずつ俺のカーブにタイミングあってきてただろうが。それにてめぇは試合考えずにあの打者だけとの勝負にこだわりやがって…!試合中は私情捨てろ。バカがっ。いいか試合に集中しろ。試合を考えた配球をしろ。」
黒木は表情こそ隠しているが口調からは明らかにイラつきを隠せてない。

グラウンドに見渡すと2人が口論していると橘が出塁して3番打者の蓮本が打席に入っていた。
吉村はこの試合5番に入ってるため急いで準備をする。
準備がなんとか蓮本が凡退するまでには間に合い、荻野が打席に向かうと同時に吉村もネクストバッターズサークルに向かう

「4番、センター荻野くん」
荻野は今大会の絶好調さを買われてこの試合からついに4番に昇格した。

『今大会打率5割を超えているやつか。厄介だな…』
大木は目で橘に牽制してから荻野に対し1球目を放る。しかし汗で滑ったのかふわりと浮いてしまう

『きた。』
荻野は来た球に素直に反応しボールを弾き返す。
鋭い金属音とともに打球はまるで銃弾のような低空ライナーでライトへと向かう。打球は失速せずにそのままスタンドへと突き刺さる。
荻野はうれしそうな顔でダイヤモンドを一周する。それもそのはず。この一発は荻野の野球人生初ホームランなのだから。

今の荻野は失投など見逃すはずがなく間違いなくスタンドに運ぶ。…という雰囲気が強く。本人も今はどの球でも見えるそんな自信に満ち溢れていた。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:・スA・ス`・ス・ス  日時: 2015/09/05 02:16  No. 121    
       
第121話〜破顔一笑〜

日に日に陽が短くなり気温が下がるにつれどこかさみしさを感じる季節になってくる10月、そんな中秋大会は行われいた。

その瞬間はスローモーションに見えたのだろうか…ふわりと浮いた球をとらえた瞬間、聞いたことのない音色とともに味わったことのない初めての感触が伝わってくる。
その感触を味わった男こそ秋大会打率5割男荻野浩一である。

失投を見逃さずに勢いよく振りぬくと打球は耳を劈くのではないかという金属音とともにまるで青い空を撃ち抜く銃弾のように伸びていく

打球は全く失速することなくフェンスの向こう側にある芝生に落ちる。

回りくどい言い方をしてしまったがつまりはホームランということになる。

作物の収穫時期から実りの秋と呼ばれる季節ではあるが、今の荻野の打撃もそうなのかもしれない。
年明けから取り組んでる新フォームがようやくモノになってきたのか今大会、荻野は打ちに打ちまくってる。しかしすべて単打であった。荻野にとっては今大会いや野球人生初の本塁打、というよりフェンス直撃以上の結果は初めてだ。

荻野がベースを一周する間大木は唇を噛みしめながら荻野に打たれたところをずっと睨むように悔しそうに見つめていた。

日本にはこんな四文字熟語がある。喜色満面、破顔一笑。どちらもうれしさを表す熟語だ。
いまの荻野はまさにこの言葉通りの笑顔を見せる。

吉村が打席に入る、夏の大会では大木はこの吉村に被弾した経験がある。大木は警戒しながら吉村に相対する。しかし、二球目をとらえられる。鋭い金属音とともに荻野とは異なり大きな放物線を描く打球はわずかに切れて、ファールとなる。

吉村は捉えそこなったのかバットで軽くヘルメットにコツンと叩く。
命拾いした大木はもう打たれるわけにはいかないと吉村をねじ伏せに行く。

大木に全く歯がたたず吉村は落胆した顔でベンチに戻る。
吉村は守備に備えてプロテクターをつけていると黒木が歩み寄る
「ルナ、次の回からアレを交える。ぜってぇ勝つぞこの試合はぁ!」
黒木は何かを吉村に告げるとマウンドへと先に向かう。
吉村も黒木が何を指しているのか瞬時に理解し顔色が変わる。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/09/05 02:37  No. 122    
       
第122話〜解禁、魔球という名の変化球〜

やや肌寒い風が舞う。しかし今日は風が強い。

「5番、レフト二宮くん」

二宮はお辞儀してから打席に入り黒木と相対する
『ちっ、この試合も先制されたか…決してこいつらは弱くチームじゃねぇんけどよ。2試合続けてこいつらに先制されんのは洒落になんねぇぜ…!』
二宮は先制され追いかける展開を好ましく思わないようだ。

黒木はボールこそ荒れているがなんとか追い込む。

『黒木さん、ここで使いましょうよ』
吉村は二宮の方を一度見てからサインを送る

黒木は頷き一息おいてから投球動作に入る。
『いくぞ、この球はどこにいくかだなんて分かんねぇ、投げる俺もなぁ!』

『何を来る、くさいところならカットして甘い球をまつぜぇ』
二宮はグッとバットに力を入れる。

黒木から投じられたボールはふわりと浮く
二宮はしめたと思いその球に対してふりに行く、しかしボールには当たらず空を切る。

「ットライーク!バッターアウト!」
審判が三振をコールしスコアボードには赤いランプが一つ点灯する。

二宮は顔面蒼白に近い表情でベンチに戻る。

黒木が二宮に対して投じた勝負球、この球にスタンドはどよめく。東海大平沼側からはなぜ超スローボールで空振りを取られたのかと。

「6番サード、小笠原くん」

小笠原は左打席に入り黒木の投球を待つ。

黒木が足を上げると同時にスパイクについている砂が少し落ち、足を着地すると同時に右腕からボールが勢いよく放たれる。

小笠原は初球をフルスイングで捉えに行こうとする。しかしバットは二宮同様空を切る、そして思い切りがよすぎて小笠原は尻もちをつく。

恥ずかしそうに小笠原は立ち上がり打席に入り直し、黒木を見る
『間違いない、あの球は現代の魔球”ナックル”だ。ちっ、まさか生の目で見ることになるとはな…』
小笠原は謎のスローボールの正体を見破るが初見では難しいと言われるナックルの攻略法は瞬時に思いつかず、凡退してしまう。
ナックルを解禁した黒木はストレート主体の投球にナックルを完全に入り混ぜて東海大平沼を粘られるときはあるもののほぼ完璧に封じ込める。

そして試合は0−2のまま動かず8回を迎える。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/09/05 03:05  No. 123    
       
第123話〜魂の投球〜

白熱した秋の神奈川県大会決勝戦もいよいよ終盤だ。

順調にいけばあと6つのアウトで試合が終わる。

しかし野球というスポーツは思うほど簡単に終わるスポーツではない。相手が格上であるなら格上であるほど…。

「9番ピッチャー、大木くん」
黒木と投手戦を繰り広げる東海大平沼のエース大木が打席へと向かう。

黒木は吉村のサインに頷き投球動作に入る。オーソドックスなフォームから大木に対して第1球目を投じる。
しかし、狙ったコースからは逸れてしまう。2球目も逸れてしまった。

黒木は苦笑いを浮かべ、ロジンを手に付ける
『っべ、マジっべ〜握力が…ヤッベな…こいつわ』
黒木は顔を上げ軽く右腕を握ったり開いたりを繰り返す。

大木は黒木の入ってくる球をカットしながら甘い球を待つ。

『いい加減に打ち取られろよ!』
黒木は大木に対して9球目を投じる。

しかし甘く入り大木は失投を見逃さず振りぬく。打球は鋭い速さでフェンスに直撃する。荻野は打球に追いつくと素早く体を反転させてセカンドの橘へと送球し、大木をセカンドに進ませない。

返球を待つ間黒木は明らかに肩で息をしていた。明らかに疲れているのである。

『ルナ、気持ちはありがたい。だがナックルを封印してこいつらを抑えられるわきゃねぇだろうがよ…』
黒木は少し笑みを浮かべる

しかしヘロヘロの黒木には抑えるすべなど残ってない。原には3球目を思いっきり引っ張ったたかれ一塁の横を破っていくライトの松島が捕球するとセカンドの橘に送球し、橘も思いっきり送球する。
橘の送球に驚いた大木は無理をせずに三塁で止まる

『畜生、なぜ打たれるんだよっていうかなんで思い通り球がいかない…いやもうこれ以上は打たせない。こいつらには負けるわけにはいかねぇんだよ!』
黒木は吉村にマウンドに来るなという仕草をして打者が打席に入るのを待つ

黒木は中畑が打席に入るのを待つ。

黒木は頷き肩からセカンドランナーを見てから中畑に対し投げ、簡単に追い込む
『くそ、投げる球は力が落ちてるのになぜうてん…』
中畑は顔を曇らせる。

黒木は投資を全面にだし、腕よ千切れよと言わんばかりに思い切り腕を振り続ける。8回はピンチをしのぐと自然とガッツポーズが出てしまった。最大のピンチを凌ぎ、最後は高橋を打ち取ると黒木はマウンドで笑みを浮かべた。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/09/13 18:35  No. 124    
       
第124話〜神奈川の頂点、そして力の差〜

黒木にもはや力など残ってなどいない。なのにボールは力強く。ガン以上の速さを感じる。東海大平沼の各打者は黒木の球に差し込まれる。

何を黒木を奮い立たせているのかそれは謎だ。ただ一つだけ言えるのは黒木が負けず嫌いで勝ちたいという気持ちはチームで一番強いことだ。

ハァハァと肩で息しながら吉村の出すサインに頷く。

一息つき、黒木はゆっくりと足を上げると同時に打者もグッと構えに入る。

足をつき、右腕を思いっきり鞭のように振ると同時に白球は砲丸のように放たれる。
高橋は待ってましたかと言わんばかりに黒木の投じたラストボールにジャストタイミングで振りにいく。

次の瞬間聞こえるはずの金属音は奏でられることはなかった。かわりに聞こえてきたのはパァンという革の音とバットが空を切った音だけだった。

タイミング狙いはあっていた。しかし黒木の投じた渾身の1球に完璧に振らされてしまった。黒木の最後の球は高橋のバットから逃げるかのようにホップするかのように吉村のミットに収まった。
黒木は試合が終わると少し笑みを浮かべる。黒木だけではない、氷水ナインは全員笑みを浮かべていた。それもそのはず。秋大会とはいえ関東大会に進めたのだからいや優勝したからだ。


氷水は神奈川1位東海大平沼は神奈川2位で関東大会に進むことになった。
10月下旬、肌寒くなってきた季節、この時期に関東大会は行われる。この年の会場は千葉県である。

第1回戦は山梨1位通過の大月総合だ。チームの特色としては氷水同様守り勝つ野球が持ち味。

さて、試合会場はプロ野球球団千葉ロッテマリーンズの本拠地でもある千葉マリンスタジアムだ。会場の中に入ると氷水ナインは目を輝かせるかのように球場内を見渡してた。
季節柄そして風も強く実際の気温より寒く感じる中試合が始まる。黒木はこの試合力を発揮する。黒木の緩い変化球は風の恩恵も受け、いつもより変化を増していた。

7回表、黒木の失投は真ん中に入り相手の4番打者はそれを見逃さずにスタンドまでいとも簡単に運んだ。

黒木は悔しそうに下唇を噛みしめながら新しいボールを受け取る

その後もめげずに必死に好投を続ける黒木。しかし神奈川という壁を乗り越えたが関東という壁にはるかに厚かった。
氷水は接戦の末僅かの差、一発の差で大月総合に敗退した。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/09/20 00:57  No. 125    
       
第124話〜紅と黒〜

出る人そして来る人はたまた帰ってくる人とあらゆる乗客を乗せる飛行機。
愛着のある風景を噛みしめながら飛行機に乗るものもいれば懐かしき風景を楽しみにしながら降りるものもいる。もっとも飛行機に限ったことではないが…

ある男は空港で手続きを終えると在来線ホーム方向へと歩く。
電車に乗ると男はすぐに目を閉じる。

「京急久里浜〜京急久里浜〜」
男は間延びした車内アナウンスに気付くと荷物を持ち、電車を降りる。

電車を降りると赤い電車は「ファソラシドレミファソー」と音を鳴らしながら発車していった。
本来特に気にすることのない音だが、よほど懐かしいのか最後の音程まで聞いてから男はホームを後にする。

駅前に立つと大きな駅ビルや駅前に広がる雰囲気を美しい秋空と懐かしいように楽しむように足を止める。

男は駅を後にすると20分弱道を歩き、高台へと出る。目の前から見渡す景色は絶景である。きれいな海と富士山が見える。

いつ見ても見飽きないそんな美しい景色だ。
男は大きな家の前で足を止める。その表札には「紅」と書かれていた。
表札から察する通りこの男の名前は紅優生(くれないゆうせい)だ。

シニアでも抜群な成績を残し数多くの強豪名門校から誘いを受けたにも関わらず、本人はその誘いに嫌気を感じたのか全て断り学力で評価してくれた氷水を選択した過去を持つ右腕だ。しかし、1年の夏に肘を壊しチームを離れ系列校に留学扱いでずっと治療していていた。

「ちきしょぉ!油断した、くそっ。」
黒木は真っ赤にした顔で俯きながら悔しがる。

紅が帰国した同刻、千葉マリンスタジアムでは関東大会が行われいた。試合は0-1で惜敗。守備型チーム通しの試合ではあったが。わずかにそうほんのわずかに相手の守備力が上回っていた。その紙一重の差が大きな差だった。打たれたのも秋風に乗った一撃のみ、失投もその一つだけとなると黒木が悔しがるのも無理もない。

「…黒木くん、僕たちにはまだ一回だけチャンスが残ってる。3年の夏は…3年の夏こそ行こう。力をつければ絶対に行けるから」
荻野もショックだったのか試合が終わった直後は一言も発しなかったがようやく黒木を励ますような一言を述べる。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/10/16 22:07  No. 126    
       
第125話〜エースの帰還〜

休日練習の真っ只中野球部専用グラウンドからは熱気の籠った練習風景が垣間見える。

「しゃあ!おらぁ、次カットいくぞ!ルナァ!」
黒木は気合入れて吉村相手に投げ込みを続ける。

その球は先の試合で惜敗した悔しさをぶつけるような感じだ。

「あー、練習中すまない、一度全員集合だ。」
大橋は手をパンパンと二回叩き部員を集める。大橋の隣には一人見覚えのある大柄な少年が立っている

「2年は知っている人はいると思うが本日より一時チーム離れて入れたいた紅優生が復帰する。」
大橋は手短に用件を伝える

「……自己紹介は苦手だ。だがおそらく1年生は俺のことを知らないと思うから改めて自己紹介しておこう。知らない顔の2年部員も増えたようだしな。
…紅優生。2年1組。右投げ左打ち。ポジションは投手。以上だ。」
紅はいつもの冷たいトーンでごく短く自己紹介を済ませ軽くお辞儀を済ませると部員のいる方にゆっくりと歩いていく。

1年部員は紅の短すぎる自己紹介に拍子抜けしながらも拍手を送る。

練習再開前吉村は紅のもとにかけよる。
「紅、さん。あんたってあの紅優生さんだよな。同姓同名の別人じゃねぇよな!?」
吉村は目をキラキラさせながら紅に問う。

紅は鼻でフッと笑い
「だったら、どうする。くだらん。名も名のならずに質問するな。気が散るとっとと練習へ戻れ」
紅は冷たく鋭い目つきで吉村に言い返す。

吉村は肩を落とし引き続き黒木のボールを受け続ける。

『……あのバカが。こんないい球投げるとは……いや、雰囲気がかわったと言った方がいいか。こいつも昔から投手やってるしそこそこのモノはあるのだろうな…まだまぐれとしか思えん。だが。』
紅は隣で投げる黒木を一定の評価をしながらもまだ低評価を下す。

「紅先輩っ!いつでもどうぞっす」
吉村と同じ1年捕手の片桐が紅に声をかける

『…まぐれとしか思えんが、この俺がこっちで今どれだけのボールを投げられるかそれもまだ不明だ。』
紅はゆったりとした独特のフォームに入り右腕からボールを放つ―――
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/10/16 22:27  No. 127    
       
第127話〜紅の苦難〜

「…やはりか。」
紅はボールの軌道を自分に呆れるように見ながら発言する

紅から放たれたボールはストライクゾーンに入り威力はあったが片桐の構えた場所からズレる。

「ナイスボー!」

「試合じゃあ使えないがな。『…大体は想定していたがここまで弱まっているとは…。疎かにはしていなが坂がない分か』」
紅は冷静に自己分析をしながらボールを受け取る

紅の隣で投球練習を続ける黒木は面白いようにボールを投げ続けるが紅は自分の投球に集中しようとするがある球に目が留まる。

次の日紅はシートバッティングで紅優生の現在の弱点が露呈する。

「…いくぞ」
紅はそういうと独特なフォームから橘相手にボールを投げ込む。

橘は反応できずにミットから鋭い音が聞こえてくる。
その音にゾクッとしながら橘は2球目を待つ。
2球目もミットから快音は聞かれるがボールは外れる。

橘は3球目を打つが紅のパワーボールの前にあえなく力負けする。

「次、荻野!」
大橋が荻野の名前を呼ぶと荻野が打席に入る

「………久しぶりだな、オギ。俺がいない間の情報を俺に伝えてくれたのは感謝しよう。だが今は別だ。本気でお前を潰す気で行くぞ」
紅は鋭く荻野を睨みつける。その視線は捕食者が獲物を見つけたかのような鋭い視線だ。

荻野は紅から放たれた初球をいとも簡単に弾き返す

紅は顔にこそ出さないが自分に対して新たな疑念が浮かび上がる。

紅はその後投げ続けるが右打者は完璧に封じ込めるものの左打者には悉く弾き返される。

『おそらく、今の俺のフォームはオギや松島みたいな左打者からしたら絶好のカモなのだろう…。その原因は恐らく…』
紅は自分がなぜ左に打たれるのか考えながら荻野の2回目の打席に投げる

荻野はその様子を見ながら
『優生君、すごい投手だよボールに力がある。でも今の君のフォームだと僕たち左打者からしたら最高のカモなんだよ、いくらボールに力があってもさ。』
荻野は紅と同様の分析をしながら2回目の打席でも紅の球を完璧に弾き返す
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/10/20 22:45  No. 128    
       
第128話〜浩一と美歩〜

ある日曜日、この日は久々に練習がなく荻野は家でくつろいでいた。

自室で雑誌を読んでると。隣部屋荻野の義理の姉である美歩の部屋から楽しそうな声が聞こえてくる

「…ふふっ。もう。…ところで、そっちはどうなの?調子はどう?…ん、そう。私も元気。そうね。再来週とかどう?ん。おっけじゃあその日に…」
荻野は聞き耳を立てるわけではないが思わず聞いてしまった。
正直聞きたくなかったが聞いてしまった。

荻野はその後部屋を出てリビングに向かおうとするとばったり美歩と出くわす。

美歩は荻野を見ると優しく微笑む
「あ、おはよ。こうくん。何か飲む?」
美歩は部屋から出てきた荻野に話しかける

「お姉ちゃん。おはよ。あーうん。チョコレートドリンク。」
荻野は美歩の笑顔を見ると子供みたいな笑顔で答える。

荻野が美歩とリビングでお茶をしながら久しぶりに話す。

「ねぇ。こうくん。最近部活動どう?」
美歩はティーカップを持ちながら荻野に話しかける。

荻野は少し間をおいて
「最近…夏大前から練習が毎日ハードだよ…。帰ってきたらお姉ちゃんはお風呂か寝てるかだしたまに僕が休みだとお出かけしてたからこうやってゆっくり話すのって久しぶりだね。」
荻野は言い終わると美歩が作ってくれたチョコレートドリンクを飲む。

「うーん。うん。確かにそうかも。こうくんも随分体つきよくなったんじゃない?それだけ練習がハードってことじゃないかな?がんばれよ野球少年。応援してるぞ。」
美歩は荻野の体を見渡した後に荻野にエールを送る。

荻野は照れ隠しをするようにチョコレートドリンクを一気飲みしようとする。荻野はチョコレートドリンクを飲みながら美歩との楽しい時間が続けばいいのになと思っていた。美歩に男がいてもおかしくない年齢。というか恐らくいるのも覚悟している。でも何故かそう思うと嫉妬してしまう。荻野からすれば自分以外の人間が姉に甘えてほしくないという感じなのだろうか。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/10/25 11:00 修正1回 No. 129    
       
第129話〜冬場の猛練習〜

冬、練習試合が禁止となり実戦練習や筋トレメインの練習となる。

「そっちの方は頼んだ。」
紅は部室の前で荻野に声をかけるとジャージ姿で学校外の方へとランニングしながら向かう。

「待てよ、ゆーせー。どこいくんだよっ」
黒木もジャージ姿で紅にメンチを切るような言い方をする。

紅は黒木の声に気付き振り向く
「走ってくる。校内じゃあ狭すぎる。」
紅は手短に言うとすぐにランニングを再開する。

「あぁ?てめぇ一人で走らせっかよ。んな理由で学校外走るなら俺もついていく。ちょうど俺も走ろうとしていたところだかんな。」
黒木はそう言うと紅についていくように走りだす。

「勝手にしろ。」
紅は黒木に差を縮められないように先行する。

橘はその二人の姿を見ながら呆気を取られる。
「クレが戻ってきてからのタカまたさらにすごい気迫だよね。あそこまで熱い奴だったっけ」
橘はチャラチャラしていた時の黒木を頭に思い浮かべているのかギャップに驚いているようだ。

「それは、僕も思うけれど。彼らに負けてられないな…。じゃあこっちも練習始めよう!」
荻野は紅と黒木のやり取りに燃えたのかいつもに増して気合を入れた声で言う。

そのころ2年投手コンビは学校の外をランニングしてた。

『優生の野郎…あいつ先に行きやがって…。』
黒木は紅に追いつくようにペースを上げる。

みるみるうちに差が縮まり紅に追いつく

「…追いついたのか。まぁ俺に合わせるか自分のペースで行くのかは勝手だが今みたいな加速はやめろ。体力切れ引き起こす」
紅は追いついた黒木に少し驚くと同時に黒木に忠告する。

「っせえ!つーかなんでてめーはオギ達と筋トレ選ばなかったんだよ。教えろや!」
紅にメンチを切るように問いただす

紅はため息を一つつき
「俺についてきたお前がそれを言うな。そして後で答えてやるから黙れ。余計疲れる」
突き放すように言うと目的地まで沈黙が続く

とある小さい山のところまで来る。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/10/25 11:25  No. 130    
       
第130話〜投手コンビ〜

2人は足を止めると息をはぁはぁと苦しそうにする。

「黒木、体力ねぇなお前。」
紅は死にそうな顔になってる黒木の顔を見る。

「あぁ?そういうお前も俺がいるのか知らねぇけどよ闘争心燃やしやがって。クールぶりやがって。闘争心ぐつぐつじゃねぇか。案外」
黒木は少し笑みを浮かべながら問いただす。

「うるさい。ほらよ。」
紅は自販機で二つ同じ飲み物を買い一つを黒木に投げる。

「お、おう。サンキュー。」
紅が本来そういうことするはずがないと思っていたのか驚愕する。

本来なら冷たく凍えるような真冬の風が走って火照った体には気持ちよく感じる。

「…黒木。走ってる時にお前俺に聞いてきたな。何故学校外を走るのか、と。」
珍しく紅から口を開く。

「学校内が狭いのは事実だ。だがまぁ今日は流石に走りすぎたが。それに確かにお前も含めて筋トレという手もあった。だが、今の俺にはそれ以前に根本的な欠陥があった。黒木、同じ投手なら分かるだろうが。今どう見える。」
紅はスポーツドリンクを片手に持ちながら黒木に問う。

「俺から見た今のてめぇってか。アメリカから故障していたエース様が帰ってきてよボールには威力あるし初めてお前と会った時と変わってないように思えた。だがそれは右打者んと気だけだ。俺は右打ちだからよ打席からどうみえっかなんて分かるわけねぇけどよ。投げてっ時に後ろから見たらよ左からは見やすく感じるしよ…それに」
黒木はスポーツドリンクを飲んで一息おいてから口を開くも途中で紅に静止される。

「ああ。今の俺は対左に弱い。この間の練習試合のように弱いチームの左なら気にせずに圧勝できる。さらに今の俺は下半身が弱っていてフォームに一定の安定感がない。流石になめていた。それが理由だ。逆に問おう。なぜついてきた」
紅は黒木の疑問に答えると逆に質問する。

黒木は間抜けな顔をするがすぐに元に戻り
「負けたくねぇんだよ。夏と関東大会で屈辱味わって自分にいろいろ足りてねぇからレベルアップしてぇんだよ。…それにてめぇにもよ。簡単にエースナンバーを奪われてたまるか。」
黒木は空のペットボトルを力強く握りしめる。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/10/30 22:30  No. 131    
       
第131話〜思いは同じ〜

黒木が紅に向かって負けたくないと発言した後沈黙が続く

「…俺に?」
決してバカにしているわけではないが何言ってるんだ?というトーンで口を開く

黒木は一瞬キッと紅を睨む
「ああ、誰にも負けねぇ。どこにも負けたくねぇ。例え相手がてめぇみたいな化け物でもな。」
語気を強める

寒空の中冷たい風が吹き抜ける

「…化け物扱いはやめろ。確かに俺はそう呼ばれていた。だがそれは故障前。いや故障関係なくとも過去の産物だ。称号とは結果を出せなければ過去の栄光にすぎない。それを維持したければ結果を維持しなければならん。だがそこで妥協しては成長などできやしない。俺はさらなる高みへと進む。…とはいえ今の俺にとっては過去の栄光に縋る立場だろう。さらなる高みへは俺でも果てしなく遠い。……負けたくない、か。お前とは考え方も価値観もすべてあわないと思っていたがそのスタンスはどうやら同じみたいだな。だが言うだけは簡単。その負けたくないという覚悟、答えを俺に見せてみろ。黒木。」
紅は過去の栄光を拒絶しさらなる高みを目指してることを口にする

「けっ、やけにおしゃべりじゃねぇか優生ちゃん。ああ見せてやるよ。俺の力をよ。夏の大会はベンチで出番待ってろよこの凋落エース。校外走るならいつでもついていくぜぇ。」
黒木はビシッと決めるように紅の方に指さす

「…ふん。勝手について来い。…戻るぞ。」
紅はベンチから立ち上がるとゴミ箱にペットボトルを捨て黒木を待てずに先へと進む。

『…見てくれのスピードと直球の勢いは少しずつ戻ってきているが、まだまだ程遠い。変化球もまだイマイチ。一先ず下半身を完成させないと意味がない。……己に対する課題はたくさんある。そしてそれを夏前までにすべて克服しなければならない。』
夕陽に照らされる坂を下りながら紅は改めて己に対する課題を認識しそれを克服するつもりでいる。

『まーーた先に行きやがってあの野郎。いっつも俺の先を行きやがって。ぜってぇに追い越してやるからな畜生!』
黒木は紅の後方を走りながらいつまでたっても追いつけない紅の背中を睨む。

この2人が肩を並べられる日は来るのだろうか。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/11/02 22:40 修正1回 No. 132    
       
第132話〜地獄ノック〜

紅と黒木が外を走ってる間野手陣がグラウンドで練習をしていた。

「あの2人どこまで行ったんだろうね。オギ」
橘の話す口から寒さの影響で白い息が出る。

「さぁ、でもクレに付き合うってことは相当長い距離だと思うよ。」
荻野は寒がりの為、ユニフォームの下に厚めのアンダーシャツを着込み、ネックウォーマーで口元まで覆ってる。

パシィンと荻野の投げたボールが橘のグラブに響く。

「って〜。でもいいボールじゃん。コントロールよくなってきた?」
橘は一瞬痛みで顔をしかめるがすぐに荻野に返球する

荻野はムスッとしながら橘のボールを受け取る
「外野にコンバートされてからはコントロールはいい方だよ。」
荻野は思わず力強く投げてしまう

「そろそろ体があったまってきた頃合いだろう。野手陣、集合だ。」
大橋がグラウンドに残ってる野手陣を呼び寄せる。

大橋は一つため息をつく
「優生と隆之が外に走りにいってしまい残ってる投手は赤田だけだが、赤田も含め。本日はノックを行う。…だが今日のノックは地獄だぞ?」
大橋はニヤリと笑う

残ってる部員は大橋のニヤリとした笑顔にゾワッとする。

「まずは内野ノックからやるぞ。正規ポジションのものは自分の守備位置につけ。それ以外のものは好きな位置入れ。ただし荻野赤田。お前たちはファースト固定だ。」
大橋はノックバットで素振りしながら言う

まずはサードからだ。

佐藤の元へ打球が飛ぶ。しかし打球の速度から佐藤は目をつむり逸らしてしまう

「なにやってんだサードぉ!目ぇ瞑ってんじゃねぇ!体で止めるぐらいの勇気見せろや!おらぁもういっちょいくぞ!」
佐藤の行動に激怒する大橋。

だが、佐藤が取れないのも無理もない。ノックという次元の打球速度ではないからだ。
「は、はい。すいません!」
大橋の鬼の形相を見るや否や涙目になる佐藤。
その後佐藤は恐れながらも捕球し送球する。他のメンバーも苦戦しながらもなんとか捕球し送球する。

『ノックとかそういう次元のスピードじゃないけど僕なら一発で』
橘は他のポジションのノックを見ながら自分の守備能力と照らし合わせそう感じた。

「次、セカンド行くぞ!」
大橋は次はセカンド方向に打つことを明言する。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/11/02 23:06  No. 133    
       
第133話〜守備難一塁荻野〜

「『来る!』お願いしまーす!」
橘の元気な声が響き渡る。

大橋がバットに当てセカンド方向に飛ぶ。
橘が取りにいこうとした刹那打球はイレギュラーバウンドを起こし、橘派逆をつかれ必死に手を伸ばすが取れずに打球は外野方向に抜けていく。

予測していた打球と違う打球が来て愕然としている紅を無視するかのように大橋は次の打球を橘にめがけて放つ

2球目は捕球する
『回転が変に…』
橘は一塁に送球しようとするも変な回転がかかったグラブにしっかりと収まっておらずファンブルしてしまう。

「橘ぁ〜おめぇよぉ。サードとショートと同じ打球が来ると思って油断したろ。予め予測のできる打球はある程度簡単さ。だが試合ではありとあらゆる打球が飛んでくるんだぞ、守備が上手いからって調子に乗るんじゃねぇぞ。もう一本いくぞ」
大橋は入部当初から橘に対してだけは異様に厳しい。その結果伸びてきているのもあるが…

橘は3球目をなんとか捕球し一塁に送球する。

次は一塁だ。荻野はなんとかとり二塁に送球しようとするがものの見事に送球が大きく逸れてしまう

「オギ、だからなんでっ近い距離がダメなんだよ。」
セカンドの橘は荻野の送球を取ろうとめいいっぱいジャンプするが届かず外野へと飛ぶ。

「しっかり送球しろや!オギ!」
大橋からも怒号が飛ぶ。

荻野はその後送球を意識し始めたのか打球をしっかりと確保できなくなる。

『くそ、送球を意識すれば今度は捕球が…内野ってこんなに難しいんだ。』
荻野は自分のファーストの下手さに呆れながら6球目を待つ。

6球目を何とか捕球し、送球もわずかに逸れるが情けで赤田に回る。

赤田は通常ノックだけではなく。ベースカバーの練習も行う。

一二塁間を抜けそうな打球を橘が捕球し、マウンドに一時的にたった赤田がベースカバーに向かわなければならないのに赤田はボサッとしてベースカバーを怠る。

その光景を見ていた周りは覚悟を決める。鬼の前で緩慢なプレーをしたのだから。

「赤田、俺なんて言った?言えよ。俺がお前に対してなんていった?ついさっきだぞ。」
大橋はドスの効いたトーンで赤田に問い詰める。

「…ベースカバーに入れと」
赤田は小さくぼそぼそと答える。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/11/03 11:46  No. 134    
       
第134話〜鬼軍曹・大橋徹〜

「分かってるじゃん。じゃあなぜ入らなかった。投手失格だぞ。野球なめんのもいい加減しろ!気ぃ抜くのがお前の悪い癖だぞ、赤田ぁ。もう一本行くぞ!」
大橋は再度一二塁間に強い打球を放つ

橘は快足を飛ばし打球になんとか追いつき、体をうまく反転させて送球する。
『ちょ、さっきより強烈…僕に当たるなよ。監督』

しかし赤田はタイミングを合わせられずしっかり確保できない。

橘はそその後赤田と息が合うまで左右に走らされる。
その後全員ノック受け終わると息を切らしてグラウンドに座り込む部員たち

「『…まずいな、ファーストが一番の穴だ。いくら守備特化にしてもファーストが穴ならば何の意味もない。新入生に期待するかそれとも一塁の諸口にこのまま期待するか。だが奴の守備センスでは鍛えてどうこうなる問題ではない』少し休憩の後は次は外やノックだ。冬場の練習がこれからこの練習がメインになることを覚悟しておけ。」
大橋は部員に言うとタバコ吸いに一度離れる

部員たちは大橋のほぼ毎日ノック練習宣言にブーイングをしたいがもはやそれをする気力がないぐらいに疲れ切ってた。

「あのおっさん、うれしそうにノック打ちやがって。ドSかよあのおっさん…」
松島はグラウンドでくつろぐように足を延ばす

「大橋の野郎は人一倍守備には厳しい。特にカズ、お前がそれを一番知っているはずだ。」
稲本は肩で息をしながら橘に話しかける

橘はなんのことか理解できずに首をかしげる。

「お前がわからなくてどーすんだよっ。たく…俺の親父と大橋は大学時代同じチームだから聞いたことある。もともと打撃が課題なんでな、生き残るために死ぬ気で守備を磨きに磨いた。そしてチームに欠かせない選手にまで成長した。だからこそ守備練には人一倍厳しいんだよ。それにあの人の現役時代のポジションはカズ、お前と同じサードセカンドだ。だからお前には他の誰よりも厳しくされてんだよ。」
稲本は親から聞いた話をそのまま橘に話す。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/11/07 00:50  No. 135    
       
第135話〜橘と荻野〜

気が付くとあたりはすでに暗くなっており、時計も21:00を指していた。大橋から練習終了と言われるとへとへとになりながら部室に向かう部員たち。しかしユニホームや顔は泥だらけ、相当大橋にいじめられたというのが目に見えて分かる汚れ具合だ。

「オギ、この後暇?」
橘はユニホームを脱ぎアンダーシャツ姿で荻野に話しかける

荻野はYシャツを着た後携帯画面で髪型をいじりながら橘の声に気付く
「暇だけど、なに?」
荻野は返答しながら携帯をブレザーにしまう。

「よっしゃ、じゃあごはん食べにいこーよー。駅前に新しい店できたんだ。」
橘はニコニコしながら言う

荻野は暫く考えたのち橘の方を向く
「えっと…あの店、か…。僕も行きたいと思っていたし。いいよ」
荻野も橘が行きたい店がわかるのかあっさりと肯定する。

練習が終わったというのにきつい坂を下り、長い道を下るのはさすがに気が遠くなる。でもくだらなければ帰れない。そんな僻地にある学校だ。それが運動部の強い証拠なのかもしれない。

「寒っ」
部室の外に出ると思わず声に出てしまう。

練習中は気が付かなくても練習が終わり帰る頃になると冬の寒さに改めて気づかされる。

何分か歩きようやく駅前に出ると、つい最近開店した店に橘と入る。

荻野たちは店員に案内され、空いてる席に座り、メニューを注文すると運ばれるのを待ちながら話しこむ。

「…別にいいんだけどさ、練習が長いと茜ちゃんと帰れないのがちょっと不満だな。」
荻野は急に何を言いだすかと思えば茜のことだった。橘といるときはいつもこういう話をしているのか何の戸惑いもなく橘にボソリと言う

橘は一瞬真顔になった後以前の顔に戻る
「オギってば。僕といると絶対に1回は神原さんのことぶちこんでくるよね、でも仕方ないだろ。練習長いと終バス終わるし、そもそも距離遠いし、僕たちと歩いても内心不安だと思うしね。街灯の少ない通りだし…」
橘は橘でいつも通りなのか荻野に素早くツッコミいれる。
「でも、オギ。僕が君を呼んだのはいつも通りのこういう話をするためじゃない。前から疑問だけど外野からはいい送球するのになんで内野だと送球が大きく乱れるんだ?」
橘は真剣な顔で荻野に問い詰める。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/11/07 01:10  No. 136    
       
第136話〜投手荻野〜

荻野は言いたくないからか言い訳の手段を何通りか瞬時に考えようとするが真剣な顔で問いただしてる橘から逃げきれないと悟りあきらめて口を開く。

「…元々投手やってたって言ったよね?」
荻野は暫く沈黙した後にようやく口を開く

橘は聞いたことあるよと肯定するように頷く
「…うん、途中で外野に回されたというのも、まぁその時点で投手として失格なのは分かるけどでも、それが僕の聞きたいことと何の関係が?」
今度は首をかしげる。

「関係あるさ、その投手失格になったのは制球難なんだ、まぁそれでもその時は近距離の送球ができていた。ただ中学2年の大会でさ、いつも通りストライクが入らなかった。まぁそれはいいんだけど…よくないけどね?ただその試合でさバントされたんだ、僕の目の前にその打球を処理した際に送球エラー。試合展開的には痛恨のエラーだったさ。あのエラーがなかったら僕たちの中学校が勝ってた。で、その送球の逸れたボールが打ったバッターの後頭部に直撃しちゃって…なんともなかったとはいえその後暫く動けなかったんだ。で、もうその後はストライクがさらに入らなくなったし…それに送球が恐くなったんだ。また送球エラーして負けたらどうしよって…そう考え始めたら送球がめちゃくちゃになってさ…何言ってるのか分からないかもしれないけれど近距離の投げ方を忘れたし今でも投げ方がわからないんだ。外野からなら距離遠い分ぶん回しの送球はできるけれど…」
余程思い出したくないトラウマだったのか荻野は話してるうちにだんだん涙目になっていった。

「うわ相変わらずメンタル弱ぇ〜。でも教えてくれてありがと。それっていわゆるイップスじゃないの?知らないけど。でも内野に入ってる時はしっかり送球してくれないとこっちが困るっての。僕相手ならぶつけてもいいそう言う覚悟で明日から送球してみてよ、大丈夫、安心しろよ。この橘様なら体に当たりそうな送球はなんなく捕球してあげるから、さ。」
橘は涙目になってる荻野を半ば慰める言い方をしつつしっかりと指導するところは指導するそんなスタンスで荻野に言う。
荻野も橘も高校生としては幼い顔たち雰囲気のためはたから見れば仲のいい中学生同士が慰めあってる光景に見えるだろう。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/11/07 11:25 修正1回 No. 137    
       
第137話〜紅兄弟〜

練習が終わり、帰宅する時でさえも紅はジャージ姿で走って家に帰る。学校から紅の地元まで10km以上あるのだから周囲も唖然とするしかないストイックさと練習好きさである。

紅は家に帰ると自分の部屋に戻りフゥーと息を吐く
しかしゆっくりする間もなくコンコンとドアを叩く音が聞こえる。

「兄さん、お疲れさま。あのさ…受験勉強で分からないところがあるから教えてほしんだけど」
ドアを叩いたのは紅の実弟の祐樹だ。

「…祐樹か、いいだろう。お前の部屋に今行く」
紅は机にいれてある筆箱とノートを取り出し、祐樹の部屋へと向かう

紅は祐樹の部屋に入ると少し言葉を失う
「…祐樹、毎度言ってるが少しは部屋をきれいにしろ。汚すぎる。…まぁそれはいい。で、どこがわからない?」
部屋をきれいに使う兄・紅優生からすれば弟の部屋が汚いのは頭にきたような怒気が若干籠った声になる。

「あ、うんここなんだけど…」
祐樹は問題集のページを指さす。

紅は問題集をのぞき込むように見て
「…ここか。古文できないとうちには入るのはまず厳しい。…だが、祐樹お前はなぜスポーツ特待生のないうちを選んだ。お前のシニアの実績なら横須賀松陰あたりぐらいからは推薦来るだろ。」
紅は俺の得意分野だと言わんばかりの顔をした後に何故自分と同じ高校を受けるのか問う

祐樹は頭をポリポリした後
「確かに俺は兄さんと違って頭よくないしというか頭悪い方だし、確かに中堅クラスの横須賀松陰や秦野、京都の嵐山から推薦は来た。でも、俺一度も兄さん。あんたと同じチームで野球をしたことがない。最後に1回ぐらい、兄さんと同じ高校で同じチームで野球をしたいんだ!」
祐樹は自分の思いを兄にぶつけるかのように紅を見つめる。推薦を蹴ってまでも苦労して勉強してでも兄と野球がやりたい。その気持ち、熱さは本物だ。

「そうか、甘ったれた動機だな。
それにお前の学力じゃあ死に物狂いで勉強しないと入るのは確実に不可能だ。だが甘ったれた動機ではあるがそこまで言うなら兄としてそして4月から先輩となるかもしれない存在としてサポートしてやる。
前も言ったが俺が教えている途中で弱音吐いたら許さん」
紅は実の弟に対しても冷たく突き放しながらもなんだかんだ言いながらサポートすると一定の優しさを祐樹に見せる。
その優しさは野球部は誰も知りやしない優しさである
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/11/08 16:31  No. 138    
       
第138話〜女子たち〜

冬休み最初の日曜日、この日は練習がオフのため荻野は家でだらだらしながら携帯をいじり、誰かに電話をかける

「それでさ〜。…あ、ごめん。電話。…あ、また浩一君からだ。」
電話の相手は茜だ。茜は携帯電話に表示される相手の名前を見ると一瞬嫌な顔をする

「また荻野くんから?最近ちょっとしつこいんじゃない?」
茜の友達である甘奈は茜の嫌な顔を見るや否や声をかける。

「うん…。あ、浩一君?電話なんてどうしたの?え、今日暇?ごめんね、今日ちょっともう予定があるんだ。ごめん。また誘ってね。うん、それじゃ、また明日。…ふぅ」
茜は電話を切ると一つ息をつく

「相変わらず異性と話す時は甘い声で話すわね…茜ちゃんって。」
甘奈と茜がいるということはこの子もいるのは当然である恵理は少し苦笑を浮かべる。

甘奈は茜の顔を見ながら
「ねぇ、荻野君ってさ絶対茜に気があるでしょ。」
甘奈はバッサリと茜に聞きにくる

「うん、そう思う。たまにチラチラ見られてるし。想い上手く隠しているつもりだけどバレバレなんだよね。…悪い子じゃないけど、ちょっとしつこいし、私はただ昔思いきっり優しくしたらそこから…。」
女の勘というのは怖いもので男が好意を隠しているつもりでも女にはお見通しされてるケースが多い。

本来度が過ぎれば急に関係は悪くなるが茜は野球部のマネージャーであり、元の性格が優しすぎるため拒絶はせずいつも通りに接してはいるが内心は複雑であろう

「ちょっとぉ〜もぅ私も話に入れてよぉ!野球部関係の人間なら黒木君ってさ格好良くない?バカでチャラいけど。」
恵理はいつも通り膨れっ面になった後に話しに急に加わってくる

茜と甘奈は急に何言ってるんだろうという顔で恵理を見た後口を開く

「分かる、最初あったころはこいつ留年して辞めるんだろうなと思ってたら急に真面目になって、学校もしっかり来てるし」
甘奈は恵理の話を広げさせようと当たり障りのない標準的な会話をしようとする。

「まぁ紅君が故障してからだけれどね、真面目になったの。なんで急にそうなったのかは知らないけどすごく泥臭いけど執念を感じるよ。うちの野球部で一番執念強い人間なんじゃないかな?」
茜はマネージャーとして見える視点から二人に語る
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2015/11/08 17:34  No. 139    
       
第139話〜紅の頼み〜

12月31日、大晦日。この日も当然のごとく練習はあるが、いつもと違い17時で練習は終わりだ。

「次、紅!」
大橋は赤田の次に紅をシート打撃の投手に指名し紅は久しぶりにマウンドへと上がる。

紅は投げる前に肩を2,3回軽く回す。

11月半ば以来の久方ぶりの紅優生の投球。走りこみの効果はどこまで効果があるのだろうか。それは一緒に付き合った黒木も楽しみであろうが、それ以上に効果を確かめたいのは紅自身だ。

ゆったりと投球モーションに入り、右腕からボールを投げる。

紅から放たれたボールは糸を引くようにスーッとコースギリギリに決まる。

『こいつ…一体なんなんだ。なんなんだよぉ。』
黒木は紅の投球を見るとゾクッとする、だがそれは恐怖ではない。同じ投手としての実力の差や凄さを感じた瞬間だ。

2球目3球目とあっさりとバットが出せず先頭打者の荻野を見逃し三振に切り落とす。

『一球も打てる球が来なかった。…この前と大違いだ』
荻野は紅の投球術に驚きながら打席を後にする。

発射台が安定したことで制球力が向上し荻野のヒットコースにボールがこなかったとも言えるがそれでも見逃しの三球三振は打者としては屈辱に過ぎない。

紅は所定の打者に投球を終えると黒木に代わる。
黒木の投球を後ろから腕くみしながら見てると黒木のある球に目が留まる。

紅の目が付けたボールは左打者の荻野稲本蓮本が苦戦する。

「黒木。」
紅は投球を終えゆっくりしてる黒木に声をかける。

「紅か、ぁんだよ。なんか用でもあんのか。」
黒木は紅の顔を見ると少し嫌そうな声で紅に言う

紅は一切顔色を変えずに黒木の方を見る
「ああ、教えてほしいことがある。お前の投げる。カットボールの投げ方を教えてくれ。俺は対左対策のボールを所持してはいない。」
紅は真顔で黒木に教えを乞う。

時間が止まったかのように2人は何もしゃべらない。流れるのは時間と風だけ。

悩む悩みに悩んだ末黒木はようやく口を開く
「カットボールだろ?いいよ、教えてやんよ。」
カットボールとは黒木の投球スタイルからすれば核となるボール。
それを紅に教えるということは仲間とはいえエースを争う敵に自分の核を相手にあげるようなものだ。
それでも黒木は先ほどのゾクッとした感じを忘れられずさらに凄い紅を見たい。ただそれだけが気持ちを動かした。
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