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ロックされています  プロを目指せ  名前: 疾風騎士  日時: 2012/10/27 23:27 修正9回   
      
このHN、そして小説サイト…ずいぶん久々な気がする。正直半年以上のブランクは痛い、この小説はかつて、他のサイトで書いていたが閉鎖により保存していなかったため、残念ながらほぼ全ての話を消滅させてしまった…。
ならばここで書き直すまで…
※このスレでは私以外の書き込みを禁じます。

第1章〜氷水高校へ〜 >>1-30
第2章〜夏の大会編1年〜 >>31-65
第3章〜荻野中学編〜 >>66-82
第4章〜主戦力の穴と新戦力編〜 >>83-100
第5章〜2年生編〜 >>101-
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/29 01:15 修正1回 No. 59    
       
第59話〜先取点〜

新横浜の応援のボルテージが次第に上がっていき、ドンドン声が応援が大きくなっていく。
新横浜の応援は疲弊している相手投手にとっては耳障りで、これほど鬱陶しいと感じることはないだろう。さらに相手打者と対戦し、ピンチを抑えなければいけない。
新横と対戦する時の試練ではあるのだが、回が進めば進むほど手強くなる、新横の応援。まるで蟻地獄にハマったかのように。

さて、白瀬は迫田をどう抑えるのだろうか?いや、抑えることはできるのであろうか?

白瀬は肩で息をしながら影浦のサインを見る。
若干右足が攣ってる感じがある、帽子のツバからは滝のように汗が流れ落ちる。

白瀬は影浦のサインに頷き迫田に対し第1球目を投げるが、高めにスッポ抜ける。

白瀬は投げ終わった後、足を気にする。
大橋は白瀬の異変を察知し、一度ベンチに下がる。
ブルペンで投げている紅はペースアップして、仕上げを急ぐ。

審判団も氷水ベンチ前に集まる。

白瀬は水を美味しそうに一気飲みし、ペットボトルに入ってた水を飲み干してしまう。

白瀬はホッと一息つくと大橋の方を向く
「監督、俺を変えないでください!俺はまだ行けます!」
白瀬はやや強めの語尾で言う。

「だが、その様子を見れば脱水症状だと分かる、無理はするな!変わった方がいい!」
大橋は白瀬を必死に説得しようとする

「監督!俺は変わって後悔したくない!後悔するなら打たれて後悔したほうがマシです!俺はまだ投げれる!」
白瀬の言葉は力強く、目にも闘志が宿り、執念を感じる。
大橋は白瀬を説得するのを諦めたか、白瀬を再びマウンドへと送り出す。

白瀬は試合が再開すると、迫田に渾身の投球を続ける。

4球目を力で抑えに行き、迫田も打ちに行くが打ち損じしてしまう

打球はフラフラとセカンド後方への大飛球となる。
前進守備を敷いていたため、橘は必死に打球を追いかけ、皮肉にも身長が足りないため、ダイビングキャッチを試みる。

なんとか、捕球するが橘が体勢を戻して送球しようとする間に蓑田は3塁からタッチアップし、無情にもホームを踏む。打ち取ってた、打ち損じてくれた。でも打ち損じた分…得点へとつながってしまった。

続く、4番の小川に甘く入った変化球を完璧に捉えられ、痛恨の2ランホームランを被弾する。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/29 11:47  No. 60    
       
第60話〜劣勢〜

小川は満面の笑みを浮かべながらダイヤモンドを一周する、白瀬はマウンド上で天を仰ぎながら悔しがる。

痛恨の1球だった、橘が意地でワンアウトもぎ取るも蓑田が好判断でタッチアップし、ホームを陥れ、新横が先取点もぎ取り、さすがの白瀬も気落ちしたようで、失投があまくど真ん中へと吸い込まれ、小川は簡単に失投を捉えた───

白瀬はその後、5番の高野に出塁許すも、なんとかその後を打ち取り、3失点で7回裏を抑える。

ベンチに戻ってくる氷水ナインの顔は暗い、終盤に来てついに新横に失点を許したからだ。

『僕がもう少し早く送球してればあの点は防げたし…相手に点をやることもなかった…』
橘は自らの送球がワンテンポ遅れたことに悔やむ。
しかし、悔やんでも先ほどのイニングはやり直すことができない。

「1番セカンド橘君」

橘は嫌そうに辛そうに打席へと向かう、相当橘シフトで精神的にキテいるのであろう。
空は晴れているが、橘の心の中の天気は今にでも雷雨が降り出しそうなぐらいの曇った天気ではなかろうか。

さて、大野はここまで投げて被安打2ではあるが四死球は9つ与えているにもかかわらず自責点は0だ。
橘が打席に入ると、再び橘シフトを敷く。
このシフトが橘を精神的に追い詰めている原因だ。

橘の顔つきは今にでも泣き出しそうな顔だが必死に涙をこらえている様子にも見えなくはない。

大野は橘に対して簡単にストライクゾーンにボールを集める、他の打者に対してはボール先攻の苦しい投球なのにだ。
橘は長打がほぼ皆無のため、ストライクゾーンに投げても痛打は食らわず、またカットもあまりできないため。大野にとっては楽な打者には違いない。

『大野〜、他の打者にもこういう投球してよ〜』
高野は苦笑しながら心の中で大野に訴えかける

『はぁ…ここまで野球やってきて辛いことはなかったなぁ…試合が一番楽しいのに…こんな辛い思いするならこの試合おわったら辞めよっかなぁ…』
橘はもう心がほぼ折れかかっており、小さな脆弱な紐でその折れかかっているものを吊るしているにすぎない。そんな状況だ。

この打席も橘は強引にうちに行くも橘シフトにひかかってしまい、簡単にアウトとなり、後続簡単に討ち取られ、無得点で8回表を終了する。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/04 22:08  No. 61    
       
第61話〜意地〜

白瀬は8回裏を三者凡退に抑え、3点のビハインドのまま9回表の攻撃が始まる、この回先頭の影浦が大野の初球を捉え2点差へと縮める。

「勝一、ナイスホームランだ!」
高橋は笑みを浮かべて影浦を出迎える。

「ああ、皆まだ諦めるなよ!試合はまだ終わっちゃあいない!」
影浦は気を引き締めるように言う。

その言葉通り、氷水ナインは火がついたのか眼の色が変わる。

だが、5番の斎藤6番の岡島と連続三振に倒れてしまい窮地に追い込まれてしまう。

「7番ショート池田君」

池田はやや緊張しながら打席に入る
『おいおい、影浦先輩の一撃の後簡単にツーアウトか…クソッ…でもまだ俺がアウトにならない限り…』
池田は簡単に追い込まれるもそこから驚異的な粘りを見せフォアボールを勝ち取る。
『まだ…試合は終わらない!』
池田はフォアボールを選ぶとドヤ顔で一塁へと向かう。

「8番ファースト島田君」

大野は肩で息をしながら、島田に対して第1球目を投げ入れる。しかし、疲れからか真ん中やや高めに吸い込まれるように入る、島田はそれを見逃さずに打ちに行く

バットがボールに当たると美しい金属音を奏でながら打球は放物線を描き飛んで行く

「入れ!入るんだ!」
島田は祈るように打球を見つめながらベースを回る。

しかし、僅かに入らずにライトフェンスに直撃する間に島田は2塁に到達、池田は3塁で止まる。
9番の岡崎が打席に入ると高野はおもむろに立ち上がり、岡崎を敬遠し、歩かせる。ここまで橘は全打席橘シフトでやられ、大野とは絶望的に合ってない。岡島に比べれば橘のほうが怖くないという判断なのだろう。

「1番セカンド橘君」
橘は俯きながら打席に入る。
『試合が終わったら辞めよっかなぁ』
橘は精神的に堪えているのかやや不貞腐れているようにも見える

大野は初球、2球目と簡単にストライクを取る、そして橘に対して3球目を投じる、どうやら3球勝負で行くつもりだ。

『…僕をいい加減なめるな!』
橘は甘くどまんなかに入ったボールを力いっぱい振りぬくと痛烈なゴロでレフトの横を抜け、返球する間にランナーは全員ホームを踏み、橘は2塁の到達する。
橘は起き上がると子供みたいな満面な笑みを浮かべ2塁ベース上でガッツポーズを決める。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/05 10:17  No. 62    
       
第62話〜勝者と敗者〜

橘の後続はあっさりと打ち取られ、追加点は取れなかった。
だが、橘に逆転打を放たれたのは大ダメージだろう。

「よし、このままリードを守りぬくぞ!」
影浦がそう言うと、氷水ナインは「おう!」と答える。
9回裏、この最後の攻防で甲子園行きの高校が決まる。

しかし、白瀬は簡単に打たれ、ノーアウト2塁3塁の大ピンチを招いてしまう。

『個人的には彼に注目していたが…体力が予想以上に無いな…』
とある球団のスカウトは白瀬の情報をメモ帳に書きながら戦況を見つめる

「7番キャッチャー高野君」

一打サヨナラ優勝の可能性があるだけに新横の応援はドンドンとボルテージが上がる。

『くそ、ボールが思うように行かない…だがこの回をこの回さえ凌げば…俺達が甲子園に行けるんだ!』

白瀬の渾身の投球に高野は太刀打ちすることができずに、三球三振を喫してしまう。

「8番ファースト中津君」
中津はバットを短く持ち白瀬の速球に対応しようとするが。バットに当たらず、中津も三振に切って取られる。

「9番ピッチャー大野君に代わりまして川村君」
高野に代わり、スラリとした体型の川村が打席へと向かう。坊主頭ではあるが所謂イケメンの部類に入る顔立ちでどことなく可愛らしさを感じられるからか異性からは人気がありそうだ。

「影浦先輩、お久しぶりです。」
川村は満面の笑みで影浦に挨拶する。

「…挨拶するとは礼儀正しいな、俺も久々に話したいことがあるが今はそんな状況ではない」
影浦は川村の方を向かずに言う。
白瀬は直球主体で押しに押しツーストライクと追い込む。

『これで…決める!』

白瀬が投じたラストボール、決して油断したわけではない。しかしボールは甘く高めへと抜ける。

川村は驚きながら打ち返すが、打球はファースト正面に転がる。

「ちっ…」
島田は打球に合わせることができずに綺麗にトンネルしてしまう。

橘はカバーしようと打球に飛びつくが───

無情にも、グラブの先端に打球が当たりファールゾーンへと転がり出る。
すると次の瞬間、新横浜側のスタンドからは大歓声が上がる。
打球が転々とする間にランナーは次々へと帰り、新横浜が逆転優勝を決めた。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/05 10:42  No. 63    
       
第63話〜終戦〜

マウンドで悔しさからか下唇を噛みしめる白瀬
『…終わった』

影浦は呆然と歓喜にわく新横浜を見つめる。
やはり、全員ショックの色が隠せない。

橘は打球を弾いたところで座り込み涙をこらえきれずに「ウッウッ」と声を出しながら泣き始めてしまう。

まだ試合後の整列が終わっていない。
なんとか、整列し試合後の一礼をする。

そして、ロッカールームに戻ると橘は俯き再び泣き始めてしまう
「白瀬…せんぱぁい、3年の先輩方ごめん…なさい…。」
橘は大粒の涙を流しながら自分の最後の守備を悔やみながら謝り続ける。

影浦の目は赤く充血しているが、涙を流さないように必死に堪えている感じだ。

白瀬はフゥと一息ついてから橘の方を見て
「…いや、いい。気にするな」
白瀬は橘を慰めるように言うが、まだ悔しさが残っているのが見え取れる口調だ。

橘にとっては相当辛い一日だっただろう。
橘シフトで泣きそうになるぐらいの屈辱を味わい、最後には逆転サヨナラを許す痛恨のエラー。これで折れないわけがない。

高橋は着替え終わると橘の肩をポンと叩き
「俺達は残念ながら甲子園には行けなかった、でもそれは決して君のせいじゃない、力がなかっただけだよ。
…あんなシフトを敷かれたり、そして最後のあのプレーは責められない。結果的には辛いことになったけど。よく飛びついた。ファインプレーだよ、でもカズ、君達はまだ5回甲子園に行くチャンスが残っている。
だから俺たち3年生の分もこれから頑張ってくれ!今日は辛くて涙が止まらないかもしれない…でもね、カズ…止まない雨はない。…っとこれは失恋した人に言うことかな?まぁいいかな?それにとある歌で流した涙はいつしか光へと変わるというフレーズあるだろ?あの通りだよカズ、今日の悔しさ、涙は絶対に力となる!だから…腐らずに頑張れよ!」
高橋は橘を慰めるかのように優しく声をかける。
実力的には白瀬影浦には遠く及ばない、選手としてもこれと言った特徴はない。だがキャプテンに任命されたのはこの人柄の良さだろう。

「…はい、ありがとうございます…。」
橘は先程よりは落ち着いたがまだ涙は止まらない。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/05 17:31  No. 64    
       
第64話〜1年グループ〜

神奈川県大会が終わり、翌日から新チームが発足した。

新キャプテンには2年池田が指名されたが、池田は拒否し、新キャプテンは池田の推薦で紅となった。
いつもポーカーフェイスを装っている紅も流石にこれには驚きを隠せなかった。
本日は新チーム誕生後初の練習休みなので、1年生達はどこかに遊びに行く予定と立てていた。

「あ、荻。おはよう。」
橘は荻野に手を降って荻野に声をかける。

「浩一君遅いよ〜もう。…これで後はえりりん(恵理)と紅君だけか。」
茜はむぅ〜と頬を膨らませる

荻野は苦笑しながら橘たちのもとへと向かう
「ごめんごめん、ちょっとお姉ちゃんと話してたら…つい、ね?」
荻野は手短に遅れた理由を言う。

荻野は橘な茜と話していると、10分後ぐらいに紅と恵理が到着する。
「ごめ〜ん、遅れた〜。あ、ギノッチ(荻野)だ〜久しぶり〜なんかさ、夏の大会中に出てないし一言も台詞無かったよね!?この小説の主人公なのにね」
恵理は茜に軽く謝ると荻野を見つけて声をかける。

「悪いな、早坂と待ち合わせしてて遅れちまった。」
紅は申し訳なさそうな顔をする。

甘奈はため息を1つつくと恵理の近くへと行く
「メタ発言はやめなさい、白けるわ」
恵理の頭を軽くポカッと叩く

「いてて、痛いよ〜甘奈〜ってクレ、わざわざ駅で待っててくれてありがとうだよ〜一瞬私彼氏いたっけ?と勘違いしたよ〜」
恵理は少し痛がる素振りを見せてから紅に話をふるが、紅は表情を崩さずに恵理の発言をスルーした。

荻野は恵理の発言に苦笑浮かべながら
「何言ってるかわからないんだけど…有田さんもそうだけど…一応ベンチには入ってたよ。…出番無かったけど、僕も出たかったな」
荻野は遠目で橘と紅を羨ましそうな目で見る。

紅は荻野の発言聞くとフッと鼻で笑い
「…まぁ分からんでもないが、まだお前バッティングフォーム固まってなかったじゃないか。それに、高橋先輩の言葉を思いだせよ。」
紅は荻野に軽く言い返す。

「…一応全員揃ったし、そろそろ移動しようよ。ここ暑いし」
橘は一瞬顔が曇り、話題を即座にかえここから移動しようと言う。

6人とも少し大きめの荷物を持っている、さてどこに行くのだろうか?
いや、持っている荷物から想像はつくか
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/14 10:15  No. 65    
       
第65話〜海水浴〜

集合場所近くのバス停からバスに乗り、バスにゆられること15分たち、バスから降りると、独特な匂いを感じる。

目の前には砂浜が広がる、荻野達は海水浴に来たようである。

「江ノ島か…こっちに引っ越してきたけど、来たこと無かったわ。」
甘奈はボソッと呟く。

恵理は目をキラキラ輝かせながら
「やっぱ、夏と言ったら海水浴だよねー。この間おニューの水着買って良かったー、企画してくれてありがとね、和巳ちゃん!さ、早く水着に着替えよ〜よ」
恵理は嬉しそうに甘奈の背中を押しながら海水浴場の更衣室に足早に向かう。

女子3人組より、少し遅れて、荻野たちも男性側の更衣室に向かう。

「…俺は異性と遊びに来たのは初めてだな…というより、遊ぶこと自体久々だな。たまに部活帰りにお前等とコンビニによる程度だ。練習や勉強する時間が多いし、弟ともよくやるからな。」
紅はフッと笑う

橘は目を点にするかのごとくに紅の発言に飛びつく
「へぇ〜、そうなんだ。意外だねって、クレ、弟いたんだ!?」
橘は紅に弟がいるということに驚く。

「ん?ああ。佑樹って言うんだ。まだ中2だけどな。背はお前たちよりデカイぞ」
紅は橘のリアクションをスルーしながら答え、そして背の小さい橘と荻野を少し煽る

橘は紅の煽りに、ムッとするが、荻野は苦笑しながら着替える。
着替え終わると、外に出て女性陣を待つ。

「おまたせだよ〜どぉ?可愛いでしょ〜」
恵理は明るい声で橘たちと合流する、後ろから遅れて甘奈と茜がやや恥ずかしそうに合流する。

「3人とも可愛いじゃん!さ、早く泳ごうよ」
橘は素直に女子の水着を見ながら感想を言う

荻野は茜を見つけると顔が赤くなったような感覚に陥る
『…茜ちゃんの水着も結構可愛いな、中1の時の水泳の授業でスク水は見たことあったけど…それに胸も結構あるんだ…って何を考えているんだ、僕は…』
荻野は茜を見るが直ぐに視線を外す。もう一度チラ見をしそうになるが、自重する。いつまでも見ていたいが、気づかれたらリアクションに困るからだ。まぁ年頃男子らしい恥ずかしがり方ではある。

甘奈は茜から視線を外す荻野に心の底でため息をする。
「…茜、私達も行きましょ」
甘奈は茜の手を引くように海の方へ向かう。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/14 10:59  No. 66    
       
第66話〜荻野と茜〜

荻野達は時間を忘れるように遊び、気がついたら既に時間は3時ごろだった。

「今何時だ…?3時…か。結構遊んだな」
紅は更衣室のある建物の外壁にある時計の時刻をみながら言う。

「え?もうそんな時間?まだまだ遊びたいけど、そろそろやめるか…明日の練習に響くし」
橘は名残惜しそうに言う。

荻野達は更衣室で私服に着替え直し、江ノ島の駅前のお店で昼食をとってから解散となった。

その後、女性陣は喫茶店に入る。

恵理は喫茶店に入るとおもむろにガールズトークを始める
「ねぇ、あっかね〜ギノッチとはどういう関係なの〜?めっちゃ話してたし仲良さそうだけど〜」
恵理の顔はにやける、相変わらず恋話は好きなようだ。

茜は恵理をやや振り払うようにして
「え?浩一君とは友達だよ?」
茜は何を今更という感じで答える。

「えぇ〜?その割にはさぁ、茜もギノッチも下の名前で呼んでるし、ギノッチに関してはちゃん付けだし…それ以上の関係に見えるなぁ〜」
恵理はグイグイと質問攻めをする。

茜はクスリと笑い、苦笑いを浮かべる
「ん〜…それにはちょっと訳があってね、私と浩一君が同じ中学校出身なのは知ってるよね?」
茜はメニュー表を見ながら言う。

「幼なじみっていうやつ?」
甘奈はようやく会話に入る。

「ううん、幼なじみとはちょっと違うかな…?浩一君は最初違う中学校にいて、中1の夏頃に私のいる中学校に転校してきたの。」
茜はクビを横に降ってから言う。

「ふ〜ん、って中1の夏!?何が合ったの!?いくらなんでも速くない!?」
恵理はここはリアクションとって当然のごとくに驚く。

茜は小さく頷く
「うん、私もびっくりしたよ、三崎から横須賀だもん。転校の理由が家の関係見たいなんだけど…それにね、浩一君は最初、転校当初から直ぐに学校来たわけじゃないの、1,2回来て辛かったのかすぐに学校来なくなっちゃったの」
茜は当時のことを思い出すかに言う

「で、その後いつから来れるようになったの?」
甘奈はスマホをいじりながら聞く。

「ん、1年の冬…かな?年明けてから。」
茜はコーヒーとミルクをかき混ぜながら言う。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/14 20:31 修正1回 No. 67    
       
第67話〜荻野中学編1〜

あの日のマウンド、あの日の夏、あの日は暑く、記憶に残る暑さだった、忘れられない暑さ。

そして、あの夏は未だに忘れることができない。忘れようとしても体に刺青でもあるかのように忘れられないし、あの時の傷は癒えない。

今から4年前の6月。降りしきる雨の中、男の子は傘をさしながらつまらなさそうに帰る。
『…今日は部活無いのはいいけど…家に帰っても…でも、お金ないからどこにも行けない、いいや家でゲームやってよ〜。』
表情から読み取れるのは少なくとも彼の心の中でも雨が降っているということだ。

階段を登り、2階にある玄関の鍵を開ける
「…ただいま。」
男の子はつまらなそうな声で言う。

「はぁ…。」
家に誰もいないため、男の子のため息が寂しく広がる。

部屋にはいると制服から部屋着に着替える。
「"あの人"達は仕事か…」
彼の"あの人達"とは誰を指すのだろうか?少なくとも嫌っているのが言葉から受け取れる。

「来週の練習試合、自分が先発だっけ?投げられるだけマシだけど、どうせまた負けるしやりたくないなぁ」
1人でいつまでも愚痴ってる、これがつまらなくしている原因だろう。

気がつくとお腹が空いてた、近くにある携帯電話を開き、時刻を確認すると時刻は18時を差していた、
どうりでお腹が空くわけだ。

男の子は冷蔵庫に作りおきされてあるおかずとご飯で1人で野球の試合を見ながら夕飯を食べる。
試合は始まったばかりだ。

夕食を食べ終わり、ゆっくりと試合を見ていると携帯の着信音が鳴り響く。
男の子は面倒くさそうに電話にでる
「…はい。誰?」

「相変わらず冷たい声だなぁお前は…入学当初は明るい声だったのによぉ!」
男の子の冷たい声に電話越しで苦笑するおそらく同級生であろう男子中学生だ。

「…鈴木か、どうした?」
明るい声がうざったいという顔をしながら言う

「荻野、明日の国語の授業ってさ〜、確か漢字テストだよな?教科書の範囲で言うと40Pから45Pの間だよな?」
鈴木は国語の漢字テストの範囲を荻野と呼ばれる人物にかける。

「…あぁ、そうだよ。そういえば、漢字テストで半分以下の連中は追試があるって村澤の奴が言ったぞ」
荻野は鈴木にそう返す。

しかし、今の荻野とは想像がつかないぐらい言葉遣いは悪い。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/14 23:02  No. 68    
       
第68話〜荻野中学編2〜

昨日とはうってかわり今日は快晴だ。荻野の内心とは正反対だ。

「…朝、か。」
荻野は今日もつまらない一日が始まるとすでに憂鬱な気分だ、願わくは何も考えず、ずっと夢のなかにいたいという本音だ。

荻野は制服に着替え終わると、とっとと家を出る。
学校につくと何人かの同級生と会話すると自分の席に座り、教科書を取り出し見直しを行う。

「お、いたいた。おい荻野〜」
隣のクラスの鈴木が荻野を見つけると、荻野のもとへ向かう。

「ほい、この間借りた500円。ありがとな。」
鈴木は荻野に借りてた、お金を返す。

「鈴木か、よくお前が覚えてたな。そろそろいい加減返せというところだったぞ」
荻野は鈴木に気づくと鈴木に軽口を叩く。

「はは、わりぃわりぃ。って荻野最近のお前おかしいぞ、お前そこまで口調悪くなかっただろ?というかむしろ優しい口調だったじゃないか。何が合った?」
鈴木は最近荒れてる荻野が気になり、つい聞いてしまう。

荻野は鈴木から顔を背けながら
「五月蝿い、てめぇには関係ねぇだろ…。聞かないでくれ…」
小声ではあるが、つい暴言を吐いてしまう。…が、ついでに本音も出る。

「…わりぃ。じゃあ、また放課後な」
鈴木は申し訳なさそうな顔をして教室を後にする。

荻野の変貌ぶりには、荻野と同じ小学校出身の人は驚く。
いや、思春期だしグレるのはおかしくはないが…今まで明るく笑顔が絶えなかったのにGW明けぐらいから顔は暗く、笑顔はなく、むしろ常にイライラしているように見える。言葉遣いも悪く、周りとは距離をおいている。今までの荻野とは別人に見える。

1時間目に国語のテストを行い、荻野はなんとか平均以上の点を叩き出し、追試は免れる。

授業が終わると直ぐに部活に向かう。
荻野は先輩にいじられながら練習するも先輩のいじりをスルーしているため、先輩からの印象はあまり良くないだろう。

荻野は練習が終わるとグラウンド整備や1年がなすべきことを終わると、1年勢の中で真っ先に帰る。
誰とも会話せずに帰る、最早荻野にとってはほぼ毎日定番となってきた。

荻野は家の近くにある公園で幼稚園生ぐらいの女の子がお兄ちゃんらしき男の子と無邪気に遊んでる姿を見て、軽く微笑むが母親が出てくると荻野の顔は再び曇る。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/16 00:07  No. 69    
       
第69話〜荻野中学編3〜

荻野は胸糞悪そうに公園から足早に立ち去る
『くそ、なんで人の親なのになんでここまでイライラする…いや、人の親だろうが…親という存在を見るだけでっ…!』
荻野は何を恨んでいるのか親が嫌いなようだ。

荻野は何も考えないように走り続ける、ずっとずっと膝に手をつき「ハァハァ」と息をしながら近くにあるベンチに座ると。
朝の鈴木とのいざこざを思い出す

『…何も知らねぇくせに、ったくあいつは…だが、あいつに怒鳴ってどうする…結局あいつに怒鳴っても何も解決しねぇ…学校も行きたくねぇし、家にもいたいとは思わない。』
荻野は俯きながら1人内心愚痴る

『あいつが来てからだ、あいつが来てから狂った…店の関係であの人が再婚を早まなければ…とにかくあいつさえ来なければ…まだっ…!』
荻野はクッと歯を食いしばる

『…あいつが来てから、父さんも変わってしまった。モノはすぐに壊す、翌日仕事が無い日なんて酔いつぶれるまで飲みやがる…そして何より最悪なのが、俺の交友関係があの人によってめちゃくちゃにされたことだ…何が、宗教だよ、ふざけるなよ…』
走った意味がなくなるかのように考えこみ、愚痴ってしまう。

『…はぁ、帰るか。』
荻野はタメ息をつきながらトボトボと家に帰る。
特に今日は帰りたくなかった。

あたりが暗くなるころ荻野は帰宅をする。
家に入ると鼻に何らかの匂いを感じる

「おかえり、浩一。今度の土曜日教会に行く件なんだけど…」
荻野の母親らしき人が息子である浩一に聞く

「おう、帰ってきたか、酒買ってこい!」
既にテーブルには飲み干された缶ビールが何本もある。

荻野は露骨に目を背けながら自分の部屋に入ると鍵を閉めると、背負っているエナメルバックをめいいっぱい地面に叩きつける。

「ふざけるなよ…何が教会行こうだよ、何がビール買ってこいだよ…うっぜぇんだよ、うぜぇよ。とっととこの家から出て行きたい…。」

叫びたい、叫びたくてたまらない。いつまでも叫んでいたい、ストレスが解消されるならなんでもやりたいぐらい。

荻野が特に帰りたくなかった本日は店のほうが休養日で、一日中親がいるからだ。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/16 09:10  No. 70    
       
第70話〜荻野中学編4〜

「学校も家もやだ…、部活ももう…やりたくない、でも友達とは仲良くしていたい。」
荻野は不貞腐れるようにして帰宅する。

まぁそれもそうだ。3回投げて四死球12被安打8で20失点とめった打ち食らったからだ。
その結果顧問の先生、先輩捕手、主将から怒鳴られてきたからだ。

家に上がると見知らぬ高校生ぐらいの女子と、荻野の親より少し若い男が荻野の両親と話し込んでた。

荻野は部屋に入り、ベットに横になると直ぐに眠ってしまう。
不快な笑い声を聞かなくてすむ。

しかし、ふとした瞬間に不快な声が聞こえてくる。荻野にとっては逃避から現実に戻された瞬間だった。

すると、コンコンと扉をノックする音が聞こえる。
荻野はイヤイヤながら鍵を開けて、扉を開ける。

「やっほー、こうくん久しぶり〜!」
先ほどの派手な服装をした女子高生ぐらいの若き女の子が荻野に手を振りながら話しかける。

荻野は驚き顔から視線をそらす
「…すいません、誰ですか?知らない人なんですけど。」
荻野はやや突っ掛かるように言う。

「ん〜…覚えてないかぁ〜仕方ないよねぇははっ。私だよ、美歩だよ!最後にあったの、君が小学生の時だよっ!しかし、おっきくなったねぇ。言葉遣いはアレだけど。」
美歩は荻野の頭をポンポンと叩きながら言う

「…何のようですか?」
荻野は美歩の手を払いのけてから聞く。

美歩は少し考えこんで
「あのさ、こうくん。うちの家に来ない?というより君の母親が出て行けだってさ。」
美歩の顔は少し苦笑してた。

「…は?」
状況が飲み込めない、理解できない、理解不能

「難しい話だから、詳しいことは私も分からない。でも貴方の母親…いや、義母はとにかくお父さんと2人で暮らしたいみたい。」
美歩はしっかりとした口調で話を続ける

「………美歩さんは今どこに住んでるんですか?」
荻野は感情を押し殺しながら言う

「パパとママは東京だけど、私は横須賀で暮らしてるよ。…でも、学校は転校するしかないよ?」
美歩は荻野の心中察したのか温かみのある口調になる。

荻野の頭のなかはぐちゃぐちゃだ。冷静に考えられない。でも、この家にいるよりはマシ荻野は持っていける荷物だけ持って部屋を出る。

「お世話になりました。」
母親が視界に入ると荻野は恨みを込めた挨拶をする。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/17 19:20  No. 71    
       
第71話〜荻野中学編5〜

「浩一!…すまん。」
荻野の親は感情を押し殺すかのように言う、親として、父親としての申し訳ないという気持ちがこもりにこもった謝罪。

荻野は何も言わずに美歩と美歩の父親と家を出るが、父親が荻野に言葉を発した時に一瞬荻野は立ち止まったようにも見えた…。

表に出ると美歩の父親ものと思われる車が停車している。
3人とも車に乗り込むと静かにエンジン音が響き、ゆっくりと車は走り出していく

「浩一君、すまない。私の兄と兄嫁が君に迷惑をかけたようだ。つらい思いをさせてすまなかったな。」
美歩の父親は荻野に軽く謝罪する

「…別に、いいですよ…そんな事…俺も嫌ってましたし…」
荻野は外の景色を眺めながら不貞腐れたように言う

美歩の父親は少し間を開け
「…そうか、それも無理もない。君の実の母親は小学校の時に他の男の方に不倫してそのまま恋に落ちちゃってね…そこから兄貴はおかしくなった。酒やギャンブルにどっぷりハマり、仕事こそはするが酒とギャンブルが手放せない生活の日々、そのため君はあまり食事が無いことが多かったと聞く。
…だが、君が中学に入ると同時に再婚して、ギャンブルはやめはしたが、今度は兄嫁が君のことを嫌い時々食事を出さなかった。」
美歩の父親は低い声で荻野に語りかける。

荻野は唖然とする、それと同時に胸に支えるモノがでかくなる、息苦しい
「…っ!な、なんでそんなこと知っているんですか?俺、あなたに相談したことなんて…!」
荻野は激しく動揺する。

「…実は君を引き取ることも今日決まった訳ではない。5月の下旬あたりに兄貴から電話が来てな…
「俺のせいで借金が膨らんで正直3人で暮らすのは苦しい、だが妻とあの子が絶望的に仲が悪い、まだなんとか暮らそうと思えば暮らせるがこれ以上あの子につらい思いをさせたくない…高校以降の学費は苦しい。…翔太、すまんが浩一を預かってくれ、無理な頼みをしているのは承知だ、だが頼む!」とな…その後色々忙しくて今日まで長引いたわけだ。だが、最後に父親らしいところがあったんじゃないかな?って思うよ俺は…」
翔太は冷静に淡々と話す。

「…あの人が!?あなたに電話を…っ!」
荻野は先程から堪えてたものがついに決壊し、泣き始めてしまう。
美歩は蹲って泣く荻野の頭を優しく撫でる。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/17 19:52  No. 72    
       
第72話〜荻野中学編6〜

暫くすると車は止まる、車から降りると目の前にはやや立派なマンション、しかし夕日のマッチし綺麗に鮮やかに見える。

「美歩、本当に浩一君の事頼んでいいのか?」
翔太は心配そうに美歩に聞く

美歩は満面の笑みを浮かべ
「うん!大丈夫大丈夫ちゃ〜んと2部屋あるし。当初と予定狂ったけどあの時パパに無理言って良かった〜」
美歩は親指を突き上げ、自信満々に言う

「…そうか、こっちも仕送りの分を少し増やさなきゃな…。浩一君何かあったら直ぐに私のところに電話しなさい。いつでも相談にのるよ」
翔太はそう言うと一枚のメモ用紙を荻野に手渡すと、車に乗り込み東京の方へと帰っていく。

美歩は手を振りながら父親を見送る
「…さ、行こ。こうくん。」
美歩は優しく荻野に語りかけ、手を引いて部屋へ案内する。

エレベーターに乗り込み5階で降り、少し歩くと【511 荻野】という表札が見える。

美歩はゆっくりと扉を開け、荻野を家へと入れる。
家にはいると女の子の家らしい独特な匂いがする。
「美歩さん…お邪魔します。」
荻野はついクセでそう言ってしまう。

「『美歩さん、か…。』は〜い。ってこうくんも今日からここで住むんだけどね〜。一先ずこうくんの部屋はこっちよ」
美歩はクスリと笑いつつも荻野を家中案内する。

ガチャリと扉を開け、部屋の内部を見せる
「ここよ、一応ベットはあるけれどそれ以外はないわ…ごめんね?荷物おいたらどう?あ、そうそう隣は私の部屋だから。」
美歩は荻野に優しい口調で説明を続ける。

美歩はリビングに戻ると冷蔵庫からジュースを出し、コップへと注いでテーブルへと。
「はい、こうくん。」
美歩は微笑みながら荻野の顔を見る

「俺…僕…」
荻野は少し俯いて少し震えている。

美歩は察すると荻野をギュッと抱きしめる
「よしよし、辛かったでしょこうくん。そうだよね、まだ落ち着かないよね。まだ辛いよね…まだ中学1年生だもんね…。」
美歩はさっきよりも力強く荻野を抱きしめる。美歩の声も少し涙ぐんでるように聞こえる。
美歩に抱きしめながら泣く荻野、不貞腐れて荒れてたとはいえ、まだ中学生、それもつい半年前まで小学生だった子には辛く過酷な経験だったかもしれない。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/18 20:32  No. 73    
       
第73話〜荻野中学編7〜

美歩の家に引き取られ一週間ぐらいたった、ある朝、慣れない道を、慣れない制服を着て歩く。
そして、20分ぐらい歩くと見慣れない中学につく、どうやらここが転校先の中学らしい。
門をくぐると在校生からジロジロと見られる。

無理もない、見慣れない生徒だからだ。荻野は学校に入ると職員室に向かう。
本鈴がなると荻野は担任と思わしき先生と教室に向かう。

「起立!礼!おはようございます!着席!」
教室の中からは朝のHRが行われているようだ。

「はい、おはよう。それと、この時期にだけど我が1年1組に転校生が来たぞ!」
担任の熊谷は少し笑いながら言う。

転校生という言葉に舞い上がりざわめく教室。やはり、「転校生」という言葉は特別な何かなのだろう。

「さぁ、入ってくれ。」
熊谷は扉を開け、荻野を中に入れる。

荻野が中に入ると男子はガックリし、一部の女子も残念がる。
「名前ともとにいた中学、後簡単な自己紹介を頼むぞ」
熊谷は荻野の肩をポンと叩く

視線が一斉に荻野に集まる
「…えっと…み、三崎湘南中学校から来ました荻野浩一です…。趣味は…野球とゲームです…。よろしくお願いします。」
荻野は深々と頭を下げる。
自己紹介が終わると拍手が起こり、荻野はなんだか恥ずかしくなってしまう。

「よし、じゃあ荻野は廊下側の一番後ろの席だな。1人席だが…まぁ我慢してくれ」
熊谷は荻野の机の位置を言う。

ホームルームが終わると、荻野の元に何人かの生徒が駆け寄る
「ごめん、君の名前って荻野浩一君だよね…?じゃあこれからは浩一君って呼ばせてもらうね、基本的同級生は下の名前で呼んでるんだ。
あ、私はこのクラスの学級委員をやっている神原茜です。何かわからないことあったら私に聞いてね?よろしくねっ」
茜は荻野のことを馴れ馴れしく浩一君と呼ぶが、そのまま軽く挨拶をする。

「俺、野村って言うんだ。よろしく!あぁそうそう三崎湘南中学って女子バスケ強いんだろ?しっかもあそこ可愛い子いたんだろ?」
野村は荻野の元いた中学について触れる。

「2人共よろしく…お願い…します。」
荻野は茜と野村に軽く一礼する。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/18 21:02  No. 74    
       
第74話〜荻野中学編8〜

昼休みに入り、荻野は誰かと食べたいが来たばっかりで仲のいい人はいない、先ほど話しかけてくれた野村や茜は既に他の友達と一緒に盛り上がっている。中々入りづらい雰囲気だ。
覚悟していたとはいえ、中々話せない、一人ぼっち、孤独。しかし、それは時と時間が解決してくれる問題でもある。

転校2日目、この日は水泳の授業があった。中学1年のプールの初回の授業は男女合同である。
まぁ、男子にとっては嬉しそうだが女子にとっては嫌そうな時間だ。

特に男子は女子のスク水を凝視する子も多いのだ。
荻野は授業にはなんとかついていけるが、友達がいないため本来楽しいはずであろう体育や水泳の授業がつまらなさそうに感じる。

「ただいま…。」
荻野は疲れきった声で家に帰る。

「お帰りこうくん。」
美歩はリビングでテレビを見て寛いでいた。美歩の学校は本日創立記念日ということで休校で一日家でゆっくりしてた。

「どう?学校…」
美歩は荻野に学校について尋ねる

荻野は少し間をおいて
「…凄い疲れる、まだ慣れないし気持ちも整理できてないから複雑。」
荻野は美歩にそう答える。

「…そう、まだ気持ちの整理できてないか…。本当はいけないことだけど、踏ん切りつくまで休んでもいいと思うよ?気持ちがぐしゃぐしゃのまま行ってもアレだし…」
美歩は心配そうに荻野の顔を見ながら言う。

「…うん。ありがと…」
荻野は今にも消えそうな声で美歩に言う。

荻野は微妙な時期に転校してきた転校生特有の浮いた状態が嫌で、2日目にして学校に行きたくない状態になってた。

荻野は部屋着に着替え、リビングで美歩と一緒に番組を見る。

「ねぇ、美歩さん。美歩さんのお父さんって何の仕事やってるの?結構お金持ってるみたいだけど」
荻野は興味本位で聞いてみる。言葉はだいぶ穏やかに戻ったが、まだどこかしら人間不信らしいつまりがある。

「私のパパ?とある大手企業の社長さん。前にも言わなかったっけ?それに株で大儲けして、お金が増えたというのもあるけれど…ママの実家が大金持ちなんだ。だからこういうマンションもパパとママは許しくてくれたんだ。」
美歩は嬉しそうに答える。

「…さっきも言ったけど、学校辛かったら行かなくていいからね?」
美歩は心配性なのか、何度も同じ言葉を繰り返す。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/20 21:50  No. 75    
       
第75話〜荻野中学編9〜

「ハァ…」
美歩は電車の中でタメ息をつく。
もっとも、満員電車でキツキツで苦しくてタメ息をついているようにも思えるが…理由は他にもある。

美歩は現在高校2年生で学校は隣の駅にある。
しかし、現在は夏休みだ。朝早く行く理由なんて無い。

駅に降り立つと朝から強烈な日差しが美歩を照りつける
「朝から暑いなぁもぅ…マジ最悪…なんで今日追試なのよ〜、しかも今日部活あるし〜」
美歩は天気を恨むように叫ぶ。

「朝から近所迷惑だぞーみーちゃん。」
と美歩と同じ制服を来た女生徒が美歩に声を変える

美歩はやや恥ずかしがりながら
「え?あ…まどかちゃん…もしかして今の聞いてた?」
美歩はまどかに気づくと驚く。

まどかは「うん」と頷く
「だって、あんな大声なんだもん。気持ちは分かるけど…でもさ、頑張ろ。で、みーちゃんは勉強した?」
まどかはニコッと美歩に微笑む。

「う…いやそのですね…。」
美歩は顔が曇る

まどかはタメ息をつく
「…してないのね、ダメよ?み〜ちゃ〜ん。また追試になっちゃうよ〜?いつまでたっても楽になれないよ?」
まどかは美歩に追い打ちをかけるように言う

「う…は、はい…頑張ります。って言っても部活あるからそこまで夏休み楽しめないけどね〜ハハハ…ってあ!」
美歩は苦笑いをしながら答え、ハッと我に返り何かに気づく

まどかは不思議そうに美歩の方を見ながら
「ん〜?みーちゃんどったの〜?」
まどかは疑問に思い美歩に聞く。

「テニスウェア家に忘れちゃった。」
美歩は嘆くように言う

「ちょっ…どーすんの?部長に怒られるよ!?」
まどかは部長の怖さをよく知っているために自分事のように焦る。

「よし、"弟"に持ってきてもらおう!」
美歩はふと"弟"に持ってきてもらうと言う

「お〜ってアレぇ?みーちゃん弟いたっけ〜?」
まどかはその手があったかという顔がするが直ぐに疑問が浮かぶ

美歩は携帯をいじりながら
「あ〜、ちょっと訳ありでね〜あとで話すよ〜。あ、もしもしこうくん?」
美歩は簡単に訳をまどかに話す

荻野は携帯の着信音で目が覚めたのか目をこすりながら携帯に出る
「美歩さん…朝から何?どうしたの?」
眠そうな声で答える。

「あ、うん。リビングに私のテニス道具が入ったカバンがおいてあると思うけど、それを私の学校に持ってきてくれない?」
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/27 11:10  No. 76    
       
第76話〜荻野中学編10〜

荻野は美歩から言われた通り、美歩のテニス道具が入ったカバンを持ち、美歩が通っている学校へと向かう。

『えっと…確か隣の駅だよね…?』
荻野は駅のホームで電車を待ちながら確認する。

荻野は電車に乗り、2,3分すると次の駅へと着くと、道なりにそって学校へと向かい、学校の正門前にたどり着く

『えっと…ここだよね?』
荻野は正門で学校の位置を確認しながらキョロキョロすると、とあることに気づく
『…私立安浦女学院高等学校か…ってじょ、女子校!?』
荻野は思わず女子校ということに驚いてしまう。しかし、挙動不審な行動すれば通報しかれない。

荻野は美歩に連絡を取ろうと携帯を出すと

「君、この学校になんかようでもあるのかしら?ここは女子校よ?」
第2ボタンまで開け、ややセミロングの女子学生が荻野に声をかける

荻野は戸惑いながら
「え、えっと…美歩さんから荷物持ってこいって言われて…それで…!」
荻野は緊張と焦りからか言葉に詰まる

「美歩…?ああ、2年の荻野美歩か…まぁ入りなさい、女子校だから女子生徒しかいないけど、とりあえず男の教員もいるし、まぁそれは別だけど…原則として男子禁制だけど、登校は義務教育内の子は男子であっても入れるから。」
女子学生は荻野を学校内へと招き入れる。

「あ、ありがとうございます。」
荻野は軽くお辞儀をして校内へと入る。

「あ、みっちゃん。アレ、弟くんじゃない?良かったね〜ギリギリ間に合って」
他のテニス部員が荻野に気づき、美歩に知らせる。

美歩は手を振りながら荻野を呼ぶ。
「ありがとね、こうくん。」
美歩は荻野から荷物を受け取ると軽く微笑む

「みーちゃんの弟って結構可愛い顔してるね〜」
まどかは荻野に視線を合わせながら言う

「『弟か…本当の弟じゃないけどね…』え、あ…」
荻野は照れ隠しなのかまどかから顔を背ける。

「こうくん、どうせなら私達の部活見ていきなよ、家に帰っても暇なんでしょ?」
美歩は荻野にどうせ暇ならというニュアンスで言う。

「う、うん…暇だけど…さ。」
少し戸惑いながらも肯定的に答える

「みっちゃん、私達もそろそろ着替えないと時間ないよ?」
1人の女子学生は慌てて美歩と女子更衣室へと入る。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/28 11:23  No. 77    
       
第77話〜荻野中学編11〜

15分ぐらい炎天下の中で待機しているのはさすがに辛いので、近くの自販機でスポーツ飲料を購入し、テニスコート前で待機していると、部室兼更衣室からぞろぞろとテニス部員が出てくる。
『…っ!』
荻野は思わずやや顔を赤らめながらテニス部員から目を背ける。

まぁ、彼の年齢を考えると致し方ないのかもしれない。小学6年から中学3年の時期というのは以外と大変なのである。

「よし、全員準備運動はすませたようね…?じゃあ予告していたとおり本日は来週から始まる大会に向けて、校内練習試合を行う、まずはダブルスからだ!荻野有田ペアと武藤石川ペアで行う!4人とも実践だと思って本気でやるように!」

「ゆっきーと武藤先輩とか〜2人共強敵なのよね〜」
美歩は苦笑いする。

まずは石川のサーブから始まる。

有田は打球に追いつけずにスルーするが、後方で構えていた美歩が追いつき、相手のコートへ難なく返す。

「相変わらず上手よ、美歩さん。けどね…私も負けてられないのよぉ!」
武藤はやや力を込めて打ち返す。

やや早いサーブに有田も美歩も追いつけずに武藤石川ペアに得点が入る。

「てあ!」
美歩はボールをトスし、力を込めてサーブを打つ

「荻野さん、貴方をダブルスに転向させて良かったと思うわ…。」
武藤は美歩のサーブにやや驚きながらも打ち返す。

「武藤先輩は相変わらず馬鹿力のようで」
有田は武藤の逆方向に打ち返す。
しかし、なんなく武藤に返されるが後方にいる美歩はアジャストするかのように打ち返す。

『そう、貴方はダブルスに転向させたことにより、力強さ、冷静さが前より良くなったわ』
武藤は美歩の放ったサーブを打ち返せずスルーしてしまう。
結果的には美歩有田ペアが辛勝した。

その後あらゆる試合を見ていると既に空は夕暮れとなった時に、部活は終わり。解散となる。

「どうだった?こうくん?私達の部活は…よく目をそらしてたけど〜?」
美歩はやや荻野に意地悪に聞く。

「…いや、その…それは。女子高生がテニスウェア着ているの、可愛かったし…その…」
荻野は少し恥ずかしそうに言いそのまま話を続け
「そのさ…今度僕にもテニス教えてくれない?…"お姉ちゃん"」
荻野は言い終わった後にハッとなり、顔が真っ赤になる。
美歩は一瞬驚くが嬉しくて笑みが自然に出る。
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ロックされています   Re: プロを目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/10/31 19:54  No. 78    
       
第78話〜荻野中学編12〜

季節は一気に飛び、12月の話になる。
まちなかを歩く人は皆厚着でマフラーを巻いているが吐く息が白く、やはり寒そうだ。

「…明日、厳密には今日の放課後から冬休みになりますが、皆さん体調崩さずに年明けに顔をまた揃えましょう!宿題も忘れずに!」
担任の熊谷は帰りのHRでしっかりと挨拶をする。

HRが終わると当たりから聞こえてくるのは冬休み遊ぶ約束をしているようだ。毎日賑わっていたが、廊下側の右端の席…転校してきてわずか2日しか使われず、冬ということも相まってか何か淋しさを感じる。

「失礼します。」
茜は職員室に入るとペコリとお辞儀をする。

「熊谷先生お呼びですか?」
茜は熊谷の元へと行く

熊谷は椅子を茜の方に向け
「ん?ああ、神原か。あいつの…荻野の…夏休み明けからの学校通信と学年通信、後通知表に冬休みの宿題を悪いが、お前からあいつに届けてくれないか?多分、担任の俺が行っても無意味かもしれん…それに、なぜ学校来なかったか?その理由も出来れば聞いて欲しい。」
熊谷は茜に大きめの荷物を渡す

茜はキョトンとして
「え…はぁ、でも私は彼の…荻野くんの家の住所知りませんよ?」
茜は少し困惑するように言う

「とりあえずあいつの家の住所と学校からのみちなりだ、迷いにくい道だから大丈夫なはずだ。」
熊谷は茜に一枚の地図を渡す

「分かりました、失礼しました。」
茜は礼儀正しくお辞儀して職員室を後にする

「オカエラマンション横須賀中央…って私が住んでるマンションと同じなんだ…。」
茜は自分の荷物をまとめた後、荻野の下駄箱から上履きを取り出し、学校を出る。

『…結局あれから』
荻野は美歩が作ってくれたココアを飲みながら溜息をつく。
美歩が荻野に話しかけようとした時にインターホンが鳴る

「あの、浩一君と同じ学校の神原茜と申します…。浩一君に荷物を渡しに来たので」
茜はインターホン越しで美歩に話しかける。

美歩が扉を開けると茜が荷物を持って立っていた。
「えっと…茜ちゃんだっけ?外は寒いでしょ?なら家の中に入って入って。あ、私こうくんの姉の荻野美歩っていうの。」
美歩は後ろにいる茜にクスリと微笑む
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