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ロックされています  プロを目指せ  名前: 疾風騎士  日時: 2012/10/27 23:27 修正9回   
      
このHN、そして小説サイト…ずいぶん久々な気がする。正直半年以上のブランクは痛い、この小説はかつて、他のサイトで書いていたが閉鎖により保存していなかったため、残念ながらほぼ全ての話を消滅させてしまった…。
ならばここで書き直すまで…
※このスレでは私以外の書き込みを禁じます。

第1章〜氷水高校へ〜 >>1-30
第2章〜夏の大会編1年〜 >>31-65
第3章〜荻野中学編〜 >>66-82
第4章〜主戦力の穴と新戦力編〜 >>83-100
第5章〜2年生編〜 >>101-
記事修正  スレッド再開
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2012/11/20 23:48  No. 19    
       
第19話〜美歩と浩一と…〜

荻野はちょっと考えた末姉・美歩と一緒に着ていることを思い出す。
「お姉ちゃん〜、この服どう…かな?」
荻野は少し照れくさそうにする。
美歩は荻野の服装をマジマジと見る。こしこれが逆の立場でギャルゲーだとしたら「そ、そんなに見ないで…///」という主人公に水着姿を見られたヒロインが恥ずかしがったボイスが流れるだろう。だが、残念ながら立場が逆の上これはギャルゲーではない。

「うん、おっけ。私的にいいと思うよ。」
美歩は親指をグッと立てる。
「あ、ありがとう…。」
荻野は美歩に表情を見せずに後ろを向く、そこまで照れくさかったのか。ますます荻野が女じゃなかったのが残念に見えてきた。
その後、何着か美歩に確認してもらった。
荻野は財布の中身を確認してからレジへと向かおうとすると
「待って、こうくん」
美歩に呼び止められる。

「いいよ、こうくん。今日は私が出す。」
美歩は荻野からカートを取りレジへと向かう。
荻野は美歩を呼び止めるが美歩には聞こえず、美歩は手早く会計を済ませる。

「はい、こうくん。」
会計が終わると荻野に服が入った袋を手渡す。
「ありがとう、お姉ちゃん。」
荻野は少し申し訳なさそうな顔をしながら美歩にお礼を言う。
少し、お腹がすいてきた感じがする、でもこのタイミングで言うのはあまりにも図々しいのではないか?荻野はそう思い、美歩に言わずにいた。
美歩は店から出ながら
「お腹すいちゃったね、どこかで何か食べよっか」
荻野の方を向き昼食はどこで食べるか聞いてくる。
まるで荻野の事を理解するかのように優しくリードをする、美歩。美歩は元から優しいがここまで優しいのは珍しい。そして荻野はこのとき「今日はあまえていいのか?」とふと思った。
「え、じゃあ…最近出来た。あの店が…いいな。」
荻野は少し言葉が出てこなかったのか言葉に詰まる。それもそのはず。やや割高で2人で食べれば3000円近くかかるからだ。
「あ、あの店ね。私も気になるしいいよ!そこで食べよ。」
美歩はニコニコしながら歩く。値段は高いが味には評判があるから、大学生や社会人からは人気の店だ。しかし高いため高校生は中々来ない。

「あれ?みっちゃん?」
後ろから美歩を呼び止める声が聞こえる。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2012/11/21 00:16  No. 20    
       
第20話〜祝い〜

「え?ゆっきー!?久しぶりじゃーん。」
美歩はゆっきーと呼ばれる女性に気づくと自然に笑みがわき出る。

「みっちゃん、今日何してたの〜?…隣にいるのは弟さんだっけ?」
ゆっきーは荻野のことを見ると即座に弟と答える。しかし、荻野はあまりゆっきーの事を覚えていない。ただ声は昔聞いた記憶がある。

「これから、こうくんとお昼を食べようって思って…。
そうよ、でも。こうくんはあなたのことあまり覚えてないと思うわ。だってこの子とあったのってこの子がまだ中2の時でしょ?」
美歩は荻野の頭にひよこが浮かぶ前にゆっきーに答えを言う。覚えているのは声だけだがおぼろけながらおもちゃにされたのも覚えている。

「そうなの…かな?まぁ、年齢違うし一度しかあったことないから仕方ないよね。じゃあ、2人の邪魔をするといけないから…またね。みっちゃんに弟くん。」
ゆっきーは手を振りながら2人の前から去っていく
美歩はゆっきーの後ろ姿が見えなくなってから荻野と目的地を目指す。お店は駅ビルの中にあり、中は土曜日という事もあってか結構賑わっている。
荻野と美歩は席に着くとウエイトレスがメニュー表と水を提供する。
美歩はメニュー表を見ながら
「こうくん、なんでも食べたいのを選んで良いから。今日は私のおごりだからねっ。」
やはり美歩は特に今日は特に優しい。
「え、あ…いいの?その、服も奢って貰っちゃったし」
荻野は申し訳なさそうな声を出す。

「ん?いいのいいの。中学卒業したばっかの奴が姉の財布を心配するな」
荻野に心配させまいと軽くウインクをする。
本当は美歩だって自分の娯楽のために使いたいはずだ、でもそれ以前に今日はそんなことより弟の事を思えばそんな気持ちにはならない。それくらい弟の喜ぶ顔が見たいのだ。

荻野はなるべく安いのにしようとしたが、欲に負けて少し値がはるのを注文し、来るのを待つ。
「お姉ちゃん、今日はありがとうね。いろいろと…」
荻野は満面の笑みを浮かべる。

「ん、別に良いよ。結構遅れたけどこれが私からこうくんへの合格&入学祝いだから。遅れてごめんね?本当は高校に受かってすぐやってあげたかったけれど…私もいろいろ忙しかったから。こうくんが嬉しそうでなによりだよ、…改めて高校入学おめでと!こうくん。」
美歩は荻野の子供っぽい笑顔に見とれそうになりながら祝いの言葉を送る。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2012/11/23 01:55  No. 21    
       
第21話〜紅との出会い〜

大橋監督が宣言した通り、ついに紅白戦が行われる。メンバーは口頭でも発表したが部員全員にチーム分け及びオーダー表が記入されたプリントが配られる。すると、プリントを見た一部部員からは思わず笑い声が飛ぶ。
何事か。と思い荻野たちもメンバー表を見ている。

「…ははっ、そういうことかよ。ぜってー監督先発投手は名前で決めたろ。」
黒木もメンバー表を見ながらケラケラと笑い出す。

メンバー表はこうだ。
紅組
1番二橘(1年)
2番中荻野(1年)
3番三高橋(3年)
4番一諸口(2年)
5番遊松元(3年)
6番左稲本(1年)
7番捕高峰(3年)
8番右斎藤(2年)
9番投紅(1年)

白組
1番中岡島(3年)
2番右松島(1年)
3番一島田(3年)
4番捕影浦(3年)
5番投白瀬(3年)
6番三田島(2年)
7番二井上(3年)
8番遊池田(2年)
9番左黒木(1年)

「な、なるほど…紅組だから紅で白組だから淳か…でもまぁいいんじゃねぇか?」
影浦は苦笑を浮かべる

白瀬は軽いストレッチをしながら
「…ああ、特に俺とあいつが別チームで先発同士なのは俺にとってもあいつにとっても好都合だろうな。」
白瀬は紅の方をみながら淡々と言う中に何かを感じる。

紅はメンバー表から顔を上げると
「…面白い。これは好都合だな」
紅は珍しく笑みを浮かべる。

荻野は紅の肩をちょんちょんと叩き
「紅…君だよね?今日はよろしく。」
「…ん?ああ…荻野だっけか?ああ、こちらこそよろしく頼む。…今更改めて自己紹介するのもアレなんだが…まぁお前とはまだ絡んだことないしな…。
俺は紅優生、右投げ左打ちの投手。氷水には特待生として入学した。」
荻野と紅は今まで一度も絡んだことがなく今回、初めて会話を交わしたのである。
しかし、紅の素振りからすると橘と黒木とは既に絡んだような口調だ。

「僕と優生は同じクラスだから何度か話したことあるんだ、で、タカとは同じ中学らしいよ。」
橘は紅と荻野の会話に入り込む。
そして、紅は会話を打ち切り前方を見つめると偶然にもばったりと白瀬の目線が合う。今の2人には近づけない、それくらい2人は闘志を燃やしていた。

ついに紅白戦が始まる、紅組が先攻で試合が始まる。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2012/11/23 13:53  No. 22    
       
第22話〜紅白戦開始!〜

実は先日配布された氷水高校野球部のユニホームを着用して試合するのは今回は初めてだ。そしてユニホームの上から紅組は赤色のビブスを着用し白組は白色のビブスを着用しているが、おそらくこのビブス野球部の私物ではなかろう。

「さて、と。僕からか…」
橘はヘルメットを被り金属バットを持つと打席へと走る
「ども。」
橘は打席に入ると影浦に一礼する。

白瀬は「プレイ!」と合図がかかるとすぐに投球動作に入る。
橘は初球は何で入るのか待ち構える、ボールを打ちに行くがその時には既にボールは影浦のミットの中だ。
「おい、淳!ど真ん中ってどういう事だ!…橘、紅白戦とはいえガチでやらせてもらう。」
影浦はマウンド上の白瀬に怒鳴る。

『は、速い…』
橘は驚愕した表情で白瀬の方を見つめる。今までに体感したことのない速さ、これが氷水高校のエースの実力なのか。
橘はその後タイミング合わずに三球三振に倒れる。

「あ、荻…予想以上にあの人の球速いぜ」
橘はあ〜ぁとガックリ肩を落とす。

荻野は少し緊張した顔で
『白瀬さんってどんな投手なんだろう。」
球は速いことは分かった、だが持ち球が分からない。

橘同様、荻野も初球を見逃してしまう。
『こんな速いの見たことない…でも、見ているだけじゃあ…』
荻野は初球見逃したことを後悔する。

荻野に対する2球目を投げ込む、荻野も一か八かで合わせるかのようにバットを思いっきり振り当てに行く。

弱々しい金属音がし、打球は三塁ファールゾーンへと飛ぶ。
荻野は即座にタイムを取り打席から外れ両手をパタパタと上下させる。
『当たったのはいいけど、手が痺れた〜』
白瀬の速球に何とか合わせたためか手が痺れたようだ。

「当てたと言うより当たった感じだな…。」
高橋は打席の荻野を見ながら冷静に言い放つ。
荻野の当たったという打撃は当然白瀬や影浦も理解している。
だが、念を入れるように荻野への3球目は変化球だ。スパァンと影浦は気持ちの良い音を鳴らすように捕る。

『ここで変化球か…』
荻野はストレート待ちのスイングをして完璧に間を外されたスイングだった。
高橋は荻野の最後のスイングを見て珍しく眉間にしわを寄せる。
『あれじゃあな…。ま、試合が終わってから荻野に言った方が良いな』
高橋はどうやら荻野の欠点を発見したらしい。
その後高橋が凡退し攻撃終了
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2012/11/23 19:24  No. 23    
       
第23話〜紅優生の実力〜

「白瀬先輩、俺は先輩、あんたからエースナンバーを奪って見せますよ。」
白瀬は自軍のベンチに戻るときふと、紅が以前入部してすぐに白瀬に言い放った言葉を思い出した。

「紅、見せて貰うぞ久里浜シニアを全国優勝に導いたお前の実力を!」

白瀬の発言により、白組ベンチはざわつく。
「全国優勝右腕!?しかも久里浜シニアだとぉ!?」
池田は取り乱す。
「…んで、んな奴が氷水に…奴なら新横でも大阪松蔭でもいけるだろ!?つーか誘いが来ただろ!?」
影浦は口に含んだスポーツドリンクを思わず吹き出す。

『高校に入って初の試合…それも白瀬先輩、あんたと投げ合えるってのは最高だ。』
紅はロージンを手に付ける。

「優生!久しぶりだなぁ!久里浜を全国優勝に導いたんだろう?」
岡島は打席に入ると紅に声をかける。
…だが、しかし。紅は無視する。なぜならば、今の紅には興味のない存在だからだ。
即座に投球動作に入る。紅はボールを弾き出すようにミットをめがけて投げる。
1年とは思えない球速が出ただろう。岡島はただただ唖然とするしか無かった
『あいつ〜、無視しやがって…可愛げのない奴だよ、まったくってもあいつここまで速い球投げれるのかよ!?』
岡島は紅にスルーされて穏やかな気分ではいられない。

『あんたの単調さはよく知っていますよ…先輩♪』
紅は先輩である岡島を見下ろすかのように投げ込む。
紅が選択したのは岡島が苦手とするシュートボールだ。岡島は反射的にバットに当てるもツーナッシングと追い込まれ、最後は高めのストレートで空振り三振を奪われる。
続く2番の松島だが、こちらは紅とはシニア時代一度対戦したことがある。
『大会でこいつにノーノー食らっちまったんだよな…こいつの真っ直ぐはまず打てなかったしな』
松島は弱気で構えていたのを紅に見透かされたのか上から目線でオールストレート勝負で空振り三振に打ち取る。

「…ふ、早速本領発揮か…久里浜のドクターK紅優生…。」
白瀬はふとした笑みを出す、その笑みは後輩ではなく純粋にライバルとして面白いと感じた笑みだ。
島田はなんとか粘るが紅に三振を取られる。紅は3者連続三振で1回裏の守備を終える。
突如強風襲う、この試合を暗示するかのような。そんな強風だ。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2012/11/23 23:26  No. 24    
       
第24話〜紅白奪三振SHOW!〜

白瀬は初回2奪三振対する紅は初回3奪三振。
今のところ三振以外の結果に終わったのは高橋充、彼だけだ。

2回の表は白瀬の前に3者連続三振を喫する。
2回の裏、先頭の影浦が特大ファールを打ったり強烈なファールで粘るが最後は弱点である緩急にやられ、三振を奪われる。
白瀬も粘り9球目を打つがサードを守っている高橋の好プレーにヒットを阻まれた、田島はホップするかのようなストレートにやられ、三球三振に倒れる。

3回は両チームとも三者三振に打ち取られる、いつまで続くのだろうか?この奪三振ショーは。
先ほどから鳴り響くのは心地の良いくらい良い音がするミット音と空を切るバットの音だけだ。
金属音は白瀬の打席以降長らく聞こえてこない、いい加減聞こえて欲しいものだ。

4回裏、2者連続三振の後島田が粘りに粘って出塁する、今日初めてのランナーだ。
島田は紅の集中力を削ぐように塁上をうろちょろする。紅は2度、3度と牽制を入れる、そのたびに島田は塁に戻る。
流石に4度目はないだろう、と島田が気を緩めた隙に───紅が1塁方向に振り向き先ほどよりやや速く牽制する、島田は戻りきれずにアウトとなる。

立ち上がりベンチに戻るときに紅と目線が合う、その瞬間思わず島田は背筋が寒くなる。
紅は島田のリードなんて気にしてはいなかった、紅は島田の事をまるで羽虫を見るかのような目な冷たい目でみていた。
今の紅にとってはチームメイトも相手チームも興味ない存在だ。
───ただ、1人を除いてだ。
1年投手に苦戦し、ベンチがざわめく中静かに戦況を見ていた男は、ゆっくりと静かにマウンドに上がる。
5回表、白瀬は諸口に初ヒットを許す、しかし続く松元を三振に打ち取り、稲本を併殺打に打ち取る。
5回裏、こちらも先頭の影浦にヒットを許す、打球は左中間を破る間に影浦は巨体を揺らしながら2塁を陥れる。
紅はフーッと息を吐き、キッした表情で白瀬を見る。
冷たく攻撃的な眼その瞳の中に闘志をたぎらせて紅く燃える炎がある、冷たいながらも闘志を燃やしている。
紅にとって白瀬は氷水高校のエース、先輩として信頼する存在と同時に自分が越えたい壁でもある。
紅は気合いを込めたストレートを投げ込む、白瀬も応戦するかのように打ちに行くが、紅に適わず凡退する。後続も三振に打ち取る。
2人のドクターKの演劇が終わらない。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2012/11/24 01:23 修正1回 No. 25    
       
第25話〜終幕〜

6回表、高峰、斎藤共にあっけなく三振に打ち取られ、紅の2度目の打席がやってくる。

『紅…、何度も言うが俺はお前に負ける気はない…。』
白瀬は静かに風を感じながら影浦のサインに頷く。
紅は白瀬の甘く入った初球をフルスイングで捉える。打球は今日一番の伸びを見せるが、フェンス手前で失速し、ライトフライに倒れる。

「相変わらずビミョーに球が軽いな、おい。」
影浦はベンチに戻りながら白瀬に向かって呟く。

『紅優生、あいつはシニアで飛び抜けた投手の才能で騒がれていてあまり話題にないがあいつはバッティングも得意と一部で言われていた…、今はあいつには打たれたくない、あいつだけには…。』
白瀬は影浦に話しかけられたことに気がつかず考え事をしていた。
事実、紅はシニア時代はクリーンアップの一角を担っていた、今回は下位打線ではあるが…本来はもっと上の打順でもいいだろう。

6回裏、この回の先頭田島を簡単に三振に打ち取り、井上と池田をポップフライに打ち取る。
7回表は橘がバットに当てるが結果はファールチップで三振、続く荻野はこちらもなんとか当てるが崩れた打撃でピッチャーゴロに終わる、高橋はこの打席も粘るが高橋の力では白瀬には適わない、結局空振り三振に取られる。

7回裏、この回紅は少し長い間合いを取るようになってきた。
投球もボール球が増え、浮いた球も少しずつ増えてきた。
それでも、なんとか打ち取るがこの回は初めて奪三振0に終わった。
疲弊してきた紅を援護したいが、そうはさせないと言わんばかりに白瀬は全力で紅組をねじ伏せる。

8回裏先頭の島田を簡単に打ち取り、4番打者影浦を迎える。今日一番紅にタイミングが合っている紅にとっては厄介な打者だ。

初球は手が出ず、見逃す。2球目は外れてボール、3球目を影浦は打ちに行くが空を切る。
そして4球目。

───紅は決めに行ったがボールが滑り力のない球が吸い込まれるかのように真ん中へと行く。

影浦がそれを見逃すはずがない。

───カキィィィン!
鋭い金属音が鳴り響く、豪快に引っ張った打球はレフトの防護ネットに突き刺さる。

影浦はベースを一周しながら
『よく頑張ったな、1年。だがこの試合白瀬の勝ちだ』
影浦は紅の健闘を心から称える。
紅は僅かな気力で後続を打ち取る。

結局、最後は三者連続三振で終わり0-1で終了する。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2012/11/24 14:28 修正1回 No. 26    
       
第26話〜敗北〜

紅は紅白戦後ロッカーロームに戻っても1人ユニホームから着替えず項垂れていた。その様子に何人か励ますものがいたが紅は、聞こえていないのか反応しなかった。

『打たれた…影浦先輩に完璧に…何がよく頑張っただよ…俺は負けたんだ。失投も疲れも関係無い、単純に俺はあいつに…白瀬先輩に投げ負けたんだ。』
紅はギリギリと歯ぎしりを立てる。

「…負けたのはいつ以来だ?相当久しぶりだろう?」
白瀬は俯く紅の前へ立つ。

紅は長い間負けて無かった。久々に味わうドロドロムカムカする感触、これが負けだ。

紅は白瀬の存在に気づき
「何ですか?先輩もとっとと着替えないと風邪引きますよ」
紅は今は誰にも話しかけられたくない、そのような雰囲気が鋭く強く漂っていた。

「今日の紅白戦、お前もよくやったが…俺の勝ちだ。」
白瀬は紅の健闘を称えながらも紅にはっきりと負けを宣告する。

紅はそれを聞いた瞬間にキッとした表情で白瀬を見つめ
「あんたまで、そういうのかよ!粋がった1年がエースに喧嘩を売っておいて、結局負けたんすよ?…これほどの恥辱はないですよ…。」
紅は抑えきれない感情を白瀬へとぶつける。

白瀬はやれやれという仕草をしながら
「紅、お前は素晴らしい投手だし。入ってきてすぐなのにここまで好投するのは正直予想していなかったが、流石はシニアNo.1投手と言ったところか…。
だがな、紅お前の敗因は自分の世界に入りすぎた。初回からエンジン全開で飛ばし、終盤にはスタミナ切れをおこし影浦に被弾…シニア時代は無尽蔵と言われたお前が簡単にスタミナ切れになるとは思わなかった…確かに全力で来たから抑えられたのもあるかもしれない、だが試合展開やイニングを考えず俺に勝ちたいだけでそれ以外は考えていなかっただろ、展開を考えれば疲弊はしないし影浦にも被弾しなかったはずだ…。
まぁ、お前はクールなくせに熱くなると火傷しそうなほど熱くなるからな、久々の今は敗戦で悔しいだろう?
…俺の最後の夏が終わるまで何度も俺からエースナンバーを奪うことに挑戦してみろ!何度でも受けて立つ、だがエースナンバーは渡さないぜ!」
白瀬は敗戦のショックを引きずる紅にあえて煽り何度でも挑戦してこいと紅に言い放つ。

白瀬と紅、似たもの同士の両者。
学年は違うとはいえど、この2人の競争は白熱したものになりそうだ。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2012/11/24 23:26  No. 27    
       
第27話〜欠点〜

日曜の練習日、気温も温かく春らしい日差しが照る、こんな日はどこか出かけてたいでも、それができない。でも、部活がある。

「『外野手って言ってたけど…どう見ても野手じゃあない、打撃が絶望的に苦手な中学生投手の感じだ。』荻野、ちょっといいかな…?」
高橋は荻野の打撃練習を観察しながら、この間の試合中と同じ欠点を発見し即座に荻野の元に駆け寄る。

荻野は練習を中断し、高橋の方を向く。
「先輩、どうかしたんですか?」
「ん?荻野。君ってさ、中学の時バッティングはどうだったの?何番打ってた?」
高橋はまず中学時代について質問をする。

荻野は思い出すように考え
「えっと…、足の速さを買われて1番を打ってたんですけど、基本的に打撃が苦手で…」
荻野にとってはあまりいい思い出はないので苦笑する。

高橋は顔に手を当てて
「…打撃があまり得意じゃない俺でも、君の欠点を見つけることが出来たのに…中学時代の野球部の監督は何をしていたんだ?と思うけどね、君が打てない理由は最後まで見てないし、フォームが滅茶苦茶だよ、まずはフォームを固めなさい。さ、練習再開だ。」
高橋は荻野の欠点を指摘すると即座に去り、再び荻野の観察を始めようとする。

『ど、どういうことなんだろ…?言ってる意味が…』
荻野は野球が好きだが今まで野球に対し真剣に考え悩んだことがない、そのため自分のフォームについても深く考えたことがない。
フォームも時々代わり安定していない。だが、高校野球で遊び感覚は許されない。特にこの激戦区神奈川県では。

何回打ってもヒットしない、それどころかフォームを思い浮かべて打っても即座に崩れる。
ヒット性は皆無で打撃練習を終える。

「荻野、選手のタイプは違うけれど。どうせなら影浦のバッティングフォームをマネしたらどうだい?」
高橋は落胆する荻野に優しく声をかける。

影浦のバッティングフォームは、プルヒッターではあるがタイミングの取り方は素晴らしく、クセのある動作がない。まさに平均的な打撃スタイルと言えよう。
高橋の言うとおり、まずは影浦のバッティングフォームをマネしてから自分のバッティングフォームを作った方が良いだろう。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2012/11/27 22:57  No. 28    
       
第28話〜影浦と荻野〜

「『まずは荻野のバッティングを中学生以下から高校生レベルの打撃まで底上げろか…ったくめんどくせぇな…。』そもそも俺とアイツじゃあタイプ違うし…」
影浦はユニホームに着替えながら愚痴る。
なんとか、表情には出さないようにしているが口ぶりからは面倒くささが伝わってくる。

グランドに出て準備運動を終えると、練習を始める。
今週は1年が最初に打撃練習を行う。
つまり影浦は荻野の打撃を見ながら指導しなければいけない…まったく、面倒臭いことだ。…という態度を抑えつつ荻野の打撃練習を見る。
───が、いきなり呆れる。
呆れて溜息しか出ない…それでも荻野の打撃練習を見る。
バットに当たっても響く音は弱々しい金属音。
「『やれやれ、こんなんじゃあ…どこから指導していいのか、逆に分からないな…これなら素───』なっ!?」

───キィィン!

鋭い金属音と共に弾丸ライナーでフェンス近くまで打球を飛ばす。

影浦は思わず目が点になる
「あいつ、あんなバッティング出来るのか…!?」
影浦は荻野から見たことのない強い打撃に驚きを隠せない。
だが、結局その後、鋭い打球は飛ばず凡打やポップフライレベルのあたりだけだった。

「『さっきのアレはなんだったんだ?マグレあたりなのか?…だが、おそらく…』荻!ちょっと来い!」
影浦は力強い声で荻野を呼びつける。

荻野は影浦の近くに行くとヘルメットを取り影浦を見上げる
「なんですか?先輩」
荻野は何も分かっていないような顔で言う。

影浦は荻野の無邪気すぎる笑みにイラッとなりそうな感情を抑えながら
「…この間高橋も言ってたと思うが、打撃フォームを固めろ。俺は教えるのは悪いが上手くはねぇ、だからタイプは違うとはいえ俺のバッティングフォームをマネしてみろ。…こうだ!」
影浦は言い終わると金属バットを手に取りお手本のようにスイングをする。

影浦はバットを手に持ち荻野の近くへ腕を伸ばす。
どうやら、荻野にマネしてみろということらしい。

「こ、こうですか?」
荻野は影浦のフォームをなんとなく意識しながらスイングをしてみる、当然マネで慣れていないため不細工で汚いが影浦のお手本に近いフォームだ。

影浦は頭をポリポリとかきながら
「ああ、そうだ。とりあえず今から俺がいいぞというまで素振りしろ」
影浦はややきつく言う。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2012/12/29 00:35  No. 29    
       
第29話〜ある夏のマウンド〜

帽子から汗が滴り落ちる、セミの鳴き声が耳を劈く。ある少年は肩で息をしながら打者の方を見る。

「おい、速く投げろやぁ!」 「ちんたらしてんじゃねーぞゴラァ」
相手ベンチから野次が飛ぶ。

「ピッチャー落ち着いて〜!」 「頑張れ〜」
ベンチとバックからやや小柄な少年に声援を送る。

「最初のいい球はなんだったんだよ、マジでよぉ!」
相手の打者は容赦無く甘く入った真っ直ぐを打ち抜く。
スコアの数字が7から8へとなる。
試合はまだ2回、この回だけで彼が8点も失ったことを示す。

「『恐い…投げるのが…恐い、恐い…。』」
小柄な少年は俯き、次の打者が入るまでずっと俯いていた。

「『この人だ…恐い、また打たれる…。』」
少年は打席に入った大柄な打者相手を見つめる

大柄な打者は小柄な少年の顔を見ていきなり笑い出す
「おいおい、お前ぇ何涙目になってんだよ、試合中だぞ?ばっかじゃね〜の?おい!」
まるで小柄な少年をさらに追い込むように嘲笑する。

「五月蠅い五月蠅い五月蠅い!」
その小柄な少年はやや怒りながら投げ込む。

しかし、怒りながら投げても甘く入っては意味がない

─────キィィィィィン

───

──

荻野は息を切らしながら飛び起きる
「っああ…って夢か、あの時のことは思い出したくないのに…この学校入ってから、あの時の夢を見る回数が増えたな…。」
荻野の顔と髪は汗なのか?ぐっしょり濡れていた。

ふと、時計を見ると時刻は2:49を指していた。

「まだこんな時間か…でも、今はねる気にならないし…飲み物飲んで落ち着くか。」
荻野は冷蔵庫へ向かい、冷蔵庫から烏龍茶とロールケーキを取り出す。

荻野は次にテレビを付け、ケーブルテレビで何かやってないかチェックする。

『4年前…僕が中1の夏頃にこの家に引っ越してきた…最初は受け入れることが出来なかったし、辛かったな。…今思えばあの時は本当に辛かったな…。」
荻野は偶然にもメジャーリーグ中継を見つけ、野球中継を見ながらロールケーキをほおばる。
夜更かしはいけない、そんなこと分かっている。
でも、今は好きな物を見て気分を和らげたい、朝起きるのが辛くなろうが、今は何も考えたくない。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2012/12/30 00:43 修正1回 No. 30    
       
第30話〜ガールズ・トーク〜

授業終了のチャイムが鳴り、教室では各々昼食を食べ始める。

「はぁ…」
茜は教科書とノートを鞄にしまうとふと溜息をつく。

「あっかねー!どったのタメ息ついて〜。あー!さてはお前…好きな人でもできたのかー?」
いきなり茜の頬をぷにぷに触るように後ろから飛びついてきたのは茜の友達である早坂恵理(はやさか・えり)である。

茜は一瞬ビックリする。
「うわ、…ってえりりんか。脅かさないでよ、もう!」
茜は少し声を荒げる。

恵理は少ししゅんとするが
「う〜、怒らなくてもいいじゃないか〜、怒った顔も可愛いけどさ〜。」
恵理は間延びをした言い方をする、天然で明るくムードメーカーのため彼女がいたら楽しいだろう。

「おっさんか、お前は。」
ポカッと恵理の後頭部を叩く、彼女も茜の友達である有田甘奈(ありた・かんな)である。

「うぇ!?甘奈ぁ?いいじゃないか〜女同士だしさ。」
恵理はニヤニヤしながら言う。

甘奈はフッと笑い
「ま、あなたの勝手だし…私は何も言わないわ。で、茜いるの?…気になる人?」
甘奈は茜の異性関係についてざっくりと聞き出す

茜は困り顔になりながら
「え…?いるわけないじゃん、いないよっ…まだ。それに、さっきのタメ息もそんな変な意味ないよっ」
茜の顔はうっすら赤くなっていた。

「へぇ、でもっさ、アカネー。野球部のマネージャーやるならさ〜制服より体操着姿の方が絶対いいよ〜そっちの方が可愛いし動きやすいじゃん、それに…」
「まぁそれに制服だと汚れちゃう可能性もあるしね、うちの学校はブルマだしブルマ姿が恥ずかしいなら上からジャージ穿けばいいじゃない?…ところで、さっきのタメ息の意味は何かしら?」
甘奈は恵理が言いかけたことに上乗せをして言う。

茜は少し照れながら
「あ、ありがと。ジャージ姿かぁ〜そうだね、そっちの方がいいかも、ね。はぁ〜GW明けテストだよぉ〜いろいろ忙しすぎて勉強する時間少ないし〜」
茜はGWあけに始まるテストで焦り落ち込む。

「はあぁ〜嫌なこと思い出させないでくれよぉ〜、アカネェ〜助けてよぅ〜。」
恵理は項垂れながら茜にしがみつく。

甘奈は曲を聴きながら
「嘆いても仕方ないわ、勉強して挑むしかないでしょう?」
甘奈は表情一つ変えずに正論を言う。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/01/29 20:30  No. 31    
       
第31話〜練習試合直前〜

茜は甘奈と恵理に言われた通りにさっそく、この日から体操着姿で部活動に出ることにした。

「監督、こんにちは〜」
茜がグラウンドに出ると一部の部員の視線が釘付けになり、茜は2つ後悔した。
1つは体操着姿を見られるのが恥ずかしいこと、これは慣れれば問題ないが…もう1つは…寒いことだ。暖かいと思っていたら予想以上に寒かった。

黒木は茜に近づき
「アカネちゃんの体操服姿、めっちゃ似合ってんじゃん。超可愛いじゃん!」
黒木は少し声が大きくなる。

「『黒木くんの言うとおり、茜ちゃんの体操着姿ってやっぱ可愛いな…中1以来に見たけど』」
荻野は茜の体操着姿をじっくりと見る。

「…荻、見過ぎ。気持ちわかるけど」
橘はポンポンと荻野の肩を叩く。

「い、いや。別に僕はそこまでみてない…けど…」
荻野はビクッとしながら茜から視線を逸らす。

いつも通り3人で盛り上がっていると、どうやらもう練習が始まるようだ。
1年生はまだまだついてこれていない印象だが、それでも最初の時に比べるとマシになってきただろう。

軽めの練習を終え、小休止後ノック等の練習を始めるのがいつもの流れだが、今日は本格的な練習に移る前にどうやら、大橋から話があるようだ。

「1年生にとっては突然の話で申し訳ないけれど、5月4日に埼玉県の会田高校と練習試合を行うことにしました。まぁ、2年生や3年生はご存知の通りだと思いますが、私の弟が会田高校OBという縁もあり、3年前から定期交流試合を組ませていただいております。会場は埼玉の川口公園野球場にて行います。また、スタメンはそのときに伝えます。以上!」
大橋は連絡を終えると少し休んだら再開するというニュアンスをいつもより強めに言う。

紅は会田高校と聞くと一瞬顔色が変わる
「『会田高校…か。』」
紅と会田高校に何があったのかはわからないが、紅にとっては何かがあるのかもしれない…。

黒木はスポーツドリンクを手に取りながら
「なぁ、荻。会田高校って強ぇのか?いきなり県外試合で埼玉とか…試合はうれしいけどだりぃ。」
黒木は怠そうな顔を一瞬するが、一気にスポーツドリンクを飲み干し、切り替える。

荻野は少し考え込み
「…いや、僕も分からない。」
荻野は少し残念そうに答える。
荻野たち1年にとっては初の対外試合試合に出れずとも学ぶものはあるだろう。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/02/10 13:36  No. 32    
       
第32話〜埼玉上陸〜

学校の最寄り駅を出て2時間30分費やしてようやく会場の最寄り駅へと到着する。

景色は少し寂しいが、それでも都心に近い恩恵か埼玉県では恵まれている方かも知れない。
5月初旬だというのに、埼玉は意外に寒いのである。これは地理的に仕方のないことなのだが…

影浦は駅に降りると一つ伸びをする。
「ようやく、着いたか…試合前だけどすげぇ疲れたぜ」
影浦は眠そうな声で言う。

高橋はその様子を見ながら
「はは、そりゃあね…それに君はここまでずっと寝ていたから怠いだろうね。」
高橋は爽やかな笑顔で言う。

「仕方ないだろ?遠いからよ。って淳は?」
影浦は言い終わると欠伸をする。
影浦は白瀬がてっきり近くにいると思い込んでいたためアレ?と思う

「淳は、ほらあそこに…曲聴いてるから呼んでも気づかないと思うけど…って勝一が遅いだけだけどな」
高橋は少し影浦をからかう。

影浦は少し黙り込み
「っせーな…って1、2年もいない…マジで俺達が最後か。」
影浦はあたりに高橋以外誰もいないことに気づき落ち込む。

影浦と高橋は仲良く会話しながら球場へと向かった。
川口公園野球場はお世辞にもきれいな球場とは言えないが、やや狭いが練習試合をするには申し分のない球場ではあることは確かだ。

大橋は会田高校の監督に近寄りぺこりと頭を下げる
「お久しぶりですね、扇監督。いい1年が入ったと聞きましたよ?」
大橋は親しそうに声をかける。

「ええ、1年ぶりですな大橋監督。今年度もよろしくお願いしますよ。そちらもいい子が入ったと聞きましたが…まぁお互いに試合で楽しみにしますか、後…こちらが先にアップさせていただきますがよろしいかな?」
扇と呼ばれる会田高校の監督は大橋とガッチリと握手を交わすと自軍のベンチへと戻っていく。

大橋も氷水ナインの元に戻る。
「え〜、今日の試合は自分の足りないところを見つけながら勝ちにつなげていけましょう」
大橋は氷水ナインに檄を飛ばす
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/02/20 22:36  No. 33    
       
第33話〜練習試合〜

両チームとも試合前のアップを終え、いよいよ試合が始まる。
荻野たち1年生はベンチで先輩方に声援を送るのが役目だ、オーダー表によると会田もスタメンに1年はいない。

さて、試合が始まる。

大橋は顔をしかめながら
「やはり、あちらは澤田で来たか…」
大橋は澤田のことを気にしているのか顔に表情が出る。

だがそれも無理はない、澤田は今年のドラフト候補生No.1とも言われる逸材である。
それもそのはず大型な体格から投げるのは最速154kmのストレートにスライダー、フォークを持ち合わせている本格派右腕で競合間違いなしと言われている。

氷水の先頭打者松本が打席に入る。

初球を見送ることが多い松本はこの日も初球を見送る、コースから大きく外れているからか、見送ったかのように見えたが。見逃したのではなく反応できなかっただけである。それくらい速かったのである。

澤田は制球力に難があるためカウントを悪くするが、直球のゴリ押しを続け松本を見逃しの三振に取る。
ベンチに戻ると大橋の顔は怒っていた。
まぁ、無理もない一度もスイングをしなかった、いくら澤田が豪腕でも、一度ぐらいはバットは振れるはず、いくら打てなくても、だ。

2番の高橋は空振り三振に倒れる。続く白瀬は粘るが最後はあえなく三振に終わった。
白瀬はベンチに戻る前に一瞬澤田を見る。

「ちっ、やっぱ速いなあいつは…」
影浦は防具を着けながら愚痴る。

白瀬はベンチに戻りグラブを取りながら
「影浦、今日は久々にホットで行くぜ」
珍しく白瀬が熱くなっている
影浦は自然と笑みが浮かぶ

1回裏の攻撃が始まる
「あ、どーも。影浦くん。今年もよろしく」
田口は慣れ慣れしく話しかけるが影浦は無視する。

───ッパァァン

乾いたミット音が響く。会田ベンチは白瀬の初球に驚きを隠せなかった、それだけではない影浦も高橋、氷水も驚愕する

扇は唖然とするがすぐに表情を戻す
「白瀬に速さがあるのは知っていたがまさか1年でこれだけ伸びるとは…」
扇は白瀬に感心する

「『って〜、あいつ今まで速くても149kmだったはず…』」
影浦はマスク越しに表情をゆがめる

田口は振り遅れながらもなんとか白瀬にくらいつくが、最後はセカンドゴロに打ち取られる。

続く2番の森本、3番の高木を連続三振に打ち取り会田の攻撃を無失点に凌ぐ。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/03/19 09:26 修正1回 No. 34    
       
第34話〜白瀬の投球〜

氷水は2回表も三者凡退に倒れる。

影浦は守備位置につき、白瀬の球を受けながら
『淳が熱い時って変化球に頼らずに速球主体で行くんだよな、捕るこっちもそっちの方が気持ちいいけどなぁ…!』
影浦は自然に笑みがこぼれる。

高橋も白瀬の方を見ながら
『ホットで行く、か。…楽しみだけどねぇ…』
高橋も楽しみなのだが何か不満があるのかやや苦笑する。

「…行くぞ」
白瀬は投球動作に入り、影浦のミットを目がけて白球を投げる。

『…甘い!』

───キィィィン

会田の4番打者澤田が白瀬の高めに浮いたストレートをジャストミートで捉える。
打球は大きな放物線を描きながら、レフトスタンドにたたき込まれる。

「ちっ…。」
白瀬は腰に手を当てダイヤモンドを一週する澤田を見ながら舌打ちをする。

『これがあるんだよな、これが。速球重視にした時の淳には』
高橋はやっぱりかという顔をしながら白瀬を見つめる。

扇は笑顔で澤田を出迎える
「いい一発だな。…甘く入ったな」
扇は澤田と一言交わす。

澤田はヘルメットを取りながら
「ええ、去年よりは速いですよ。ただ相変わらず被弾癖はかわらない、かわってないです。」
澤田は冷静に白瀬のことを言う。

大橋は頭をかきながら
「…またか、いい加減被弾癖を直して欲しいものだ。」
大橋は白瀬の悪癖にあきれているようだ。

「っしゃあああ!先制点!澤田さんナイスバッティング!」
元気よくハイタッチで出迎えるのは会田の元気印荒金健吾(あらがね・けんご)である。

澤田は片耳押さえながら
「相変わらずうるさいぞ、健!…まぁそれがお前の特徴であり、チームが盛り上がる秘訣になるからいいが」
澤田は苦笑しながら荒金とハイタッチする

白瀬はその後制球を乱しながらもなんとか後続を打ち取る。

白瀬はベンチに戻ると飲み物を飲む

「また一発病が出てしまったな…淳」
高橋は白瀬の隣に座りなげかける

白瀬は汗をぬぐいながら
「…ああ、だが俺も打たれたくて打たれているわけではない…だが力任せのストレートで空振り奪うのは気持ちが良いこと、だが反面打たれやすいく制球が乱れるのは俺も理解しているし、そこが課題だ…俺の」
白瀬は自己分析をしながら打たれた原因を言い当てる
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/07/21 10:53  No. 35    
       
第35話〜決着〜

氷水ナインは澤田の剛球を捉えきれずに0行進で試合が進む。一方の白瀬も澤田に許した一発以外は完璧な投球が続く。
中盤以降互いに出塁を許すのが増えてきたがしっかりと要所を締める投球を繰り広げ得点を与えない。
エース通りの投げ合い、試合展開は速く気がついたら既に9回表を迎えていた。
チャンスを作り氷水の主砲影浦を迎える

影浦はヘルメットを抑えながら
『ワンアウト3塁1塁で1点差…俺が一発打てば逆転だ!』
影浦は気合いを入れてグッと構える

「澤さん、このイニング抑えれば勝ちだ!なんとか抑えきってくださいよ!…ってお前等ももっと声を出して応援しろよ!影野ォ!三嶋ァ!」
荒金は身を乗り出して声を大きく張り上げながら声援を送る

「いや、応援してっから…つーか今の場面はどうしても自分が登板しているならどう抑えられるかって考えてしまうぜ」
影野は苦笑する

三嶋は冷静に戦況を見守りながら
「いや、ここは普通に澤田先輩抑えるぜ?…見ろよ、2人とも相手の4番…なんつったか?影島だか影浦だか覚えていないが前の打席までと比べてフォームにガチガチに力入りすぎている、アレだけ力入っていちゃあな…それに、澤田さんもとっくに気づいているはずだ。」
影浦のバッティングフォームを見ながら抑えられる確証を見つけた。

澤田はロージンに手を触れながら
『力入りすぎだな…すぐに打たせて取るか…』
澤田はスッと投球フォームに入り、影浦に対し第1球を放る。

三嶋や澤田の予想通りに影井等は初球のシュートにつまり、打球はショート正面に転がり、あっさりと併殺打となる。

影浦は1塁を駆け抜けると天を仰ぐ
「あ〜、くそ、ひっかかったか…」
影浦は澤田の術中にはまり嘆く。

そして、両チームホームベースに集まり、一例をする。

「…やっぱ、強いな…会田は」
影浦は白瀬に同意を求めるかのように話しかける

白瀬は澤田の元に駆け寄る
「今回もお前にやられたな…やはり、目指すのか?プロを…」
白瀬は影浦を半ばスルーして澤田にプロに行くか聴く。

澤田はフッと笑い
「…いや、まずは甲子園だ。当然プロを目指すが今は甲子園が最優先事項だ。甲子園に出て優勝した上でプロに行くことが目標だ。」
澤田は当然だ!と言わんばかりに言う。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/08/27 14:20  No. 36    
       
第36話〜大会まで…〜

会田高校との練習試合が終わり2ヶ月がたち、氷水高校の野球部のグラウンドでは普段通り練習が行われいた。3年生部員はよりいっそう気合が入っていた。

それもそのはずだ、あと1週間ほどで白瀬や影浦たち3年生最後の大会が始まるのだから。
そして練習も激しくなりつつある。

橘は息を切らしながら
「…最近の練習…すっごい、キツいよね…暑いし練習量多いし…」
橘はくつろごうとしていると後ろから怒号が聞こえてきた。

「おい、橘ぁさっさとノックに参加しないか!」
大橋は声を荒らげ橘を呼ぶ

橘はビクッとしながら立ち上がりグラブを手に持ちセカンドの守備位置に向かう、しかしその足取りはフラフラであった。

荻野と紅等外野投手組は外野でポール間走を行う。
1時間したころだろうか、ようやく内野ノックは終わり内野陣には休憩が与えられる。

橘はハァハァと息をしながら仰向けに寝転がる。

高橋は2本ドリンクを持ち橘のとなりにへと向かう
「カズ(橘和巳)、お疲れ様」
高橋は軽く微笑みながらスッと左手に持ってたドリンクを差し出す。

橘はドリンクを受け取り
「あ、ありがとう…ございます。」
高橋に礼を言うとドリンクを飲む、しかし極度の疲れからかむせ返ってしまう。

「おいおい…大丈夫?落ち着いて飲みな?…カズ、君前々から思ってたけど守備凄いね、正直憧れるし羨ましいよ。それに元々三サードと聞いていたけどセカンドも上手いね、君…」
高橋は橘にボソッと話しかける

橘はキョトンとしながら
「え、ありがとうございます!いや…守備は僕…気がついたらうまくなっていたっていうか。中学の時にひたすら守備連させられていたんで…」
橘は照れくさそうに言う。

「…そうか。」
高橋は柔らかい表情で橘を見たあと空を見上げる。

練習後部室に部員全員が集合し大橋からレギュラーの発表があった。

「まず、投手背番号1は白瀬淳だ。」

「はい!」

「背番号2、影浦!…まぁ皆には悪いがこの2人は盤石だろう」

「はい、ありがとうございます!」

「ファースト、背番号3、島田!」

「はい!」

「そして、セカンド、背番号4は…橘!お前だ!」

橘の名前が呼ばれた瞬間に部室はオオッと歓声が上がる

「…え?僕…ですか?ありがとうございます!」
橘は満面の笑みを浮かべて喜ぶ
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/08/27 14:46  No. 37    
       
第37話〜1回戦の相手〜

「サード、背番号5で高橋。頼んだぞキャプテン!」

「はい、分かりました」
高橋は気を引き締めるように言う。

結局レギュラーはこのように発表された

投手  白瀬  背番号1(3年)
捕手  影浦  背番号2(3年)
一塁手 島田  背番号3(3年)
二塁手 橘   背番号4(1年)
三塁手 高橋  背番号5(3年)
遊撃手 池田  背番号6(2年)
左翼手 斎藤  背番号7(2年)
中堅手 岡島  背番号8(3年)
右翼手 岡崎  背番号9(2年)

大橋は部室から出ると井上は大橋を追いかけるかのように部室を飛び出した。

「監督!なんで俺じゃなくてあの1年がレギュラーなんですか?俺はあいつより打てますし、しっかりと練習してきました!なんでですか!それになんで…なんでベンチにも入れないんですか!」
井上は感情をぶつけるように投げかける

大橋は井上の方を振り向かず
「確かにお前のほうが打てるが、セカンドとしての能力は橘に比べてお前のほうが圧倒的下だ、今までお前は何回守備でエラーを犯した?打てるかどうかよりあいつの方がセカンドとして安定するんだよ。」
大橋は冷たく井上に言い放つと校舎へと向かう。

井上は俯いた表情で部室へと戻る。

高橋は部員全員いることを確認し前へ出る。
「えーと、キャプテンの高橋です。本日レギュラー発表があり、惜しくもベンチ入り、または残念ながらスタンドで応援することになった部員もいますが…ここで終わりじゃあ、ありません。3年になってレギュラー取れなくて辛い思いしている人もいると思う、でも応援として我々に力を貸してください!そして全員で甲子園に行きましょう!」
高橋は代表として、挨拶をし、本日はこれで解散となった。

レギュラー発表から数日が立ち、いよいよ夏の大会が始まる。

氷水高校の1回戦の相手は座間工業高校との試合である。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/08/27 23:35  No. 38    
       
第38話〜1年生レギュラー橘和巳〜

暑い夏の日差しが照りつける中全国各地で甲子園を目指し熱戦が繰り広げられている。
氷水高校は開会式の翌日第1試合、相模原球場で座間工業高校との試合を迎える。

アップを終え、試合開始を待つのみとなった。
先攻は座間工業高校、後攻は氷水高校なった。

両校ともホームベース前に集合し
「よろしくお願いします!」
気合の入った挨拶と一礼をすると、氷水高校ナインは守備位置へと散らばった。

「1回の表座間工業高校、1番ファースト飯田君」
ウグイスのアナウンスとともに飯田は打席へと向かう。

飯田が打席に入ると試合開始のサイレンが球場に鳴り響く。

橘は守備位置で一つ息を飲む
『や、やっぱ…緊張するなぁ…』
橘はまだ落ち着かない感じだった。

白瀬は投球モーションに入り飯田に対して、この試合の第1球目を投じる。

しかし、ややスライダーが甘く入り飯田に打ち返されてしまう。

打球は痛烈なあたりで一二塁間を抜けようかという打球に橘はなんとか捕球し、一塁に送球しようとしたがややファンブルしかけて、結局飯田に内野安打を許してしまう。

飯田は一塁ベース上から橘の背中にガンを飛ばす
『ちっ、あのクソチビ…ヒットになったからいいものの…俺のツーベースをもぎ取りやがって』
内心イラツイているのかずっと橘にガンを飛ばしている。

『…アウトは取れなかった、か…だが助かったぞ橘』
白瀬はホッと一息つく。

高橋はアウトにできなくて悔しがってる橘にニコッと軽く微笑む

「2番レフト吉田君」
2番の吉田が打席に入る。

白瀬は影浦のサインに頷き投球モーションに入り、吉田に対して第1球目を放る、やや真ん中高めに入るストレートが決まり、まずはワンストライクをとる。

影浦は白瀬に返球しながら
『今日はあまり制球力がいつもに比べるとないと見るか…ならば』
影浦は白瀬にサインを送り、白瀬もそれにうなずき、2球目を放る。

吉田は白瀬の甘めに来たシュートにつまり、橘の真正面へと転がる、橘は丁寧に捕球してしっかりとショートの池田へと送球し、池田から島田へと渡りゲッツーで打ち取る。

「3番キャッチャー子安君」

白瀬は子安を簡単に追い込むもそこから粘られ、8球目を弾き返される。

『今度こそっ…!』
橘は打球を追いながらしっかりと捕球し、今度はしっかりと一塁へと送球した。
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