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第1話「桜の季節」 毅「勇人」 桜の樹の下で、本多勇人は名前を呼ばれた。振り返らなくても相手はわかっている。「勇人」と呼び捨てするのは一人しかない。横に並んだ永倉毅を見る。それには顔を少し上に向けなければならなかった。勇人が小さいのではない。毅は身長170センチでクラスでは1番だ。毅はそれよりも大きいのだ。背だけではない。肩の幅、腕の太さ、腰の周り黒い学生服がガッシリと張っていた。 毅「ええ天気だ」 二人の上に4月の空が広がっていた。青い、青すぎて緑がかかって見える。飛行機雲が東から西へ横切っていた。桜の花びらが1枚肩に落ちてきた。 勇人「毅」肩の花びらをパチンと弾く 毅「なんだ?」 勇人「帰ろう」 毅「野球部の練習見ていかないのか?」 勇人「もう十分見た」 並んで歩きながら毅はちらっとグラウンドを見た。 毅「お前なんですぐ野球部に入らなかったんだ」 入学式が終わってすぐ入部届は配られていた」これに入部希望クラブと本人、保護者のサインを書き入れて渡せばすぐに入れる。けれど、入学式の夜、毅は一瞬息が息詰った。 勇人「お前、入部届け出すの待てよ」 毅はなんでだと聞き返した。 勇人「なんでもいいだろ。とにかく明日出すなよ」 毅「じゃあいつ出すんだ。一週間までに渡さなきゃいけないんだぞ」 勇人「じゃあ1週間待て」 毅「待ってどうするんだよ」 勇人「自主トレ」 それだけで電話は切れた。 中学では野球部に入ると決めていた。いや、野球をするために中学に来た。少なくとも毅は、勇人とバッテリーを組んで野球することを目的にしていた。中学だけじゃない。その先もそうするつもりだった。将来の自分など影にも無かった。しかし勇人の球を受けることそれだけはキャッチャーの姿だけはたしかに見える。勇人の球はそれだけの魅力があった。 始めてその玉を見たのは去年の夏。少年野球大会の会場だった。毅がいた‘日向ミラクルズ‘は2回戦で負けた。 ミラクルズ監督「毅、次の試合のピッチャー見てみ。1回戦見た限りではちょっと半端じゃないぞ」 監督から声をかけられたかんべんしてくださいと言いたかっただろう炎天下で2試合戦ってもうくたくただ。 中途半端な終わり方ですいません。文字制限がもう少しで1000行くので終わります。
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