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とある真夏日、俺は画面に釘付けにされた。トルネード気味のフォームから解き放たれた豪速球は打者のスイングしたバットに触れることなくキャッチャーミットに収まった。 刹那マウンド上の投手がガッツポーズをして叫んだ。 槻嶋雄輝、マックス152キロらしい。速すぎる、高一の投げるような球じゃない。 というより今年の高校一年は全体的にすごい、今の三振だった四番も一年だし、他に147キロ投げた投手もいるし、打球の飛距離が150m越えたとか人間かどうかも怪しいようなやつもいるし……来年以降が楽しみだな。 テレビの電源を切った俺は、その場で寝転がり、深い眠りについた。 俺もあの舞台に立てるのか? 。 『いや、無理だ。だって、野球はもうやめただろ?』 また始めようかな〜って思ってんだよ。 『やめとけ、おまえは平凡がいいんだろ? 非凡はもう捨てたんだろ?』 さっきの試合見たら、非凡も悪くないな、って思ったよ。 『そうか、でもおまえはな、サヨナラって言っただろ?』 「え?」 目を見開くとその直後砂埃で視界が遮られた。ここはグランドだ。そして自分が立っているのはマウンドの上、そう理解し、周囲を見渡した。 まず視界に入ったのはスコアボード、六回裏まで両チーム0が綺麗に並んでいた。スコアを見ると互角に見えるかもしれない。だが、冷静にスコアボードを見てみるとどちらが優勢かはすぐにわかるはずだ。 ああ、思い出した思い出した。今日は神奈川県の夏の予選準決勝だ。で、相手は奏聖学園だな。相手さんのエースは去年辻本さんと山下さんでも打ち崩せなかった槻嶋雄輝だ。 もう一度スコアボードを見てみた。奏聖学園のこの試合の安打数を示すHの下の数字は6、一方我西横浜高校の安打数は0だった。 ……この、化け物が……。 まあ、とりあえず投げないとな。試合時間が長くなる。 打者の方を見ると左打席に愛部直義が立っていた。今日は三番のようだ。今三番ってことはネクストに、槻嶋雄輝が控えてる。
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