個別記事閲覧 高校1年 4月1週@ 名前:トッキー日時: 2014/01/06 13:30 修正1回 No. 9
      
……とにかく長い校長の話、綺麗事しか並ばない新入生代表の言葉。
とにかく話を聞くだけの退屈な1時間はもうすぐ終わる。
この入学式に参加した新入生、保志陽翔は不意に思う。

入学式がつまらないっていうのはどこも同じなのかな、と。



陽翔が寝入ろうとしたその時、知らない教師が何やら大声を張り上げたものだから、陽翔は驚いた。
何事かと周りを見たら生徒、職員が一斉に椅子から立ち上がっているではないか。慌てて彼も椅子から立ち上がった。

「礼っ」

職員の号令に従い、陽翔は頭を下げた。





体育館から教室へ移動し、皆が自分の席に着いた。
担任の尾藤(びとう)という若い女教師がこのあとの予定を手短に話した。休み時間を挟み、教室で2時間のHRのあとに昼食となり、そのあと下校らしい。
そして、尾藤はなぜか慌ただしく教室を発った。
おそらく会議でもあるのだろう。



休み時間といっても、何をするわけでもない。
この長曽根高校に入学してきた唯一の知り合いである小田切巧は隣のクラスだ。わざわざ隣のクラスに行ってまで友人と話すのも面倒だが、暇なので話に行くことにした。
陽翔が席を立とうとしたそのときだった。

「おまえ、入学式の時寝てただろ〜」

人懐っこい笑顔を浮かべた男が暢気(のんき)な口調で話しかけてきた。


個別記事閲覧 高校1年 4月1週A  名前:トッキー日時: 2014/01/06 13:54 修正2回 No. 10
      
知らない男だ。
だが、スルーするわけにもいかない。「まぁな」と陽翔は答えた。

「やっぱりな〜俺は奥居和雄(おくいかずお)って言うんだ、よろしくな。」そう言って奥居は手を差し出してきた。

「おう、よろしく。」陽翔も手を握り返した。

「いやーおいら、岐阜から引っ越してきたものだからさ〜知り合いがいないんだよ。だから、顔知っている人に徹底的に話しかけようと思ってさ〜」

「ん?お前は俺を知っているのか?」

「ああ、中学二年の時に全中で見たんだ〜保志陽翔、別名野生児、有名だぜ?」

「ってことは、お前も野球やってたのか?」

「まぁな〜受験シーズンまっ最中に親父が転勤だっていうもんだから、あまり高校選べなかったんだ〜」

そうだったのか、と陽翔は呟いた。その声には驚きが入り混じっていた。

こいつを野球部に誘おう、と陽翔は思った。
全中で見た、というのならおそらくこいつは全中でプレーしていただろう。
ベンチ外だとしても、全中に出るような中学で練習していたのだとしたら、おそらく基礎はできている。
どうやって勧誘しよう?と思っていたその時だった。

「あっそうだ、お前きをつけろよ。」何か思い出したと言わんばかりに奥居が話しかけてきた。さっきまで浮かべていた人懐っこい笑顔は消え、奥居の目は真剣だった。

どうした?と陽翔は返した。物思いに深けている間に奥居の顔が人懐っこい笑顔から真面目な顔に早変わりしている(ように見えた)ものだから、陽翔は噴き出しそうになった。

「さっきの入学式の時にお前、寝てただろ?あれでいきなり生徒会長に目つけられたら大変だぜ?」

生徒会長に目をつけられたら何かあるのだろうか?
陽翔にはいまいち話の重大さが解らなかった。
だが次の瞬間、奥居和雄はとんでもないことを口にした。










ーーここだけの話、ここの生徒会長、ここら辺を牛耳るヤクザの娘なんだぜ。だから生徒会長に目付けられないようにしろって話。目付けられたら最悪、この学校からつまみ出されるぜ……



話の後半は、陽翔の耳にも入ってこなかった。