個別記事閲覧 Re: 守護神はじめました 第1話 名前:リリカル兄貴日時: 2015/05/18 00:54 修正1回 No. 1
      
『序章 -抑えやってます-』

晴天の某日、リトルリーグの試合にて

久寿川ライガース対打出ファイターズの試合は、6回裏が終了してスコアは、6-5 と1点差で久寿川ライガースが7回表を抑えれば勝利という場面だった…

-ライガースベンチ-

「今日はギリギリだったよな、他のピッチャー全員登板したけど、よく1点差で逃げ切ったよな〜♪」
「あぁ、危険球があったけど…もともと、うちのメンバーは投手が出来るの少ないから仕方ねぇよ…」
「最後は、あいつが投げるから心配ねぇよ〜!」

この1点差の緊迫する場面で、ライガースの内野陣は勝ちを確信したように、意気揚々と守備位置に走り出していった。


-ファイターズベンチ-
「たしか、向こうの投手メンバーあと1人だよな?」
「あぁ」
「でも、向こうの残ってる投手って……あっ!!」
相手メンバー表を確認していた野手が絶句した。

「う〜ん?どうした!?」

絶句した野手は、囁くような声で発した。
「女・子・です。」
監督、他選手一同
「えっ……!?」

少し間を置いて1人の選手が一言つぶやいた。
「監督、コレって向こうは頭数合わせってコト?」

個別記事閲覧 Re: 守護神はじめました 第2話 名前:リリカル兄貴日時: 2015/05/18 20:26 修正7回 No. 2
      
ふと、これまで継投した投手が余りにも制球の酷さを思い返して確信した。
「あぁ、間違いない!」

更に、スコア係から決め手の一言が飛ぶ。
「監督そういえば、ライガースは今日先発した速球投手しか有力投手の噂を聞かないですね…公式戦記録もだ…」

このやり取りで、ファイターズベンチはこの劣勢は幻のように勝利の兆しに歓喜したが…

「お前ら、この回2番からの打順だ、うちの打線の恐ろしさ見せてこい!!」
この僅かな油断に間髪入れず鋭い眼光で監督の一声によって、ファイターズ一同の闘争心のボルテージは最高潮に達し、ベンチの空気が一変したのだった。

「…まさかのゴリラ女ってオチはないと思うけど…、これからメッタ打ちだからご愁傷様〜♪そういえば…守備変更のせいか、まだマウンドに上がってないな?」

ファイターズベンチから7回表の先頭打者、山本がバットを振り回し待ってましたとばかりに、バッターサークルへ向かった。

ライガースナインが各守備位置へ走りだしたのだったが、ふと他の選手よりも一際小柄な選手がマウンドへ小走りで駆ける。

「あのちっこいの…小学3、4年か?この試合
>>0
インターミディエット方式だよな…」

山本は、目を細めて凝視するのだった。

個別記事閲覧 Re: 守護神はじめました-第3話- 名前:リリカル兄貴日時: 2015/05/20 22:39 修正1回 No. 3
      

それもそのはずマウンドに立つ当人は、身長が130cm程度だから見間違えても当然の事だった。

久寿川ライガースの絶対たる守護神?
西宮奈々(にしのみや なな)はマウンドで怪訝な表情をして帽子を被り直した。
その容姿は、凛とした眼差しと、帽子を被るとショートカットと思わせる、手の込んだ編み込みカチューシャと、当然の如くおしゃれを気にする、11歳のお年頃女子だった。

「まあ、想像以上の可愛い女子も、度肝抜かれるが…打席の外からでも、この五郎丸って捕手の威圧感はパネェ…!!」

山本がそう思うにも彼の体格を見て意識しない者はいないだろう。
五郎丸渉(ごろうまる わたる)13歳にして170cmを超える長身で筋骨隆々の捕手がずっしりと構えているのだ。
その存在感からか、この試合ファイターズナインは本来の打撃が出来ていなかった。

「球審、投球練習はナシでお願いします。」

彼は後ろに振り返って、口数少なく球審に告げ、それに応じてゲーム再開させた。


お察しの通りで、小柄の女子投手と長身筋肉マン捕手という凸凹というか対極的なバッテリーに、ファイターズベンチも戸惑いと失笑が込み上げるのは隠せず、数少ないが観衆のざわつきが収まらない。