Re: プロ野球・鯉の陣!U 名前:広さん日時: 2013/02/15 19:10 修正1回 No. 30 |
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- 〜第13話・進化した喜多川〜
時間は午後4時。ついに試合が始まった。阪神の喜多川はマウンド上で自信に溢れた顔で軽く肩慣らしをしている。 「あいつ・・・前よりもノビがある球を投げてないか?」 大引がぼそっと言う。その言葉を聞いた石井は、よく喜多川の投球練習を見て言った。 「確かにノビが良くなってますよ喜多川の奴。それに相変わらずコントロールもいいですね。捕手の指定したコースに推定で誤差2センチ以内で入って来てます」 石井がぞっとしながら腕を組んだ。 「俺たちだけじゃなく、喜多川も成長してたって訳か・・・。今日の試合も厳しくなるぞ・・・」 大引が厳しい顔つきで言った。
「プレイボ――ル!!」
審判の声とともに、両軍ベンチの視線は、喜多川と1番打者である飯田に移った。 喜多川は大きく振りかぶり、力強く第一球目を投じた。キャッチャーミットに弓矢のような鋭い球が突き刺さる。飯田は、喜多川の球のノビが良くなっているのを確信し、再び構えた。 (大丈夫だ・・・球をよく見て当てて行けば打てない球じゃない) 飯田は自分に言い聞かせた。そして第二球目。
キィン!
ファ――ル
飯田はアウトローのきわどい速球をおっつけてファールにした。前回と比べて球の球威までも上がっている。飯田の手はビリビリとしびれた。
「やっぱり威力がある球だな」 ブルペンから投手コーチの健太が帰ってきた。 「あ、前田コーチ。やっぱりって喜多川の球を打った事あるんですか?」 隆浩がベンチから立って聞いた。 「いや、勘が当たっただけだ。喜多川は足腰が強い。それに腕の振りだってすごく早いだろ。球が重いはずさ」 隆浩はなるほどとつぶやきながら、自分のバットをボックスから引っ張り出した。
キィン!
ファ――ル
飯田もなんとか打ってやろうと必死に食らいついている。初回ながら、マツダzoomzoomスタジアムは大歓声が響いていた。
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Re: プロ野球・鯉の陣!U 名前:広さん日時: 2013/02/15 19:54 No. 31 |
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- 間をあけて喜多川は第4球目を投じた。その球は、インハイのきわどいコースに入ってきた。その球を、飯田は振りぬいたのである。
カキィ――――ン!!
両軍ベンチは総立ち。打球の行方を追った。 しかしあとひと伸びがない。レフト後ろのフライに終わった。カープの応援席からはたくさんのため息が聞こえた。
キィン!
パシッ
アウト!
2番の御村はどん詰まりのファーストフライに倒れ、ついに隆浩の出番がやってきた。
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Re: プロ野球・鯉の陣!U 名前:広さん日時: 2013/02/17 13:20 修正1回 No. 32 |
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- 隆浩は頭の中で、大丈夫、大丈夫と繰り返しながらバッターボックスに入った。隆浩はワクワクしていながらも冷静だった。そして、しっかりと足場を固め、バットを構えた。
そして第一球目、隆浩はタイミングをつかむために見送った。喜多川の140キロ前後の速球がストライクゾーンを通過する。隆浩は大体のタイミングをつかむと再び構えた。 (やっぱりノビがある・・・芯でとらえないと飛ばないぞ・・・) 隆浩はそう思いながらも、大丈夫と頭の中で繰り返す。そして喜多川は第2球目を投じた。喜多川の投げたボールは、外角低めにきわどく入ってくる。隆浩はバットを思いっきり振った。しかし、少しずつボールが外へ逃げていく。カットボールだ。隆浩は辛うじてファールで逃げたが、隆浩にとても重たい緊張感がかかった。その緊張感とは、以前石井が経験した、変化するかしないかを見破らないといけない緊張感だった。隆浩は思った。石井でさえ打ち破れなかった緊張感を、自分なんかが打ち破れるのか、と。その時、ベンチから声がかかった。石井の声だ。 「隆浩――! お前なら打てるはずだ! 今日のお前のバッティングは絶好調じゃなかったのかー!?」 石井はただ励ましたつもりだったのだが、隆浩にとっては勇気を奮い立たせる一言となった。そして第三球目、喜多川はインハイのきわどいボール球を投げた。隆浩はボールの回転と速度を見極めた。そして出した結論は・・・ (カットボールだ! 入ってくる!) 隆浩の推測通り、ボールはインハイへ入ってきた。そして隆浩は、思いっきりバットを振りぬいた。
カキィ――ン!
白球は喜多川の頭を越え、センター前に落ちた。隆浩はついに打ったのである。たった一本のヒットだが、広島のベンチは歓喜に包まれた。
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