Re: プロ野球・鯉の陣!U 名前:広さん日時: 2013/02/17 20:53 No. 33 |
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- 〜第14話・喜多川の新球種〜
隆浩のヒットで流れが寄ったものの、初回は結局無得点で終わった。0対0のまま試合は進み、ついに9回までやってきた。今日無安打の飯田、なんとしても塁に出る、と粘って粘って7球目になんとかライト前に落とす。2番御村のバントも決まり、打順は3番の隆浩!今日は2打数の1安打。そのうちアウトになった方はピッチャーライナー。隆浩は、タイミングをだんだんとつかんで来ていた。唯一ヒットを打った隆浩を前に、喜多川と捕手の阪井はマウンドで話し合っていた。 「喜多川、新球種を試すぞ」 阪井が喜多川の肩に手を置きながら言った。そして阪井は位置に戻ると、審判にすいません、とつぶやき、試合を再開した。
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Re: プロ野球・鯉の陣!U 名前:広さん日時: 2013/02/18 19:56 No. 34 |
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- 隆浩は肩の力を抜き、ゆっくりと構えた。喜多川はマウンド上で不気味に笑うと、第一球目を投じた。150キロ前後の剛速球がストライクゾーンを通過する。なんということだろうか、9回だと言うのに球威が少しも落ちていない。それどころか球速が速くなっている。それに喜多川の目は、まさに打たれないと言う自信に溢れていた。
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Re: プロ野球・鯉の陣!U 名前:広さん日時: 2013/02/19 18:09 No. 35 |
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- 喜多川はロージンの粉を手につけると、深呼吸をして第二球目を投じた。アウトコース一杯に速球が入ってくる。しかし、そこから微妙に曲がった。カットボールだ。隆浩はバットを止め、ボールで逃れた。そして第三球目、インハイのストレートを隆浩は叩く。しかしぐんぐんと切れていきファールとなった。
(喜多川、使うぞ新球種を) キャッチャーの阪田が正確にサインを出し、コックリとうなずいた喜多川は、第四球目を投じた。なんと、140キロのボールが真ん中低めの甘いコースに入って来た。隆浩は見逃さずにその球をジャストミート・・・するはずだった。しかし、その球が見たこともない変化をしだした。140キロのストレートにブレーキがかかり、ストンと滑り落ちてきたのだ。芯を外された隆浩は空振りし、あえなく三振に倒れてしまったのである。 この球にスタンドは呆然、そしてベンチは騒然。 「あ、あの球は・・・」 飯田が汗を流しながらつぶやいた。変化球の知識があまりない飯田に対し、キャッチャーのため変化球に詳しい大引が説明し始めた。 「フォッシュだな。日本球界ではあまり知られていないから驚くのは当たり前だろうな。横回転で、ブレーキがかかりながら滑り落ちる特殊な変化をする球だ。だが、喜多川のフォッシュはかなりキレがいいし変化量も多い。打つのは難しいぞ・・・」
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Re: プロ野球・鯉の陣!U 名前:広さん日時: 2013/02/20 19:32 修正2回 No. 36 |
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- 喜多川の新球種フォッシュに、カープ打線はついていけず凡退。ついに9回の裏へと突入した。
阪神のベンチの士気は上がり、多くの広島ファンがこの回で終わってしまうかもしれないと誰もが思ったほどだった。 広島先発の鷹田は、スローカーブと変化量が多くキレがいいフォークで何とか抑えてはいるが、 打線3順目となってだんだんと投球パターンも読まれ始めて来ていた。隆浩はなんとなく嫌な予感がしていたが、まさにその通りになった。 阪神の三番打者でキャッチャーの阪田が鷹田のフォークを初球攻撃。レフト前のクリーンヒットとなりノーアウト1塁となる。 しかも4番の三塁手、城岡(しろおか)にライトオーバーの打球を打たれた。幸い城岡の足が遅かったため二塁打にはならなかったが、ノーアウト1、3塁の大ピンチとなった。 ここでスクイズでもされたら、簡単にサヨナラになってしまう。ここで監督の清水は鷹田を諦め、先発で抑えも出来る工藤にマウンドを託した。 工藤は前回、工藤カットで9球の完全三者三振を成し遂げている。ここで、チームの勝敗は工藤にかかった。 そして第一球目。ブルペンで作った肩で151キロを記録。ムードの低い選手達のムードを上げた。そして第二球目を投じた。
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Re: プロ野球・鯉の陣!U 名前:広さん日時: 2013/02/22 19:46 修正3回 No. 37 |
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- 工藤の第二球目、なんと相手打者の構えがヒッティングの構えからバントの姿勢に変わった。スクイズだ。
工藤の威力のある球に押され、後方のバントフライになった。三塁走者は塁に戻り、 打ちあげた打者はバッターボックスで、落ちてくれと言いたげな顔で打球の行方を見た。 大引はキャッチャー後方のフライを追いかける。だがかなり捕るのは難しい。大引の足で、果たして追いつけるのだろうか。 「お、大引さん! 危ない!」 ファーストの石井が叫ぶ。あの球を捕ると、アウトにはなるが、金網で出来たバックネットに激突してしまう。 「うおおおっ!!」 大引は気合を入れて頭から捕りに行った。3万人の大観衆の目は、大引のグラブにくぎ付けになった。
飛球を捕る音と同時に、金網に激突した音がスタジアム中に響いた。 しばらくして大引が立ち上がり、審判にグラブを見せた。その中には、スタジアムの土で茶色になっていた白球が、しっかりと掴まれていた。
アウト! アウトォ―――――!!
この瞬間、3万人の大観衆から敵味方関係なく大歓声が響いた。大引は捕った。 数々の名捕手に恐れられていたあのファールフライを、大引は捕ったのである。体を張って・・・
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