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- 工藤は1回表を三者凡退に切って取り、かなり調子がいい事を見せつけるかのような顔でベンチへ戻ってきた。
「調子、いいな」 大引が工藤の肩をポンと軽くミットで叩き、頑張れよ、と一言言ってからベンチへ座った。
そして一回裏、カープの攻撃は、1番、センターの飯田。 今季はすでに7本塁打。かなり調子がいいようだ。 相手投手は相川。球界1のドロップカーブと落差抜群のパームが武器の投手。 (飯田は一発もあるからな…ここはまず外角低めやろ) 第一球目、真ん中高めから外角低めへ速く、かつ大きな変化のドロップカーブが投じられた。 飯田のバットは空を切り、ボールはミットの中へ収まった。 (す、すげぇ変化だな…こんなの連続して投げられたらひとたまりもねえぜ…) 飯田はゾッとしながらも、何とか打ってやろうとバットを構えた。 (よし、行ける。次は内角高めにストレートやな) 第二球目。足を上げて速い腕の振りからなかなかの速球が繰り出される。
ズバ――ン!!
ボール
飯田はスピードガンを一目見てからバットを2,3回振り、再び構えた。 (148キロか…それに加えてドロップカーブ。緩急をつけての高レベルなピッチングをする奴だな…) そして相川は、ロージンの粉を手に付け、大きく腕を回して第三球目を投じた。
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