個別記事閲覧 Re: プロ野球・鯉の陣!U 名前:広さん日時: 2013/05/31 18:13 修正2回 No. 67
      
〜第24話・死球〜
新コーチ、衣笠智秋の練習を乗り切り、今日から6月に入った。交流戦の時期だ。
段々と暑くなっていくこの季節。若き鯉たちは、一体どう成長していくのだろうか。

「……だ! 今日のスタメンはこのメンバーで行く。今日は交流戦の第一戦だ! 気合い入れて行け!」

ハイッ!

今日の相手は西武ライオンズ。3〜7番まで全員パワーが凄い重量打線で相手をたたみかけ、
今現在勝率.694を記録しているパ・リーグの首位である。

プレイボール!

『1番・センター、飯田』
そのアナウンスと共に、飯田が打席に歩いてきた。
飯田は打率.392。未だ好調を維持し続けている。
相手投手は洞爺湖高校から2位指名を受けて入団した駒井(こまい)。
その第一球目。鋭い直球が飯田のインローをかすめる。ストライクだ。
(かなりコントロールがいいな…そのうえ球もそこそこ速い…)

駒井は足を高く上げ、身長を活かして思いっきり振り下ろした。

ビシュッ!

ズバァ―――――ン!!

ボール!

(あんな高いリリースポイントからポンポン投げられると打ちにくいな…)

そして、駒井は間髪空けずに第3球目を投じた。

ビシュッ!!

その時だった。

ガンッ!!

ヘルメットの破片が飛び散る。飯田の後頭部に147km/hのストレートが直撃したのだ。
飯田は後ろに倒れこんだ。ヘルメットは当たった衝撃でヒビが入り、ホームベース上に転がり落ちた。

「飯田!」
「飯田さん!」

ベンチから大引と隆浩が出てきた。

個別記事閲覧 Re: プロ野球・鯉の陣!U 名前:広さん日時: 2013/06/01 08:40 No. 68
      
「飯田! 大丈夫か! 飯田!」
大引が飯田の体をゆする。観客は呆然となり、投手の駒井はマウンド上にへたり込んでいた。
「健太! 救急車を呼んでくれ!」
清水が叫ぶ。飯田の意識がもうろうとしている。
「わ、分かりました!」

こうして飯田は最寄りの病院に搬送された…

カープの精神的な支えである飯田が抜けたチームは、打線は沈黙、投手陣は踏ん張れず、6-0で完封勝利を許した…

個別記事閲覧 Re: プロ野球・鯉の陣!U 名前:広さん日時: 2013/06/01 11:00 修正1回 No. 69
      
病院のベッドで飯田は寝ていた。そして、試合終了後に清水と大引が見舞いにやってきた。
清水は、飯田の様子を見ていた医者の後藤田に話を聞いていた。
「先生、飯田の様子はどうなんでしょうか…?」
後藤田は、片手を軽く上げて、大したことはないと呟いてから言った。
「大丈夫です、特に脳に損傷はありませんし、安静にしていれば3日足らずで出場は可能ですよ」
「そうですか…ありがとうございます」
しばらく飯田の病室で椅子に座っていると、飯田が目覚めた。
「起きたか…飯田すまん、今日の試合負けちまったよ…」

「試合…? なんの試合ですか…?」

「え?」

個別記事閲覧 Re: プロ野球・鯉の陣!U 名前:広さん日時: 2013/06/09 09:37 修正3回 No. 70
      
「おい飯田…何も思い出せないのか?」
飯田は俯きながら言った。
「すいません…何が何だか……」
清水と大引、飯田の3人は、病室で長い沈黙の時を過ごした…

飯田と清水が病院を出た頃、2軍投手コーチの二宅は、清水からの電話を取った。

「な、なんやて!? 飯田が記憶喪失!? な、なにがあったんや!?」
電話の内容を聞いた二宅は、飯田の記憶喪失に対して驚いていた。
「うんうん…そーか……ほんで飯田は試合に出れそうなんか?」
『いや、まだ分からん。野球のルールを覚えているか…それにかかってるな…』
「そーか…一応みんなには知らせとくわ」

そう言って二宅は電話を切った…