Re: 頂点を目指せ 名前:疾風騎士日時: 2012/10/28 01:34 No. 1 |
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- 第1話〜氷水高校〜
神奈川県の三浦半島に位置するところに、この作品の舞台となる学校がある。学校名は氷水高校という変わった高校名である、部活動はそこそこ強いため名前はある程度しれているが、しかしこの高校アクセスが非常に悪いのでも有名である。
電車に至っては一つの路線しか走っていないうえ、しかも駅から学校まで徒歩で1時間以上。バスでも30分は要するところに学校はある。そのバスでさえ、学校方面は1時間に2、3本しかない。そのため電車が遅延でもすると大変なことになる…そして、学校にも寄宿舎はない。通学距離が悪い上にアクセスが不便なため寄宿舎を造るという話はたびたび出るが、学校近くにそもそも寄宿舎を建てられるレベルの土地は既にないため、話が出ても寄宿舎の建設は不可能なのである。 しかし、反面陸上や球技が強いのはそのお陰とも言えよう。
氷水高校は先ほど述べたように運動部が強いことで有名だ。昨年はサッカー部が全国大会に出場しベスト8まで勝ち上がった、因みにサッカー部は2年前に横浜・Fマリノスにプロ選手を輩出している。陸上部もまた全国大会に出場しこちらは優勝を果たした、当時3年だった関根の力もデカイだろう、また彼は個人の部でも優勝しており、大学にスポーツ推薦で進学し1年から箱根駅伝確実と言われている。
野球部はというとサッカー、陸上と比べれると力は落ちるが県内ではそこそこ強いので有名である。昨季はベスト8まで勝ち上がった、しかし野球部はかつて部員はたくさんいたが、10年前にごっそりと辞めてしまったのである。それは当時監督だった人物が犯罪を犯したからである、そしてそれに追い打ちをかけるかのように当時エースだった選手も性犯罪を犯していたのである。これにより野球部は無期限の休止になり監督とエースの犯罪に愛想を尽かした部員がごっそりと辞め他の部活に移ったり、部活に入らずに友達と遊び歩く日々を過ごしたもと部員も大量にいた。野球部活動再開後も警戒心が強く中々部員が集まらずにいた。しかしほとぼりが冷め始めた4年前から野球部が再興し始めたが最初のうちは弱かったが翌年にシニア出身の白瀬淳と影浦勝一の2人の入部により県内レベルでは中堅レベルまで蘇った、今年はその2人が最終年であるが、2人とも力を付けているので今年は甲子園にも行けるのでは?と噂されている。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ@疾風騎士日時: 2012/10/28 16:23 No. 2 |
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- 第2話〜橘との出会い〜
4月に入り、新しい学校の制服や、就職し真新しいスーツに身を包む人が溢れる季節が今年もやってきた。
「三崎口〜終点三崎口でございます。」 車掌が元気にアナウンスする。 電車からはぞろぞろと会社員や学生が降りてくる。特に今日は人が多い、仕方ないといえば仕方ないが…しかし最低でも1ヶ月このような混み具合だろう。
「こんなに混む電車に乗ったのは初めてだ…近いから文句は言えないけれども」 この作品の主人公である荻野は、やや愚痴りながら改札口に向かう。
しかし、改札口を出ると荻野は新たな問題に直面する。そう、荻野はバスの発車時刻、バス停留所を調べるのを忘れていた。荻野は困りながらあたりをきょろきょろ見渡すと、2番停留所には荻野がこれから通う高校と同じ制服を着た集団の列が伸びていた。 荻野はその列を見つけるとホッとするが念のため聞いてみることにした。
荻野の前に並んでいるやや小柄だが荻野よりは少し大きい男子生徒に声をかけることにした。 「あの、すみません。このバス停って氷水高校というとこにバスが出ているところですか?」 荻野は質問をするかのように言う。
前に並んでいた男子生徒は荻野の声に気づき後ろを向く 「ん?そうだよ、というと君も氷水の入学生?実はさ、僕もその氷水高校に入学するんだよ。いやー学校方面のバスは困ったよ。」 その男子生徒は少し困ったかのような笑みを浮かべる。
荻野はふと疑問に思いそのことに聞いてみる。 「困ったって…どういうこと?」 「うん、実はさ学校方面のバス1時間に多くても3本しかないらしい。昼間は1本あるかどうかなんだ。多分君も並んでいるから駅から学校までの距離は調べたんだと思うけれど…流石に歩いて行くのは気が引けるよね。…あ、そうだ!ところで君の名前は?僕は橘和己(たちばなかずみ)、中学では部活動だけど野球をやってた」 橘は荻野の疑問に答え、お互い名前をまだ知らないため、橘は荻野に名前を聞く。
荻野の疑問が解消されると同時に遅刻したら大変なことになることが頭をよぎった 「ありがとう。1時間にそれだけしかないとなると…乗り遅れたら大変だね。僕は荻野浩一(おぎのこういち)、僕も中学では野球をやってたよ。よろしくっ!」 荻野は橘に軽く自己紹介をする。
「荻野君か…こちらこそよろしく」 橘は軽く荻野に微笑む。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ@疾風騎士日時: 2012/10/28 17:52 No. 3 |
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- 第3話〜学校へ向かうバスの中〜
「どんな学校なんだろうなぁ〜」 橘はバスを待っている間が暇なのか早速荻野に話しかける。
荻野も暇だったが、携帯をいじってたため橘の問いかけにやや遅れて反応する 「…え?ああ、うん。楽しみだよね」 荻野はクスリと笑う。
荻野は携帯の時計を見て時間を確認する 「もう15分ぐらい待ってるけど次のバスって…」 荻野は中々来ないバスに疑問を持ち橘に聞いてみる。
橘は少し考え込み 「えっと…後5分ぐらいすれば来るはずだよ。この時間は30分間隔で2本あるだけ」 橘はふーっと一つ息を吐く。
暫く他愛もない話をしているとようやくバスが来る。バスのカラーリングは赤帯に水色が入ったバスだ。荻野はバスに乗り込むと橘の隣に座る。
「高校では彼女できるかな?」 橘は何の前触れもなくボソッと呟く。
荻野は隣に座っているため当然、橘の呟きが聞こえる。 「え?結構モテそうな顔なのに…」 荻野は突然何を言うんだ。と思いながら橘に聞き返す。 橘は作り笑顔をしながら 「ははは…よく言われるよ、モテそうな顔って言われるけどモテたことないんだよなぁ〜。氷水には可愛い子いるかな?気になるなぁ」 橘は目を輝かせながら同級生の異性について気になっていた。
なんとなく橘がモテない理由を悟った荻野は少し間を開けて 「ま、まぁ…確かにどんな異性がいるか気になるよね。」 荻野は年頃の男として異性に気になるのは当然だと認めるかのように橘に話を合わせる。
橘は荻野の肩を分かってるじゃないか!と言わんばかりにぽんぽんと叩く。 初対面なのになれなれしい、でも橘のおかげで荻野は早くも新たな環境で新たな友達が出来たとも言える。
「そういえば橘くんは中学時代野球やってたって言ったよね?ポジションはどこを守っていたの?」 荻野はこれ以上異性についてまだ深く語りたくないのか話題を変えようとする。
橘はいきなり話題をかえられて少し驚く 「僕は中学の時はサードをやらされていた。本当はセカンドなんだけど…複数のポジションを出来るようにした方がいいって監督に言われてサードをずっとやってた、当然ここでも野球部に入る、でもセカンドをやるつもり」 橘は中学時代のポジション、コンバート経験を荻野に軽く語った。 「そっか、僕は中1までは投手だったんだけど…まぁ今は外野だよ。」 荻野も自分のポジションを言う
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/10/28 22:40 No. 4 |
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- 第4話〜神原との出会い〜
橘とバスで盛り上がっていると、ようやく学校の近くにバスが到着する。 学校敷地内に入ると既に数多くの新入生が到着していた。どうやら自分のクラスを掲示板で確認しているようだ。 荻野たちも早速自分のクラスを確認しに掲示板の前に行く。荻野は自分の名前を見つける前にとある人物の名前を見つける。 『神原茜…茜ちゃんは2組か…っと僕は、荻野だから』 そう思いながら神原茜の上を見てみると荻野浩一という名前を見つける。
橘は自分のクラスを確認すると荻野に声をかける 「荻野くんは何組だった?僕は4組だったよ。残念だけど違うクラスみたい」 橘は荻野と同じクラスになれなくてしょんぼりする。 「僕は2組だよ、まぁお互い別々のクラスだけどいろんな友達を作っていこうよ」 荻野は特にクラスを気にしていないのか、橘とは対照的な反応をする。 すると荻野の後ろからとんとんと誰かが肩を叩く。荻野は誰だろうと?後ろを振り向く。 すると橘と同じぐらいな身長の女子生徒が荻野の後ろに立っていた。
「おはよ、浩一君。結構来るの遅かったじゃん。クラス確認した?」 どうやらその女子生徒は荻野と知り合いのようだ。 「うん、確認したよ。いやさ、バス停が分からないしバスが全然来なくてさぁ〜。茜ちゃんは結構はやく着いたんだ?」 荻野は苦笑をしながらその女子生徒に答える。
橘は荻野と女子生徒のやりとりを見ていて、疑問に思ったからか荻野に聞くとする。 「なぁ、荻野くん。その人と知り合いなの?」 橘は女子生徒の方に目線を送りながら荻野に問いかける。 その女子生徒に橘の声が聞こえたのか荻野が答える前に口を開く 「えっと私は神原茜(かんばらあかね)って言うの。浩一君とは小学6年生の時から知り合いなの。呼び方もその時からずっとこうなの。」 茜はニコッて笑みを浮かべながら橘に軽く自己紹介をする。 橘は茜の笑みにドキッとしながら 「僕は、橘和己。クラスは違うけど…よろしくお願いします。」 橘は緊張からかやや敬語になってしまう。
「えっと…橘和己だからたっちーね。こちらこそよろしくね。あ、それと2人とも一回自分のクラスに行くみたいよ。そこで軽いHRをやってから体育館に移動するみたい。」 茜は後から来た荻野と橘に分かるように説明する。 「そうなんだ、荻野君に神原さん。じゃあまた後でね!」
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/10/30 21:51 No. 5 |
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- 第5話〜紅優生登場〜
新入生は新しいクラスで軽いHRを終え、クラス事に体育館前へと移動する。 体育館は予想以上に広いがそれでも在校生新入生含めて900人は集まるのだからそれでもやや狭く感じてしまうほど生徒数が多いのだ。
「新入生入場!」 生徒会長らしき人が声をかけると在校生から拍手が鳴り響くどうやら温かく歓迎してくれるようだ。先輩方を見るとやはり大人っぽさが出てきている。 荻野たちは自分たちの席の前に立つとピタッとストップする。 「新入生着席!」 生徒会長の合図と共に新入生は着席をする。
国歌と校歌を歌い終わり、学校長の話へと移る。 学校長の風貌は典型的な中年体型ではあるが白髪は生えてないがともかく目力、風貌に威圧感がある。 校長は壇上の前に立ち一礼をすると挨拶へと入る。 「え〜、まずは新入生の皆様本日は入学おめでとうございます。本日登校して分かったかと思いますが当校はアクセス面がはっきり言ってよくありません、それでも毎年多くの生徒が入学しております。本日はね、何を話そうかずっと考えておりました。そこで今回は私の高校生活についてお話をしたいかと思います。」
「私が高校に入ったときは何をやりたいか、何を伸ばしたいかを考えていませんでした、何も考えずに最初の一月を過ごしこれが間違いだなと気づいたわけです。なぜなら周りはアルバイトや部活動を始め、それぞれやりたいことを見つけ始めていたのです。そこで焦った私はとにかくなんでもいいから部活動を始めようと思いまして、始めたのは良かったのですが、ここで私は2つめの間違いを犯しました。それは部活を途中で辞めてしまったことです、理由は単純にきつかったからです。だからといって資格を取るわけでもありませんでした。 当時はやめて友達と遊んでいて楽しかったのですが、後々後悔しました大学受験の面接でとても不利になりましたし、苦労しました。ですから大学からは文学において励み、そして今教壇に立っているわけです。皆さんにはいろいろな考えがあると思います。ですが何もやらずに過ごさないで下さい後悔のないように3年をお過ごし下さい。」 校長の話が終わると拍手が鳴り響く。
「校長先生ありがとうございました。続きまして新入生の誓い、1年3組紅優生くんお願いします。」 「はい」 耳を疑った。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/10/30 23:58 No. 6 |
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- 第6話〜紅優生登場2〜
野球を知っている人なら耳を疑っただろう、シニアチームでズバ抜けた才能を持っていた「紅優生(くれないゆうせい)」がなぜ甲子園常連の名門校に行かず氷水に入ったのか。誰もがスカウトされ甲子園常連校に進学したと思っていた。
紅は壇上に立つとペコリと一礼をする。 「本日は私たちのためにこのような素晴らしい入学式の時間を設けてくれた教員一同、先輩方に感謝します。私たちは高校という新たな環境がスタートしまだ期待と不安が大きく入り交じっている状況です、そして先ほど校長先生が述べられましたようにアクセス面は良くないです。 私も本日この学校に来るまでアクセスには苦労しました。しかし、自然豊かなこの三浦半島らしい素晴らしい環境の中で3年間を過ごせると思うとそのような事も苦にはなりません!恵まれた環境で資格の取得、今後へ向けての勉強により一層力が入ることでしょう。 また氷水高校は部活動が盛んなことで有名です。 それは、自然豊かなのお陰でしっかりとしたランニングコースがあるからです。そのため、学校外でもしっかりと走り込め足腰が鍛えられ効率の良い練習が出来るからです、私は中学時代はシニアの方で野球をやらせていただいてました。当然高校でも野球部の方にお世話になろうと思っております。しかし、野球だけで過ごすわけにはいきません。しっかりと勉強や資格取得にも力を入れ周囲から野球をやっているから勉強が出来ないと言われないようにしたい、高校に入るからには当然勉強も部活も一生懸命に取り組み、自分の将来に役に立てたい。まだまだ分からないことが多いので教員や先輩方に相談事が多いかもしれません、また困らせることもあるかもしれません。ですが、もしその時はしっかりと私たちに指摘を下さい。 最後に私の今年1年の目標を言いたいと思います。 私の今年1年の目標は、無遅刻無欠席で検定を5つ以上とり、赤点を1つもとらないことが目標です。 新入生誓いの言葉 1年3組紅優生」 紅は新入生の誓いを読み上げるとペコリと一礼をし壇上を後にする。すると体育館に先ほどより強い拍手が鳴り響く。
確かに紅の言うとおり、アクセスは悪いが心を癒す緑や神奈川らしい海の臭い心地の良い風が特徴で学業にはもってこいの環境とも言えよう。横浜や川崎の都心部のようなネオンはないがそれを補う緑と青の自然がある。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/05 18:04 No. 7 |
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- 第7話〜帰路〜
入学式が終わり、各教室に戻りSHRで明日の内容を改めて確認してから解散となった。
現在時刻は13:03、バスが来るのは13:42と30分以上時間がある。バス停には長蛇の列が既に出来ている。それもそうだろうこのバスを逃すと次は15:50までバスがないからだ。 荻野たちはバスを待ちながら談笑しているとスッとややガタイがいい男子生徒が音楽を聴きながらバス停に見向きもせず駅の方向へと歩いて行く、その男子生徒は先ほど壇上で新入生の挨拶を行った、紅優生である。 茜は紅の後ろ姿を見ると何かを思い出したかのように発言する 「あっ、あの子朝学校行くときも徒歩で行ってたよ。」 茜は紅の方に指を差す。
「まぁ確かに歩けない距離じゃ…」 「やめなさい。あなた、方向音痴だから絶対に道に迷うって!」 茜は荻野の発言を遮るように荻野に突っ込む。
そう、荻野は方向音痴で日常茶飯事レベルで道に迷うのである。特に彼の方向音痴で酷かったのは中学時代の修学旅行で自由散策時に1人で行動し道に迷い、帰り道も分からなくなり挙げ句の果て教員に向かいに来て貰ったのである、それ以降荻野は校外学習時の自由行動の度に複数名で行動しろと教員からきつく怒られたこともある。
荻野は少しムッとした表情をしながら 「で、でも一応バスからの景色で道は覚えているし…」 荻野は茜に反論する 「…で、前にもオナ自己と言って地元で道に迷ったのはどこの誰だっけ?結局その時私が浩一君に迎えに行ったじゃん。」 茜は荻野の反論をあざ笑うかのように論破する。
橘は2人の光景を見ながら苦笑いする 「2人とも夫婦漫才はいいけど、さ。荻野くんってそこまで道に弱いの?」 橘は荻野の絶望的な方向音痴に疑問を抱く。 茜は「うん」と頷き 「そうなの、ある意味凄いでしょ?」 茜は橘に同意を求めるかのようなトーンで言い放つ。 「普通の方向音痴よりちょっと悪いだけです〜。」 荻野は少し頬をふくらませふて腐れたかのような言い方をする。
「いや、ごめん荻野君。僕も流石にそこまで道に弱い人は初めてだよ」 橘はやや呆れ気味に荻野の方向音痴癖にツッコミを入れる。確かに荻野レベルの方向音痴はいないであろう、しかしそれが彼の短所の一つであり、個性でもある。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/11 14:37 No. 8 |
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- 第8話〜黒木との出会い〜
高校に入学し、2日目を迎える。 この日は各クラスで恒例の自己紹介を行うことを昨日の帰りのHRで言われているため、各々自己紹介を準備してきている。 とはいえ、初めて顔を見るクラスメイトが大勢いる中での自己紹介だ。当然緊張はする。 因みに教室内の席は男女別の出席番号順になっている。
しかし、朝のHRまでは時間がある。荻野は何をしようかと、考え本を読もうと鞄から本を取り出すとある男子生徒から声をかけられる。
「暇そうじゃん、何読もうとしてたんだよ?」 ツーブロのヘアスタイルをした男子生徒は荻野が読もうとしていた本を手に取りタイトルを見る
「え、これ超人気本のやつじゃん!値段超高いけどよ、めっちゃ内容がいいってゆうめーな奴だろ?俺これこの間買おうと思ったけど金ねぇし売り切れてたんだよな、やべぇチョー内容気になるんだけどぉ」 やや早口で言い続ける。
荻野はきょとんとしながら 「あ、そうなんだ。僕もこの間買ったばかりでまだ読んでないんだ、僕が読み終わってからでいいなら貸してあげようか?」 荻野は男子生徒から本を返して貰い机に置きながら言う。
男子生徒はやや驚きながら 「え!?マジで?いーの?やべー、お前超いい奴じゃん!お前名前なんて言うんだよ?俺、黒木隆之(くろきたかゆき)っていうんだ、よろしく頼むわ。」 口調からして分かるように見た目もそうだがややチャラチャラしているのがこの黒木である。
荻野は少し間を開けてから 「朝から元気だね。君は…僕は荻野浩一。同じクラスだし仲良くしていこう」 荻野は黒木にやや圧倒されながらも軽い自己紹介をする。
黒木は荻野の名前を聞くとやや考え込み 「荻野浩一つうのか…まぁいいや荻って呼ばせて貰うぜ。お前さ、中学ん時なんか部活やってた?何部だったんだよ。俺は野球、投手やってた。いややっぱり投手って野球の華じゃん?マウンドから見える景色がサイコーでさ。チョー気持ちよかったぜ?まぁ…そこまで大して強くなかったけどつーかむしろ弱かったからな。」 黒木は後半にやや自虐的になりながら言う。
「僕も野球やってたよ、外野やってた。僕の中学も大して強くなかったけどね」 荻野はやや苦笑を浮かべる。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/18 00:28 修正2回 No. 9 |
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- 第9話〜地元について〜
高校に入学しはやくも1週間が過ぎた、新たな友達も出来はじめようやく馴染めてくるころだろう。
荻野は学校に入ってから最初に出来た友達である橘や黒木と昼食を食べることにしている。 しかし、教室で食べるのではなく。この氷水高校が人気なのは勉強面だけではなく、実は最上階6階の憩いの場から見える景色は絶景で神奈川の自然を楽しみながら昼食や友達と会話できるのである。まさに自然を楽しみながら学園生活を送れるのであろう。
授業が終わると荻野は鞄を持ち黒木と一緒に6階へと少し急ぐ。すると、一足早く授業が終わった橘が席をとり、荻野たちを待ち構えていた。
橘は黒木が視線に入ると席から立ち上がり声をかける。 「やぁ、荻に黒木。今日遅かったね」 橘は言い終わると、先ほど自販機で購入した飲料水を口に含む。
「ん?あぁ…今日はあいつなんつったっけ?」 「高柳先生でしょ?あの先生結構話が長くてさ…」 黒木と荻野は続けて遅くなった理由を述べる。
橘がとった席はちょうど景色がいいところで人気がある席のため、常に誰かがはやく行かないとすぐにとられてしまうぐらい人気だ。
それぞれ弁当を口に運びながら再び会話を始める
「そういえば、皆どこに住んでるの?僕は川崎の方に住んでいるんだ。」 橘は荻野や黒木の地元が気になるのか2人に向かって質問する、大抵この3人で会話の火付け役は橘だ。
荻野は弁当を飲み込んで飲み物を一口、口につけ 「僕は、実家は三崎なんだけど…住んでるのは横須賀だね。横浜よりだけど…」 荻野は橘の質問に答えるが、橘には疑問が生じた。
橘は荻野に何かを聞こうとしたが先に黒木が口を開く 「俺は葉山に住んでる、ここにはいっつもバス一本でこれっから楽ちゃあ楽だぜ?本数も多いしよ。」 黒木はいつものお気楽な口調で言う。
「え?葉山!?黒木の家ってお金持ちじゃん!葉山って言えば高級住宅街で有名だし葉山牛も高いし…ってバス1本でこれる上に本数が多いってどういうこと?」 橘はやや声を荒げるように言う
「落ち着けって和己ちゃん。ああ、学校から少し歩くと別のバス停があるだろ?そこから葉山に通じてんだ、でも三崎口とかは通らないんだよな。それに基本電車のないところを通ってからな俺の利用しているバスは。ってまぁ話変わるけど来週から仮入が始まるな」 黒木はそう言いながら窓を見る
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/18 14:49 No. 10 |
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- 第10話〜野球部へ〜
高校に入り初めての部活動がいよいよ週明けの月曜から始まる。当然仮入部をすっ飛ばして本入部をする人も多い、しかし高校の部活は中学までの部活と違い厳しく辛いため楽しめない者も多いが、その中の達成感や充実感はここでしか得ることが出来ない。 そんなわけで荻野たちも早速野球部に入部することを決めた。グランドに降りると桜が散る中様々な部活動が行われていた。風も4月にしてはやや冷たく感じるが部活を始めれば心地の良い風に感じるのではなかろうか? 荻野たちが今立っているのは野球部の部室の前だ。緊張するわけ無いと思っていたがやはりどうしても緊張してしまうのが人間だ。
「し、失礼します。」 荻野はコン、コンと2回ノックをしてからそっと部室のドアを開ける。 中を見渡すと先輩部員が一斉にこちらに気づく。まるで、見たことの無いような物を見るような目でだ。 声をかけなければいけないが、中々言葉が出てこない。そして緊張のあまりか少し喉が渇いた感じがする。 このまま立ち往生しているわけにもいかない…そう思っていると1人の部員が察してくれたのかこちらに歩み寄り 「君たちも3人も野球部の入部希望者かい?」 そう優しく声をかけてくれた。 その一言で緊張がほどけみるみる言葉が出てくる感じがしてきた 「はい、僕たち3人は野球部に入部をします。」 橘は少し安心した様子で返答する。 しかし、君たち”は”ではなく君たち”も”とは?一体どういう意味なのか?3人が行く時には他に野球部に向かう人が見えなかったためてっきり一番乗りかと思っていた、それに授業が終わり真っ先に教室を出て野球部の部室に向かった。
「君たちも1年だろ?これで今のところ1年は4人か…さっき来た子には聞いたけれど、君たちも野球経験あるのかい?後それと…入り口にいられると迷惑だから中に入りなさい。」 先ほど声をかけてくれた先輩は荻野たちを誘導するかのように部室内に入れてくれる。 部室内は入り口からはよく見えなかったが意外と広く用具室とは繋がっているようだ。そしてあまり広くはないがロッカールームもあり制服からユニホームに着替えるのには充分なスペースだ。
「わりぃ、高橋遅くなった。…お前の前にいる3人は新入部員か?」 やや野太い声が後ろから聞こえる。 先ほど荻野たちに声を高橋という名字らしい。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/18 23:34 No. 11 |
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- 第11話〜部員集合〜
「3人は新入部員か?」 背後から声が聞こえる、ふと後ろを見ると大柄で厳つい体格をした先輩部員が立っていた。
高橋は先輩部員の左手に持っている物を見ながら 「ああそうだよ…何だ、影浦。また購買部で部活前のデザートでも購入したのか?別にまだ時間じゃないから構わないが…匂いがこもるから食べたらすぐに捨てに行けよ?君たちもジャージでも出身中学のユニホームでもいいから着替えたら時間までリラックスしてなさい、別に緊張しなくていいんだからさ…。」 高橋は荻野たちの緊張や不安を解くような優しい口調で指示をする。
影浦はぽかんと口を開けながら 「ふん、相変わらずお前は優しいな。…ところで淳はまだ来ていないのか?」 影浦は購買部で購入してきたプリンをビニール袋から取り出しながら言う。
「またプリンか…淳は、まぁ…あいつのことだから時間前には来るだろう。」 高橋は影浦が購入してきたプリンに呆れる。またと言われるぐらいなのだから余程影浦はプリンが好きなのだろう。
荻野たちはロッカールームでそれぞれの出身中学のユニホームに着替えながら話をする。
「高橋先輩…つったか?あの先輩マジ優しくね?なんつーかあの人のお陰で安心できたんだけどぉ〜。」 黒木は笑みをこぼしながら橘と荻野と話を始める。 「まったくだよ、中々先輩方に声をかけられなかった僕たちにわざわざ声をかけてくれたしさ。優しい人で良かった。」 橘も安心しきった様子で表情が柔らかくなる。 「…影浦、か…なんかどっかで聞いたことあるような…。」 荻野は影浦という名前が気になるらしい。しかし、荻野も良く覚えていないのか中々思い出せない。考えても出てこないので荻野は影浦という名前について考えるのを辞めることにした。
出身中学のユニホームとはいえ、荻野たちがユニホーム袖を通すのは約半年ぶりだ。荻野たちは互いのユニホームを見渡しながら再び先輩たちへの元へと戻る。 先輩部員はリラックスした様子で野球談義をしていたり、または雑誌を読む者がいれば好きな曲を聴いてリラックスしている者もいた、そして好きなデザートを食べている者も…。
「よっす。つーか、プリン食うならドア開けておけよ、臭いから…。」 「どうも、先輩方。」 部室のドアを開け真っ先に入ってきたのはやや身長の高い先輩部員、続いて部室に入ったのは紅優生だ。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/19 01:11 No. 12 |
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- 第12話〜監督登場〜
高橋は部室に設置してある時計を見ながら 「来たか、淳いつものお前ならもう少し早く来るはずだが?」 高橋は淳と呼ばれる部員の方に視線を送る。
「…ああ、そうだな。こいつと予想以上に話が盛り上がってな…危うく時間を忘れるところだった。」 淳と呼ばれる生徒は紅の頭を掴みながら答える。
紅は少し困惑した顔をしながら 「白瀬先輩がいろいろ聞いてくるからでしょ。」 紅は少し先輩に反論するかのような口調で言う。
その後高橋、白瀬と影浦と雑談しているとガラッと部室の扉を開ける音がする。そして人影が見えると白瀬たちは一斉に一礼をする。荻野たちは遅れながら一礼をする。
「はい、おはようございます。今日初めて見る顔もいるので、え〜改めて、私の方から簡単な自己紹介をさせていただこうかな、と思います。 この氷水高校野球部の監督を務めさせていただく大橋徹(おおはし・てつ)と言います。年は今年で50歳になります、担当クラスは2年4組でえ〜、担当科目は保険体育です、それとですね。私は進路指導も兼ね備えていろのでね、まぁ基本3年が中心ですが進路について聞きたいことがあれば声をかけて下さい。」 大橋監督は軽く自己紹介を終えると高橋に視線を送る。
「お互いの名前を知らないまま練習を始めるわけにはいかないから…そうだね、まずは俺達の方から自己紹介をさせて貰うよ。氷水高校野球部主将、3年!高橋充(たかはし・みつる)、ポジションは基本三塁手、時々遊撃手を務める、先輩として君たちをしっかりと引っ張り分からないところがあったらどんどん聞いてくれ、まぁ簡単な自己紹介だが改めてよろしくな」 高橋は自己紹介を終え笑みを浮かべる 影浦は一呼吸置き 「じゃあ、次は俺がやるか…自己紹介はあんま得意じゃねーけどよ…。3年!影浦勝一(かげうら・しょういち)、ポジションは捕手、右投げ右打ち!悩み事があったらいつでも言ってくれ相談に乗るぜ?」 影浦は手短に自己紹介を終える。
「氷水高校、3年。白瀬淳(しらせ・じゅん)右投げ右打ちでポジションは投手、君たちのポジションは分からないがマウンドとエースナンバーをそう簡単に譲る気はない、1年でも関係ない、欲しければ実力で俺から奪ってみろよ。よろしく」 白瀬は自己紹介ついでに誰か特定の人物にメッセージを向ける。 その後1年も軽い自己紹介をし、1日目は終わった
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/19 02:05 修正2回 No. 13 |
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- 第13話〜帰宅〜
既に空は紅く染まり、もう30分したらあたりは暗闇に包まれ、夜が訪れる。しかし秋の夕焼けは寂しいのに春の夕焼けはなぜ心が躍るのだろうか? そんなことを考えながら歩いていると荻野は現在住んでいる家に着く。
「ただいま〜。」 荻野は扉を開けながら言う。 家に入るとなにやらとても良い匂いがしてくる。
荻野は自分の部屋に荷物を置き制服から私服へと着替えリビングへと出ると先ほどより良い匂いがする。空腹を誘う匂いだ。 荻野はややお腹がすいたのか今晩のメニューが気になり始める。 「お姉ちゃん〜、今日の晩飯は何?」 荻野は台所で料理を作っている姉に話しかける。
「今日?今日ね、カレーよ。」 荻野の姉は荻野に晩のメニューを教える。
荻野は「お姉ちゃん」と読んでいるが厳密には実の姉弟でもなければ血も繋がってない、所謂従姉という関係である、名前は荻野美歩(おぎの・みほ)という。現在大学生だが親元を離れて暮らしている。4年前に荻野が来るまでは一人で暮らしていた。美歩は現在大学2年生でそろそろ就職についても考え始めなければいけない時期である。 因みに住んでいるのは 2DKといい物件に住んでいる、やや家賃も高いがそれを賄えるのが美歩の実家の経済力が豊かだからだろうか。 15分ぐらい立つと今度はお米が炊けたいい匂いがしてくる。カレーご飯が炊ける前に出来上がっており、美歩は綺麗にご飯とカレールーを上手く装いリビングへと二人分運ぶ。
「じゃあ、こうくん食べよっか。」 荻野は美歩にこうくんと呼ばれているらしい。 2人仲良く「いただきます」と言うと荻野は空腹だったのか美歩の作ったカレーライスを勢いよく食べ始める。荻野は基本勢いよく食べずにゆっくり食べるのだが今日は余程お腹がすいていたのか珍しく勢いよく食べる。
美歩は荻野が勢いよく食べるのを幸せそうに見ながら「ねぇ、こうくん。食事の時に聞くのもアレだけど…実家に戻らなくていいの?そっちの方が学校近いでしょ」 美歩は荻野が来た理由は知っている、それでも改めて聞かなくてはいけないことでもある。
「…正直まだ考えたくないし、僕はこっちの方がいいな。」 荻野は少し言葉に詰まった。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/19 19:17 No. 14 |
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- 第14話〜野球部始動〜
荻野たちは授業が終わると部室へと向かう。 うきうきしながら部室へと入ると昨日いなかった生徒が2人立っていた。 軽く目線を会わせるだけで特に会話をせずに荻野たちもユニホームへと着替えた。 着替え終わると、監督が荻野たち野球部員をグランドに集合させる。 監督の横には先ほどいた2人が立っていた。
「では、1年生の皆さんは既に話したことがあるかもしれませんが…稲本君から手短に自己紹介をお願いしようかな。」 大橋監督は稲本に自己紹介をするように促す
「皆さん始めまして稲本一馬(いなもと・かずま)と申します、右投げ左打ち、ポジションは外野です。」 「ども、松島俊太(まつしま・しゅんた)と言います。右投げ右打ち、外野手です」 稲本が自己紹介を終えると続くように松島も自己紹介をする。
2人が自己紹介を終えると周囲から拍手が起こる。
「あのっ、大橋先生」 大橋監督が言いかけた瞬間に後ろから女子生徒の声が聞こえる。
「私、神原茜って言います。実は私、野球部のマネージャーをやりたいですけど…ダメ…ですか?」 茜は少し緊張しきった声で大橋監督にマネージャー志望であることを伝える。 大橋は少し考え込むようにしながら 「…いいだろう、だが神崎悪いが練習後ちょっと残ってくれないか?」 大橋はやや真剣な顔をしながら茜に伝える。 高橋は大橋監督の真剣な顔を見ながら、大橋監督が茜に何について話すか瞬時に察した。
「ん〜、俺も放課後少し残ろう。監督と同じ件で話があるし…さて、と。練習始めようか。淳!」 高橋はいつも通りの中途半端な苦笑をしながら白瀬に指示を送る。
「ああ。2列縦隊に整列!学年関係無く急いで並べ!」 白瀬は高橋の意図を理解したかのように手早く指示をし、部員全員が2列ずつに並んだのを確認すると。 「じゃあ、まずはアップから。」 そう言いながら白瀬の隣から他の部員に指示を送る。 ゆっくりと歩きながら校庭のトラックへと出る。 白瀬と高橋が出ると少しずつゆっくりジョキングのペースからランニングに切り替え徐々にペースを上げていく。氷水高校の校庭はとにかく広い。そのため、ウォーミングアップがある意味一番ハードという部員もいる。 ほとんどの1年はやや肩で息をしながらなんとかついていく。
何周するか言われてないが…とにかく野球部の練習が始まった。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/19 22:07 No. 15 |
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- 第15話〜氷水高校野球部の汚点〜
部活が終了したのは17:30だ。1年はヘトヘトに疲れながら、制服に着替えそれぞれ帰って行く。
「お疲れさまでしたー。」 紅は1年の中で一番元気よく挨拶をして帰って行く
大橋と高橋は部員が全員帰ったことを確認すると、茜を職員室近くの相談室へと入れる。
茜は椅子に座ると単刀直入に大橋に聞く 「あの、話ってなんですか?」 茜は少し緊張しきったトーンになる。
「ははは、別に緊張しなくても…いや、ある意味氷水高校野球部であった事があったことだから笑えないな…」 高橋はいつもの調子で茜の緊張をほぐそうとしたがハッとこれから話す件について思い出す。 大橋は茜と高橋の分の飲み物を入れて机に紙コップを置く
「…神原よ、マネージャーになりたいと言ったな?今から話すことはしっかりと聞いて欲しい。それをしっかりと聞いた上でちゃんと考えてから本当にマネージャーになりたいのか決めて欲しい。」 大橋は少し重みをました言葉を茜にぶつける。
高橋はコップを手に取りながら 「神原さん…だっけ?10年前にここで何が起きたか聞いたことある…かな?」 高橋は少し気まずそうな微妙な笑みをやや浮かべながら茜に問いかける。 そんなことを聞いても茜に分かるはずがない、聞いたことがあるとしてもそれはあくまでうわさ話にすぎない 「えっと…なんか事件があったっていう変な噂が流れているのは聞いたことがありますけど」 茜はまさか、と思いつつも聞いてみる。
「…その通りだ。今から10年前氷水高校野球部は今よりももっと強かった。ちょうど事件があった10年前は氷水史上最強のチームと呼ばれていた。今でも白瀬や影浦、高橋という有望な選手がいるが当時のエース高島は日米両国から注目される程のエース投手だ、それ以外の選手もレベル高く甲子園確実と言われていた…。だが、県大会2回戦終了後に当時監督だった人が人を殺し、その場で現行犯逮捕、そのほかにもヤクの密売もあったらしい、ヤクザとの関わっていたそうだ。教員として失格だった。そして、高島も自分の高校のところの女子高生を無理矢理襲いかかったり、中学生を襲ったり性的暴行を繰り返し、こちらも逮捕された…。これにより一度は廃部当然になった最近になりようやく盛り返してきたが…それでも女子マネージャーは当然来なかった。」 「私、やります。」
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/19 22:36 No. 16 |
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- 第16話〜マネージャー茜〜
高橋は茜の顔色を見ながら 「…15歳の女の子にはちょっと…この話しは生々しすぎたかな…?」 高橋は少し腕を組みながら言う
茜は紙コップに入った麦茶を一気に飲み干す 「…否定…しないんですか?」 茜は暗い声で言う。いつも明るさ満点の茜からすれば予想がつかない声のトーンだ。今の外の景色のようだ。完全に闇夜に染まり明るさはほとんどない。茜の今の心の中もこういう感じなんだろう。
高橋はスッと茜の横に立つと 「否定はしないさ、むしろ認めるよ。氷水高校最大の汚点とはいえど過去のことだからって切り捨ててはいけないことだからね。 認めたうえで俺達は監督とともに野球部をかえてきた。俺達も受け入れがたい事実だけど今は過去にあったことを認めている。君も認めたくない気持ちがあるかもしれないけど認めなければいけないことなんだよ、これは…。でも、もう一度言うこんな事件があった部活動だ、それでも君はマネージャーをやる気持ちは揺るがない?」 高橋は珍しく語気を強め半ば茜を脅すような口調だ。
「私、やります。だって事件だって過去にあったことでしょ?でもそれが原因で女子が寄りつかないんですよね?先輩や大橋先生が部員を集めて野球部を再生させたなら…今度は私が女子マネージャーが来られるように風潮をかえてみます!」 茜は先ほどの暗い声とは別人のようにいつもの明るい声が戻る。茜の眼はキラキラと光っていて、本当に心の底から野球部のマネージャーがやりたい、自分が女子が来られるようにすると意気込んでる眼だ。
大橋はフッと優しい笑みをこぼし 「そうか、神原…やってくれるか。ありがとよ! まぁ、野球部だけではなくどの運動部にも言えるがマネージャーは大変だぞ?」 大橋は嬉しさを隠しきれない声のトーンになる。
「はい!がんばります。」 茜は満面の笑みを浮かべる。 大橋は腕の時計を見ながら 「もうこんな時間か…この時間って確かないんだよなぁ。神原、もう遅いから三崎口駅まで俺の車で送るぞ。高橋も乗っていけ。」 そう言うと相談室の鍵を閉め駐車場へと向かう。
大橋は2人を乗せて学校の最寄り駅まで2人を送り届ける 茜は大橋の車から降り 「先生、ありがとうございました。」 茜は丁寧にペコリとお辞儀をする。 「ああ、また明日な。」 大橋はそう言い残すと学校へと戻っていった。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/20 22:01 No. 17 |
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- 第17話〜最上級生の実力〜
この日の練習はグランドではなく、部活用のグランドで行われる。 決して広くはない対外試合は少し厳しいが紅白戦や練習なら満足に出来そうだ。 当然、今後ここでの練習は増えるが今回は初めてだ。 しかし、この野球場にはセンターからレフト方向にかけてネットがライト方向に比べて高く設置されている。疑問が浮かび上がりそうだ。その矢先、まるで風を切り落とすかのような金属音が荻野たちの浮かび上がった疑問すらも切り裂く。 打球はレフトのネットへと直撃した。打球を放った主は氷水高校の投打の要である影浦勝一だ。
「相変わらず飛ばすな…防護ネット設置されたのも納得できる」 高橋は影浦の打球を見ながら感心をする。 言い方からするとレフトからセンターにかけて設置された防護ネットは影浦の打球対策らしい。 おそらく、以前はよくフェンスを越えて校舎付近まで飛ばしていたのだろう。影浦は打撃練習が終わると道具を片付け、防具をつけホームベースへの後ろに立ちミットを2回叩く。マウンドにはエース・白瀬淳が立つ。すると、紅も先ほどと目つきが代わりやや鋭い目つきで白瀬を見つめる。 高橋は黒木の隣にたつ 「淳の投球はいつになっても楽しみだな。」 高橋はややワクワクしている様子だ
白瀬はマウンド上で練習とは言え、少し間を開ける。 そして、ゆっくりと投球動作へと入るそして力を最大限に放出するかのようにマウンドを力強く踏み込む。白瀬から放たれた白球は驚くような速さで影浦のミットに突き刺さる。
「は、速ぇ…」 黒木は白瀬の投球に驚愕する。同じポジションなだけに尊敬の的だ。それと対照的に紅は黙って白瀬の投球をじっくりと見ているだけだった。
そして、最後に高橋の実力はというと…大橋監督と1対1でノックを受ける。高橋は捕球してから送球までが驚くほど速い、この守備力で幾多にかのチームのピンチを救ってきたのだろう。 白瀬の投球、影浦の打力、高橋の守備力。流石は最上級生と言ったところだ。
夕暮れにさしかかった頃大橋監督が部員全員を集める。 「はい、今日も1日お疲れ様でした。え〜、いきなりですが来週末に紅白戦を行いたいと思います。チームはまた改めて発表します。」 大橋監督のその一言で3日目の練習は終了した。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/20 23:12 No. 18 |
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- 第18話〜休日〜
金曜までの練習を終え、土曜日は練習がない。 荻野は家でゆっくりしてから部屋着から私服に着替えどこかに出かけようとする。
美歩は部屋から出る荻野を見かけ 「あ、こうくん。出かけるの?」 美歩はいつもの調子で荻野に声をかける。 「あ、うん。久々に横浜に行こうかなって思って。」 荻野はニコリと笑みを浮かべる。
「横浜かぁ〜、私もついて行ってもいいよね?」 美歩は荻野に確認を取る。 荻野は一瞬「え?」って顔をするが 「お姉ちゃんも来るの?いいよ、お姉ちゃんと出かけるのも久しぶりだしね」 荻野は別に美歩を別に断る理由がない。特に1人で行きたいわけでもない。
「横浜〜横浜です。」 電車の中で美歩と喋っているといつの間にか横浜に着いた。 流石は、横浜だ。降車する人であふれかえり改札まで行くのもやや時間がかかりそう。 改札を出ても横浜は人が多く人を避けて歩かないとかなりきつい。
「さて、と。こうくんは最初何見に行くの?」 美歩は荻野の横を歩きながら言う。
「えっと…服を見ようかなって」 荻野は横断歩道を渡り目的地に向かいながら言う。 「ふーん、そっか。」 美歩は荻野の服装を凝視する。 荻野は元からオシャレ好きで服もいろいろ持ってるがやはりどれもこれも中学生らしいものばかりで着こなしを工夫しても荻野は童顔のため中学生と見られてしまう。でも、高校生らしい服を買えばそう見られなくなるかもしれない、荻野はそう思って服を購入しに、横浜へと出た。
店に入り、荻野はメンズコーナーへと向かう 荻野は服を手に取りながら自分に合うかじっくりと確かめる。気に入った服をカートに入れ次はジーンズを見る 「今持ってるのはボロボロになってきたからな…新しいやつを一着買っておくかな。」 荻野はブツブツ呟きながらジーンズをカートに入れる。 荻野の視界にアクセサリーが目に入るが 「アクセサリーか…別にいいかな?タカ(黒木隆之)みたいに似合わないと思うし。」 荻野はアクセサリーを元の場所に戻すと、店員に許可を取り試着室に入り、カートに入れた服を着用してみる。 しかし、自分で似合うと思っても他人に似合うかは分からない。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/20 23:48 No. 19 |
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- 第19話〜美歩と浩一と…〜
荻野はちょっと考えた末姉・美歩と一緒に着ていることを思い出す。 「お姉ちゃん〜、この服どう…かな?」 荻野は少し照れくさそうにする。 美歩は荻野の服装をマジマジと見る。こしこれが逆の立場でギャルゲーだとしたら「そ、そんなに見ないで…///」という主人公に水着姿を見られたヒロインが恥ずかしがったボイスが流れるだろう。だが、残念ながら立場が逆の上これはギャルゲーではない。
「うん、おっけ。私的にいいと思うよ。」 美歩は親指をグッと立てる。 「あ、ありがとう…。」 荻野は美歩に表情を見せずに後ろを向く、そこまで照れくさかったのか。ますます荻野が女じゃなかったのが残念に見えてきた。 その後、何着か美歩に確認してもらった。 荻野は財布の中身を確認してからレジへと向かおうとすると 「待って、こうくん」 美歩に呼び止められる。
「いいよ、こうくん。今日は私が出す。」 美歩は荻野からカートを取りレジへと向かう。 荻野は美歩を呼び止めるが美歩には聞こえず、美歩は手早く会計を済ませる。
「はい、こうくん。」 会計が終わると荻野に服が入った袋を手渡す。 「ありがとう、お姉ちゃん。」 荻野は少し申し訳なさそうな顔をしながら美歩にお礼を言う。 少し、お腹がすいてきた感じがする、でもこのタイミングで言うのはあまりにも図々しいのではないか?荻野はそう思い、美歩に言わずにいた。 美歩は店から出ながら 「お腹すいちゃったね、どこかで何か食べよっか」 荻野の方を向き昼食はどこで食べるか聞いてくる。 まるで荻野の事を理解するかのように優しくリードをする、美歩。美歩は元から優しいがここまで優しいのは珍しい。そして荻野はこのとき「今日はあまえていいのか?」とふと思った。 「え、じゃあ…最近出来た。あの店が…いいな。」 荻野は少し言葉が出てこなかったのか言葉に詰まる。それもそのはず。やや割高で2人で食べれば3000円近くかかるからだ。 「あ、あの店ね。私も気になるしいいよ!そこで食べよ。」 美歩はニコニコしながら歩く。値段は高いが味には評判があるから、大学生や社会人からは人気の店だ。しかし高いため高校生は中々来ない。
「あれ?みっちゃん?」 後ろから美歩を呼び止める声が聞こえる。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/21 00:16 No. 20 |
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- 第20話〜祝い〜
「え?ゆっきー!?久しぶりじゃーん。」 美歩はゆっきーと呼ばれる女性に気づくと自然に笑みがわき出る。
「みっちゃん、今日何してたの〜?…隣にいるのは弟さんだっけ?」 ゆっきーは荻野のことを見ると即座に弟と答える。しかし、荻野はあまりゆっきーの事を覚えていない。ただ声は昔聞いた記憶がある。
「これから、こうくんとお昼を食べようって思って…。 そうよ、でも。こうくんはあなたのことあまり覚えてないと思うわ。だってこの子とあったのってこの子がまだ中2の時でしょ?」 美歩は荻野の頭にひよこが浮かぶ前にゆっきーに答えを言う。覚えているのは声だけだがおぼろけながらおもちゃにされたのも覚えている。
「そうなの…かな?まぁ、年齢違うし一度しかあったことないから仕方ないよね。じゃあ、2人の邪魔をするといけないから…またね。みっちゃんに弟くん。」 ゆっきーは手を振りながら2人の前から去っていく 美歩はゆっきーの後ろ姿が見えなくなってから荻野と目的地を目指す。お店は駅ビルの中にあり、中は土曜日という事もあってか結構賑わっている。 荻野と美歩は席に着くとウエイトレスがメニュー表と水を提供する。 美歩はメニュー表を見ながら 「こうくん、なんでも食べたいのを選んで良いから。今日は私のおごりだからねっ。」 やはり美歩は特に今日は特に優しい。 「え、あ…いいの?その、服も奢って貰っちゃったし」 荻野は申し訳なさそうな声を出す。
「ん?いいのいいの。中学卒業したばっかの奴が姉の財布を心配するな」 荻野に心配させまいと軽くウインクをする。 本当は美歩だって自分の娯楽のために使いたいはずだ、でもそれ以前に今日はそんなことより弟の事を思えばそんな気持ちにはならない。それくらい弟の喜ぶ顔が見たいのだ。
荻野はなるべく安いのにしようとしたが、欲に負けて少し値がはるのを注文し、来るのを待つ。 「お姉ちゃん、今日はありがとうね。いろいろと…」 荻野は満面の笑みを浮かべる。
「ん、別に良いよ。結構遅れたけどこれが私からこうくんへの合格&入学祝いだから。遅れてごめんね?本当は高校に受かってすぐやってあげたかったけれど…私もいろいろ忙しかったから。こうくんが嬉しそうでなによりだよ、…改めて高校入学おめでと!こうくん。」 美歩は荻野の子供っぽい笑顔に見とれそうになりながら祝いの言葉を送る。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/23 01:55 No. 21 |
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- 第21話〜紅との出会い〜
大橋監督が宣言した通り、ついに紅白戦が行われる。メンバーは口頭でも発表したが部員全員にチーム分け及びオーダー表が記入されたプリントが配られる。すると、プリントを見た一部部員からは思わず笑い声が飛ぶ。 何事か。と思い荻野たちもメンバー表を見ている。
「…ははっ、そういうことかよ。ぜってー監督先発投手は名前で決めたろ。」 黒木もメンバー表を見ながらケラケラと笑い出す。
メンバー表はこうだ。 紅組 1番二橘(1年) 2番中荻野(1年) 3番三高橋(3年) 4番一諸口(2年) 5番遊松元(3年) 6番左稲本(1年) 7番捕高峰(3年) 8番右斎藤(2年) 9番投紅(1年)
白組 1番中岡島(3年) 2番右松島(1年) 3番一島田(3年) 4番捕影浦(3年) 5番投白瀬(3年) 6番三田島(2年) 7番二井上(3年) 8番遊池田(2年) 9番左黒木(1年)
「な、なるほど…紅組だから紅で白組だから淳か…でもまぁいいんじゃねぇか?」 影浦は苦笑を浮かべる
白瀬は軽いストレッチをしながら 「…ああ、特に俺とあいつが別チームで先発同士なのは俺にとってもあいつにとっても好都合だろうな。」 白瀬は紅の方をみながら淡々と言う中に何かを感じる。
紅はメンバー表から顔を上げると 「…面白い。これは好都合だな」 紅は珍しく笑みを浮かべる。
荻野は紅の肩をちょんちょんと叩き 「紅…君だよね?今日はよろしく。」 「…ん?ああ…荻野だっけか?ああ、こちらこそよろしく頼む。…今更改めて自己紹介するのもアレなんだが…まぁお前とはまだ絡んだことないしな…。 俺は紅優生、右投げ左打ちの投手。氷水には特待生として入学した。」 荻野と紅は今まで一度も絡んだことがなく今回、初めて会話を交わしたのである。 しかし、紅の素振りからすると橘と黒木とは既に絡んだような口調だ。
「僕と優生は同じクラスだから何度か話したことあるんだ、で、タカとは同じ中学らしいよ。」 橘は紅と荻野の会話に入り込む。 そして、紅は会話を打ち切り前方を見つめると偶然にもばったりと白瀬の目線が合う。今の2人には近づけない、それくらい2人は闘志を燃やしていた。
ついに紅白戦が始まる、紅組が先攻で試合が始まる。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/23 13:53 No. 22 |
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- 第22話〜紅白戦開始!〜
実は先日配布された氷水高校野球部のユニホームを着用して試合するのは今回は初めてだ。そしてユニホームの上から紅組は赤色のビブスを着用し白組は白色のビブスを着用しているが、おそらくこのビブス野球部の私物ではなかろう。
「さて、と。僕からか…」 橘はヘルメットを被り金属バットを持つと打席へと走る 「ども。」 橘は打席に入ると影浦に一礼する。
白瀬は「プレイ!」と合図がかかるとすぐに投球動作に入る。 橘は初球は何で入るのか待ち構える、ボールを打ちに行くがその時には既にボールは影浦のミットの中だ。 「おい、淳!ど真ん中ってどういう事だ!…橘、紅白戦とはいえガチでやらせてもらう。」 影浦はマウンド上の白瀬に怒鳴る。
『は、速い…』 橘は驚愕した表情で白瀬の方を見つめる。今までに体感したことのない速さ、これが氷水高校のエースの実力なのか。 橘はその後タイミング合わずに三球三振に倒れる。
「あ、荻…予想以上にあの人の球速いぜ」 橘はあ〜ぁとガックリ肩を落とす。
荻野は少し緊張した顔で 『白瀬さんってどんな投手なんだろう。」 球は速いことは分かった、だが持ち球が分からない。
橘同様、荻野も初球を見逃してしまう。 『こんな速いの見たことない…でも、見ているだけじゃあ…』 荻野は初球見逃したことを後悔する。
荻野に対する2球目を投げ込む、荻野も一か八かで合わせるかのようにバットを思いっきり振り当てに行く。
弱々しい金属音がし、打球は三塁ファールゾーンへと飛ぶ。 荻野は即座にタイムを取り打席から外れ両手をパタパタと上下させる。 『当たったのはいいけど、手が痺れた〜』 白瀬の速球に何とか合わせたためか手が痺れたようだ。
「当てたと言うより当たった感じだな…。」 高橋は打席の荻野を見ながら冷静に言い放つ。 荻野の当たったという打撃は当然白瀬や影浦も理解している。 だが、念を入れるように荻野への3球目は変化球だ。スパァンと影浦は気持ちの良い音を鳴らすように捕る。
『ここで変化球か…』 荻野はストレート待ちのスイングをして完璧に間を外されたスイングだった。 高橋は荻野の最後のスイングを見て珍しく眉間にしわを寄せる。 『あれじゃあな…。ま、試合が終わってから荻野に言った方が良いな』 高橋はどうやら荻野の欠点を発見したらしい。 その後高橋が凡退し攻撃終了
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/23 19:24 No. 23 |
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- 第23話〜紅優生の実力〜
「白瀬先輩、俺は先輩、あんたからエースナンバーを奪って見せますよ。」 白瀬は自軍のベンチに戻るときふと、紅が以前入部してすぐに白瀬に言い放った言葉を思い出した。
「紅、見せて貰うぞ久里浜シニアを全国優勝に導いたお前の実力を!」
白瀬の発言により、白組ベンチはざわつく。 「全国優勝右腕!?しかも久里浜シニアだとぉ!?」 池田は取り乱す。 「…んで、んな奴が氷水に…奴なら新横でも大阪松蔭でもいけるだろ!?つーか誘いが来ただろ!?」 影浦は口に含んだスポーツドリンクを思わず吹き出す。
『高校に入って初の試合…それも白瀬先輩、あんたと投げ合えるってのは最高だ。』 紅はロージンを手に付ける。
「優生!久しぶりだなぁ!久里浜を全国優勝に導いたんだろう?」 岡島は打席に入ると紅に声をかける。 …だが、しかし。紅は無視する。なぜならば、今の紅には興味のない存在だからだ。 即座に投球動作に入る。紅はボールを弾き出すようにミットをめがけて投げる。 1年とは思えない球速が出ただろう。岡島はただただ唖然とするしか無かった 『あいつ〜、無視しやがって…可愛げのない奴だよ、まったくってもあいつここまで速い球投げれるのかよ!?』 岡島は紅にスルーされて穏やかな気分ではいられない。
『あんたの単調さはよく知っていますよ…先輩♪』 紅は先輩である岡島を見下ろすかのように投げ込む。 紅が選択したのは岡島が苦手とするシュートボールだ。岡島は反射的にバットに当てるもツーナッシングと追い込まれ、最後は高めのストレートで空振り三振を奪われる。 続く2番の松島だが、こちらは紅とはシニア時代一度対戦したことがある。 『大会でこいつにノーノー食らっちまったんだよな…こいつの真っ直ぐはまず打てなかったしな』 松島は弱気で構えていたのを紅に見透かされたのか上から目線でオールストレート勝負で空振り三振に打ち取る。
「…ふ、早速本領発揮か…久里浜のドクターK紅優生…。」 白瀬はふとした笑みを出す、その笑みは後輩ではなく純粋にライバルとして面白いと感じた笑みだ。 島田はなんとか粘るが紅に三振を取られる。紅は3者連続三振で1回裏の守備を終える。 突如強風襲う、この試合を暗示するかのような。そんな強風だ。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/23 23:26 No. 24 |
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- 第24話〜紅白奪三振SHOW!〜
白瀬は初回2奪三振対する紅は初回3奪三振。 今のところ三振以外の結果に終わったのは高橋充、彼だけだ。
2回の表は白瀬の前に3者連続三振を喫する。 2回の裏、先頭の影浦が特大ファールを打ったり強烈なファールで粘るが最後は弱点である緩急にやられ、三振を奪われる。 白瀬も粘り9球目を打つがサードを守っている高橋の好プレーにヒットを阻まれた、田島はホップするかのようなストレートにやられ、三球三振に倒れる。
3回は両チームとも三者三振に打ち取られる、いつまで続くのだろうか?この奪三振ショーは。 先ほどから鳴り響くのは心地の良いくらい良い音がするミット音と空を切るバットの音だけだ。 金属音は白瀬の打席以降長らく聞こえてこない、いい加減聞こえて欲しいものだ。
4回裏、2者連続三振の後島田が粘りに粘って出塁する、今日初めてのランナーだ。 島田は紅の集中力を削ぐように塁上をうろちょろする。紅は2度、3度と牽制を入れる、そのたびに島田は塁に戻る。 流石に4度目はないだろう、と島田が気を緩めた隙に───紅が1塁方向に振り向き先ほどよりやや速く牽制する、島田は戻りきれずにアウトとなる。
立ち上がりベンチに戻るときに紅と目線が合う、その瞬間思わず島田は背筋が寒くなる。 紅は島田のリードなんて気にしてはいなかった、紅は島田の事をまるで羽虫を見るかのような目な冷たい目でみていた。 今の紅にとってはチームメイトも相手チームも興味ない存在だ。 ───ただ、1人を除いてだ。 1年投手に苦戦し、ベンチがざわめく中静かに戦況を見ていた男は、ゆっくりと静かにマウンドに上がる。 5回表、白瀬は諸口に初ヒットを許す、しかし続く松元を三振に打ち取り、稲本を併殺打に打ち取る。 5回裏、こちらも先頭の影浦にヒットを許す、打球は左中間を破る間に影浦は巨体を揺らしながら2塁を陥れる。 紅はフーッと息を吐き、キッした表情で白瀬を見る。 冷たく攻撃的な眼その瞳の中に闘志をたぎらせて紅く燃える炎がある、冷たいながらも闘志を燃やしている。 紅にとって白瀬は氷水高校のエース、先輩として信頼する存在と同時に自分が越えたい壁でもある。 紅は気合いを込めたストレートを投げ込む、白瀬も応戦するかのように打ちに行くが、紅に適わず凡退する。後続も三振に打ち取る。 2人のドクターKの演劇が終わらない。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/24 01:23 修正1回 No. 25 |
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- 第25話〜終幕〜
6回表、高峰、斎藤共にあっけなく三振に打ち取られ、紅の2度目の打席がやってくる。
『紅…、何度も言うが俺はお前に負ける気はない…。』 白瀬は静かに風を感じながら影浦のサインに頷く。 紅は白瀬の甘く入った初球をフルスイングで捉える。打球は今日一番の伸びを見せるが、フェンス手前で失速し、ライトフライに倒れる。
「相変わらずビミョーに球が軽いな、おい。」 影浦はベンチに戻りながら白瀬に向かって呟く。
『紅優生、あいつはシニアで飛び抜けた投手の才能で騒がれていてあまり話題にないがあいつはバッティングも得意と一部で言われていた…、今はあいつには打たれたくない、あいつだけには…。』 白瀬は影浦に話しかけられたことに気がつかず考え事をしていた。 事実、紅はシニア時代はクリーンアップの一角を担っていた、今回は下位打線ではあるが…本来はもっと上の打順でもいいだろう。
6回裏、この回の先頭田島を簡単に三振に打ち取り、井上と池田をポップフライに打ち取る。 7回表は橘がバットに当てるが結果はファールチップで三振、続く荻野はこちらもなんとか当てるが崩れた打撃でピッチャーゴロに終わる、高橋はこの打席も粘るが高橋の力では白瀬には適わない、結局空振り三振に取られる。
7回裏、この回紅は少し長い間合いを取るようになってきた。 投球もボール球が増え、浮いた球も少しずつ増えてきた。 それでも、なんとか打ち取るがこの回は初めて奪三振0に終わった。 疲弊してきた紅を援護したいが、そうはさせないと言わんばかりに白瀬は全力で紅組をねじ伏せる。
8回裏先頭の島田を簡単に打ち取り、4番打者影浦を迎える。今日一番紅にタイミングが合っている紅にとっては厄介な打者だ。
初球は手が出ず、見逃す。2球目は外れてボール、3球目を影浦は打ちに行くが空を切る。 そして4球目。
───紅は決めに行ったがボールが滑り力のない球が吸い込まれるかのように真ん中へと行く。
影浦がそれを見逃すはずがない。
───カキィィィン! 鋭い金属音が鳴り響く、豪快に引っ張った打球はレフトの防護ネットに突き刺さる。
影浦はベースを一周しながら 『よく頑張ったな、1年。だがこの試合白瀬の勝ちだ』 影浦は紅の健闘を心から称える。 紅は僅かな気力で後続を打ち取る。
結局、最後は三者連続三振で終わり0-1で終了する。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/24 14:28 修正1回 No. 26 |
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- 第26話〜敗北〜
紅は紅白戦後ロッカーロームに戻っても1人ユニホームから着替えず項垂れていた。その様子に何人か励ますものがいたが紅は、聞こえていないのか反応しなかった。
『打たれた…影浦先輩に完璧に…何がよく頑張っただよ…俺は負けたんだ。失投も疲れも関係無い、単純に俺はあいつに…白瀬先輩に投げ負けたんだ。』 紅はギリギリと歯ぎしりを立てる。
「…負けたのはいつ以来だ?相当久しぶりだろう?」 白瀬は俯く紅の前へ立つ。
紅は長い間負けて無かった。久々に味わうドロドロムカムカする感触、これが負けだ。
紅は白瀬の存在に気づき 「何ですか?先輩もとっとと着替えないと風邪引きますよ」 紅は今は誰にも話しかけられたくない、そのような雰囲気が鋭く強く漂っていた。
「今日の紅白戦、お前もよくやったが…俺の勝ちだ。」 白瀬は紅の健闘を称えながらも紅にはっきりと負けを宣告する。
紅はそれを聞いた瞬間にキッとした表情で白瀬を見つめ 「あんたまで、そういうのかよ!粋がった1年がエースに喧嘩を売っておいて、結局負けたんすよ?…これほどの恥辱はないですよ…。」 紅は抑えきれない感情を白瀬へとぶつける。
白瀬はやれやれという仕草をしながら 「紅、お前は素晴らしい投手だし。入ってきてすぐなのにここまで好投するのは正直予想していなかったが、流石はシニアNo.1投手と言ったところか…。 だがな、紅お前の敗因は自分の世界に入りすぎた。初回からエンジン全開で飛ばし、終盤にはスタミナ切れをおこし影浦に被弾…シニア時代は無尽蔵と言われたお前が簡単にスタミナ切れになるとは思わなかった…確かに全力で来たから抑えられたのもあるかもしれない、だが試合展開やイニングを考えず俺に勝ちたいだけでそれ以外は考えていなかっただろ、展開を考えれば疲弊はしないし影浦にも被弾しなかったはずだ…。 まぁ、お前はクールなくせに熱くなると火傷しそうなほど熱くなるからな、久々の今は敗戦で悔しいだろう? …俺の最後の夏が終わるまで何度も俺からエースナンバーを奪うことに挑戦してみろ!何度でも受けて立つ、だがエースナンバーは渡さないぜ!」 白瀬は敗戦のショックを引きずる紅にあえて煽り何度でも挑戦してこいと紅に言い放つ。
白瀬と紅、似たもの同士の両者。 学年は違うとはいえど、この2人の競争は白熱したものになりそうだ。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/24 23:26 No. 27 |
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- 第27話〜欠点〜
日曜の練習日、気温も温かく春らしい日差しが照る、こんな日はどこか出かけてたいでも、それができない。でも、部活がある。
「『外野手って言ってたけど…どう見ても野手じゃあない、打撃が絶望的に苦手な中学生投手の感じだ。』荻野、ちょっといいかな…?」 高橋は荻野の打撃練習を観察しながら、この間の試合中と同じ欠点を発見し即座に荻野の元に駆け寄る。
荻野は練習を中断し、高橋の方を向く。 「先輩、どうかしたんですか?」 「ん?荻野。君ってさ、中学の時バッティングはどうだったの?何番打ってた?」 高橋はまず中学時代について質問をする。
荻野は思い出すように考え 「えっと…、足の速さを買われて1番を打ってたんですけど、基本的に打撃が苦手で…」 荻野にとってはあまりいい思い出はないので苦笑する。
高橋は顔に手を当てて 「…打撃があまり得意じゃない俺でも、君の欠点を見つけることが出来たのに…中学時代の野球部の監督は何をしていたんだ?と思うけどね、君が打てない理由は最後まで見てないし、フォームが滅茶苦茶だよ、まずはフォームを固めなさい。さ、練習再開だ。」 高橋は荻野の欠点を指摘すると即座に去り、再び荻野の観察を始めようとする。
『ど、どういうことなんだろ…?言ってる意味が…』 荻野は野球が好きだが今まで野球に対し真剣に考え悩んだことがない、そのため自分のフォームについても深く考えたことがない。 フォームも時々代わり安定していない。だが、高校野球で遊び感覚は許されない。特にこの激戦区神奈川県では。
何回打ってもヒットしない、それどころかフォームを思い浮かべて打っても即座に崩れる。 ヒット性は皆無で打撃練習を終える。
「荻野、選手のタイプは違うけれど。どうせなら影浦のバッティングフォームをマネしたらどうだい?」 高橋は落胆する荻野に優しく声をかける。
影浦のバッティングフォームは、プルヒッターではあるがタイミングの取り方は素晴らしく、クセのある動作がない。まさに平均的な打撃スタイルと言えよう。 高橋の言うとおり、まずは影浦のバッティングフォームをマネしてから自分のバッティングフォームを作った方が良いだろう。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/11/27 22:57 No. 28 |
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- 第28話〜影浦と荻野〜
「『まずは荻野のバッティングを中学生以下から高校生レベルの打撃まで底上げろか…ったくめんどくせぇな…。』そもそも俺とアイツじゃあタイプ違うし…」 影浦はユニホームに着替えながら愚痴る。 なんとか、表情には出さないようにしているが口ぶりからは面倒くささが伝わってくる。
グランドに出て準備運動を終えると、練習を始める。 今週は1年が最初に打撃練習を行う。 つまり影浦は荻野の打撃を見ながら指導しなければいけない…まったく、面倒臭いことだ。…という態度を抑えつつ荻野の打撃練習を見る。 ───が、いきなり呆れる。 呆れて溜息しか出ない…それでも荻野の打撃練習を見る。 バットに当たっても響く音は弱々しい金属音。 「『やれやれ、こんなんじゃあ…どこから指導していいのか、逆に分からないな…これなら素───』なっ!?」
───キィィン!
鋭い金属音と共に弾丸ライナーでフェンス近くまで打球を飛ばす。
影浦は思わず目が点になる 「あいつ、あんなバッティング出来るのか…!?」 影浦は荻野から見たことのない強い打撃に驚きを隠せない。 だが、結局その後、鋭い打球は飛ばず凡打やポップフライレベルのあたりだけだった。
「『さっきのアレはなんだったんだ?マグレあたりなのか?…だが、おそらく…』荻!ちょっと来い!」 影浦は力強い声で荻野を呼びつける。
荻野は影浦の近くに行くとヘルメットを取り影浦を見上げる 「なんですか?先輩」 荻野は何も分かっていないような顔で言う。
影浦は荻野の無邪気すぎる笑みにイラッとなりそうな感情を抑えながら 「…この間高橋も言ってたと思うが、打撃フォームを固めろ。俺は教えるのは悪いが上手くはねぇ、だからタイプは違うとはいえ俺のバッティングフォームをマネしてみろ。…こうだ!」 影浦は言い終わると金属バットを手に取りお手本のようにスイングをする。
影浦はバットを手に持ち荻野の近くへ腕を伸ばす。 どうやら、荻野にマネしてみろということらしい。
「こ、こうですか?」 荻野は影浦のフォームをなんとなく意識しながらスイングをしてみる、当然マネで慣れていないため不細工で汚いが影浦のお手本に近いフォームだ。
影浦は頭をポリポリとかきながら 「ああ、そうだ。とりあえず今から俺がいいぞというまで素振りしろ」 影浦はややきつく言う。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/12/29 00:35 No. 29 |
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- 第29話〜ある夏のマウンド〜
帽子から汗が滴り落ちる、セミの鳴き声が耳を劈く。ある少年は肩で息をしながら打者の方を見る。
「おい、速く投げろやぁ!」 「ちんたらしてんじゃねーぞゴラァ」 相手ベンチから野次が飛ぶ。
「ピッチャー落ち着いて〜!」 「頑張れ〜」 ベンチとバックからやや小柄な少年に声援を送る。
「最初のいい球はなんだったんだよ、マジでよぉ!」 相手の打者は容赦無く甘く入った真っ直ぐを打ち抜く。 スコアの数字が7から8へとなる。 試合はまだ2回、この回だけで彼が8点も失ったことを示す。
「『恐い…投げるのが…恐い、恐い…。』」 小柄な少年は俯き、次の打者が入るまでずっと俯いていた。
「『この人だ…恐い、また打たれる…。』」 少年は打席に入った大柄な打者相手を見つめる
大柄な打者は小柄な少年の顔を見ていきなり笑い出す 「おいおい、お前ぇ何涙目になってんだよ、試合中だぞ?ばっかじゃね〜の?おい!」 まるで小柄な少年をさらに追い込むように嘲笑する。
「五月蠅い五月蠅い五月蠅い!」 その小柄な少年はやや怒りながら投げ込む。
しかし、怒りながら投げても甘く入っては意味がない
─────キィィィィィン
───
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荻野は息を切らしながら飛び起きる 「っああ…って夢か、あの時のことは思い出したくないのに…この学校入ってから、あの時の夢を見る回数が増えたな…。」 荻野の顔と髪は汗なのか?ぐっしょり濡れていた。
ふと、時計を見ると時刻は2:49を指していた。
「まだこんな時間か…でも、今はねる気にならないし…飲み物飲んで落ち着くか。」 荻野は冷蔵庫へ向かい、冷蔵庫から烏龍茶とロールケーキを取り出す。
荻野は次にテレビを付け、ケーブルテレビで何かやってないかチェックする。
『4年前…僕が中1の夏頃にこの家に引っ越してきた…最初は受け入れることが出来なかったし、辛かったな。…今思えばあの時は本当に辛かったな…。」 荻野は偶然にもメジャーリーグ中継を見つけ、野球中継を見ながらロールケーキをほおばる。 夜更かしはいけない、そんなこと分かっている。 でも、今は好きな物を見て気分を和らげたい、朝起きるのが辛くなろうが、今は何も考えたくない。
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Re: 頂点を目指せ 名前:アチャ日時: 2012/12/30 00:43 修正1回 No. 30 |
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- 第30話〜ガールズ・トーク〜
授業終了のチャイムが鳴り、教室では各々昼食を食べ始める。
「はぁ…」 茜は教科書とノートを鞄にしまうとふと溜息をつく。
「あっかねー!どったのタメ息ついて〜。あー!さてはお前…好きな人でもできたのかー?」 いきなり茜の頬をぷにぷに触るように後ろから飛びついてきたのは茜の友達である早坂恵理(はやさか・えり)である。
茜は一瞬ビックリする。 「うわ、…ってえりりんか。脅かさないでよ、もう!」 茜は少し声を荒げる。
恵理は少ししゅんとするが 「う〜、怒らなくてもいいじゃないか〜、怒った顔も可愛いけどさ〜。」 恵理は間延びをした言い方をする、天然で明るくムードメーカーのため彼女がいたら楽しいだろう。
「おっさんか、お前は。」 ポカッと恵理の後頭部を叩く、彼女も茜の友達である有田甘奈(ありた・かんな)である。
「うぇ!?甘奈ぁ?いいじゃないか〜女同士だしさ。」 恵理はニヤニヤしながら言う。
甘奈はフッと笑い 「ま、あなたの勝手だし…私は何も言わないわ。で、茜いるの?…気になる人?」 甘奈は茜の異性関係についてざっくりと聞き出す
茜は困り顔になりながら 「え…?いるわけないじゃん、いないよっ…まだ。それに、さっきのタメ息もそんな変な意味ないよっ」 茜の顔はうっすら赤くなっていた。
「へぇ、でもっさ、アカネー。野球部のマネージャーやるならさ〜制服より体操着姿の方が絶対いいよ〜そっちの方が可愛いし動きやすいじゃん、それに…」 「まぁそれに制服だと汚れちゃう可能性もあるしね、うちの学校はブルマだしブルマ姿が恥ずかしいなら上からジャージ穿けばいいじゃない?…ところで、さっきのタメ息の意味は何かしら?」 甘奈は恵理が言いかけたことに上乗せをして言う。
茜は少し照れながら 「あ、ありがと。ジャージ姿かぁ〜そうだね、そっちの方がいいかも、ね。はぁ〜GW明けテストだよぉ〜いろいろ忙しすぎて勉強する時間少ないし〜」 茜はGWあけに始まるテストで焦り落ち込む。
「はあぁ〜嫌なこと思い出させないでくれよぉ〜、アカネェ〜助けてよぅ〜。」 恵理は項垂れながら茜にしがみつく。
甘奈は曲を聴きながら 「嘆いても仕方ないわ、勉強して挑むしかないでしょう?」 甘奈は表情一つ変えずに正論を言う。
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