2−1 名前:はっち 日時: 2012/12/06 05:35 修正6回 No. 10
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2−1
鈍い金属音を立てて、白球は外野へと流れていった。確か、ライト前に落ちた打球がそのままファールゾーンまで転がり、返球の間に打者走者は2塁を陥れた場面だ。打たれた初ヒットは2順目で4回表2アウトからだった。ベンチで監督が低くうなったことを思い出す。 「綺麗な当たりとは言えないが、これは振り切られた」 薄暗い視聴覚室の42型液晶画面に映し出された映像を観ながら、後藤勇は頭を掻いてそう言った。 「このあと4番にはセンター前食らったんだ。初球チェンジアップをたたかれた」 この連打で俊足の2塁走者が帰還し、ルイは自責点を背負った。 「狙われたのかな」 「かもしれませんね」 「だよなぁ〜。ルイ明らかに機嫌悪くなってたもんな」 ― あいつ配球が謎なんだよな。 ルイは勇をそう評していた。 ― まっすぐで片付くとこでわざわざ変化球投げさせるんだよ。大抵はボール球。あれで緩急つけてるつもりかもしんねぇけど、球数増えるし、カウント悪くなるし。 あいつの場合、使いどきってのがちげぇんだよ。チェンジアップは高めに入れらんねぇから神経使うし。 「ルイの場合は、そもそも前に飛ばされることを嫌がりますからね」 ― ツーシーム混ぜれば俺のまっすぐは空振り取れるじゃん。 打たれて機嫌が悪くなったというよりも、一時的にルイは隠せなくなったのではないか。
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