Re: 甲子園に行けたなら 名前:バイオ・テクノロジー 日時: 2013/03/22 05:35 No. 1
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序章【大沢圭。〈元〉野球バカ】
ある日の放課後、俺は友達の長谷川雄太(はせがわ ゆうた)に呼び止められた。
「なぁ圭。お前、なんでこの高校選んだの?」 「女の子が可愛かったから」 「……お前、ホント変わったよな」
高校入学から三カ月。 この質問をされるのも、もう何度目だろうか。 たしかに中学時代の俺、大沢圭(おおさわ けい)は野球バカだった。 これ以上ないくらいの、野球バカだった。 だから、俺がこの〈野球部のない〉鳳来高校に入学したことに、みんなが疑問を抱くのは、そんなにおかしなことではないかもしれない。
でもさ。 中学の野球バカが、高校に入ってまで野球バカを続ける意味なんて、きっとないんだと思う。 だから、俺もこれを機に高校デビューする。 部活なんかやらないで、勉強とバイト両立させて。そしたら女子にもすげーモテたりしてな。 うん。俺のこの高校生活の目標は女子にモテモテのいわゆるリア充というのになることに決定だ。
「まぁ、圭がそれでいいって言うなら、俺も止めはしない……けどさ」 「けど、なんだよ」 「アレ、どうするんだよ」 「アレって……うわ……」
俺と雄太の進行方向。というか、教室のドアの前に、一人のおっさんが立っていた。
「げっ……また出やがった」 「出やがったとはごあいさつだなぁ! 大沢圭よ!」
コイツは、金山熊雄(かねやま くまお)。愛称クマ先生。由来は名前と容姿。 ウチの学校の教師だ。ちなみに教科は倫理担当。 ウチの学校で倫理が必修なのは2年時だけなので、普通なら今の段階でコイツと関わりを持つようなことはないはずだったんだけど。
「今日こそは野球部に入ってもらうぞ、大沢」
入学式の時から、なぜか俺はこの男に目をつけられている。
「……この学校野球部ないでしょうが。あっても嫌ですけど」 「だから、俺とお前で作るんだと言っているだろう! 何度も!」
だから、嫌だって言ってるんじゃんか。何度も。 てか、雄太のやつしれっといなくなってるし。逃げやがったなあのチビ。
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