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ロックされています  扇の要  名前: トッキー  日時: 2013/03/26 16:14 修正1回   
      
久しぶりに小説に挑戦してみたいと思います。
前回が駄作だったので……
とりあえず、自分なりに頑張るんでよろしくお願いします。
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ロックされています   序章1  名前:トッキー  日時: 2013/03/26 16:49 修正1回 No. 1    
       
鈴江隼(すずえしゅん)は、山ノ手市民球場のキャッチャー・ボックスの上にいた。
だが、彼にとっては、ただのキャッチャー・ボックスではなかった。彼は相当な決意を込めてこの試合に臨んでいた。

ーー絶対に中学軟式野球の頂点に立ってやる……

その密かな狙いは、つい先程までは成功していた。
優勝候補のあかつき大付属中を、自分のリードで、追いつめていた。
そう、つい先程までは。

今、現在の状況は、漫画の最終局面などでもよく目にするような、ベタだが、究極の展開……

9回の裏で、ツー・アウト満塁なのだ。
隼たちの宮古中学校(みやこちゅうがっこう)が相手のあかつき大付属中を1対0でリードしているのだから、一打サヨナラといったところだろうか。

8回まで、相手打線は宮古中エースの鳳刀馬(おおとりとうま)の投球に、全くと言っていい程、タイミングが合っていなかった。
8回までに打たれたヒットは、散発の3本。
後続も難なく打ちとった。

そう、流れは確実に宮古中がものにしていた。

だが、9回の裏のあかつき大付属中の攻撃。
あかつき大付属中先頭打者の猪狩進(いかりすすむ)が打ち上げた、なんでもないフライを右翼手が、エラーしてしまったのだ。
ここから、試合の歯車が狂っていく。

次の打者はバントをしてきた。
自分も残ろうとするセーフティ・バントではなく、何としてでも走者を2塁に進めようとする送りバントだった。
だが、ピッチャー前に転がった打球を、鳳は2塁に送球した。
これが間違いだった。

フィルダース・チョイスだ。

ノー・アウト1,2塁。
次の打者を鳳は三振に仕留めた。
その次の打者も、三振。

だが、ツーアウトになったところで野手陣が気を緩めた直後、絶妙のセーフティ・バントを決められてしまう。

こうして、9回裏ツーアウト満塁というシナリオが出来上がったのだった。
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ロックされています   序章2  名前:トッキー  日時: 2013/03/27 11:22 修正1回 No. 2    
       
「タイムお願いします。」

隼はタイムをかけた。
審判の了解を聞き、マスクをとりながら鳳の元に駆け寄った。

「降参かな。」

鳳の第一声がこれだった。
見ると、その言葉どうり、両手を軽く上げて、「降参」のポーズをとっていた。

「まずいのが出てきたな。
今日打たれたヒットは、全部あいつからだ。
どうする?」

あいつとは、大会ナンバーワンプレイヤーとの呼び声高い、猪狩守のことだ。
その猪狩守は獣みたいな、気迫のこもった眼差しで、こちらを見つめてくる。

「敬遠したいですね。」と鳳は答えた。「ああいうのは苦手です。」

「得意な奴としか戦わないで済むんだったら、楽で済むんだけどね。それに、敬遠したら、押し出しで同点だ。」

「そうしたら、もう、こちらに勝ち目はないでしょうね。」

はぁ、とため息をついて、「冗談は頼むからよしてくれ。」と言った。「三振を取りに行くか、打たせて取るか。選択肢はこの二つだ、どうする?」と隼は言った。

鳳はちらりとライト方向を見た。
さっきエラーした右翼手と目があった。
だが、すぐに右翼主は目をそらしてしまった。
その様子はふて腐れているように見えなくもなかった。

「三振を、取りに行こう。」隼はこう言った。鳳の気持ちを察したようだった。

わかったというかわりに、鳳は軽くうなずいて見せた。
わかったとも言いづらかった。

それを確認して、マスクをかぶりながらキャッチャーボックスへ戻って行った。
しゃがみこみ、ミットを構えようとすると、左打席に立っていたバッター、猪狩守が話しかけてきた。

「君は、今この状況で、バックを信用して、サインが出せるかい?」

できないね、と隼は答えた。そして、こう続けた。

「あまり、人を信用しない主義なんでね。」



審判の声で、ゲームは再び動き始めた。
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ロックされています   序章3  名前:トッキー  日時: 2013/03/28 10:30  No. 3    
       
隼はちらり、と相手打者を見てみた。
中学生だというのに、もうプロのスカウトに目を付けられれいるという噂を聞いたことがあるが、確かにうなずける実績をこのプレイヤーは持っている。
彼のポジションは投手だった。
だが、打撃成績も桁外れている、ということだった。
もちろん、本業のエース・ピッチャーとしての役割も十分どころか、十二分に果たしていたわけである。

完全試合、一試合平均奪三振一八、予選全試合完封ーー

どれも、並みのプレイヤーにできることではない。
その、並ではないプレイヤーから一点を取れたのだ。
この一点を守り切れば、勝てる。


だが……

ーーこの男には打たれる。

隼はそう思った。
それは何の根拠もない、漠然としたものだったが、なぜか、抑えられる気がしない。


初球だ。
このシュチエーション、初球で勝負が決まる。

何がいいのか。
高めに投げられる変化球などない。
鳳の球種は、スローカーブ、パーム、シンカー。
これらはキレはあるものの、すべて緩く、バッターにとっては格好の餌食となる。
となると高めに投げることができるのは、ストレートしかない。

だめだ、初球から不用意に高めを投げたら、この男に限らず、必ず打たれる。
じゃあ、低めか?
ここまで、ほかの打者に限らず、鳳のスローカーブに全くタイミングが合っていない。
真中から、内角低めに切れ込むスローカーブを投げれば、読み打ちしない限り大怪我はしないはずだ。

スローカーブのサインを出す。
鳳は首を縦に振った。

鳳はこれまで隼のサインを一度も拒否したことがなかった。
それは、鳳の実力で抑えられたということもあるが、隼のリードが優秀だったというのが大きい。
これまでの試合は、常人では考えつかない、隼の大胆なリードの恩恵で勝てた試合がほとんどであった。

ーーだが、この日は違った。

ワインドアップから放たれた渾身のスローカーブを、鋭く、豪快に振りぬいた猪狩守のバットが襲うーー



彼の打球は、鮮やかな弾道を描いて、バックスクリーンに飛び込んだのであった。
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ロックされています   第1章  名前:トッキー  日時: 2013/03/29 11:13  No. 4    
       
準備をしていると、ドアをノックする音が聞こえた。
はいどうぞと返した。
だが、自分が急いでいるからか、返事がぶっきらぼうになったような気がする。

「おー、制服、似合ってんじゃねぇか」
と、黒崎雄二は部屋に入るなり、言ってきた。

「その台詞、聞き飽きました。」
Yシャツのボタンを閉めながら、鈴江隼は返した。

「そんなことをいうなよ」
げんなりした顔で黒崎は返した。
彼は口喧嘩がめっぽう苦手なのだ。
といっても、今のやりとりは口喧嘩のうちには入らないのだが。

「で、何か用事があったからここに来たんじゃないんですか?」

「ああ、由紀ちゃんのことなんだが・・・」
黒崎は神妙な顔つきをしながら、話し始めた。

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ロックされています   第一章  名前:トッキー  日時: 2013/03/30 12:46  No. 5    
       
私立恋恋(れんれん)高校の正門をくぐろうとしたその時、不意に声をかけられた。
その声の主が北条七槻(ほうじょうなつき)の物であることを、隼は知っていた。

「おはよう、速いね?」彼女のほうから声をかけてきた。

「うん、一時間くらい早く来て、学校探索でもしようかなと思っていたところ。
しかし、ここら辺の電車は一時間に一本しか来ないから困るね。」

だから隼は先程の支度で急いでいたのだ。
決して、遅刻しそうだからではない。

「まぁ、田舎はこんなもんだよ。」

隼は七槻が田舎好きだということを思い出していた。

無駄話をしているうちに、昇降口にまで着いた。
クラスの振り分けもここに来ればわかるということだった。

「あ、私は1−Eみたい。」

「僕は1−Aみたいだね。
この学校の男子は皆1−Aに集まっているみたいだ。」

「何だ、男子いないのか。」

「男子がいるクラスの方がよかったのか?」

「ま、パシリがいなくなっただけの話なんだけどね!」

「そうか。」七槻の人使いが荒いのは、昔から知っていたので、驚くこともなかった。


「んじゃ、先に教室行ってるから。」

「ん、」

そう言って、七槻と別れた。
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ロックされています   Re: 扇の要  名前:トッキー  日時: 2013/04/05 01:37  No. 6    
       
思わずはぁ、とため息をついてしまった。
いけないいけない、初日から僕は何をやっているんだーー

今の状況を一言で表すとしたら、迷子。
この一言である。

まさか、初日から迷子に、しかも学校内でなってしまうなんて夢にも思わなかった。
たかが学校、ではなく、されど学校というわけだ。

始めは食堂と購買部と図書館の場所を探すはずだった。
だが、予定より早く終わったからといって、すぐに校舎内に戻らなかったのが間違いだった。

これからどうするかーー

前などまともに見ていなかったからであろう。
ドンッと何かにぶつかってしまった。
それは人であった。
この学校の男子生徒だ。

「痛いですねぇ、次からはちゃんと前を見て歩いてくださいね?」

なんだろう、心の奥に引っ掛かるような、釈然としないしゃべり方をする奴だな、と隼は思った。
だが、よくよく考えてみたら、悪いのは自分だ。
ここは素直に謝ろうーー

そう思ったが、すでに彼の姿はなかった。
30秒もかからないやり取りではあったが、後味が悪い。
非は自分にあったのに、謝れずにいるというのはどうもすっきりしない。

次に会った時には謝ろうーー

そう決意して、自分の教室の在り処を探し始めた。
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ロックされています   Re: 扇の要  名前:トッキー  日時: 2013/05/19 17:47 修正2回 No. 7    
       
ドン!と塀という名のターゲットにボールが当たる。
だが、早川あおいが意図していたところとは違うところにボールが当たってしまう。
たとえそれが10センチでも、ズレというのは投手にとって命取りだーー

それを知っているから今の投球に彼女は納得できなかった。
いや、そもそも今の自分の現状に満足できていない。

彼女の願い、それは女性選手として初の甲子園出場であったが、彼女はそのスタートラインにも立っていない。
チームに所属する、というのが野球選手にとってのスタートラインであることには間違いないだろう。

だがーー
彼女を受け入れてくれる高校はなかった。
受け入れてくれる高校がないかもしれないと予想していたから、彼女は野球部がある県内の高校をすべて問い合わせて、自分が入部しても良いかを一校ずつ電話して確かめたのだ。
結局その努力は無駄になったが。

理由は自分でもわかっている。





ーー自分が女子であるから。





許せない、その事実が。

自分が男に劣っているとは思っていない。
もちろん、勝っているわけではないが。





そんなむしゃくしゃしたままの気持ちで投げたボールが失投になって人に当たったことに、彼女自身すぐには気づかなかった。
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ロックされています   Re: 扇の要  名前:トッキー  日時: 2013/05/19 18:42 修正3回 No. 8    
       
「しっかし、お前も災難だったよなぁ。
入学初日、さぁ、今日から新学期が始まりますよって時に、迷子になった上に、女子の投げた硬式野球のボールが頭に当たるんだもんなぁ。本当についてないよなぁ。」鈴木晶(スズキショウ)は、にやにや笑いながら早口で言った。

「保健室で油を売っている暇があったら勉学の一つや二つに励んでほしいんだがね。」やや呆れた顔で隼は返した。

「まぁまぁ、そんな堅いこと言うなって。しっかりと見舞いの品も持ってきたんだぜ?
今日の鈴木晶は一味違うってな!」そう言って晶は菓子パンを一つ差し出した。

「ふん、まぁありがたく受け取っておくよ。」



鈴江隼は早川あおいにボールを当てられた後、彼女に連れられ、保健室に来ていた。
保険医の加藤理香(カトウリカ)曰く、大した怪我ではないが、念のため、昼休みまで様子を見るということだった。
ただ、普通の怪我ならば、これほど時間をかけることはない。彼がボールに当たったのは、朝のホームルームが始まる前なのだ。

何故だろう、と思いつつも隼は指示に従うことにした。
そして現在に至るわけである。
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ロックされています   Re: 扇の要  名前:トッキー  日時: 2013/05/26 01:59 修正1回 No. 9    
       
加藤理香はその事実に内心気持ちが高ぶっていた。





鈴江隼の人格は二重人格、しかも他の人とは違う。極限の窮地に立たされ、人格が乱れたからこそできた二重人格。





なるほど、“超集中”以外にもヒトの精神状態を極限まで高める方法があったのか。
彼女は口元にうっすらと笑みを浮かべていた。

さて、問題は……
これをどういう形で薬に応用するのか?
ということだけだ。

しかも、まだ彼女は、恋恋高校に赴任して一年目であった。



大丈夫、まだ始まったばかりだから――



彼女はそっと、心の中でつぶやいた。





加藤理香があるスポーツ医学の名医と出合ったのは約8年前だった。
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