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9つの財宝
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/04/28 11:25 修正2回
はじめまして! ここの掲示板の小説を参考に、挑戦してみたいと思います。
第一章
>>2-
Page:
[1]
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Re.9つの財宝
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/04/28 12:25 修正4回
No. 1
あの決勝戦の敗北で、俺はミットを捨てようと思った。
でも、何度投げようと思っても、何度焼こうと思っても、出来なかった。
あの決勝戦とは、シニアでの日本選手権決勝だ。こっちのチームはほぼ奇跡で決勝進出。
一方相手は絶対的エースで四番、龍川 光輝(りゅうがわ こうき)がいる。
龍川は最速146キロ、に縦のスライダーとスライダー系のカーブは既にプロでも通用するかもしれない。
ここまでの投球にお前本当に中学生か! と何度ツッコミをいれたか。
あの日本選手権は雨天での中断が続出。それにより試合はダブルヘッダーが出来ない状況となり、
龍川が本来この大会で先発完投出来るのは5試合中3試合だけなのだが、
あいつらは一回戦を一日目、二三回戦を二日目、準決勝を三日目、そして予備日の四日目に決勝戦。
つまり龍川は決勝での先発は4連投、三試合連続完封その中にノーヒットノーランが含まれているが、4連投の投手を打てないことはないだろうと思っていたのだが……。
俺たちは目の前でとんでもない記録を目にした。
完全試合、十五者連続三振。
神様は不平等だ。なんであいつにはあんなとんでもない才能を与えて、俺にはこんな平凡な才能しかくれなかったんだ。
そう、あのときは思った。でも今は違う、俺には俺にしか出来ないことがある。今は、そう思っている。
俺は龍川を倒す! あいつなら絶対全国区の強豪にいる。そのチームをぶっ倒して!。
俺が、日本一になってやる!。
海堂 渉(かいどう わたる)は鉄よりも固い意思を持ち、鳳城学園に入学した。
1ー1
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/04/28 14:38 修正2回
No. 2
「本当に……すいませんでした……」
顔を傷だらけにした渉が教室に正座していた。
「何やってんだおまえは! 校舎内で野球ボールを投げるな! 常識だろうが!」
校舎内を見渡すと、ところどころガラスが割れている。割れた数は校舎内のガラスの4分の1はあるだろう。
渉は初日からやらかしたのだ。
「それにうちの学校には野球部はないのを知らなかったのか?」
「いや知ってましたよ。ただ俺が野球部作って甲子園優勝したらカッコ良くね? って思いまして」
「もっと現実を見ろーーー!!」
担任の怒号が校舎内に響く。耳がキンキンする……。
「そんなに怒ることないでしょ」
「開き直るな!」
「いいな! 明日までに反省文を原稿用紙10枚分書いて来い!」
「ちょ! 10枚!?」
「え? 12?」
「やります!」
この瞬間だけややだらけていた姿勢が完璧な姿勢になった。
渉は教室を出ると学校の敷地内をすべて見て回った。
野球用のグランドもあるけど、内野はボコボコだし、マウンドはない、外野は雨とか少しでも降ったらぐちょぐちょで使えないな。
う〜ん……やっぱりこんなヒーロー気取りに野球部作るとか考えなきゃ良かった。
んなこと考えても遅いか……ま、何とかなるか。
取り敢えず内野をなんとかしよう。
渉は土とトンボを持つと、ボコボコのグランドを慣らしはじめた。
「光輝! 起きろ!グランド見てみろよ! なんかやってるぜ」
屋上で身長170cmくらいの男が後ろを見て180cmほどの男をつついた。
「んだよ」
光輝は体を起こすと、金網の隙間からグランドを見た。
「なんだあれ、バカじゃねえの」
光輝の目はまるで死んだ虫を見るような目だった。そして鼻で笑うと再び寝転がった。
「光輝ーお前部活なにやんの?」
「なんにもやらねえよ。どんなことでも少ししたらだれも俺についてこれなくなるから面白くねえ。仁おまえは?」
「俺も入らねえ。どんなことでも少ししたら誰も俺についてこれなくなるから面白くねえ」
「真似すんな!」
光輝は上体を起こすと光輝に背を向けている仁の背中を蹴った。
「いってぇ!」と仁は痛がるが、痛がり方がうざい、もっかい蹴ってやろうか?。
「そういや光輝、おまえって中学時代は野球すごかったんだろ」
「ちげえよ、周りがヘボかっただけだ」
1ー2
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/04/28 16:30 修正2回
No. 3
「じゃああいつ手伝ってやれば?」
仁はグランドを指差した。
「なんでそうなんだよ」
「野球好きなのか?」
「ああ、でも、あれほどやり甲斐のないスポーツはねえよ」
「いいねえ、なんでも出来るほどの才能のあるやつは、おまえがそんなんなら俺みたいな平凡なやつはどうすりゃいいんだよ」
仁は立ち上がると、屋上の重いドアを開け、下へ降りて行った。
最後の言葉、どうゆう意味だよ。あいつ、顔は笑ってたけど目は笑ってなかったな。
光輝は立ち上がると再び金網の隙間からグランドを見た。
あいつ、よくやるな。と言うかバカだろ本当に、野球がやりたいなら普通に野球部ある高校行けよ。
おまえみたいなバカが一番腹立つんだよ。
光輝は舌打ちし、屋上を出た。
渉は周りに誰もいないことを確認し大声で叫んだ。
「ここのグランド固すぎだろ!!!」
渉は制服にもかかわらずグランドに大の字になって寝転がった。
「あ〜あ、これじゃグランド整備すら夏の大会に間に合わねえよ」
渉が目を瞑ったときに誰かに声をかけられた。女の子の声だ。
「ねえ、キミ、なにやってるの?」
渉は「ふぎゃ!」と情けない驚き方をした。
「いや、グランド整備やってたんだけどグランド固過ぎて」
「うん、聞いてた。たぶんあの声校舎まで届いたんじゃない?」
……くっ、なんだこの子……可愛すぎるだろーー!!! このままだとショック死するかも……。
「手伝おうか?」
「え? 今なんて?」
「だから手伝おうかっていたのよ」
「ぜひお願いします!」そう渉は言うと彼女の両手を握った。
驚いた顔も可愛いすぎるだろ。
髪の毛は肩の辺りまで伸びて、ツヤツヤの綺麗な黒髪、大きな瞳、
この守ってやりたいと思う小柄な身体、そして完璧なスタイル!。
やっばいよ俺! ものすごい娘に出会っちゃったよ。
「ちょっと……離してくれる?」
彼女は照れながら言った。あー俺死ぬかも、てか今なら死んでもいい!。
「ねえ、聞いてる?」
「あぁ! ごめん!」
俺は慌てて彼女の手を握っていた両手を離した。
「キミ、名前は? 私は高瀬 涼子(たかせ りょうこ)よろしくね」
「お、俺は海堂 渉! よろしく!」
涼子ちゃんか、よし! 覚えたぞ!。
1ー3
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/04/30 18:34 修正2回
No. 6
「渉くん、まず思ったんだけど、最初にメンバー集めたほうがグランド整備の効率良くない?」
「確かにそうかも」
「4月中までに10人は集めたいわね」
10人か、なんで野球って9人でやるんだろう。バスケとかバレーぐらいの人数なら集めやすいのに。
渉が野球の人数に疑問を持ったとき、後ろから声が聞こえた。
「真希ー! こんなとこでなにやってんだ探したぞ!」
真希? 誰だ?。
「あ、ごめん光輝くん!」
あれ? 涼子ちゃん?。
「ねえ……涼子ちゃん、状況が理解出来ないんだけど……」
「私の本当の名前は真希だから」
真希ちゃん? は笑いながら言った。が俺はあんまり笑えねーー!。
「なんでだーー! なんで違う名前を言ったんだ? 訳わかんねえよ!」
「なんだこいつ、発狂したのか?」
真希ちゃんは男の元にトコトコと駆け寄った。
「明日以降、間違った名前で呼ばせてからかってあげようと思ったらこんなことに」
「いや理解出来ねえわ」
光輝と呼ばれるはトンボの近くに置いておいた俺のボールを拾い上げた。
「おい、それ俺__」
そいつの特徴は伸びた髪の毛、制服のブレザーを着崩した姿がウザいくらいに似合っている。
そして180cm以上ある身長に認めたくないが認めざるを得ないルックス。
この顔はあの日から一度も忘れたことはない、こいつは
「龍川光輝!」
「なんだ、知ってんの?」
「俺を覚えてないのか?」
「なんでだよ。全く知らねえ」
くっそ! こいつ、対戦相手のキャプテンの顔くらい覚えとけ!。でも、なんでだ? なんで龍川みたいなすごい奴がこんな野球部のない高校に?。
はっ! まさか。
「龍川、おまえがこの高校に来た理由はなんだ?」
「は? 別にどうでもいいだろ」
「ふっふっふ、俺は分かったぞ!」
この言葉で、龍川と真希ちゃんは俺に注目した。
「理由は! 俺と同じで野球部作って甲子園優勝したらカッコ良くね? ってノリで来たんだろー!」
俺は龍川をビシッと効果音が出そうなほどの勢いで指差した。
龍川なんだ、その死んだ虫を見るような目は?。
「ちげえよ、おまえ本当にバカだろ」
「なんだとー! バカって言うほうがバカなんだぞ!」
「ガキかよ」と龍川のやる気のないツッコミにイラっと来たがここはぐっと堪えた渉だった。
1ー4
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/05/02 19:50 修正1回
No. 7
「じゃあなんでお前ほどの選手がこんな野球部のねえ高校に来たんだよ」
龍川の言い放った言葉は、俺の夢、目標をブチ壊した。
信じたくない。俺はこいつより強くなることが目標であり夢なんだ。
龍川の言い放った言葉は「飽きたんだよ」。
気が付けば俺は龍川の胸ぐらを掴んでいた。この後このことを覚えていなかった。
ということはこれは俺の心の底から出てきた言葉なのだろう。
「ふざけんな! お前が野球やめたら俺は何を目標にすればいいんだよ! たぶん…いや絶対お前は今まで何人もの希望を打ち切ってんだ! お前がやめたらそんな奴らが可哀想だろ!」
「離せよ」
「うるせえ!」
「なら」そう龍川はつぶやくと、鞄を地面に放り投げた。そして龍川は俺の胸ぐらを掴み、俺を持ち上げた。
嘘だろ。俺を右手一本で簡単に持ち上げるなんて、なにもんだお前……。
隣の真希ちゃんから「光輝くんやめて」と声が聞こえた。
次の瞬間、俺の体は宙を舞った。
俺の体は背中から地面に落ちた。激痛が腰に走ったが必死に堪え、声を捻り出した。
「捨てんなよ! お前がやめたら俺みたいな平凡なやつはどうすればいんだよ」
「知るかよ……」
「は?」
なんだ、今の殺気……。
「知るかよそんなこと! 他人のことなんか知ったこっちゃねえんだよ! ふざけんな! 何も知らない奴らが、言いたいことペラペラほざいてんじゃねえよ!」
この瞬間、龍川の右手の人差し指と中指からボールが解き放たれた。
ボールは座っている俺の頬の横を抜けていった。それにもかかわらず、ボールはいつまでもバウンドせず、ライナーでそのままフェンスに直撃した。
龍川の位置からフェンスまではたぶん80mくらい、それをライナーで投げんのかよ。
なにもんだよ。本当に。なんで、お前みたいな奴が野球やめんだよ。
龍川は鞄を拾い、グランドを去ろうとしていたが、俺はそれを止めることが出来なかった。
1ー5
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/05/03 02:26 修正1回
No. 8
なんなんだ。仁もあいつも、どうすればいんだよって言われても知るか。
俺は俺だけ良ければいいんだよ。そんな奴に分かるわけねえだろ。
光輝は石を蹴った。その石は一回、二回跳ねると体育館のガラスに直撃した。
光輝は真希の名前を呼ぶと手首の辺りを掴み、ダッシュで駅に向かった。
「あー危なかったー」
光輝は駅のベンチに座った。そして鞄から一枚の写真を取り出した。
だがすぐに光輝はその写真を鞄にしまうと、真希が横に座った。
「光輝くん、ここまで来るのにかなりの視線が集まってたんだけど」
「悪いな、でもまあ気にすんなよ」
光輝は真希の頭をポンポンと叩いた。
「ねえ、光輝くん、本当に…野球やめちゃうの?」
「そう言ったろ。去年の夏、高校ではやらないって」
光輝は立ち上がった。そしてすぐ隣の自販機で冷たいコーヒーを買った。
「でも……光輝くんから野球をとったら奇妙な生命体じゃん!」
なんだよ、奇妙な生命体って……。
「帰宅部のくせに運動神経抜群で頭も良くてカッコいいって三拍子そろってるなんて奇妙な生命体だと思う」
「なんだよそれ」
光輝はコーヒーの栓を開けると一口飲んだ。
「あなたを嫌いになっちゃったらどうしてくれるの?」
真希は光輝の目をジッと見つめた。
「他の人を好きになれ」
「え〜ひどいよ〜光輝くん。この場面は臭いこと言ってもいい場面と思うんだけど」
「さっきのは冗談と思っとけよ」
光輝は笑いながら言った。そして缶コーヒーを一気に飲み干すと、漫画などでは公園によくあるイメージのゴミ箱へ向かって缶を投げた。
投げた缶はしっかりとゴミ箱の中におさまった。
「危ないでしょ。人に当たったらどうするの?」
怒った声で真希は言うにもかかわらず、光輝は火に油を注ぐようなことを言う。
「そんときゃ喧嘩でもするさ」
「バカ!」と真希の声と同時にデコピンをされた。真希のデコピンは痛い。
だが額で痛いなら普通に痛いでなんとかなるが、鼻に浴びたとなるとどうしょうもない。
なかなか痛みが消えないな。
そう思っていたとき、電車が駅に到着した。
それに光輝と真希は乗り込むと、すぐさま座席に座った。
これから2時間も電車か、長いな。
学校から駅まで徒歩15分、電車で2時間、家から駅までチャリで15分。
2時間半か、今考えると遠すぎるな。
1ー6
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/05/03 18:47 修正1回
No. 9
翌日の朝、渉は7時10分に登校した。メンバーを集めるためにだ。
出来るだけ早く校舎のあらゆるところに勧誘の貼り紙を貼った。そして次は生徒玄関で直接勧誘だ。
だが、20分間頑張っても成果なし。それでもめげずに頑張った渉は立派だろう。
「やばいな、もうすぐチャイム鳴るぞ」
渉は時計を確認した。まずいな、あと3分だ。もう教室行かねえと。
渉が教室に向かおうと思っていたとき、遅刻なんて気にしない。という感じのオーラをまとった男子生徒が一人渉の横を通った。
その男子生徒に渉は声を掛ける。
「ちょっと、ねえ君、野球に興味ない?」
「興味はあるけど」
渉とその男子生徒は教室の方向に歩きながら話した。
「えっと名前は?」渉がたずねるとその男子生徒は「川上 裕翔(かわかみ ゆうと)一年だ」と言った。
「あのさ川上くん、今部員がいないんだ。野球部に入部してくれない」
「半年前の俺ならOKだよ」
そう言うと川上は歩くスピードを上げた。
半年前? どうゆう意味なんだ?。って、やべえ! 時間が!。
渉はダッシュで教室に向かった。だが残念なから15秒間に合わず、説教されるハメになった渉だった。
「あーったくよー、二日連続で説教かよ」
今は休み時間、二時限目の授業の前の休み時間だ。
「まあまあ、渉。気落ちするな。たぶんおまえはもう教師に覚えられた」
「あんま嬉しくねえ! ってか全然だよ!」
今俺が話しているのは宮渕 博隆(みやぶち ひろたか)俺より背が低い。そしてたぶん俺のほうが顔がいい。
「なあミヤ、野球部の勧誘が一行に進まない。手伝ってくれ」
「ああ、そのことなんだけど。俺野球部入れてくんない?」
「大歓迎だ! あらためてヨロシク!」
俺は宮渕と固い握手をした。
「ミヤ…お前野球の経験は?」
宮渕はニヤリと笑うと親指を立てた。そして首を振った。
なんだよ今の無駄な動作は、口で言えよ。
未経験者か。まあ入ってくれるだけありがたいわけだし、今度基礎から教えるか。
わずかに、本当にわずかに前進した鳳城学園野球部だった。
試合可能な人数まであと7人。
1ー7
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/05/05 12:39 修正2回
No. 10
渉は後ろの黒板をチラッと見た。入学してから2日目で体育があるのか。
渉が視線を前に戻した時に軽く肩を誰かに叩かれた。渉は自分の肩を叩いた人物を見る。
担任の石松だ。
「海堂、作文は出来たか?」
毎度毎度ゴツイ声でご苦労様です、石松先生。
渉は鞄に手を突っ込むと10枚の原稿用紙を取り出して石松に差し出した。
「こんなの楽勝っすよ」
渉はドヤ顔で石松の目を見た。だが石松は「お疲れ」とだけ言って職員室に向かった。
「おまえすごいな、一日で原稿用紙10枚も書き終えるなんて」
宮渕は渉に感心の目を向けた。それに渉もドヤ顔で応える。
「そのドヤ顔気持ち悪いからやめろ」
宮渕のどストレートな言葉にさすがの渉のハートにも傷がはいった。
「酷くね?」と渉がつぶやくとすぐさま宮渕は「酷くない」とキッパリ言い返して来た。
なかなか手強いな。宮渕博隆。
それから数分後、一時限目の授業開始のチャイムが鳴り、渉の嫌いな授業がはじまった。
龍川光輝は屋上で寝転がっていた。授業をサボる気でいる。
光輝は仰向けになって寝転がっていたが、太陽からの日光が眩しいため、太陽に背を向ける体勢になるとその目線の先には高瀬真希がいた。
「光輝くん、何やってんのよこんなとこで」
「何って、決まってんだろ。サボってんだよ」
真希は光輝のもとへ早足で寄ると、光輝の近くに膝をついて座った。
「いい加減にしてよ! 光輝くんはこんな人じゃなかったでしょ!」
真希の声に光輝は耳を塞いだ。
「黙れよ。凡人の分際で俺に指図すんな! 目障りだ! 俺の目の前から消えろ!」
真希の目には涙が浮かんでいた。そして立ち上がると涙を拭うと物凄い勢いで屋上を出て行った。
光輝は真希の出て行った屋上の扉をしばらく見ていた。
そして我に帰ると思った。
やってしまった。そして空に視線をやった。
雲が出て来たな。光輝は体を起こすとグランドを見た。
しばらくするとどこかで聞いたことのある声の怒号が屋上まで聞こえて来た。
1ー8
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/05/07 18:22 修正2回
No. 11
くそっ! 遠い! なんで追いつかないんだ!。
そして渉の「うおらあぁぁあぁぁぁあ!!!」の叫び声とともにシュート。
たぶん周りのやつらはなんでこいつは叫んだんだ? となっているだろう。が気にするな。
そのシュートは俺のキックの二倍か三倍の威力でゴールへ突き刺さる。
「うおーー! また決まったー! 6点目だ。神村、おまえすげえな!」
宮渕は神村 智哉(かみむら ともや)の肩をバシバシと叩いた。
神村は「いてえよ!」と言って宮渕の手をはたいた。
「わりいわりい、おまえが凄すぎるのが悪いんだぞ」
「意味わかんねえよ」
神村は即座にツッコミをいれた。こいつ……なかなか出来る!。
心の中で驚いた渉はなんとなく屋上のほうを見た。するとある人物が目に映った。
龍川、あいつサボりか。そんな根性あるやつっていいなーって時々思うよ。
渉は宮渕と神村のほうに視線を戻すと神村を指差した。そして叫ぶ
「次はぜっったいに! 止めんからな!」
「ふっはっはっ、残念ながらキミ程度のやつに止められたら俺は二度とサッカーやらないよ」
腹立つ。こいつ、鼻で笑いやがった……!。
「あとで吠え面かかせてやるからな!」
神村は微笑みながら「やってみな」と言うと自陣のゴールのほうへ走っていった。
光輝は今のグランドでの出来事を見ると立ち上がり、屋上を出ようと思い、重い扉を開けた。
その開けた先には見たことのある人物がいた。
その男は腕を組んで壊れかけた机に座っていた。身長は170cmほど、そして癖っ毛にやる気のなさそうな目。
光輝はなぜこいつがこんなところにいるんだ? と疑問をもつ。
「川上 祐翔……か」
川上はニヤリと笑うと立ち上がり、ポケットに手を突っ込んだ。
「覚えててくれて光栄だよ。龍川光輝くん」
「俺はクリーンヒット二本打たれたやつの顔は忘れねえ、次、3三振にしてやるためにな」
川上を光輝のすぐ近くまで寄ると下から睨み上げた。そして言った。
「大した自信だな」
それに光輝は「どうも」と言って光輝も川上を睨みつけた。
「それにしてもなんでだよ。公式戦で5発もホームラン打ってる化け物がなんでこんなとこに高校にいるんだ?」
川上は「うるせえ」と言って舌打ちをすると再び机に座った。
1ー9
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/05/13 01:17 修正2回
No. 12
「怪我だよ」川上はつぶやいた。
光輝は壁のほうを向くと背中がわずかに震えていた。やがて振り返ると鼻で笑った。
「だっせえな、怪我とか才能ねえバカか無茶するアホがするもんだろ? つまりお前はバカかアホ」
光輝は言いたいことを全て言うと大声で笑いはじめた。
川上は立ち上がり机を蹴飛ばすと光輝の胸ぐらを掴み龍川の左の頬を殴った。
光輝の口から血が流れた。光輝はその血を拭うと川上の横腹を蹴った。
川上はなんとか左腕を使って直撃は避けた。歯ぎしりしながら川上は「てめえ……!」と喉から捻り出したような声を出した。
次の瞬間から、両者の拳が相手の顔を殴りはじめた。だが、二人とも右手は使っていない。
二人はチャイムが鳴ったのにも気がつかずに殴りあっていた。
何分殴りあったかは分からないが、二人とも渉が来た時には異常なほどの傷の数。
渉は止めに入ったが、お互いにやめない。
「邪魔すんな!」光輝がそう言って渉の腹を思いっきり蹴った。
渉は尻餅をついて咳き込んだ。
「おい龍川!」
渉は光輝に殴りかかった。しかし光輝は軽く避けた。だがその隙に川上の拳が光輝のボディーに炸裂した。
が、今度は光輝の左ストレートが川上に大きなダメージを与える。
今度は渉が光輝に蹴りを入れた。
どうやら、もう二人とも周りがよく見えてないようだ。川上も龍川も誰が誰がよくわかんねえまま殴ってる。
渉は考えごとを邪魔されるのが嫌いだ。今は考えごとをしていた。
考えごとをしていたのだが川上の拳が俺の顔を直撃したために集中の矛先が大きくズレる。
矛先は殴りあいに向いてしまった。
渉はただ殴りあいの規模を大きくしただけだった。
それからの記憶は、全員曖昧のようだ。
もしも昼休みに誰も屋上に来ようとしていなければ、渉たちはもっと放置されていただろう。
「またおまえかあぁ!」と石松のクソウザイ声が生徒指導室に響く、そこには傷だらけの渉、光輝、川上がパイプ椅子に座っていて、石松は立っていた。
心の隅であんた座らねえの? と一度ツッコミを入れてしまっている渉である。
座っている並びは右から龍川、真ん中に俺、左に川上だ。
なんと川上はこの状況でケータイをいじっていた。
そして川上が小さく手を上げた。
1イニング目 始まりの春END
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/05/13 01:58 修正1回
No. 13
「すんませーん、恵美ちゃんからメール来たんだ帰っていいですかー?」
どんなこと聞いてんだあぁぁ! そんな理由で帰してくれるわけねえだろ!。
「あ、石松、俺もやることあるからさ」光輝はパイプ椅子から立ち上がると指導室を出た。
石松は龍川を止めに行った。止めに行く前に「絶対に逃げるなよ!」と言われたが誰が従うかよ。
渉と川上は指導室から出るとダッシュで教室へ戻り、鞄を持つと校舎を出た。
渉と川上は延々と走る、まるで虹の根元を目指して走っているかのように。
渉と川上はビルの廃墟の屋上まで走っていた。
「おい、お前、ここどこだよ」
川上は息が荒いなか話しかけて来た。
「俺のお気に入りの場所だ、ここって夜か夕方はすげえいい景色なんだぜ」
川上は「なら今度見に来て見るよ」とつぶやくと大の字なって寝転がった。
「おまえ、名前は?」
「海堂渉だ」
「海堂渉、か」
川上は両手を組み合わせるとそこに頭を乗せ、足を組んだ。
「渉、今何時?」そう川上は渉に聞くと目を閉じた。
俺はケータイを鞄から取り出すと時間を確認し、その時間を川上に教えた。
「1時34分か……」川上はつぶやくと本当に真っ青な空を見つめていた。
俺には眩しすぎて見えないな。そう思っていると川上が上体を起こした。
そして川上は深呼吸をしてこう言った。
「よし! 4月10日、1時34分! 川上祐翔復帰!」
「復帰?」俺が川上に尋ねると川上は「野球だよ!」と叫んだ。
「え? じゃあ、野球部入ってくれんの!?」
「あったりめえだろ!」と川上は俺の肩を叩きながら言った。
「でも、どうしたんだ? 何にもなかったのに野球部入ってくれるって、なんかあったの?」
川上は再び空を見上げると「まあな」とつぶやいた。そして間を空けずに話を続けた。
「龍川に会ったらさ、いきなり懐かしくなったんだよ。ムカつくけど、あいつは俺に目標をくれたからな。
だから、あいつ見たら、なんか怪我してからだけどここまで野球やってなかった間の俺が哀れに見えてさ、俺にはやっぱり、 野球しかねえって思ったんだ。分かってくれたか?」
「大体わかったよ」
「今日も晴れて良かった」
「そうだな」俺は川上の一言に心の底から同意した。
この晴れ空は、俺の心まで晴らしてくれそうだな。
そんなこと思ってみた、高一の春。
2−1
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/08/07 21:57 修正2回
No. 14
ブォンッブォンッと普通ではない音が渉の耳に届く。隣では川上祐翔が素振りをしている。
あきらかに普通の人とはスイングの力強さも音も違う。まあ音が良く聞こえるのは夜なのも関係あるかもしれない。
「祐翔、ポジションどこ?」
渉は川上に質問した。すると川上は素振りをピタリとやめた。そして答える。
「メインはサード、時々セカンド守ったりもしたけど…ああそういや外野も出来るぞ。まあ守備は嫌いだからさ俺って」
川上はすべて言い終えると再び素振りをはじめた。そろそろ100回くらいになるか? そう渉は思った。
「渉ーー!」
宮渕がこっちへ向かって走ってくる。手にはビニール袋、中には渉と川上の頼んだ物が入っている。
川上は「おつかれさん」と言って宮渕の肩をポンッと叩くとビニール袋からおにぎりとパンを取り出した。
大体予想はつくと思うが宮渕の行っていた場所はコンビニだ。
ちなみに渉が頼んだのはコーヒー牛乳にアンパン、カツサンド、そしてカロリーメイトだ。
川上はメロンパンと梅干しと鮭にツナマヨのおにぎりにコーラ。
「ミヤ、ほれ」川上はそう言うと宮渕へ500円玉をコイントスのように渡した。
それを右手でキャッチした宮渕は「足りないんだけど……」と言って川上ちレシートを見せた。
「100円くらい立て替えれねえのかよボケ」
されげに悪口を言う川上、だが俺はきちんと払おう。
「いくら?」と宮渕に渉が聞くと宮渕はしばらく計算してやがて金額を言った。
「660円」
渉は「高えな」といいつつもキチンと代金を払った。宮渕はその代金をもらうと川上を睨みつけた。
「こいつは払ったぞ、って言いたげだな。ミヤ」
「いやいや、払えよ。あと100円」
宮渕は右手を前に出す。すると川上は宮渕の手を思いっきり叩いた。
宮渕の派手なリアクションを笑うとアンパンの袋を開けた。
「お前らさあ、どこまで勝ちたい?」
渉は川上と宮渕に質問した。しばらくの間沈黙が続いたがやがて宮渕が口を開く。
「決まってんだろ! 甲子園だ!」
「そうか、祐翔は?」
川上は頭上に広がる星空を眺めがら言った。
「俺は、全国の壁を実感させられたんだ。それに、目標とか定めたりすんの嫌いだし苦手なんだ。だから、おまえらに合わせるよ」
2−2
名前:
春夏秋冬
日時: 2013/08/08 16:51
No. 15
翌日の朝、再び部活勧誘。今は緊急事態が起きてしまった。
祐翔と一人の一年が睨み合っている。
「おいコラチビ、野球部入れや」
「だれが入るかクソ野郎」
あ、ごめん緊急事態じゃなかった。ただ勧誘してるだけでした。
ささ、勧誘続けよう。
数十分後、チャイムが鳴った。なんの成果もない俺はがっくり落ち込んだが、ミヤもなかったとなり少し落ち込みが和らいだ。
ミヤの後ろから祐翔が数人引きずって連れてきている状況を見るとなんだか寒気がする。
まさか暴力で解決?。
「やったぞ渉、6人確保だ。これで部活申請行こうぜ!」
行こうぜじゃねえぇぇぇ!!! なんで全員服が汚れてんだよ! なんで顔が腫れてんだよ! 絶対フルボッコにしたろ! こいつこええぇぇ!!。
「渉、顔に出てる」
ミヤが俺の肩をポンと叩く。
「あの〜川上さん。そんな風にしての勧誘は控えてもらえます…か?」
「なんだよ。無駄な労力使ったな〜、おら、もう行っていいぞ」
祐翔はフルボッコにした金髪6人衆全員に唾を吐いた。その直後全員がランナウェイ!。
「あの〜ありがとうございました」
声の聞こえたほうを見ると祐翔に深々と頭を下げる小柄な男子生徒がいた。
「礼はいいから野球部入部か部活勧誘手伝ってくれよ」
「では勧誘手伝います。メールアドレス渡しますからあとで時間と場所の情報おねがいします」
その男子生徒はメモ帳にメールアドレスを書くと祐翔に渡した。
そして一礼して校舎へ歩きはじめた。
「祐翔、さっきのやつ何?」
「一哉のことか? そいつならあの6人組に絡まれてたから助けてやったんだよ」
ふむ、なかなか骨のあるやつだな祐翔は、金髪6人衆に一人で挑むなんてすげえよ。
金髪で思い出した。そういや今日、龍川見なかったな。
※龍川光輝は金髪です♪
そして谷 一哉(たに かずや)を勧誘に加え、部活勧誘と同時に龍川も探したがあの殴り合った日から一週間。
龍川の姿を一度も見ることはなかった。
2ー3
名前:
春夏秋冬
日時: 2015/11/17 20:28 修正1回
No. 16
黄色いカーテンの隙間から強い明かりが差し込む。太陽の陽射しが強い。そして珍しく暑い。気のせいなのは分かっているが、光輝は蝉の鳴き声が聞こえる気がした。
光輝はベッドに寝転がり殺風景な部屋の天井をジッと見つめていた。ふと横を見ると視線の先に野球ボールが転がっていた。
ただすることもなく、なんとなくそのボールを拾い上げることにした。
……退屈だ。
真希とも連絡が取れないから学校に行く気にもならない。もう学校に行っていない期間は一週間を越えたくらいだろうか?。
などと、しばらく色々と考えていたが、なんだか少し眠くなってしまった。
光輝はその眠気に従い、ゆっくり目を瞑り、眠りについた。
そして、光輝は夢を見た。野球をやっている夢だ。
荒れたグラウンドで、数人のギャラリーが居るが、ダイヤモンドの中に入っているのは光輝ともう一人、キャッチャーだった。
どんな奴だったのか、光輝はどうやっても思い出すことが出来なかった。ただ、光輝の投じた全力のストレートを完璧に捕球して、その男がニヤニヤとドヤ顔で笑った場面は鮮明に頭に残っていた。
煩い存在感、それだけでなんとなく誰なのか想像がついた。
光輝は、自分が何を求めているのか分からない。何が欲しくて今の状況を選んだ。自分でも理解出来なかった。
でも、なんとなく、ぼんやりなら分かっていた。
だが、夢の中ではあるが、自分の中で答えが出そうな時に決まって目を覚ます。今回もそうだ。
光輝は寝転がったまま枕の隣にあったケータイで時間を確認した。11時過ぎだった。
何もすることがない。また寝ようかと思ったが、目が異様に冴えている。
なぜこの選択をしたのか分からない。でもそこに行けば何かがある気がした。
光輝はベッドから立ち上がり、シャワーを浴びようと風呂場へ向かった。
____きっとこの日が、真の怪物の誕生だったのだろう。
Re: 9つの財宝
名前:
春夏秋冬
日時: 2015/11/18 23:07
No. 17
ノート重い……。
俺はこの間逃げたことを理由に、今日提出の40人分のノートを職員室まで運ぶことを石松に指示された。
超メンドクセ〜。
だが、これを運び終えればグランドに行けると思えば、
なんとかノートを職員室に届けるくらいの気力は保てた。
そして教室に戻ってバッグを取って教室を出ようとした時だった。
「あ、海堂。丁度いい。一緒帰ろうぜ」
声を掛けてきたのは神村智哉だ。身長は185はあるだろう。そして超が付くほど運動神経がいい。サッカーで何度こいつに恥をかかされただろう。
「悪い、俺グランドに用事」
「あー、そうか。野球部作ろうとしてんだったな。大変だな〜。……あ! 俺入ってやろうか? 野球部」
サラッと言ったが、今ものすごく嬉しいこと聞けたような気が……、って
「まじか!? まじか!? まじだな!!? よし! 早速グランド行くぞ! おまえで四人目だ!」
俺は神村の制服をガシッと掴み、グランドまで引きずるように連れて行った。
途中何か言っているように聞こえたが、全く耳に入らなかった。これは後で聞いて少し申し訳ないと思った。だからここで謝らせてもらう。すまん。神村。
「二人共ーー!! 新メンバーだぞー!」
俺はグランドに着いた瞬間にグランドの内野を整備していた二人に向かって叫んだ。
「うわっ、相変わらずうるさいな。明日から耳栓しようかな」
「祐翔、それいいね。俺明日からそれやるわ」
向こうで何か話しているようだが、それが分かるだけで何も聞こえない。近くに行くしかないな。
「神村行くぞ! ダッシュだ!」
俺は神村を置いて二人の所へダッシュで向かった。二人がなんだか嫌な表情をしていたのは気のせいだろう。
「二人共! 紹介します! 今後ろから来ているのが神村智哉! ミヤは知ってると思うけどこいつ運動神経超いいから期待できるぜ!」
ぜ! にとてもとても強くアクセントをおいた。だが、二人はそれについて全く触れてくれなかった。
「まあとりあえず人増えたって話だろ? 良かったな」
祐翔は落ち着いた口調で言った。どうして二人共こんなに冷めてるんだろうか。ぼくは寂しいよ。
Re: 9つの財宝
名前:
春夏秋冬
日時: 2015/12/25 20:28
No. 18
「なんか空気悪いな、俺少年野球やってたから久し振りにやりたくなったんだ」
神村は苦笑いしながら言った。
「そうなのか、一応経験者ってのは嬉しいな」
祐翔は少しではあるが興味を示している。そして祐翔は突然どこかへ行ったかと思うと自分の内野手用のグローブとキャッチャーミットを持ってきた。
「っておい!! それ俺のミットじゃねーか!」
今日一番の声で叫んだ。すると三人とも耳を塞いでいた。
「うるせーなー、別にいいだろ。お前のしかないんだからさ」
そして祐翔は神村にキャッチャーミットを投げて渡した。
おい、物は粗末に扱っちゃだめでしょ。泣けてきた。
祐翔は神村がミットをはめたのを確認すると「いくぞ?」と少し確認して軽くボールを投げた。
緩い山なりのボール。神村はしっかりと芯で捕球した。
「思いっきり投げていい?」
神村はそう言うとボールを握り変えた。
「肩温まってないだろうけど、それでも投げれるんならいいぞ」
祐翔はグローブを胸の高さに構えて大きく開いた。
神村はセットポジションから投手のようなフォームで投げた。
かなり綺麗なフォームだった。本当に小学校以来野球をやっていないのだろうか? そう思わせるレベルだった。
そして、そのボールは俺と祐翔の想像していたボールの威力を遥かに超えていた。
おそらく球速は120キロ前後。肩が温まっていない状態でのこのスピード。MAXは一体どれくらい出るのだろうか。
「おまえこんなに速い球投げれんのかよ!」
俺は神村の肩をガシッと掴んだ。
「いや……まあ、うん」
神村の曖昧な返事と共に、背後から声が聞こえた。
「その程度のスピードで何を言ってんだよ」
そのシルエットは、絶対に忘れれない姿だった。龍川光輝だった。
「暇だから遊びに来てやったよ。ってことでゲームしないか?」
龍川は俺を冷たい目で見つめてきた。それに対して俺はその目を思いっきり睨みつけ、こう言った。
「どんなゲームだよ。内容によっては受けてやるよ」
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