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新設高校
名前:
MDO
日時: 2013/05/15 03:54 修正2回
よろしくお願いします。
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Re: 新設高校
名前:
MDO
日時: 2015/05/20 22:46
No. 1
四月、公式戦ということでベンチには緊張感が漂っていた。一人を除いて。
谷嶋 直人(たにしま なおと)はベンチの奥で一人、だらりと腰を掛けて試合の戦況を眺めていた。
少し寒いな、試合にも出してもらえないし、やることねーな。あ、打たれた。あーあ、6回で5対1か、こりゃ負けたな。
シニアの試合は7回までだ。直人はあとたった二回の攻撃で逆転出来るとは思えず、ただですらないやる気がゼロになってしまった。
ふと炭酸飲料が飲みたくなった直人は、ベンチから腰を上げ、ベンチを出て控え室へ向かおうとした。
そこにあるバッグの中に炭酸飲料を隠しているためだ。
しかし、それは監督に声を掛けられたことにより、諦めざるを得なくなった。監督は直人のことを全く見ずに「次の回の先頭から代打」と不機嫌そうに言った。
その態度に少し腹がたった直人は「はーい」と適当な返事をし、ヘルメットとバットを手に取った。そこで丁度味方の守備が終わった。
それに気付いた直人はベンチを出て、打席にいつものようにゆっくりと向かった。
今頃代打で使っても遅いっつの、まったく使えねー監督だな。
選手交代が告げられる。そして、ゆっくりと打席に入る。そして、普段と何も変わらない精神状態を保った。しかし、微かに右膝にピリッとした痛みが走った。
俺はその痛みを無視して、相手の投手の投球モーションをじっと見つめた。
カッコ良くないフォームだ。そのフォームからはなんてことないヘンテコなストレートが投じられた。
インコース寄りの甘い球をジャストミートした。打球はライナーで定位置付近にいたレフトの頭を軽々と越えていった。
一塁を蹴り二塁へ向かう途中、また膝にピリッとした痛みが走った。なので三塁まで行けそうだったが二塁でストップ、ベンチに向かって変わってくれという意味のジェスチャーをした。
するとそれに気付いた監督が代走を出したので、俺は小走りでベンチへ戻った。
あぁ、最近野球が退屈で仕方ない。
俺はベンチの手前まで来るとスピードを緩め、歩いた。そして、ベンチに入るとヘルメットを取り、近くにいた後輩に放った。
……もう野球辞めようかな……。
Re: 新設高校
名前:
MDO
日時: 2015/05/25 22:24 修正1回
No. 2
これは噂だが、俺の同世代にはMAX140キロを越えるピッチャーがいるらしい。他にもとんでもない噂を聞くやつが多い、去年なんかとは比べ物にならない。
関東とか大阪の方に行けばそんな化け物と対戦出来るのかな、まあ、野球辞めたら戦えないか。
ん? ピッチャー交代か。お、エースの南か、こりゃこいつが投げるとなると試合は負けだな。
南の投球練習を見ただけで分かる。このチームじゃ打てない。南はストレートは130キロを越えるし、変化球もいい、たぶんこの辺じゃダントツでNo.1のピッチャーだ。
投球練習を終えた南は二塁ランナーを特に警戒することもなく、少し遅めのクイックで投球した。軌道でストレートだと分かる。今の球の球速は120台中盤くらいだろうか? それでも打者は振り遅れて空振りした。
やっぱりそこら辺のピッチャーとはレベルが違う、俺もこいつを打ちたかった。ま、仕方ないかな。試合終了までゆっくり休んでおこう。
南はそれからランナーを一人デッドボールで出しただけな上に奪三振3とほぼ完璧な内容でアウト六つを取った。試合の結果は最終回に更に二点追加され、7対1となり、見事に完敗だった。
俺は試合が終わり、ミーティングが済むと球場から自転車で急いで家に帰ろうとした。しかし、そこで見た事のない20代前半と思われる男の人に声を掛けられた。
……この人のおかげで、俺の運命は大きく動く。
Re: 新設高校
名前:
MDO
日時: 2015/08/10 16:45
No. 3
〜〜〜1年 4月〜〜〜
青葉学園、今年出来たばかりの新設高校だ。部活動に特に力を入れるらしいが、詳しいことはまだ聞いていていない。
野球部はと言うと、投手は“剛腕・南悠太”、遊撃手に花井 洸星(はない こうせい)などの実績ある選手の獲得に成功しているそうだ。
……まあ、もう俺には関係ないか。
俺は青葉学園に入学した。理由はただ新設高というものに惹かれたから、なんだかパッとしない理由かもしれないが、俺からすれば充分な理由だ。
高校では中学時代に出来なかった遊びをたくさんやろう。そう決めて入学した。だからとりあえず可愛い女の子に声掛けて、人気者そうなやつと仲良くなって、充実した高校生活を送るんだ。
その筈なのに! 変な奴に付きまとわれてます。
「谷嶋く〜ん、お願い! 野球一緒にやろうよー」
このナヨナヨしている小柄な男は桐野 俊(きりの しゅん)、シニア時代にどデカイホームランを俺がこいつから打ったらしいが全然覚えていない。
「本当にお願い! 土下座でもするから!」
桐野は俺の腕をガシッと掴んで離さない。こいつの声が大きすぎるため俺まで変な目で見られてしまっている。これはさすがに困る。
「あーもう! やめろ! 俺はもう野球辞めたの! 付きまとうな!」
俺は桐野の腕を無理矢理振りほどき、背を向けて歩き出した。
「待ってーーー!」
桐野はそう叫びながら再び俺の腕を掴んだ。
「明日! 試合あるから見に来て! 相手はあんまり強くないけど、絶対野球やりたくなるから!」
真剣な目で俺を見てくる。本当にやめて欲しいのだが、明日行ってそれでもやりたくないと言えばこの勧誘も緩むかもしれない。
……よし!。
「分かった。明日行くけど、面白くなかったらもう俺に付きまとうなよ!」
「うん! それでいい! 絶対やりたくなるから! 絶対来てよ! 来なかったらもっとしつこくするからね!」
桐野はものすごい笑顔で俺の前を去っていった。
これでやっと解放された……。
俺は一息ついて、教室を後にした。
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