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ロックされています  W・B・C(下書き)  名前: PN.アリス  日時: 2015/06/02 19:29 修正2回   
      
もしもこんな世界があったなら・・というお話。
とある球団を世界一にするための旅のはじまり、始まり・・。

※サクセスキャラクター・実在の選手をいろいろと改変して登場させる予定。
展開次第(主に面白い・くだらない方向)で芸能人やパワプロ以外のキャラによるパロディ描写を含む。

あまりにも酷いので、β版化。
書き直し決定。
記事修正  スレッド再開
Page: [1]
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ロックされています   Re: W・B・C  名前:PN.アリス  日時: 2015/06/02 20:56 修正4回 No. 1    
       
惑星スポルタス・・・この惑星ではスポーツの発展が顕著であり、子どもはほぼ何かしらのプロ選手を目指す。
特に野球・サッカー・テニス・バスケットの人気は凄まじく、各国プロリーグ登録数の多さはもちろんのこと、国独自のルールや専門の学校まで存在する。
それらの競技には、毎年各国の選手権優勝チームだけが出場できるWC(ワールドチャンピオンシップ)と呼ばれる大会があり、出ること自体がステータスとされる。
優勝しようものなら栄光と名誉は一生語り継がれることになるであろう。

そしてまたここに、ひょんなことから人数が足りなくなった球団の選手兼スカウトを任された主人公の長い物語が始まる…。


矢部「それにしても・・こんな長い冒頭、いるでやんすか?」
著者「うるさい!。まだ出てないのに喋らないの!!」
「いいじゃないでやんすか、どうせすぐ出るでやんす。ひっ!・・」著者がオノを装備した。
「出番減りたいのかな?・・・」「ご、ごめんでやんすぅぅ!!・・・」
何でもありのお話が幕を開ける。

〜序章〜

母「起きなさい!・・パワプロ!、もう時間よ」
パワプロ「なんだよ・・・今日は休みだったはずだけど・・・?」
「何言ってるの!。今日は野球学校卒業の日でしょ!矢部君も外で待ってるわよ」
「えー明日じゃ・・・」
すぐさまカレンダーを見る。そこには大きく「卒」の字が赤文字で書かれていた。
「きょ、今日・・!。やばい・・校長にばれたらどうなるか分かったもんじゃない!!。何でもっと・・」
「大丈夫よ、今7時半だから」「へっ?」
すぐさま時計に近付く・・・時計はしっかり7時半を指しており、狂ってるわけではなさそうだ。
「あえて早めに起こしに来たのよ」「じゃ矢部君は・・?」
「そんなのウソに決まってるじゃないの。そうでもしないと起きないでしょうが。ン?」
「卒業式に寝坊なんて恥どころじゃないわ・・早く仕度して降りてきなさいよ」
そう言って母は降りていった。
「いよいよかぁ・・・」パジャマを脱ぎ、制服に着替えながら思いに耽る。
ついに念願のプロ野球選手になる。地元の弱小チームではあるが、そこから活躍してスターになり、いずれはWBCに・・・。
期待に胸を弾ませつつ、パワプロは下に降りていった。
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ロックされています   Re: W・B・C  名前:PN.アリス  日時: 2015/06/04 21:01 修正1回 No. 2    
       
階段を降り、リビングに向かう途中話声が聞こえてきた。母が誰かと話しているようだ。
父親は仕事上ここにはいないはずだが・・?。部屋に入ると声の主はすぐに分かった。
矢部「・・・それじゃあ、パワプロ君はまた寝坊をやらかそうとしていたでやんすね〜」
母「そうなのよ〜♪。誰に似たのかしらね・・・あら、早かったわね」
パワプロ「さっきまだ来てないって・・・」
「嘘の嘘よ。こういうことも私の息子なんだから予測くらいしておきなさい」
またか。これで何度目になるか分からないが、母はこういうイタズラをちょくちょく仕掛けてくる。慣れっこになっていたものの、流石にこの日に仕掛けてくるとは予測出来るはずがない。
ムスッとしながらパンを食べ始める。母が洗濯物を干しに出ていくなり、すぐさま矢部君が聞いてきた。
「これで遅れたりしたら、ある意味での注目になるでやんすねぇ〜?」
「もういいだろ…蒸し返さないでくれよ。そりゃ、起こして貰えたのは感謝してるけどさ」
「でもまだマシでやんすね。オイラ達のような野球専攻はほとんどいないでやんすから、まだ受けるショックも少なくて済むでやんす」
確かにマシと言われればそうだ。世界的には人気と言われていても、この街では他の競技に大きく差を付けられており、今年の卒業生も数えるほどしかいない。
「まあ・・そうだけど」そう言って、スープに取り掛かる。
「ところで、ポジションはどこか決めてるでやんすか?」
「うーん・・すぐ空いてる所ならそこでいいけど、無いならやっぱ投手かショートだね」
「ありきたりでやんすねぇ〜。でも適性が多い分羨ましいでやんす」
大体卒業1週間前に適性試験の査定結果が届く様になっていて、複数の適性が選ばれることは難しくない。二刀流などもメジャーであり、むしろ適性が少ない人は大体大成しないのだそうだ。
「えっと・・俺は二塁と捕手がダメだったな」
「オイラは投手・外野・二塁だけでやんす」
「へぇ・・投手の適性も付いたんだ・・」どんな球投げるんだろう・・。とむちゃくちゃ早い球を投げる矢部君を想像しつつ、朝食を済ませた。
「それじゃ、行こうか?」矢部君がうなずき、一緒に家を出る。
「母さん、行ってくるね」いってらっしゃいの声を背に受け、二人は通りへ駆け出した。
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ロックされています   Re: W・B・C  名前:PN.アリス  日時: 2015/06/10 22:00 修正5回 No. 3    
       
学校は家から近い場所にある。大体10分もあれば余裕で行ける距離だ。この街自体はごく普通だが、学校自体が目立つ場所にあるため迷う人はまずいないだろう。
2人は信号を渡り、向こうの通りを歩いていると後輩たちが走っていくのが見えた。
パワプロ「俺達も最初はああだったなぁ…」
矢部「そうだったでやんすね〜。急いでも校舎が広くて、そこからがまた試練でやんす」
「そうそう、無駄に広いんだよね〜」
何しろ5階建ての校舎と各種練習場に加え、公園やプールも利用でき、エレベーターすら付いている。世界的な大会の選手村に出来るのではないかと思うくらい広い。
「卒業まであっという間だったなぁ…って言うの、当たってんだね。あんまり長く通ってた感覚が無いよ」
「でも明日からはプロとしての一歩でやんす」
「活躍して、スーパースターになれば…モッテモテに違いないでやんす…♪」
「活躍よりもそ、そこなの?…」
「重要なのはそこでやんす!!!。モテモテ街道まっしぐらも夢じゃ無いでやんす!」「まずは…」
妄想爆発中の矢部を適当に聞き流しつつ、角を右に曲がった先に紫髪の子が歩いていた。1人で話を続けている矢部を置いて彼女に声をかける。
パワプロ「六道、おはよう」
六道「ああ、パワプロか。矢部はどうした?」
「まだ妄想中」後ろを見つつ言う。
「なるほど・・いつもの病気か」
六道はちらりと後ろを見た後、こちらに向き直って話を続ける。
「査定の結果は?」
「いい方だったよ」紙を取り出して、六道に見せた。
「ふむ・・・十分の出来だな」「そっちは?」
「まあ・・それなりだ」若干躊躇していたが、六道も紙を取り出して見せてくれた。見てみると捕・一・二・三に○が付いている。
「完璧じゃない?」
「うむ・・・特に三塁を取れたことが大きいな」
「そうだね、でも六道は捕手やってる時がイキイキしてていいよ」
当然だ、と言わんばかりに六道は頷く。
「それと、甘いもの食べてる時もね」
顔が一気にピンク色に染まる。
「なー!!」
六道がすごい剣幕でにじり寄って来たので、パワプロは危険を感じて走り出す。
「ま、待て!逃げるな!!」
六道が猛スピードでパワプロを追いかける。
「待つでやんすー!」ようやく気付いた矢部も2人を追う。
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ロックされています   Re: W・B・C  名前:PN.アリス  日時: 2015/06/15 20:43 修正1回 No. 4    
       
逃げ切れると走ったはいいものの、まさか本気で走ってくるとはパワプロも予想しておらず、六道にあっさり捕まった。
六道「い、いつからだ!」
パワプロ「こ、怖いって…。いつかは覚えてないけど、橘と食べてたのを見かけただけだよ・・。ねえ矢部君?」いましがた追いついた矢部に聞く。
矢部「オイラを置いて行くのはヒドイでやんす!!」
「ごめんごめん、いつものスイッチ入ってたからつい・・。で、矢部君も2人が食べてるの見てたよね?」
「ああ、あれなら去年の10月のはずでやんすよ。ガンダーのグッズを買いに行く途中に見かけたでやんす」
「まあ逃げたのは謝るけど、ただそう見えたから言っただけだって」
「そ、そうか・・・」
「もういいじゃないでやんすか。それよりも、そろそろ学校に着いといた方がいいでやんすよ」
時計を見ると8時を過ぎていた。
「それじゃ・・・行くでやんすか?」
ばつの悪い2人を誘導するように矢部が先に歩きだし、2人もそれに続いた。

数分後学校に到着し、靴を履き替えて階段へ向かう途中パワプロが2人に聞く。
「そもそもどこに向かうんだっけ?」 「校長室で行われるから、3階だ」
そのまま階段を上り、ただただ長い廊下を渡って左に曲がり、さらに奥に行ったところにある校長室に3人は着いた。
「もう先に来てるかな?」 「みずきは微妙だと思うが・・」 「友沢君はいてそうでやんす」
パワプロが失礼します、と言ってドアを開けた。
校長「おお、来たな。これであと1人か。君たちは適当に席に座ってくれ。私はちょっと準備をして来るので」と言うなり校長は出ていった。
友沢「もう待ちくたびれたよ・・校長の話は聞き取りにくいし、つまらないし・・・」そう言って友沢は姿勢を崩す。
パワプロ「やっぱ早かったか〜」
六道「と、いうことは・・・みずきが最後になるわけだな」
矢部「予想通りでやんす」
3人はそれぞれ適当に座る。
「で、結果はどうなの?」友沢に訊いた。
「まずまず。投と遊・二・三」
「2人はさぁ、素質が高いだけに羨ましいよ。俺は適性多いけど、普通だからなぁ・・」
「練習次第でどうにでもなるから問題無いよ」
「うむ。鍛錬を怠らなければすぐにパワプロの実力は向上するはずだ」
そう?、と言おうとした途端、ドアが勢いよく開いた。
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ロックされています   Re: W・B・C  名前:PN.アリス  日時: 2015/06/16 21:16 修正2回 No. 5    
       
開いたドアから女の子が急いで入ってきた。
「セ、セーフ!!!。はぁ・・はぁ・・」
走ってきたのか息が荒い。落ち着いてこちらを見、パワプロの姿を発見すると表情が止まった。
「えー!!何でいるの・・・じゃ私が最後?」
六道「・・・みずき、遅すぎだ」「聖も何でいるのさー!」
みずきはしかめっ面のまま六道を睨みつける。しかし、六道は動じることなく淡々と返した。
「待っていたが、お嬢様はまだ寝てらっしゃいますと言われたぞ?」
友沢「つまり、寝坊したんだね・・」
橘の顔がさらに紅潮する。
「何よ!ちょっと寝るのが遅なっただけじゃない!」
パワプロ「まあ、落ち着けって。俺も今日起こしてもらわなきゃ遅れてたんだからさ」
「遅かった数がこれで一緒になったからって、いい気にならないでよね!」橘は噛みついてくる。
パワプロが顔はしかめ、それを見て六道がフォローに入る。
「火に油を注ぐようなことを言うんじゃない。卒業式なんだからそれぐらいにしておくんだ」
橘は何か言いたそうだったが、ムスッとした顔のまま椅子に座った。
矢部「やれやれでやんす…」
橘が矢部を睨んだが、すぐそっぽを向いた。
パワプロは少しでも場の空気を変えようと橘に声をかけた。
「橘はどうだったんだ?」怒らせないように遠慮がちに訊く。
「・・何が?」
まだ素っ気ないが、怒ってはいないようだ。
「査定の結果だよ、どうだった?」
「あんまり変わりないわ。投・一・三だけ」
矢部「でもムーンが使えるだけで別格でやんすよ」
「当然じゃない。でもムーン以外の球種が欲しいかな。そこについては六道といろいろ考えてるとこ」
話し終えたほんの数秒後、校長が入ってきて全員が姿勢を正す。
校長「これで全員揃ったか、では始めるとしよう。今から名前を呼ぶから順番に前に来るように」
初めに六道が呼ばれ、矢部、橘、友沢と続き、そしてパワプロが呼ばれた。
「卒業おめでとう。これがライセンスだ」
返事のあと一礼して受け取る。沸き上がる高揚感を抑えつつ、パワプロは席に戻った。
この後はあいさつで終了なのだが、その内容は違っていた。
「それと、君達にも話しておいた方がいいだろう・・」
「我が街の球団は・・・このままではリーグ戦に出場できんのだ」
話が終わるなり、全員が顔を見合わせた。
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ロックされています   Re: W・B・C  名前:PN.アリス  日時: 2015/06/18 21:41 修正2回 No. 6    
       
友沢「何があったんですか?」
校長「実は、いくつかの問題が発生した。監督の交代は前々から決まっていたからいいんだが、重大なのは選手が大幅に足りないんだよ」
「それと、スカウトもどこかに行ってしまったのだ。連絡すら取れない」
「まずスカウトを決めて、そこから選手を補充しなければ・・・。君達を除いて最低でも12人はいないとリーグ出場資格が無くなってしまう・・」
パワプロ「なぜそんなことに?」
「おそらく、戦力低下も見越して必要以上にアプローチを仕掛けてきたんだろう。全く、やられたよ・・」
六道「校長、何か手立てはないのですか?」
「うーむ・・・」
校長は暫く考えた末、何か思いついたようにパワプロに訊いた。
「パワプロ君、君がスカウトをやってみないかね?」
咄嗟な事にパワプロは面食らった。「お、俺がですか?」
「君の父親は名スカウトだ。かのイチローや松井なども発掘してきた。そして、君はその息子だ。もしかしたら、その才能があるかもしれない。」
そう言われても、自分には出来るわけがないと思った。
仲間に目をやると、違和感はなさそうな顔でこっちを見返している。
「み、みんなは賛成なの・・?」
橘「全部丸投げでの賛成♪、なだけ」 矢部「右に同じでやんす」
友沢「僕も賛成、この中で人の能力を見分ける力は君が一番だと思う。」
六道「そのとおりだ。私より・・個々の持つ癖の見極めは鋭い。お前が適任だと思う」
丸投げはともかく、れっきとした理由で2人が認めてくれている事が嬉しかった。しかし、自分に出来るのだろうか?。
校長「臨時でいいからやってくれんかね?。資料などはあるから交渉してくれればいいんだよ」
パワプロ「そんな簡単に言いますけど・・・」
六道が提案する。「親父さんに訊いて少しアドバイスしてもらったどうだ?。」  「えっ?」
「それは良い提案でやんす」矢部が肯定し、校長はそうだ!と確信した顔をしている。
「それがあるじゃないか!これでほぼ決まったも同然だな」
「いや、まだやるっていってないですけど・・・」
橘「諦めなさい。これも宿命、なのよ」
パワプロ「何カッコつけてんだ・・・」 「てへっ♪」
「てへっ、じゃねえわぁぁ!!!」
こうして、半ば強引にパワプロはスカウト兼選手として活動する事になった。

〜序章、完〜
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ロックされています   Re: W・B・C  名前:PN.アリス  日時: 2015/06/21 20:54 修正1回 No. 7    
       
〜一章【スカウトだけど 何か?】
パワプロ「何枚あるんだ?…」
昨日受け取ったその資料の多さに愕然とする。カントー方面だけでも10枚くらいはありそうだ。
こんなにも大変だと、もっときっぱり断っておくべきだったと思う。幸いなのは、シーズンオフになったばかりという事だ。
頼みの綱である親父に送ったメールもまだ帰ってきていない。
「とりあえず活動は午後にしないと・・」
これから学校に行く事になっている。監督に会うためだ。
昨日は練習自体が無く、来てなかったらしい。
「そろそろ行っておくか」
パワプロは資料を片づけ、学校に向かうことにした。


アカデミーに到着し、すぐにグラウンドに向かうと友沢が来ていた。
友沢「今回も早いじゃないか」 まあね、と返し先輩にも声をかける。
バンビ「おう、元気か?」
阿畑「なんや、スカウトになったらしいな」
2人はアカデミーの同期で1学年先輩になる。
同期で投手なのもあり、ライバル意識が強く仲が悪い。性格はよく似ているのだが・・。
「これよりもっと優秀な変化球投手を頼むわ」←阿畑を指さす
「こいつより速い球投げるやつを頼むで」←バンビを指さす
徐々にヒートアップしてきた。悪い兆候だ。
「今このチームでエースに近いのはお前より俺なんだよ!」
「へっ、球種も少ないお前に何ができるっちゅーねん!」
「すぐスタミナが切れるお前に言われたくねえな!」
「何だと!!!」 「なんやねん!!!」
こうなると、止めようにも止まらない。アカデミーの時もしょっちゅう目にしていたし、またか、ぐらいの感覚になっていた。
こちらの様子に気づいた2人の同期が止めに入る。
森山「またか!、いい加減直ってくれないかなぁ・・。こっちはいいから、速く行け」
パワプロ「先輩も大変ですね・・」
「もう慣れっこだよ・・ああ、監督は室内にいるから」
失礼します、と礼をし、2人は室内練習場へ向かった。
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ロックされています   Re: W・B・C  名前:PN.アリス  日時: 2015/06/25 23:05 修正3回 No. 8    
       
練習場と言っても、アカデミーの生徒専用なのでここに来るのは先生であって監督が来る事はありえない。それだけに、ここにいると言われてから何だか嫌な予感がしてきた。あの人で無ければいいのだが…。
ゆっくりとドアを開けて入ると、練習している生徒に向かって先生が1人で指導している。他の人を目で探すが、誰もいない。
「とりあえず聞いてみよう」友沢は先生の元へ向かう。
多分その望みは薄い――、俺はそう思いつつ、ついて行った。
「先生」
「君達2人ともどうしたんだい?。ここは生徒用だよ」
つい最近まで生徒だったのに、何故か他人行儀。先生の顔を見ると目の奥には火が灯ってる。これは確定だな――、俺はダメもとで遠まわしに聞く。
「ここに監督がいると聞いたんですけど、もしかして・・先生がですか?」
「・・・そうだよ、僕が監督になるんだ!。4月からね」
「よっしゃー!!」友沢が普段出さないような声を上げる。
そういや彼と六道は凄く熱心に指導を聞いてたっけ。俺、矢部、橘は常にグロッキーだったけど・・。
「君達には期待しているから、是非このチームの柱になってもらいたい。特に雨宮!」
「は、はい!」急に本名で呼ばれてビクッとする。
「君が臨時でスカウトになったと聞いた。久の血を受け継いでるとか言われただろうが、そんなのは関係無い!!!。」
既にメールで頼んだ事は秘密にしておこう。
先生と親父は大親友で同僚だった。うちによく来てたのだが、その時からすでに熱かったので俺は苦手だった。
「君は君だ!!。君が出来る全てをもってスカウトしてくるんだ!!。今は君が、この球団の運命を握ってるといってもいい!!」
先生の熱血度合いはこっちの汗の出にも影響を及ぼす。
「そこでだ」急に元に戻る。
「この球団はオーナーである神奈川知事が決めた変な公約があってね。監督が変わるときにチーム名も変えるんだよ」
「何ですかその都合のいい設定は・・」俺がすかさず突っ込みを入れる。
「僕にはネーミングセンスが無いから、君達5人で決めてもらおうかなと思ってね。どうだい?」
面倒だ、かなり。
「まだ全員揃ってからで無いと・・」
俺が思案していると、ドアが開き3人が入ってきた。
「3人ともこっちだよ。あと松岡先生が監督ね」
友沢の言葉で六道は歓喜し、矢部、橘は唖然としていた。
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ロックされています   Re: W・B・C  名前:PN.アリス  日時: 2015/06/27 11:56 修正2回 No. 9    
       
5人は食堂でチーム名を決めるため、談義している。
あの後、毎回そうなるのだが、先生がそれぞれの問題点などを熱く語りだす前に名前を決めるのをすぐ引き受けて食堂に非難してきた。
あのまま聞いていたら、最低2時間は止まらないはず。ためになるのは分かってるけど、室内のしかも後輩がいる場所ではやめてほしいものだ。
それにしても、取り掛かっていてなんだが意外と浮かばない。うーんと唸って俺は頭を掻く。
「これはどうでやんすか?相模ガンダー…」
「絶対無い」4人揃って即座に返す。
「全部言ってないでやんす!!」
矢部すぐ反論するも、それに対し友沢が冷静に指摘する。
「趣味入れちゃダメだよ、自分の物でもないのに。」
「普通に神奈川セントラルファイターズとかは?」
友沢が提案したら、今度は橘が返す。
「今の神奈川パワフルズよりマシだけど、普通すぎてもダメでしょ」友沢はじゃあ言ってみろと言わんばかりに橘を見返す。
「横浜クレセントスターズよ!」
「自分丸だしじゃないか」呆れ顔で俺が突っ込みを入れると、火が飛んできた。
「そういう自分はあるの?」
「やっぱり動物名は付けないとなって思うんだよね。それで浮かんだのがこれ」
俺は皆にリベンジシーガルズと書いた手紙を見せた。
「リベンジはこの逆境を跳ね返すという意味で、カモメは県鳥から。頭に付けるのはどっちでもいい。どう?」
真っ先に矢部が答えた。「オイラは納得でやんす」
「僕も意義は無いよ」続いて友沢も賛成する。
橘はうーんと唸っていたが「・・まあいいわ。最初に受けたのはアンタだし。でも横浜は譲らないわよ!!」条件付きでOKの様だ。
「これで決定だな」
六道も異論は無いらしく、橘の案を追加して【横浜リベンジシーガルズ】に決定した。
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ロックされています   Re: W・B・C  名前:PN.アリス  日時: 2015/07/03 12:04 修正1回 No. 10    
       
「さてと、一旦資料取りに帰るよ」俺は席を立った。
返信はまだ来てないが、実質スカウト業務しかやることがない。練習は2月からだし。
友沢と六道は練習を見学する予定で、矢部は用事があると急いで出ていった。多分あっち方面のイベント辺りだと思う。
「あたしも帰ろっかな・・やる事無くなったし」席を立って橘は背を伸ばす。
2人に伝言を頼み、俺と橘は出口に向かった。
「資料ってどれくらいなの?」階段を降りつつ橘が聞く。
「関東だけで20ページ程度。全部だと70超えてると思う」
「それじゃ、キリがないわね。目星とか付けてるの?」
とりあえずは、と俺は頷く。前任が狙ってた注目選手の中から選ぶのがよさそうだし。
どれから行けばいいか――、それに集中していて、曲がり角から来る人に気付かずぶつかってしまった。
「痛たた・・」相手の声がする。どうやら女性のようだ。
「すいません!!」即座に相手に頭を下げる。
「ちょっと、何やって・・・・?」橘がそこで言葉を切る。
「ごめんね、ボクも・・・って雨宮君とみずき?」
橘はあおいを見るなりセンパーイ♪と180度真逆の声を出して接近する。
「卒業式昨日なのに何でいるの?」
俺は経緯を話した。
「ふ〜ん、それでスカウトやってるんだ」
「まだ親父の連絡待ちだけどね。ところで、あおいちゃんはなんでここに?」
俺が聞くと意外な答えが返ってきた。
「ボク今FAなんだ」
えー!、と驚く2人にあおいは話してくれた。
客寄せパンダでの入団だったのは噂になってたが本当らしい。試合よりもイベント出演が段々と増えていき、それに嫌気がさして辞めたそうだ。
それを聞いて橘が怒るのにも同感出来る。成績も悪くないし、魔球が使えるだけでも貴重だと思うのだが。
でもこっちにしてみればチャンスだ――、優秀な選手は今すぐに欲しい。
全く不釣り合いな場所で、俺は緊張しながら交渉を持ちかける。
「・・あおいちゃん、うちに入らない?」
「うん、いいよ」
「そんな簡単に?」俺は呆気に取られる。
「監督から連絡があったし、こっちも探してたしね」
「なんかあっけないけど、交渉成立で」俺は手を差し出し、あおいと握手する。
「よろしく。じゃ、スカウト頑張ってねー♪」
会話終了と同時に、橘は喜びのあまりはしゃぎだす。「いやったぁー!!♪」
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ロックされています   Re: W・B・C  名前:PN.アリス  日時: 2015/07/16 15:53 修正1回 No. 11    
       
思いがけない形での初スカウトが成功。急遽帰る予定を変更し、オーナーである校長もとい知事の元へ連れていくことにした。
校長はスカウト成功にも驚いていたが、あおいが入ってくると一旦止まった後、「これで抑えは万全だ!!!」と叫んだ後ガッツポーズした。
その後も校長が饒舌に喋り始めた折、俺の携帯が鳴る。
画面をみると親父からだったので、部屋から失礼して電話に出る。
「雅樹、今大丈夫か?。プロおめでとうと言いたいところだが、いやな役回りになってしまったな」
こっちだってやらされるとは思わなかったけど。
「まず言っておくと、有望選手だけを見てそこ行きゃ楽勝、とはいかないからな?」
俺はギクッとした。完全に見透かされている。
「就任直後のヒヨッコに、どこの選手が耳を傾ける?。熱心に追っかけてこその信頼が成り立つから、狙うなとは言わないが注目選手ほぼ無理だ」
じゃ、誰を狙えばいいんだよと俺は言った。
「まずトレードは置いといて、今年の自由契約選手はすんなりOK貰えるはず。それと新人で入団拒否は毎年いるからそれらを狙うのもいい。後は金があるならFAで獲るか」
自由契約選手、メインはここかな。
資金はあるらしいが、FAでうちに来る選手っているんだろうか・・?そこは微妙だ。
「段々不安なんだけど・・・」
「まだ4カ月あるから焦るなよ。修造も私に掛けてきたし・・相当な状況なのは分かるつもりだ。いくつか当たれそうなのを送っておくから見てみるといい」
俺がありがとう、と言うと「そう言う事は選手が集まってから言うんだな。ところで、あおいちゃんが退団したのは知ってるか?」
「もうスカウトしたよ、それで校長に合わせてたところ」
やるじゃないか、と親父が言った後「運もある程度は無いとな。私からは以上だが、その調子で頑張れよ。親父としては浮いた話でも持って来てほしいものだが」
余計な御世話だよと言って電話を切る。
あおいちゃんの場合は知り合いであったからこそ成功したようなものだ。実際はそうはいかないだろう。
親父から送られてくる資料の方も見つつ検討し直す必要があるが、1つ言えるのはかなり狭まってきたのではないかと言う事。
自由契約選手の事など頭にすら入れてなかったが、すぐ入ってくれる方が断然いい。
部屋に戻るまでずっと、頭の中は選手探しでいっぱいだった。
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ロックされています   Re: W・B・C  名前:PN.アリス  日時: 2015/08/03 22:46 修正1回 No. 12    
       

年が明け、1月。
冬真っ盛りだが選手達にとっては自主トレの期間であり、パワプロは河川敷で走り込んでいた。
一見平坦な道に見えるが、徐々に傾斜がきつくなってゆく坂を上がっていき、そこからさらに神社の石段を登っていく。
「はっ、はっ、はっ、・・・・後もう少し・・!」
5セット目終盤の後20段ほどを一気に駆け上がり、俺は荒い息をついた。
「はぁっ、はぁっ・・・・」
息を整えつつ、ベンチに座る。
このように自主連に時間を割けるのも親父のおかげである。
まず親父のアドバイス通り自由契約選手を集中的に調べ、ある程度の成績を残していても切られてる選手に注目し、15人程に絞る。
12月をほぼ全て使い、それぞれに出向いて交渉した結果、7人の入団が決定した。
カープの野村と猛田、キャッツの小津、ホークスの川崎、べイスターズの石橋、ニンテンドーのMr.L、ファイブスのウィスパー。
正直入ってくれるかどうか不安もあったが、気にするまでも無くOKしてくれた。
先発・パンチ力・投打の切札・ムードメーカーetc・・と決して悪くない補強だと思う。
「もうあと4人で終わりだし、こうやって練習出来るのも親父様々だな・・」ボソッと呟く。
でも終わってはいない。まだ投手が足りてないし。
残りはリストの中から探す予定であるが、こっちは粘り強く行かないと受けてくれないだろう。
「あいつにも会ってみるか・・・なぜリスト入りしてるか気になるし、もし入ってくれればこの上ない補強になる」
“あいつ”とは中学まで同級生だった猪狩のことである。ドラフトでプロ入りするために名門校に進学したっきり会ってはいない。
その後、彼は甲子園で見事優勝、巨人へ入団し新人王も獲得している。
だがリストにはFAと書いてあった。何らかの理由で退団するのだ。
友沢に勝るとも劣らない二刀流選手となれば咽喉から手が出るほど欲しいし、ちょっと幼稚かもしれないがまた一緒にプレーもしたい。
「でも待てよ?・・猪狩の家って…大金持ちだよな?」
猪狩は言わずと知れた猪狩コンツェルンの息子である。俺程度では会うことすら無理っぽい気がする・・。
「うーんそこ考えてなかったな・・。なんかないかな、金持ち・・・・・・あっ」
俺に1つの考えがひらめいた。
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ロックされています   Re: W・B・C  名前:PN.アリス  日時: 2015/10/07 21:38 修正1回 No. 13    
       
「でかいな・・・・・」
いざ前にしてみると、建物の大きさに驚く。
パワプロは六本木にある猪狩ホールディングス本社近くまで来ていた。
ああ見えて?財閥の娘である橘に頼んだ所、すぐ会えるように手配してくれたのである。
「で、なんで僕も来なくちゃいけないんだ?」
友沢文句を言いつつ付いてきている
「もしもの時の保険、かな」
「保険?」
「ああ。だからその時は頼むよ」
そう言って中に入る。
すんなり済めば問題無いのだが、ただ何となく一筋縄ではいかない気がする。
相手が相手なだけに。

受付で要件を告げると、5分もせずに男性がこちらに向かってきた。身なりからして秘書だろうか。
「雨宮様ですね」
はいと答えると、「21階にいらっしゃいます。こちらのエレベーターからどうぞ」
彼に礼を言って、2人は21階に向かった。

ノックの後、少し間を置いてため息交じりに「どうぞ」の返事で中に入った。
「で、何の用かな?」入るなり猪狩が面倒そうに言った。
「いきなりとげとげしいな」
「僕は暇じゃないんだよ」
こちらを見もせずに淡々と返す。
「俺も暇じゃない。仕事で来てんだよ」
「仕事で?――」その言葉でようやくこちらを向いた。そこで初めて1人で無い事に気付いたらしい。
「なんだ、1人で来ているんじゃ無かったのか?」
「お前がこっち見ないから紹介できなかっただけだ。こちらは同期の友沢」友沢が軽く会釈する。
「それで、用件は?」握手したのち猪狩が聞く。
「率直に言おう。お前をスカウトしに来た」
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