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記事閲覧  re:タイトル未定  名前: パワプロ?  日時: 2018/09/13 18:04    
      
人は其れを、伝説と呼んだ・・・。
一人の男の物語。

(完走予定は今のところないです。あくまで試験的なものです。)
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記事閲覧   Re: re:タイトル未定  名前:パワプロ?  日時: 2018/09/13 18:09  No. 1    
       
・・・夢を見る。

悪魔を恐れる人の夢を。

悪魔と謂われる人の夢を。

目覚めはいつも、喰われる時だ。

どちらも共に救いの無い夢。

今日もまた、同じ夢を見る・・・。
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記事閲覧   Re: re:タイトル未定  名前:パワプロ?  日時: 2018/09/13 18:30  No. 2    
       
_____百十三、百十四・・・。

ボールの音がこだまする。

音の主は若い少年。

少年の名は、福井 誠。

西常高校野球部所属の二年生。

創部八年の歴史の浅い部で、毎年初戦負けを繰り返している。

しかし、そこのエースはここ一年で急成長を遂げた。

前年の大会は、彼が好投を見せたものの試合は2-0で敗れた。

彼の中学時代は、特にパッとしない、どこにでもいる投手だったのだが、とある変化球を教わり、そして変貌した。

男という生き物は、僅かな時間で変わるものである。

プロ野球においても、アマチュア野球においても、珍しくない話だ。
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記事閲覧   Re: re:タイトル未定  名前:パワプロ?  日時: 2018/09/13 18:40  No. 3    
       
さて、その変化球とは・・・

フォークボール。

現代日本野球において、スライダーと並び主流とされる球だ。

負担は大きいものの、プロでも打てる選手は一握り。

ただし、抜け球になればよく打たれるのも、また、その球だ。

後に、全日本を沸かせることとなる少年。

・・・そんな、よくあるお話。
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記事閲覧   Re: re:タイトル未定  名前:パワプロ?  日時: 2018/09/15 19:08  No. 4    
       
___四月十七日 早朝

今日もまた、早朝の練習を行う。
最初は体力も無く、練習を続けるのはまず難しかったものだが、「継続は力なり」の言葉が示す通り、今の自分はそれを通す体力がついている。

締めには欠かさずストレッチを行う。
これもまた、幼少の頃から続けていることだ。

自分がまだ、幼かった時に父は言っていた。
「誠。もしも、本気でプロの野球選手になりたいのなら、体を鍛えるべきだ。
技術は後で付けばいいが、体はそうはいかん。
ならばこそ、苦しい事でも耐えられるだけの体を今のうちに作っておくべきだ」

この言葉は今も覚えている。
父との会話は、ほんの僅かしかしていないが、この言葉だけは覚えている。

六年前、突然父は姿を消した。
理由は分からない。それでも、体を鍛えることはやめなかった。
それが自分の全てであった。
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記事閲覧   Re: re:タイトル未定  名前:パワプロ?  日時: 2018/11/01 12:52  No. 5    
       
やがて、野球部の朝練の時間が近づく。
参加する意味は薄いが、参加することがとても重要だ。

と、言っても野球の話ではない。
昨日のテレビがどうだった、等の雑談がメインだ。

毎日、朝早くに起きるために早寝を心掛けているせいか、クラスメイトとのコミュニケーションが取りづらい。

勿論、出来る限りは見るのだが、睡眠時間が減るのは好ましくないのだ。
眠気、集中力、免疫力、新陳代謝、血圧…、挙げていけば山ほどある。
普通に生きていく限りはそれでもいいのだが、「夢」を叶える…いや、「夢」を通過するには拘らないといけない。

幼子であれば、夢は遠く、大きく、ぼんやりとして見える。
しかし、今になれば、大きいことには代わりないものの、形はしっかりして見える。
それだけ、見るべき部分を、理解出来るようになった、ということだ。
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記事閲覧   Re: re:タイトル未定  名前:パワプロ?  日時: 2018/11/01 13:11  No. 6    
       
さて、朝練の内容は省くとしよう。
多少、体は動かすが、所詮は多少でしかない。
朝からハードな練習は、ライトな部員では厳しいだろう。
勿論、ポジションのことではない。

朝練が終われば授業。
これは真面目に聞く。
本業は学生だから、学業も疎かにしてはいけない。
とはいえ、頭の出来は良くないみたいだが…。

特に歴史が苦手だ。
クラスに戦国時代に詳しい人がいるのだが、関ヶ原の戦いの西軍の総大将は誰か知っているかと、聞かれたことがある。
自分は、石田三成と答えたのだが、これは違うらしく、実際は毛利輝元だという。
んなもん知るか。
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記事閲覧   Re: re:タイトル未定  名前:パワプロ?  日時: 2018/11/09 06:06  No. 7    
       
昼には適当に飯を掻き込み、食い終われば次の授業に備える。
そして、その日の授業が終われば、いよいよ、本格的な部活動だ。

今は4月なので、後輩達は体力作りの期間だ。
目ぼしい者はいないが、人はすぐに化けるものだ。
現時点では微妙であっても、明日には違うかもしれない。
自分もまた、自惚れかもしれないが、化けた方の一人だ。
長い目で見よう。

「なぁ、福井。このフォームどうだ?」

話しかけられた。
彼の名前は、鬼崎雄二。同級生だ。

「前に突っ込みすぎだな。もう少し、後ろで打つ感じの方がいいと思うぞ。」
「うーん、よくできてると思ったんだけどなぁ。」
「懲りないな。自分にあったフォームで打たないと。」
「うるせえ。格好いいフォームで打ちてえんだよ。」

周りの影響を受けやすく、また、格好つけたがりなのが欠点だ。
熱意はあるのだが、方向性を間違えている。

とはいえ、選手としては中々のものだ。
足が速く、守備範囲が広いから、投手としては助かる。
まあ、打撃に難があるのと、やらかし癖が痛いのだが。
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記事閲覧   Re: re:タイトル未定  名前:パワプロ?  日時: 2018/12/02 18:57  No. 8    
       
「ところでよ、あの話知ってるか?」
「あの話ってどの話だ?」
「いやな、戸井って選手いたろ?」
「戸井?…ああ…。」

戸井鉄男。
言わずと知れた名選手だ。

「そう。で、その戸井の息子が、すげえらしい。」
「確か一つ下だったか?」
「まあ、二世選手は大成しないって話も聞くけどな。」
「…なあ、それってどこに入ったんだ?」
「あかつき大付属らしいぞ。」
「あの、落ちた名門か。」

落ちた名門。
昔は猪狩守など、多数のプロ選手を排出したものの、近年はシードから外れているほどまで落ちたことから呼ばれている。

「で、ここだけの話だが、今週の練習試合、そこらしいんだ。」
「…試す可能性が高いということか。」
「ああ、楽しみだよな。」

戸井の息子か…。
そうか、引退したのも、5年前だからな…。
戸井は41歳で引退したから、今は46か。
今はフリーのはずだし、もしかしたら…。
…もしもいたら、サイン貰おうかな?
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記事閲覧   Re: re:タイトル未定  名前:パワプロ?  日時: 2019/04/19 00:59 修正1回 No. 9    
       
「おいおい、こんな時に無駄話か?」
「あ、米田センパイ…」

米田先輩、学年は一つ上。
名前は、米田隆文。
野球部の副キャプテンで、正捕手だ。
つまりは、女房役ということだ。

「ったく、可愛い可愛い後輩ができたんだから、少しは先輩としての自覚を持てっつーの。」
「可愛い…?」
「もしかしてセンパイ、そっちの気が…?」
「ねぇよ!つか、そっちかよ!?」
「男を可愛いと思える感性は持っていませんので…すみません。」

まさか、米田先輩にそういう趣味が…。

「な訳あるか!俺に彼女いること、知ってるだろうが!」

なかった。

「えーでも、どっちもいけるって人も、いるじゃないですか。」
「安心してください先輩。今はそういう人でも、受け入れられる時代です。」
「だーかーらー!違うと言ってるだろ、しつこいな!」

とまあ、先輩なのに弄られキャラだ。
少し同情してしまうが、彼女がいるという時点で、妬み半分だ。

「…で、何を話してたんだ?」

…今回は、切り替えが早いな…。

「練習試合で、あかつき大付属とやるらしいじゃないですか。」
「あー、じゃあ野球の話か。」
「それで、戸井の息子が入ったとも…。」
「そうだなぁ…。出るだろうな。」
「それでまあ、楽しみだなって。」
「なるほどな。戸井はシニアでも、大活躍だった。だが、なんで、縁のない高校を選んだんだろうな。」

確かに不思議だ…。
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記事閲覧   Re: re:タイトル未定  名前:パワプロ?  日時: 2019/04/19 01:14  No. 10    
       
「あれなら、どこの名門でも行けたはずだ。何せ、名前がデカすぎる。戸井の息子ってだけでな。」
「通算3500本安打に、700本塁打。おまけに15年連続ゴールデングラブ賞…。そのレジェンドの息子、ですからね。」
「頭おかしい成績だよなぁ…。いつ見ても。」

父の戸井鉄男は、かつて弱小のパワフル高校を甲子園優勝へと導いた。
となると、その子もまた、今や弱小へと成り果てたあかつき大付属で、甲子園優勝を目指す…というのも、おかしい話ではない。

「まあ、何にせよ練習するっきゃないな。…なぁ、福井?
中学から上がりたてのガキに打たれちゃ、面目が立たねえよな?」

いや、あの、一つしか変わらないんですが…。
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