個別記事閲覧 中学3年 10月2週 名前:トッキー日時: 2013/08/26 10:58 修正6回 No. 5
      
親父の話によると、学校の編入は済んであるらしい。

長曽根高校…栃木県の田舎にある学校に通うことになるそうだ。
まぁ、条件指定したのはこっち側なのだが。
とはいっても、最近まで通っていた長曽根中学校のすぐ近くにある。

前住んでいた家は売ってしまっていたが、新しく住むアパートが高校と目と鼻の先、という話は聞いていた。



「じゃあな。」

だれに聞こえるわけでもなく、保志陽翔は呟いた。

未練がないわけではない。

ただこのアメリカの学生寮にも思い出、というものがある。

俺が怪我をして、日本では治らないと言われ、アメリカでも治らないと言われ……
それで、家族が滞在しているアメリカにそのまま住みついた…

新しく住む部屋がどんなところかは分からないが、おそらく此処の居心地の良さには敵わないだろう、と思う。

このままずっとここに残りたいとも思った。
だが、彼にはこの学生寮から立ち去らなければいけないという「現実」がある。

陽翔はそっと、学生寮に背を向けた。



……それは同時に、アメリカとの別れ、旧友との別れも意味していた。

未練はある。
だが、彼は歩みを止めてはならない。
彼は、前に進まないといけないのだ。



「待ってろよ…長曽根高校。」

そう呟いて、彼は空港への歩みを始めた。










「……あ、スーツケース忘れた。」

…そして再び学生寮に戻るのであった。