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夏の終わりを感じさせないほどの酷暑が押し寄せるこの夜。ひとたび外に出てしまえば瞬く間に蒸された空気にさらされて、早く、しかし確実に身体の水分奪っていくほどだ。昼過ぎには東京中で熱中症患者が続出し、救急車が環状線を慌ただしく駆け巡っていたらしい。 そんな日に行われた東京パイレーツと東京ビッグスターズとの、伝統の一戦の試合開始は6時ちょうどだった。この2チームの戦い、世間からは"東京ダービー"なる冠名で呼ばれているが、とにかくアツい。名門球団であるビッグスターズはもちろんだが、総じるとBクラスでくすぶるシーズンの方が多いパイレーツ側も、このダービーマッチに限っては負けまいと昭和の時代から奮闘しているほどだ。明治スタジアムはたいてい昼過ぎに大学野球のリーグ戦をやっている。アマチュアなので観客席には空席が目立つのは当然なのだが、夕暮れ時になってこの東京ダービーが行われると、あっという間にそれは影をひそめてしまう。 しかも今日はその中でも特別なくらい、盛り上がっている。試合前から異様な熱気がスタジアムを占拠し、それでいて張り詰めている糸のような独特の緊張感が、じりじりと息を殺しながらフィールドにも浸透し始めていた。もしもビッグスターズのユニフォームを着たファンが間違えてライトスタンドのパイレーツ側の応援席に乗り込んでしまったら、袋叩きにされるのは確実だろう。紛れも無い異常さが、あたかも当然だと言い張るかのように居座っていた。観客もそれを全く疑う素振りすらも一切見せずに、受け入れている。しかし彼らが間違っていると、声を大にして言うことは出来ない。 ゲーム差1.0での一騎打ち。首位攻防の第一ラウンドで白星を勝ち取ったビッグスターズが、1位パイレーツを追い越す射程圏内に捉えたのだ。かたやパイレーツは逃げ場を失い、背水の陣で次戦、すなわち今日の一戦に臨まなければいけない状況に追い込まれてしまっていた。
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