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「猪狩カイザース、第七回選択希望選手…・・・」 そして、育成選手の指名に入っても彼の名前は呼ばれない。 気がつけば、ドラフトは終わっていた……。あと一歩だった……本当にあと一歩だった。 高谷 弘樹(たかや ひろき)は野球部の監督にこの結果を聞いて一瞬硬直したが、すぐに笑い出した。 「先生、何言ってんすか。俺がプロに行けるわけないじゃないですか」 高谷はそう言い終えるとさらに笑い声が大きくなった。 この笑いは、今の話が可笑しくて笑っているわけではない。 この笑いは自分を自分でバカにするもの、7球団も挨拶にきて指名がなかった。 もう笑うしかないのだろう。それに高谷は…本気でプロの舞台で野球をしたいと心から思っていた。 高谷は体育館裏に座り込むとケータイを手にとった。そしてとある女の子に電話をかけた。 10秒ほどで電話に出たその娘は広田 遥香(ひろた はるか)、中3で高谷の幼馴染だ。 「もしもし、遥香……俺さープロ無理みたいだ……悪いな、もうデカイ舞台で投げてる姿は見せられない……」 「なんで! 高校で無理だっただけでしょ!? 大学とか、アマチュアでやればいいじゃん!」 「ごめん…無理なんだ。あれだけ……あれだけ真剣にやったのに…無理ってなったら……もう、精神もたねえよ……世の中って、残酷だな。なあ遥香、あの努力は報われるって嘘だよな」 「いい加減に_!」 「だから! おまえが……おまえが叶えろ!! 俺の夢はおまえに託す! 女に託すってのもどうかと思うけど…おまえは俺より才能がある。おまえなら、絶対行けるよ、プロまで」 高谷は通話を切った。そして、抑えきれない感情が襲ってきた。 だが、不思議と涙は出てこなかった。なんでだろう?。 高谷は最速145キロを誇る右腕、140台の速球に加え鋭く変化するスライダーを持っている。そして打者の打ち気を逸らすには十分なチェンジアップ、それらの影に隠れた抜群の制球力。 どう考えても優秀な逸材。さらに甲子園でベスト4まで進出したのだからますます指名されない理由はわからない。 だが、プロ級の人間からすればこの結果は不思議なものではなかった。なぜなら、高谷には致命的な欠点があった。
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