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「1番、天海蒼空(あまみ そら)」 そう、監督に俺の名前が呼ばれた瞬間、俺はエースとなる。 でも、1年の春からエースになることは先輩たちに許されるのだろうか? ふつうは許されない。 でもあの人は優しすぎる。エースは俺でなくても全然いい、むしろまだ練習試合ですら登板していない俺ではだめだ。 だがまあ、貰えるのなら貰っておくか。 俺の所属する晃聖学院(こうせいがくいん)野球部は、ベスト8より上に勝ち進んだことは一度もない。 だが今年は最速140キロを越えるストレートに加え、鋭く縦に変化するスライダーを持つ天海蒼空、 すなわち俺が加入したことでベスト8の壁は破るだろうと学校では噂されている。 晃聖は打撃のチームだ。打撃だけなら都内でもトップクラスだろう。さらに天才スラッガー降宮 隆志(ふるみや たかし)を加え、尚も成長を続ける。 が、その分投手力は反比例して下がる一方だと言われているが、実際そうだと俺も思う。 3年の中嶋さんは最速136キロだがトレーニングでこのレベルまで仕上げた。つまり棒球。 最近はトレーニングで140キロぐらいまでは投げれるように出来るらしい、強豪校の投手が140以上をバンバン投げてるのがいい証拠だ。 と音無(おとなし)監督が言っていた。 だが今はそんなこと気にする暇がない。あと30分、いやもう10分で試合開始だ。 練習試合だが公式戦前の貴重な調整試合であるのと同時に俺の高校初登板(4回から)だ。 相手は毎年ベスト16くらいの中堅校らしいが今年はいい投手が入ったらしい。 向こうのブルペンで投げている様子を見るとサイドスローで速球派ではないことはわかった。 だがなにか不気味なシュートを投げている。まあ、試合が始まればどんな球かわかるか。 晃聖主将の真田さんが「集合!」とベンチにいる全員に呼び掛ける。 俺と降宮を除いたメンバーはキビキビと動いき素早く集合したが俺と降宮はワンテンポ遅れて円陣に加わる。 監督がスターティングオーダーを読み上げる。降宮は1番ライト、本職はサードらしいから一瞬嫌な顔をしていたがしばらくすると返事をした。 監督がオーダーを読み上げると丁度審判の用意が出来たらしく、放送席から出てきた。 両チームが整列すると審判が「集合!」の声と同時に両チームがホームベースへ向かって走り出す。
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