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強い日差しが差し込む、8月23日午後2時26分。最も暑い時間帯だ。 マウンドに立つ有宮 蓮夜(ありみや れんや)は帽子を取ると汗を拭った。 そして捕手のサインを覗き込む、ストレートのサインが出た。しかし、それは全力ではない。 蓮夜は仕方がなくそのサイン通りにボールを投げようとするが、その前に一度一塁ランナーを牽制した。 状況は一死一三塁。5回で4対4の同点。点は絶対に与えることは出来ない。そんな心境のなか蓮夜はハーフスピードのストレートを投じる。 ボールがバットに衝突した瞬間に鈍い金属音が周囲に響いた、ボールはやや強めに転がるが、サードの真っ正面だった。 これでゲッツーだ。と半ば確信していた蓮夜だったが、その予想は大きく外れた。 結果はサードの捕球ミスでランナーは一二塁。 ___エラーには慣れてる。けどなんだ、この怒りは、どこにぶつければいいんだ?。 答えは簡単だ。全力投球すればある程度気分は晴れる。だが投げることは出来ない。捕手の金城は、蓮夜の全力投球もスライダーも捕れない。 それはつまり、蓮夜は見方に力を大きく削られている。 それでも県内最強と言われるチーム相手に自責点3、よく踏ん張っているほうだ。 もしも、蓮夜が本気で投げればストレートは140キロを超えるかもしれないし、二種類のスライダーだけでも完封出来るかもしれない。 だがあくまでかもしれないなのだ、本気で投げたことがあるのは少年野球の5年までと壁に向かってだけだ。 本気で、投げたい。蓮夜はその感情を押し殺せない中で投げ続けていた。 気がつけば、試合は終わっていた。 蓮夜がスコアボードを見上げると、スコアは11対4となっていた。被安打を示すH見ると6、一方うちのチームのEの下をを見ると9と、示されてた。 蓮夜のシニア最後の大会は初戦コールド負け。そんな悲惨な結果で幕を下ろした。 整列したときに、みんな目に涙が浮かんでいた。蓮夜を除いて。 蓮夜は不完全燃焼だとでも言いたげな表情をしていた。 バックネット裏で一人の眼鏡をかけた細身の男がつぶやいた。 「彼が欲しいな。実力者にこそ、あの様な我慢強さが欲しい」 その男は隣に置いてあるリュックの中にスピードガン、スコアブックを入れると立ち上がり、バックネット裏を後にした。
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