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私たちの心は白いキャンバスです。 若者たちを指して、大人がよく言うこと。 でも、高校生になって1年、私には何色が塗られたのだろう? 杉の木の下で、その横にある桜の木から花びらが待っていくのを見ていた。 沈みかけた夕日の中で、きらきらのピンク色に私の体が溶けていくようだった。 「だーれだ?」 「ひゃん!」 すぐに香奈ちゃんだと分かった。 音楽を聴きながらぼうっとしてたのに、恥ずかしい声が出た原因は、その手の位置だ。 はなはな問題である! と、お堅い言葉を使わなければ、羞恥心で冷静でいられないくらい。 「うーん、この手から少し零れるサイズ。 きっと男子の大きな手だったらすっぽり収まってちょうど良いね! んで、この感触。今日も雫は健康です!」 「止めてよ、恥ずかしい」 「まーまー、堅いこと言わないの。柔らかいだけに」 もう、と私がため息を吐くと、香奈ちゃんは悪びれる様子もなく、ケラケラと笑った。 頬に浮かぶえくぼが、凄く可愛らしい。こうやって、私はいつも負けてしまうのだ。 「んで、何聞いてたの? って、いつものアレ?」 香奈ちゃんは、私の右耳からイヤホンを取って、自分の耳に当てた。 そして、流れて来る曲に合わせて、鼻歌を歌う。これがまた、上手い。 「よーし、じゃあ今日は歌って遊べるとこにいこっか!」 「あれ、部活はいいの?」 香奈ちゃんは、野球部のマネージャーをしている。 野球部の練習が暗くなる前に終わることはないはずだ。いつも見ているから、知ってる。 「うちの部はゴールデンウィークは合宿するでしょ。だから、4月は早く終わる日を作ってるの。ね、いこーよ!」 「いいけど――その格好で?」 香奈ちゃんはえくぼの浮かぶ笑顔が素敵な見るからにスポーツ少女な娘だ。 でも今は、被るタイプのウインドブレーカーに、体操着のジャージ姿。 遊びに行くのに、いくらなんでも女の子として、と言いかけたら、むぎゅっと鼻をつままれた。 誘い方がいつもちょっぴり強引で、気が強いのが見える。 まるで正反対の私と気が合うのは、動物好きっていうギャップがあるからなのかもしれない。 そんな香奈ちゃんの誘いは、私のことが見えてるの、と思うくらいにいつもタイミングが良くて、びっくりする。 大好きな友達だ。
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