個別記事閲覧 Re: ズダダン! ごらく部 その四 「創作の秋・小説の会」 名前:ファイター・ドクトリン日時: 2015/09/25 20:11 修正4回 No. 9
      
 題名「秋の日はつるべ落とし」

 すっかり秋めいてきたようだ。

 この間までの残暑もウソのように、すっかり涼しくなってきて、更には寒暖の差も激しい。

 街の道路の中央に連なる並木も、紅の色に染まってきているようだ。

 エッホ、エッホ、エッホ……。

 俺は、仙台のとある町並みをジョギングしている。

 心地よい程に、体も温まってきて、汗も心地よい程にかいてきている。スポーツの秋っていうもんな。ダラダラとかく夏の汗とは、まるで違うってんだよ。と、心の中で、したり顔の俺。

 おっと、紹介が遅れてしまった。まぁ、名前までは明かさないが、これでも、独立リーグの球団に所属する野球選手なんだぜ。将来の夢は、プロ野球選手になること。それも、地元の東北楽天イーグルスにな。

 ……、ん、何だろう、しばらく集中して走っていたら、なんだ、太陽がもう西に沈みかかっているじゃあないか。それにしても、沈み方が早い。

 それもそうだよな、秋彼岸も終わって、秋分の日も過ぎたんだ。これからは、冬に向かって、日がどんどん短くなって、寒くなってきて……。

 ……、ん、今度はなんだ?

 向こうから、誰かが走ってきているぞ。首にタオルを巻いているな。誰だろうか……、あっ!

 「真上秀行(まがみ・ひでゆき)……、だ……」

 そうつぶやきながら、我を忘れて見入っていたその刹那、もうすでに、すれ違ってしまったんだよな……。

 しばらくして、ようやく我に返ると、楽天の期待の星、一年目のシーズンをなんとか終えた、真上秀行投手の姿は、もうみるみる後ろに……。

 ぼーっと、俺はそいつの背中を見ている。

 何か、悲壮感にも似た、そう、絶対に、内に秘めたるものを抱きながら、走っているように、俺は感じた。

 そう思いながら、俺は、いつの間にか、あたりが真っ暗になりつつあることに気付く。西を見やる。もう少しで日は沈むようだ……、寒くもなってきたしな。

 秋の日はつるべ落とし。その後に来るのは冬。

 ……、正直、俺の心の季節は、冬に似ている。

 だけれど、いづれは春も来るよな。

 秋の日はつるべ落とし、どんと来い、冬!

 終