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ロックされています  削除  名前: 夕焼け  日時: 2012/07/21 16:20 修正3回   
      
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ロックされています   第1話 野球愛好会、始動!!  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/07/24 10:16 修正1回 No. 3    
       
入学式
東京のはずれのほうにあるこの恋恋高校に、俺は入学した。

なぜなら、一から野球部を作って、自分のチームで甲子園に出場するのが、俺の夢だからだ。


「川上君!こっちでやんす!」

「川上!こっちだ!」


そして、そんな俺のわがままな願望についてきてくれる2人の仲間。
猛田慶次と矢部明雄だ。
どちらも野球経験者。

矢部のほうは、同じ中学で野球をやっていたので、仲がいい。

猛田はというと、シニアで試合したところを声をかけたことがあるから、顔見知り程度だったがご丁寧なことに、向こうから俺と野球をやりたいと言ってきてくれた。


猛田「さて、初日が終わったんだし、明日からどうするかを決めないとな。」

矢部「そうでやんすね・・・部員を集めたり、いろいろと大変でやんす。」

川上「もちろん、部員にもあてがある。
幸運なことに、野球経験者は多いみたいだぜ。
ただ、ここにいるのは、なんかしらの理由で、野球部がないここを選んだ。
だから、力押しじゃだめだ。」

矢部「話し合い、でやんすね。」

猛田「もちろんだ。力ずくでやると、入るものも入らなくなるからな。」

川上「そういうこと。
後、生徒会のほうに、野球部を申請してみた。
人数が9人いたら、認めてくれるってよ。
それじゃ、明日の昼休みから、活動開始な。」

矢部・猛田「おう(でやんす)!!」


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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/07/24 22:56  No. 4    
       
次の日の昼休み、早速、俺は部員を集めるために席を立った。

喉が渇いたな・・・
購買の近くの自動販売機で飲み物を買ってからにするか。

自販機に行くため、中庭を抜けようとしたそのとき・・・

「すいませーん! そこにあるボールとってくださーい!」

ボール?
ああ、これか。

・・・待てよ、これって硬式野球のボールじゃねぇか!
よし、勧誘開始だ。

「・・・ちょっといいか?」

「ボクに何か用かな?」

「君って野球やってるんだよね?よかったら、野球部に入ってくれるかな?」

「え、女子でも問題ないの?」

「あれ?知らないのか?」

「何が?」

「5年前、女性の選手が甲子園に出て話題になっただろ?(まあ、それ俺の姉貴なんだけどな)
その時は、例外で女性の参加が認められたんだ。」

「例外でしょ?じゃあ無理なんじゃ・・・」

「考えがある。まあ、入部してくれたら話すけど。」

「・・・わかった!ボクも入れさせてもらうよ。」

「お!ありがとう。
俺は川上栄治って言うんだ。君は?」

「ボクは早川あおい。ヨロシクね、川上君!」

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ロックされています   第3話 さすが矢部君。  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/08/03 12:49 修正2回 No. 5    
       
放課後、俺は部室に来ていた。
あ、部室は理事長が前もって用意しておいてくれたらしい。
男女共学に備えて・・・ということだそうだ。


「しかし、猛田君、結構設備はそろっているでやんすね。」

「ロッカーが20台、小さい冷蔵庫が1台にラジオに長ベンチ・・・野球やるには申し分ない環境がそろっているな。」


確かに、部室の設備は整っているが・・・


「部員あっての部室だろ。部員を集めないといけないんだが・・・む。」

「おい、矢部に何してんだ?」

「ん、んやん・・・」

「やんで止めるな、読者に『おい、何この主人公オタクメガネにわいせつな行為をしているのかと思われるじゃねぇか。』」

「やめろ、この小説、18歳以下の人が読めなくなるぞ!」


「部員とマネージャーを連れてきたよー!
・・・あれ?矢部君は何で両方の手足と口をガムテープでつながれているの!?」

「ああ、気にしなくていいよ。それより、部員を紹介してほしいな。猛田は早川のことを知らないし。」

「ああ、聞いてないな。
…矢部が暴れてるんだが。」

「う、うん。じゃあ、こっちの背が低い人が与田直人(よだ なおと)君。」

「・・・背が低い言うな。
ポジションはショートだけど、キャッチャー以外どこでもできるから、ポジションはそちらに任せる。
守備には自信はある。
・・・だけど、打撃、下手、壊滅的。
中学の時は、早川と同じシニアのチームでプレイしてた。
あと、小さいとか、そこら辺は、禁句だから。」

「じゃあ、次は藤井優希(ふじい ゆうき)くん。」

「藤井です。
直人とあおいちゃんとは同じチームでプレイしていました。
ポジションはキャッチャー。
なるべく、コンバートはしないでもらいたいかな・・・と思います。」

「藤井君、敬語しか使わないから、そこらへんはよろしくね。最後はマネージャーの・・・」

「七瀬はるかです。マネージャーをやらせてもらいます。
よろしくお願いします。あと・・・あおいに手を出す奴は許しませんので・・・
あ、でも、ここにはそんな方はいないようですね。」

川上「あ、いや、一人・・・いるかな?」


「むぐ、ぐぐ・・・や、んす・・・・・」


一同「・・・・・」





現在の会員(6名)
川上、矢部、猛田、早川、与田、藤井

マネージャー(1名)
七瀬


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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/08/05 06:07  No. 6    
       
翌朝・・・

ふう、ちょっと早く学校についちゃったな。
ん?誰か俺の教室に男子が突っ立ってるな。
このクラスに男子は俺しかいないはずだぞ?

「ガラッ」

「・・・川上君か、おはよう。」

「・・・なんだ、与田か。
人の教室で何やってるんだ?」

「・・・ちょっと、君に残念なお知らせが三つ。
・・・聞いてほしい。」

「・・・まあ、いいけど。」

「そう。じゃあ・・・」

与田はそこで言葉を切った。
何か嫌なことでもあったのか?

「・・・野球部の事」

「・・・野球部?」

思わず口に出してしまった。
あまりにも意外・・・
いや、こいつと俺の接点はそれしかないもんな。
妥当か。

「・・・うん。
・・・さっきまで、クラスの座席表を見ていた。
そしたら、あることが分かった。」

「何だ?」

「・・・残念ながら、この学校には、男子が6人しかいないみたい。
・・・それが一つ目。」

「そうか、あと二つは?」

「・・・残りはまた後で話す。
君は女子の入部希望者を探せばいい・・・なんて言いそうだけど。」

「・・・わかってる。
最悪、今年は大会に出れないことも視野に入れてるからな。」

「・・・それができそうにもないのがふたつ目の残念なこと。」

「・・・は?」

「・・・野球部をつぶそうとしている奴がいる。」
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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/08/05 06:29  No. 7    
       
「へえ、それは危険だな。
で、それはどこの暴走族だ?」

「・・・理事長の娘。」

「は?」

「再来年・・・つまり、ぼくたちが三年になる頃の、生徒会長。
・・・これ、決定してる。」

「・・・まじかよ。」

「実は、昨日帰ろうとした時、その人・・・
倉橋彩乃(くらはしあやの)さんが僕に話しかけてきた。」

「理由は?
理由もなく部活を潰すだなんておかしいだろ。」

「・・・ソフト部。
この学校には、全国大会出場が常連の、ソフトボール部がある。
野球部がもしできたら、ソフト部のグラウンドを使って練習するのが現実的。」

「そうだろうな。他の球場を貸し切るなんて、金がかかるからな。」

「・・・そういう事。
そうなると、ソフト部の練習時間、短くなる。
迷惑。」

「※メ○ャーみたいに、屋上に土持ってきて、グラウンド作るってのは・・・」

「・・・非現実的。」

「冗談だよ。
それで、3つ目は?」

「早川あおいさんが、退部する可能性がある。」





※有名な某野球漫画の事です。
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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/08/06 13:36  No. 8    
       
「待て待て、本人が辞めたいとか言ってたのをお前が聞いてたのか?」

「・・・ちがう。
これは、どうにもならない。
僕たちが口出ししてはいけない・・・」

「は?」

「昼休み、昇降口で待ってる。」

与田は、小さい声でそういった。

口出ししてはいけない・・・
その単語が俺の脳裏からひっついて離れなかった。
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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/08/10 12:15 修正1回 No. 9    
       
時は過ぎ、昼休み。
授業中にも、与田の言うことが気になりろくに授業を受けることができなかった。

「待たせたな、与田。」

「・・・いや、ちょうどいい。」

「なあ、いい加減に教えてくれよ。
口出ししてはいけないって何のことだ?」

「・・・早川さん、高木幸子(たかぎさちこ)っていう人と、高校でソフトボールをやる約束、してた。」

「でも、藤井と与田でこの学校にいるってのは、すごい偶然だ。
なんか事情があるんじゃねぇのか?」

「・・・事情、ある。
高木さんが早川さんに話す前、僕たちは、早川さんと野球をするために、恋恋に来るようにさそった。
早川さん、快く、OKした。
・・・それが中3の時。
僕は次に高木さんのところに、向かった。
高木さんも、チームメイトだった。
ところが、そのあと高木さん、早川さんを誘った。
早川さん、断った。
それはそう。僕たちのほうが先に早川さんを誘っていたし、※当時には、女性選手は参加していいって決まり、あった。
だけど、それに対し、高木さん、こう言った。」

「・・・中学でさえ、差別があったんだ、高校に行ったところで、世間の反応は変わるはずはない、いい加減に目を覚ましたらどうだ・・・だったかしら?」

「・・・高木さんか。」

「へぇ、あんたが高木幸子か。」

「そうよ、与田がさっきあまりにもムカつく言葉を言ってるようだから、途中で口出したわけよ。
・・・あんたは、本当に何もわかっていない。」



※2012年現在、そんなきまりはありませんが、>>4のとうり、この小説では、主人公の姉が女性選手出場の権利を勝ち取って、甲子園に出場したという設定です。
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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/08/24 14:01  No. 10    
       
「あの子がまだあんなこと言ってるから、明日私と勝負してあの子が負けたら野球をやめてもらうわ。

とにかく、あおいに変なこと吹きこまないでね、あたしの言いたいことはそれだけだから。
それじゃ、サヨナラ。
あんたたちの顔はもう二度と見たくないわね。」

うっせーな。
あんたに言われなくてもこっちだってあんたの顔なんて見たくねーよ。

「・・・ということだから。
個人の勝負に僕たちが口出しすると、倉橋さんに直訴すると思う。
そうなると・・・」

「なるほど、一貫の終わりってことか。」

「・・・そういうこと。それじゃ、僕は教室にもどる。」

「おう、またな。」

さて、と。
早川が退部する可能性も考えとく必要があるな・・・。
となると、一刻も速く、残り一人となった、男子生徒を入部させる必要があるな。
一年のクラスが六クラス、俺は一組で矢部が二組、与田が三組で猛田が五組と藤井が六組か。
…となると、男子がいるのは・・・。

四組だ。

昼休みはまだあるし、四組に行ってみるか。


〜四組〜

「失礼しま・・・あれ?」

「あれ?頑張中(がんばりちゅうがっこうの略)にいた川上じゃん。」

「パワフルシニアの明智じゃん。」


なんとこの二人、知り合いだった。
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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/08/28 14:24  No. 11    
       
「あれ?何でお前こんなとこにいるんだよ
お前なら結構頭もいいし、野球も投手ができないとはいえ、激闘第一とかパワフルくらいは行けたんじゃ・・・」

「まあ、ここしかいけるとこがなかったんだよ、諸事情で。」

「諸事情ねぇ。」



・・・なんだよ、諸事情は諸事情なんだよ。



「ところでお前、暇じゃないとは思うが、野球部に入ってくれないか?」

「ああ、いいぜ。
ただし、条件がある。」

「ああ、そんくらいはいいよ。」

「じゃあ言うけど、練習には週1くらいしか出れない・・・
って大丈夫なの?致命的だと思うんだけど。」

「まあ、しょうがない。
やる気はあるんだろ?」

「おう、そりゃ勿論。
農家って大変だよな・・・」

「農家じゃない俺に意見を求めるなよ。」

「何とかなるだろ。」

「ならねぇよ。
ってかお前の家って農家だったんだな。」

「まあな。
親父が寝込んでるし、俺が頑張らなきゃいけないんだけどな。」

「そうか、頑張れよ。
じゃあ、放課後な。」

「おう、またな。」


現在の会員(7名)
川上、矢部、猛田、早川、与田、藤井、明智

マネージャー(1名)
七瀬
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ロックされています   パワポケ要素入ります。 嫌な方は見なくてもOKです。  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/08/31 01:22 修正2回 No. 12    
       
放課後、川上栄治は部活に行かずに、とあるマンションの一室の前に来ていた。

外は雨が降っている。
特別強いわけではないが、だからといって、弱いわけでもない。

「ったく・・・
よしずm(ryの野郎、今日は降水確率低いって言ってたじゃねーか・・・」

某天気予報士の愚痴を言いながら、目の前のインターホンを押す。

「はい、どなたでしょうか?」

少女の声が聞こえてきた。
それに対し、川上は、

「俺です、川上です。」

と答えた。
しばらくして、ドアが開いた。
チェーンが付いていて、2重ロックになっていたのだが、それが解けるのに、時間はかからなかった。

「うわぁ、濡れてるねー。
水もしたたるナイスガイってやつじゃない?」

「いい男を勝手に英訳するのはやめてください、武美さん。
ところで、友子さんは?」

武美「外出中。
入れば?シャワーくらいなら貸すよ?」

「遠慮しときます。野球の練習に戻らなきゃいけないですし。」

?「へぇ〜
まだ野球やってたんですねぇ。」

「なんだよ、宇川。
お前もなんだかんだ言って、長瀬と野球やってるんだろ?
後、俺の前ではその気持ち悪い言葉づかいはやめろ。」

前嶋「宇川じゃねぇ、前嶋だ。
改名したのくらい、覚えとけよ。」

「まあ、正体隠さないといけないってのはわかってるけどさぁ、そこまでしなくても・・・」

武美「駄目ね。すぐに大神のやつらにやられるわよ。」

「ふーん。
まあ、頑張ってください。
俺ができることはスパイくらいしかないんで・・・
それじゃ、失礼します。
あ、あと傘借りてきますね。この黒いの。」

前嶋「俺のだし・・・」

武美「つべこべ言わない!
とにかく、あんたはとりあえずあの子の父親の死因を解析しなさい!」

前嶋「はいはい。(でもあれはやっぱり事故としか言いようが・・・)」
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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/08/31 14:59 修正1回 No. 13    
       
「遅い!!」

帰校早々、俺に早川はそう言ってきた。
厳しいだろ・・・

「まったく・・・
新入部員が二人いるのに、何をやってるんだか。」

ん?二人?

「おい、一人は知ってるけど、もう一人って・・・」

誰だよ、と言いかけたその瞬間。

「あの、私です。」

ん、女の子か・・・
ったく、矢部のカウセリングが一層と厳しくなるな、こりゃ。

「えーっと、入部ありがとう。
俺は川上栄治って言って、ファーストやってるんだ。君は?」

「松田怜奈(まつだれいな)です。ポジションは、セカンドですが、一応、外野もできると思います・・・たぶん。」

なんかやけに元気がないな。
そういう性格なのかもしれないし、口出さないでおこう。

「そうか。
セカンド空いてるから、セカンドでいいよ。」

「あ、どうもえす。
そ、それでは・・・」

噛んだな、うん。

「あと、今あそこで守備練習している女たらしは・・・」

「明智光信(あけちみつのぶ)だろ?
一応、パワフルシニアで4番打ってたくらいだし、実力はあるんだけどな。
サードの守備もまずまずだけど・・・」

あいつ、結構ナンパするんだよな。
女の敵って奴だ。
早川が女たらしって言ってたくらいだし、早速被害者でたな、こりゃ。

「とにかく、遅刻したせいで、怜奈ちゃんに川上君の事を紹介できなかったんだから、遅刻はしないように。」

「悪かった。」

素直に謝る。
ここは早川の逆鱗に触れるわけにはいかない。

あ、そうだ。

「早川、グラウンドの件なんだけど、許可もらえた?」

休み時間、早川に話しておいた。
早くみんなの実力もみたいしな。

「あ、ごめん・・・
はるかと二人で行ったんだけど、駄目だった。
倉橋さんだっけ?
あの人が、はるかのテストの点数に、因縁つけて・・・」

「テスト?」

「うん、あの人、はるかに数学とテストで負けて2位になって、それに因縁つけてた。
まあ、正当な理由もあったけどね。
ソフト部がグラウンド使ってるからとか。」

「じゃあ、理事長に直接話しつけてくる。
1時間程度で戻ってくるから。それじゃ。」

「あ、ちょっ・・・
まったく、自分勝手なんだから!」

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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/09/01 03:47  No. 14    
       
「失礼します。
普通科1年1組の川上です。
理事長に用があってきました。」

「ほう・・・なんだね。」

「野球部の件なのですが・・・」

「ふむ、ソフト部がグラウンドを使ってしまってグラウンドが使えない。
だったかな?
昼休み、確か猛田君って子が来ていたよ。
同じ用件なんだろう?」

「そうですね。」

「ふむ。愛好会と聞いていたからね。
30分くらいグラウンドを使えば十分かと思っていたんだがね、まさか、部を作ろうとしていたと話思わなかった。
すまんかった。
しかし、もうこれ以上、ソフト部の練習時間を割くようなことはできない。」

ま、ここまでは予想の範囲内だ。
だが、もうしっかりそこらへんの対策は練ってある。

「確か、この高校の近くにレンタル球場がありましたね、格安の。
あそこを貸し切らせていただければと。」

「無茶なことを言うのう。いくら格安だからといって、一年で300万はかかるな。
あそこの球場は。
朝練と休日練習を含めれば、最低でも500万、最高で1000万はかかるな。
いくら資金面で余裕があるからといっても、それだけの出費は避けなければならないが・・・」

「…絶対に甲子園に行きます。」

「ほう」

「絶対に甲子園に行きます、いけなくてもプロで稼いで返します。」

「ほう、プロ・・・か。
はっはっは!!
こりゃぁ一本取られたわい。
いいだろう、その心意気、買ってやるよ。
確か桜木球場とか言ったかな、あそこは。
あそこに連絡を付けてやる。
ただし・・・だ。
条件がある。
2年目の夏の大会までにベスト4に入れなかったら、そこであきらめてもらう。
いいな!」

「もちろんです。あの」

「なんだね?」

「本当に、ありがとうございました。
理事長の期待にこたえられるように、頑張ります。
失礼します。」

「うむ」


俺は理事長室を後にし、グラウンドに戻った。
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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/09/01 05:17 修正1回 No. 15    
       
空は、相変わらずの曇り空で、晴れる気配はなさそうだ。
そんな夕暮れ時、倉橋理事長は影山スカウトを呼び出した。

「いやあ、急に読んでしまってすまないね、影山君。」

「いえ、倉橋さんの頼みなら・・・
それで、ご用件は」

「ああ、ちょっと聞きたいことがあってね・・・」

倉橋理事長は、一枚の写真と、その写真にうつっている人物ーー

川上栄治のプロフィールを差し出した。


「この子は川上栄治君といってね、この子がさっきここに来て、無謀を承知で、甲子園に行くとか言ってたんですけどね、
そんな大口たたいてまで野球部を設立させて、練習場所を確保しようとした子なんですよ。まぁ、たしかに甲子園に行ければ宣伝にもなる。
だが、仮に行けなくても、プロに行って使わせた費用分返してやる、と言われてね。」

「ほう、もしかして私を呼んだのはそのことですか。」

「ええ、個の川上栄治君ーー
スカウト陣では名は知られているんですか?」

「ええ、猪狩守という選手を知っていますかね?」

「名前は聞いたことがありますな。
確か地区予選で完全試合を一つ、ノーヒットノーランが4つ達成した怪物ーーと聞いてますが。」

「ええ、その猪狩君から、4打数4安打1本塁打打ったのが、川上君です。」

むむっと理事長は唸った。

「彼の父親は、プロ野球選手だった川上幸文(かわかみゆきふみ)です。
・・・一昨年に交通事故で亡くなりましたが。

「おお、あの剛速球投手ですか。」

「ええ、確かにあの子は彼のDNAを引き継いでいると思いますよ。」

「ふむ。もう一つ聞きたい。
その黄金世代ってのは、すごいのですか?」

「ええ、さっき話した猪狩君を始め、大阪の名門、海東学院に入学した、成宮修斗(なるみやしゅうと)、井沢剛(いざわごう)バッテリー、星英高校に入学した、牧野慎一(まきのしんいち)くんに、世代最強打者と謳われている、山森慶三(やまもりけいぞう)くん、ここら辺では、あかつき大付属の猪狩君や、パワフル高の東條小次郎(とうじょうこじろう)君、世代最強のパワーヒッターの大城裕之(おおしろひろゆき)君は、確か聖タチバナ学園でしたかな。」

「ほう、楽しみですな。」

「ええ、楽しみです。」
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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっ  日時: 2012/09/02 06:17 修正2回 No. 16    
       
「おーい、練習場所確保できたぞー
桜木球場ってところだ。」

ーーとまぁ、軽いノリで入ってきたら・・・

「そこに血だるまで転がってる肉片は、明智と矢部だな。
誰だよ、ここまで悲惨な状態にしたのは。」

「おもに早川だな。」

「・・・ったく、明日からまともな練習ができるってのに、二人離脱かよ。」

「あ、大丈夫だよ。
10分もすれば完治するように加減しておいたから♪」

「いや、そうゆう問題じゃないと思うんだけど。
とりあえず、今年は大会に出れない分、しっかりノックでチームの守備力を向上させるからな。」

「ん?ちょっとまて、じゃあ今年は大会に出れないのかよ?」

「ああ、うちの初戦は2年目の夏の大会。
そこでベスト4に何としてでも食いこむ。
これができなければ、ゲームオーバーってやつだ。」

「「え!?」」

「これは曲げることができない。
理事長との約束だ。
んじゃあ、明日は放課後、学校指定のジャージ着て、正門集合な。
そこから、球場までランニングだ。」

「あ、質問でやんす。
顧問ーー監督の先生は決まったでやんすか?」


復活早っ。


「ああ、決まったぞ。
保険医の加藤先生・・・
矢部、騒ぐなよ?」

「う、わわわぁぁ、かかってるでやーんんすよ?」


わかってねぇな、うん。


「保険医の加藤先生か!
よっしゃ、明智光信15歳内野手にもついに春が・・・」


ゴンッッッ!!


「来ないからね♪」



早川怖ぇ・・・
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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/09/02 06:23  No. 17    
       
翌日、放課後。
川上たち野球部メンバーは、正門に集まっていた。

「よし!全員揃ってーーねぇな、うん。」

「・・・川上君。」

「なんだ、与田。」

「・・・早川さんと藤井君はいないから。
早川さんは何でいないか、知っていると思う。
藤井君は、週番だって。」

「そっか。じゃあ、のちほど合流ってことで。
行くぞ。」


「「「はいっっっ!!」」」


・・・藤井が週番?
なんかいやな予感がする。
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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/09/17 18:21 修正1回 No. 18    
       
放課後、約束の時間。
ボクは幸子との約束の場所に来ていた。
中庭。
川上君がボクを野球に誘ってくれた始まりの場所。
でも幸子は、ボクを野球部に入れないために、三打席勝負をしろと言ってきた。
ここを、終わりの場所にはしない。
そう思った刹那。



ーーー高木幸子がやってきた。



「ボク、野球が大好きなんだ。幸子」

「知ってるよ。
だけど・・女性は野球部の練習には入れない。入れたとしても、高校野球の試合には出る事はでき
ない。」

幸子の言っていることはわかる。
確かに、ソフトボールをやったほうが利口ってのはわかる。

でも・・・。

「ボクは野球が好きなんだ。
好きな野球をやりたいんだ。
そんな野球を、幸子に言われただけじゃ、あきらめない!
勝負しよう、幸子。」

「上等、それじゃ、始めるよ。」


前もってライン引きで打席とマウンドを作ってくれたみたいだけど、中庭にあるため、当然盛ってない。
ピッチャー不利だけど・・・やるしかない。

ノーワインドアップモーションから投げようと思ったその刹那。



「タイム!!」



「藤井君!どうしてここに!?」

「詳しい話は後。
とりあえず・・・」

チラ、と幸子のほうを見た後、藤井君はこう言った。

「とりあえず、高木さんを倒さなきゃいけないんでしょ?
助太刀するよ。」

「ちょっと待ちな!
助太刀ってどういうことだい!」

「僕はキャッチャーだからね、リードとキャッチングをさせてもらうよ、文句はないね?」

そう言って藤井君は、持ってきていたエナメルバッグを地面に置いた。
そしてバッグの口を開き、中からスパイクシューズとキャッチャーミット、そして防具を取り出す。
そしてそれらを手早く着用すると、藤井君はボクのほうに来た。
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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/09/18 19:12 修正2回 No. 19    
       
>>18
修正完了しました。
おさわがせしました。
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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/09/30 11:39 修正1回 No. 20    
       
ーーあのときは負ける気がしなかった。

1番センター本田京一
2番サード上田進次
3番セカンド蛇島桐人
4番ピッチャー友沢亮
5番レフト猛田慶次
6番ファースト川上栄治
7番ライト井口健一
8番キャッチャー山梨修二
9番ショート秋山隼人

このオーダーは、俺がまだ帝王シニアで野球をしていた時のオーダー。

――相手チームはこのオーダーを見るだけで、身の毛がよだつみたいなことを言っていたらしい。

――その時の光景が、たしかに桜木球場にあった。


川上は思う。



「この面子ならマジで甲子園に行けるかもしれない。」











「っしゃぁぁぁ!!」

また、猛田だ。
いつもはクールで、俺に似た性格だと思っていたが、野球となると、スイッチが入る。

30分間のノックを終え、現在恋恋野球部のメンバーは、レンタル球場の桜木球場でフリーバッティングを行っていた。
初日なので、軽く流しながらも、みんなの実力を見ておく必要が川上栄治にはある。

なぜなら・・・



今から約40分ほど前。

「そういえば、このチームのキャプテンは誰かしら?」

恋恋高校顧問兼監督の加藤美香は問う。

それはそうだ。
野球に限らず、部活動に行うにあたり、中心人物の存在は不可欠だ。

結局、野球部(まだ愛好会だが)を創部した川上が話の流れでキャプテンになってしまった。

そして今、フリーバッティングで快音を飛ばし続けていた、猛田慶次が川上に歩み寄る。

「どうだぁ!俺のバッティングは!!」

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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/10/02 16:48  No. 21    
       
いいと思うよ――

俺は、そう返した。
たしかに、猛田の活躍は派手だった。
バッティングピッチャーの明智から10打数10安打。
しかもすべてが長打。
しかし、数字だけ見れば素晴らしいのだが何より明智は投手の経験がない。


そんな奴から打てるのは当たり前――


そう言いかけて俺は言葉を飲み込んだ。
こういうタイプは調子に乗らせておいたほうがいいと思った。



確かに猛田の出来もすごかったのだが、ほかの面子も負けてはいなかった。

まずは矢部。
約1年の間だけ同じ中学で軟式野球をやっていたが、その時よりも成長していた。
おそらく、引退してからも自主トレを積んでいたのだろう。
少なくとも、衰えは見えなかった。

ただし、矢部に関しては不安要素がある。


矢部の得意技『ボルチモアチョップ』ができなくなることだ。


ボルチモア・チョップとは、球がグラウンドに打ち付けられて高くバウンドする内野安打のことである。

ただし、これは軟式野球だからこそできるプレーであって、硬式野球では、偶然でまれに起きる程度であるため、戦術としては使えない。

つまり、矢部には硬式野球に慣れてもらうことが目標だ。

ボルチモアチョップのように、軟式ではできても、公式ではできないプレーは多々ある。

守備面に関しても、硬式ボールの打球速度に慣れてもらう必要がある。

これは矢部だけでなく、硬式未経験者全員に言えることだ。
といっても、この部には運のいいことに、硬式未経験者は矢部と松田しかいない。

特に矢部にはセンターをやってもらうつもりだから、そこら辺はしっかりマスターしてほしいとおもう。

乗り越えなければいけない壁はまだまだある。

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ロックされています   Re: 竜巻投法  名前:夕焼けごっこ  日時: 2012/10/13 04:41  No. 22    
       
突然、藤井君が来るものだから藤井君の言っていることは全然頭に入ってこなかった。
ただ、一つだけ頭に入ってきた言葉があった。



高木さんには勝てるよ。大丈夫、僕に任せて――



まったく、藤井君はこういうところは子供のころから変わっていない。
何というか、心の底には実に熱いものを秘めている感じがしてならない。
どうしてこれほど、スイッチが変わるのだろう。
藤井君の心の底は本当に分からない。
川上君も、勧誘した時と部活の時なんかは全然人格違う感じがするし、逆にその二人に限らず、裏が本当の表というのが人間なのだろう。


ただ、これだけはわかる。
藤井君にしろ、川上君にしろ――



ボクの事を大切に思ってくれている。



「来な!! あおい!!」



幸子の声で我に返る。
何考えていたんだろう、今は目の前にいる相手に集中しなければいけない。



がんばらないと!!







よかった、目に覇気が戻ってきた。
ただ、こんなことで安どしている場合ではないと僕は思う。

目の前にいるバッター、高木幸子。
彼女を抑えなければいけない。

初球はあおいちゃんの球の調子がいいのか悪いかを見定めたい。
こんなときに必要なボールは、ストライクにする必要はない――

そう思いながら、サインをパパッと出し、ミットを内角高めに構えた。

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