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ロックされています  プロを目指せ  名前: 疾風騎士  日時: 2012/10/27 23:27 修正9回   
      
このHN、そして小説サイト…ずいぶん久々な気がする。正直半年以上のブランクは痛い、この小説はかつて、他のサイトで書いていたが閉鎖により保存していなかったため、残念ながらほぼ全ての話を消滅させてしまった…。
ならばここで書き直すまで…
※このスレでは私以外の書き込みを禁じます。

第1章〜氷水高校へ〜 >>1-30
第2章〜夏の大会編1年〜 >>31-65
第3章〜荻野中学編〜 >>66-82
第4章〜主戦力の穴と新戦力編〜 >>83-100
第5章〜2年生編〜 >>101-
記事修正  スレッド再開
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/08/28 00:11  No. 39    
       
第39話〜脅威の足〜

高橋は橘を出迎える
「カズ、いい守備だったよ…1回表全部君の守備機会だったね」
高橋は橘のことを相変わらず評価しまくりである。

橘は笑みを浮かべながら
「正直緊張しっぱなしですよ…やばいです、それに2番打者ですし…」
橘は帽子を取り、ヘルメットを被りネクストバッターズサークルへと向かう

「1回の裏、氷水高校の攻撃、1番レフト斎藤君」
斎藤が打席に入り、相手の投手高橋を迎え撃つ

絶対に何人かはいるのだが、斎藤もそのうちの1人なのかイチローの打席に入った時の真似をする。

高橋は初球タイミングをズラす目的で大きなカーブを投げ込む。
斎藤は外れると思い目線を切るがギリギリ入っていて、ストライクを先に取られる。

「う…ボールだと思ったのに」
斎藤は見逃したことを悔しがる。

2球目も同じカーブを投げ込み、今度は手を出して打ち上げてしまう。結局セカンドフライに倒れ、まず1アウトをとられてしまう。

「2番セカンド橘君」

橘は打席に入り、一礼する。

橘の耳にはブラスバンド部の演奏が聞こえてくる。

『す、凄い…ブラスバンド部の応援が…やばいまた緊張してきた…』
橘はようやく落ち着いてきた緊張がまたぶり返してきた。

「ットライーク!」

橘は初球をあっさりと見逃してしまう。

橘は2球目のストレートを打ちにいくがタイミングが全く合わずに空を切る。

子安は思わず笑いを堪えてしまう
『こいつ…全然タイミングあってねぇな、よくレギュラーに選ばれたもんだな』

橘は大きく外れた3球目を見逃し、4球目は打ちにいくも弱々しい打球が一塁側ファールゾーンへと転がる。
高橋が橘に対し5球目を放る。
橘は避けようとするが、腰にわずかに当たってしまう。

橘は一瞬痛がるがすぐに一塁へと向かう。

「3番ピッチャー白瀬君」
白瀬は打席に入り、バットを高々と構える

「打て!淳!」
高橋はベンチから白瀬に応援を送る。

白瀬は3番を任されているだけあって打撃も得意な方だ。

高橋は白瀬に1球目を放るが白瀬は豪快に引っ張り打球は三塁線を破り、レフトフェンスに直撃する痛烈な打球を放つ。

橘は打球を見ながら1塁、2塁、3塁へと駆け抜ける。橘が3塁をけった時にようやくショートの竹中にレフトの吉田から返球が行くも、竹中が本塁送球するときにはすでに橘はホームを駆け抜けていた。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/08/28 02:10  No. 40    
       
第40話〜唖然〜

橘はホームベースを駆け抜けると満面の笑みでベンチに戻る。

「よし!先取点!」
池田はベンチでガッツポーズをする。

高橋は橘を頭をポンと軽く叩き
「カズ!ナイスラン!この先取点はとにかく大きいよ!それに相手に与えたダメージを大きいだろうね…多分、君の足に驚いてると思うよ」
高橋はまるで自分のことのように喜ぶ

一瞬の出来事だった…
白瀬が高橋の初球を打ち返し、橘が1塁からスタートすると…気がついたら橘はホームベースを簡単に駆け抜けていた。

この光景に観客全員…いや座間工業高校野球部、一部の氷水野球部員の唖然とさせた。

高橋は呆然としながらマウンドに立ち尽くす。
「ばかな…あそこまで速い選手見たことないぞ。吉田だってそこまで守備悪くないのに…嘘だろ…」
流石に動揺を隠せないようだ。

「あんなメチャクチャな1年いるかよ…ありえねぇ…」
飯田は軽く舌打ちをする。

子安はマスクを右手に持ちながら
「…電光石火の失点、あの足…次からマークせざるを得ないな…」
子安はそう言うとマスクを被り次の打者が入ってくるのを待つ

「4番キャッチャー影浦君」

大柄な体型の影浦が打席に入る。

高橋子安のバッテリーも影浦には要警戒して攻めてくるはずだろう。

影浦は外角低めが苦手な傾向があるというデータが頭にある子安はそこを中心に攻めてくるだろう。

高橋は影浦に対して第1球目を放るが、要求より高めにスッと入る。影浦は失投を逃さずに捉える。

───キィィィィン!

───いい音の金属音を奏でながら大きな放物線を描く。

───まるで、どこまでも描き続けそうな美しい放物線、その放物線はレフトスタンドの奥にあるネットに突き刺さる特大2ランとなる。

高橋はマウンドで天を仰ぐ。
高橋も油断したわけではないだろう、油断したくても己の実力を考えれば油断できない打者。

しかし、橘を追い込みながら死球を与え、次の白瀬に初球を痛打され、橘は俊足を飛ばし、一気にホームに生還される。ここでガクッと来たのだろう
そして、気落ちする間も無く影浦に初球を豪快にレフトスタンドへ運ばれる痛恨の被弾。たった2球で3失点してしまったという後悔と絶望が高橋の中には残ってしまった。

これで気落ちしたのか座間工業は氷水に打ち込まれ、結局氷水に7−0とコールド負けを喫してしまう。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/08/28 10:42  No. 41    
       
第41話〜初戦突破〜

試合後のロッカールームはやはり汗臭い、それは運動してたっぷりと汗をかいたあとだから仕方ないとはいえば仕方ないのだが…

橘は着替えようとしていると白瀬が橘の元に駆け寄る。
「…いい守備だったな今日は…何度もお前に助けられた、助かったぞ、次の試合もよろしく頼む」
白瀬はそう言い終わると橘とグータッチをする。

橘は照れくさそうにしながら
「『実は記録にはなってないけど一つミスあるんですよね…』はい、頑張ります。白瀬さんも頑張ってくださいよ?」
橘はやや笑みを浮かべる。

影浦は橘の後ろに回りこんで橘に軽くチョークをかける
「お前、先輩に生意気な口調で話すなよ〜まだお前1年じゃねぇかよ!まさか調子乗ってるのか〜?」
影浦はニヤニヤしながら言う

「べ、別にそんなんじゃないです!調子乗ってませんよ…っていうかやめてくださいよ」
橘はやや嫌がり影浦から逃れようとする。

高橋は制服に着替え終わり
「やめておきなよ、勝一。…ホモくさいから」
高橋はやや毒をつく

高橋の一言で影浦は苦笑いするがロッカールームは笑いに包まれる。

橘は影浦から解放されるとさっさと制服へと着替える。

そして、結局一番最後に着替え終わって球場出たのは影浦である。

球場からの帰り道、灼熱の太陽が照りつける中帰らなければいけないのはやはり大変である。

白瀬は帰り道を歩きながらふと思いつく
「『唯一の1年生レギュラーで緊張しっぱなしだと思ったが…以外と溶け込んでるな橘も…』橘、この後暇あるか?」
白瀬は橘に問いかける

橘はキョトンとする
「え、いや別にありますけど、どうかしたんですか?」
橘は白瀬の唐突な誘いに驚いたままだ。

「いや、この後飯でも行かないか?って思ってな飯まだだろ。ここらへんにいい店あるの知ってるんだ」
白瀬は珍しく橘を飯に誘う。

「あ、はい。そうですね。行きましょう!」
橘は嬉しそうな顔をしながら白瀬についていく。

「珍しいな淳が後輩誘うって」
高橋は駅の方向から離れていく2人を見ながら、ふと呟く。

「ああ、確かにあいつが後輩を誘うのは見たことないな…たまに俺とお前、淳で飯に行くぐらいだしな」
影浦も高橋に同意しながら言う。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/01 15:17  No. 42    
       
第42話〜2回戦対杉田高校戦〜

氷水の2回戦の相手は氷水が第2試合の杉田高校と決まり、杉田高校との試合当日を迎える。

この日はまだ7月だと言うのに地獄のように暑い…こんな時は試合などせず冷房の効いた涼しい場所でゆっくりしていたいものだ。というレベルの暑さである。

しかし、それでも高校球児たちは炎天下の中甲子園を目指し試合を繰り広げている。

「座間工業との試合みてわかったと思うが、氷水のあの1年は要警戒だぞ、悔しいが武の肩じゃあ…おそらく橘を刺すのは難しいだろう…だから絶対に橘を塁に出すな!頼むぞ、アンディ!」
杉田高校の監督橘高はアンディに檄を飛ばす

アンディは無言で頷く。

アンディは杉田高校の交換留学生として杉田高校に滞在している。日本語はある程度喋れるが素行が悪く教員からはあまり好かれてはいないがスポーツに関することにはまじめに取り組むので体育会系の教員、生徒からは非常に好かれている。

しかし、学業の成績が乏しく、一学期終了と同時にアメリカに帰国する予定であったが、橘高の頼みにより夏の大会終了まで日本に滞在できるようになった。

アンディは1回戦は先発で9回を僅か2安打で投げきり初戦を突破している。

「杉田高校か〜あの学校運動部自体は目立った実績ないけど交換留学生制度があるから毎年運動部に外人がいるんだよね…だから油断はできないのが厄介だな…」
高橋は準備運動しながらぽつりと言う

氷水のアップが終わると大橋は今日の試合のオーダーを発表する。

「今日の杉田高校の試合は前の試合とはちょっとオーダーを入れ替えました。
1番セカンド橘、2番サード高橋、3番ピッチャー白瀬、4番キャッチャー影浦、5番レフト斎藤、6番センター岡島、7番ショート池田、8番ファースト島田、9番ライト岡崎、今日はこのオーダーで行きます。」
大橋はオーダーをたんたんと発表する。

橘は1番と聞いた瞬間に鳩が鉄砲を食らったような顔をして驚く。
「…え?僕が1番…ですか?」
橘は大橋に確認するかのように尋ねる。

「ああ、打撃に課題があるのは事実だが座間との試合で魅せたその足なら1番においておく価値がある」
大橋は橘に1番においた理由をあっさりと言う。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/02 23:23  No. 43    
       
第43話〜アンディ対橘〜

球場の時計が13時20分をさしたころ、両軍のベンチから選手が元気よく飛び出しホームベース上に整列する。

「「よろしくお願いします!」」

何人か気の抜けた間延び挨拶があるのはご愛嬌。

杉田高校のナインが守備位置に付き、アンディが投球練習を始める。

橘はベンチ前で素振りして試合開始を待つ。

橘が打席に入ると球審がプレイボールと合図をするとともに試合開始のサイレンが鳴り響く。

橘はアンディの大きさに苦笑いするしかなかった。
『で、でかい…190cm近くあるんじゃないの?あの人…』
身長わずか160cmの橘からすれば実身長よりさらに大きく見えるはずだ。

アンディは見下した眼で橘を見る
『おいおい、小学生が高校生の大会に出ちゃあいけないぜ』
アンディは薄ら笑みを浮かべてしまう。

薄ら笑みを浮かべたまま橘に対して初球を投げる。

橘も勢い良く打ちに行くが完全に振り遅れてしまう。

影浦はベンチでやや呆れながら
「ど真ん中の甘い球を振り遅れて空振りか…」
影浦は呆れつつも仕方ないかという顔で橘を見守る。

杉田の捕手高島は笑いを堪えながらアンディに返球する。

橘はアンディの直球に振り遅れたのを苦笑しながら
『いや…これ、アレだよね?というより外人使うのってアリなの?いいんすか?外人使って…すいませ〜ん、この大会って外人投手出ていいんですか?いや、反則だよねこれ…きっと反則だよ…打てるわけないよこんなん』
苦笑しているが、心のなかでは半ばあきらめ気味なのか余計なことまで考えてしまう。

アンディは返球を受けるとリズムよく投げたいのか2球目を即座に投げる。

橘は強振する勢いで振りに行くが、2球目もやはり振り遅れ、今度は勢い良く空振りしたおかげか尻もちをついてしまう。

流石にこの光景には杉田高校からは失笑が起きる。
それだけではない、スタンドにいる杉田高校の応援、また味方である氷水高校の応援している人も一部笑ってしまう

橘にレギュラーを奪われ、挙句の果てベンチ入りできずにスタンドで応援している井上は橘の光景に苛立ちを隠せなかった
「っざけんなよ、あのクソチビが!なんで、俺があんなチビにレギュラー取られなきゃなんねぇんだよぉ!」
当然橘の耳には入るわけないが井上は感情のぶつけどころがなかった…。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/02 23:55  No. 44    
       
第44話〜アンディ対橘2〜

「おいおいしっかりやれよ〜1年〜」
杉田高校のスタンドから橘をやや小馬鹿にした声が多々聞こえる。

橘はヘルメットを一時的に深く被りユニホームについた砂をはらう、橘の耳に野次は聞こえないが笑い声だけはしっかりと聞こえてきた。

『まるで素人だぜ…リトルリーグレベル以下だぜ…このチビは…さてどうしてやるか…』
アンディは高島のサインを見ると一瞬驚くが直ぐに不敵な笑みを浮かべ、投球フォームに入る。

アンディが橘に対して3球目を投げる。

スッポ抜けたのか、3球目は橘の顔面付近に投げ込んだ。
橘は「うわぁ」と弱々しい声を出してボールを避け、またしても転んでしまう。

『カズ…』
高橋はネクストバッターズサークルで橘を見守る。
「今のは武の指示だな…あいつは背が低かったり少しでも弱そうな打者だとすぐにああいうことやりやがる…試合が終わったらいい加減言わんとな」
杉田の監督橘高は呆れながら試合を見つめる。

高島はもう1球体の付近に投げ込むように指示し、アンディもそこに投げ込む。

橘は少し怖がりながら避ける、しかしこれで並行カウントとなる。

アンディは橘に対して5球目を投げるが、今度は橘がまだやや振り遅れているが初めて前へ飛ばす。

橘は手がしびれたのがバットをおいて両手をパタパタさせる。

アンディは高島のサインに頷き橘に対して6球目を投げる。
またしてもストレートを投げ込む、ここまで橘に対しては全てストレートである。

しかし、6球目はやや高めに入る、橘は打ちに行くがどん詰まりの打球になり、3塁側に転がる。

アンディが打球を処理したときはすでに橘は1塁を駆け抜けていた。

橘にとってはきれいなヒットではないが高校野球で公式非公式含めて初ヒットとなった。橘には足がある、だからどん詰まりでゴロになったらヒットになる確率も高い。

橘はホッとした顔をしながらアンディの背中を見てふと考えこむ
『そーいえば、よくプロ野球とか見てると外人投手って俊足のランナー出して、ランナーが盗塁する動作するとイライラするよね…この人もそうなのかな?』

「2番サード高橋君」
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/03 21:34  No. 45    
       
第45話〜Rapid Express Tachibana Kazumi〜

「2番サード高橋君」

高橋はフーッと一息吐いてから打席に入る。
スイッチヒッターのため、高橋は右のアンディに対し左の打席に入った。

『カズを散々コケにしてくれたようだね…そのツケはきっちりと耳揃えて払ってもらうよ…!』
高橋は冷静な顔とは反比例し内心は怒り心頭だ。

橘はスーッと1歩、2歩…3歩とリードを少しづつ広げる。

アンディが牽制の動作に入るとスッと橘は1塁ベースに戻る
橘は1ベースからまたリードを大きく広げる、今度はアンディは牽制球を投じると同時に瞬時にベースに戻る。

当然タッチされる前に帰塁したのでセーフだ。
橘はもう一度リードを広げるが、すぐに帰塁する。

アンディは背中越しで橘を殺すような目つきで睨みつける。

高橋への初球を投じた瞬間、橘はスタートを切る。
そして高橋も打ちに行くが、打球は痛烈なファールとなる。

アンディは球審からボールを受け取ると首を横に回す。

橘は懲りずにアンディを煽るかのごとくリードを大きく取る。
アンディはやや強い送球をする。

際どいタイミングだがこれも橘が間に合いセーフだ。

『あのクソチビ、粋がりやがって…潰すぞ…』
アンディは橘の見込み通り苛ついて来た。

高橋はアンディの様子を見ながら
『あの様子…可愛そうだけどもう少し地獄を見せてあげなきゃ俺の気がすまないよ…』
高橋はベースをトントンと叩く

アンディは高橋に対し2球目を投げる、高橋は空振りするがその間に橘は2塁盗塁を成功させる。

アンディは高島からの返球を受けると1つ大きな声で叫んだ。

高橋はバットを短く持ち替えアンディの投球を待つ。

しっかりと見極めながらストライクゾーン来たボールは尽くカットする
8球目、9球目、10球目…

フルカウントから高橋に11球目にアンディはついに堪えたかボール球を投げてしまい、高橋はフォアボールとなる。その間に橘は2塁から3塁を陥れる。

「3番ピッチャー白瀬君」

アンディの投球と同時に高橋は盗塁を試みて2塁を狙う、高島はそれを見て即座に2塁に送球する、高橋は2塁への送球を突然ハーフウェーで止まる。

「ホーム!」
高島が叫び、2塁手もホームに返球する、しかし橘は返球が来る前にホームを踏み、高橋はその間に再度2塁へ進塁した。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/08 00:35  No. 46    
       
第46話〜アンディの復活〜

「結局やられたい放題でいきなり失点か…」
橘高は肩を落とす

その後1回表は白瀬の進塁打、影浦敬遠の後5番の斎藤の犠牲フライでもう1点加点して1回表を終えた。

1回裏白瀬はきっちりと三者凡退で抑える

「2回表、氷水高校の攻撃7番センター岡島君」

『へっ、追加点とってとっとと試合決めちまおうぜ!』
岡島は自信満々にバッターボックスに入る

アンディはフーッと一息吐いてから捕手の方を向く。

アンディの額からは既に大量の汗が噴き出している。

高島のサインに頷き、投球フォームに入る。

ゆったりとしたフォームからボールが投げられる。

アンディから投げられたボールは真ん中寄りにスーッと行く

岡島は「しめた!」と思い打ちに行くが岡島が打つ瞬間ボールは急にストンと下に落ちる。

岡島は振りに行ったバットを止めることはできず空を切ってしまう。

『今のは…』
岡島はアンディの1球にやや驚く

影浦はベンチでアンディと岡島の対決を見ながら
「今の落ちる球…淳、お前のフォークと同じぐらいの落差じゃないか?」
影浦は隣で戦況を見守っている白瀬に話を振る

白瀬は残念そうに首を横に振り
「いや、俺のフォークはあそこまで落ちない。…だが、アレが決まり始めると厄介だな」
白瀬は残念そうな顔をした後険しい顔をする

「…ああ。」
影浦は白瀬の一言に頷く

アンディは制球に不安があるため2球目、3球目と外れてボールになってしまう。

アンディは帽子を取り汗を拭う。汗を拭っても拭っても汗が出てくる、それくらい今日の日差しは強い。

岡島に対しての5球目は落差のあるチェンジアップを使い三振を奪う。
アンディは岡島から三振を奪うと波に乗ったかのように池田、島崎とチェンジアップを有効に使い連続三振に切って取る。

アンディは初回以降完璧に立ち直りランナーを出しても後続を打ち取り無失点で抑えるという快投を見せる。

9回裏に入り、白瀬は肩で息をしながら打席のアンディと相対していた。1点差に追い上げられランナーは2塁3塁、アンディは長打力があるため長打を打たれれば逆転サヨナラ負けになる。

白瀬は影浦のサインに頷きアンディに対し渾身の1球を投げ込む、アンディのバットは白瀬のボールに当たることなく空を切り試合が終わるとアンディは悔しさから天を仰ぐ
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/08 01:15  No. 47    
       
第47話〜もう1人の1年生〜

氷水は3回戦、4回戦と着々と突破し準々決勝で現在は湘南商業高校に6回で5対0と大量リードを広げていた。

大橋は腕を組みながら
『この点差があれば…試せるか?』
大橋はスッとベンチから出て選手交代の指示を出す。

そしてウグイス嬢が選手交代についてアナウンスする
「氷水高校選手の交代です、ピッチャー白瀬君がレフトに入り、レフトの斎藤君代わりまして紅君が入り、ピッチャー。3番レフト白瀬君、5番ピッチャー紅君以上に変わります」

白瀬はベンチからレフトに向かい、

背番号10を付けたもう1人の1年生はマウンドへと向かう

橘は笑みを浮かべながら
「クレ、緊張しないで落ち着いてね」
橘は自分が公式戦初出場した時の事を棚に上げ言う

「…お前が言うな、たっちー。…とはいえ高校に入って公式戦のデビューか…楽しみだぜ」
紅は少し不敵な笑みを浮かべる

「紅、シニア時代は全国を経験しているらしいが…それでもここは高校野球だ、油断するなよ!しっかりと腕振って投げろ!いいな!」
影浦は早口で紅に言うと軽く右胸をどつく

「6回裏湘南商業高校の攻撃は4番ファースト七野君」

紅は影浦のサインに頷きオーソドックスな投球フォームに入る

初球は内角低めをつくストレートだ。

影浦は捕った時にやや違和感を感じた
『…気のせいだといいんだがな」

七野はバッターボックスの砂をならしながら
『スピード出てないな…本当にあの紅優生か?』
七野は去年シニアの大会で名前を騒がせたあの紅優生なのか疑問に思った。

スピードが出てない、七野も影浦もここに違和感を生じたのだろう。

紅は早いテンポで投げ込み相手に考える隙を与えない
七野は紅相手にあっさりと三球三振で討ち取られてしまう

紅は緊張感を感じさせない投球リズムで相手を淡々と打ちとっていく。

スピードこそは出ないがそれでも相手は紅に手こずり凡打の山を築く。

紅は7回、8回、9回と回を増すごとに少しずつスピードが出てきた、そして9回の先頭打者1番の南相手に今日最速の142kmのストレートが真ん中高めに決まる。

2球目も甘く入りライト方向を狙われるがこちらも同じ1年生の橘の好捕によって阻まれる。紅はこの回も三者凡退で締め氷水高校は準々決勝を勝ち上がったが、最後まで影浦の紅に対するとある「違和感」は消えなかった。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/08 11:58  No. 48    
       
第48話〜決勝の相手は…〜

試合終了のサイレンが鳴り響く

「「ありがとうございました!!」」

両チーム一礼するとともにこの瞬間は勝者と敗者が決まった瞬間である。

スコアボードの方に目を向けると西横浜高校対氷水の対戦結果は…

氷水の9回裏に3xとスコアが記載されている。

3対5で氷水高校でサヨナラ勝ちとなっている。

9回裏は橘凡退の後高橋白瀬と連続安打の後影浦が起死回生の逆転サヨナラスリーランをライトスタンドへと叩き込んだ。

影浦は笑顔でベンチに戻るまで何度もガッツポーズを繰り返す

ロッカールームに戻ると白瀬は影浦を出迎える
「サンキュー勝一、お前のおかげだ。俺がもう少し抑えていればここまで苦戦しなかったな…ナイスホームラン!」
白瀬はやや笑顔を浮かべながら影浦とハイタッチする。

「ふ、しかしハマスタは広いな…狭い狭い言われてるけど高校生レベルから見れば広いわ」
影浦は喜びを全面に出しながら言う

「あと一つだ!あと一つ!気を引き締めて行くぞ!」
高橋は冷静に話そうとするが声は興奮している。

氷水は創部初の県大会決勝進出のためなのか大喜びだ

紅はアイシングしている白瀬のところに行き
「白瀬さん、横浜スタジアムのマウンドってどうでした?」
紅は同じ投手だからか白瀬に横浜スタジアムのマウンドの感想を求める。

「…俺的にはちょうどいいな、投げやすいな…」
白瀬は自分の感じたことを素直に紅に伝える

氷水野球部ナインは着替え終わると即座にロッカーを出て外で大橋から軽い話があった後全員で横浜スタジアムのスタンドに入り決勝の対戦相手が決まる試合を観戦する。

やはりほぼ客席は埋まっているため立ち見で見るしかなかった

「新横浜高校と保土ヶ谷工業高校?」
橘は対戦相手を見てキョトンとする。

橘の隣で見ている高橋はフッと笑い
「ん?ああ、保土ヶ谷工業はここ近年力をつけてきた高校だよ、まぁ新横浜については…説明の必要はないよね?」
高橋は橘から見れば優しくてよくしてくれている先輩だろう、今回も橘に優しく教える。

どちらが勝ち上がり、氷水高校と決勝をやりあうのか…どちらが勝ち上がっても油断ならない相手だ。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/08 12:27  No. 49    
       
第49話〜澤田の異変〜

埼玉県でもこの日高校野球埼玉大会の決勝が行われていた。

「ボール!フォアボール!」
球審がそう宣言すると澤田はまたしても苦しそうな顔をする。

3塁からランナーがゆっくりと帰ってくる。

スコアボードを見ると試合はまだ4回表で春日部中央高校が会田高校に2点ビハインドをつけられている。

「おい、どうした澤田!いつものお前らしくないぞ!」
田口はマウンドに行き澤田に声をかける。

「…うるせぇ、とっとと…戻れなんでもない…」
澤田は田口を追い払う素振りをする。俯いててよく顔が見えないが、辛そうな顔に見える。

田口は舌打ちしそうになったところを我慢しながら守備位置へ戻る
『澤田が制球難とはいえここまで制球難な時はなかったぞ』
田口はマスク越しから澤田を心配そうに見る。

「5番レフト川口君」

状況はこの回突如制球を乱し、4者連続四死球を与え、相手に1点献上しなおもノーアウト満塁とピンチが続く。

澤田は躍動感のあるフォームから川口に対し第1球目を投げる。

「ットラーイクッ」

パシーンとミットに突き刺さるいい音が鳴り響く。
スピードガンに計測されたスピードは今日最速の150kmに球場はどよめく

澤田はボールを力強く受け取る。
そして顔を歪めながら全力で腕を振り川口をねじ伏せに行く

これも真ん中高めに決まるが川口のバットは空を切る

『最早、痛みなど関係ないわ!甲子園に行くのは俺達だ!』
澤田は気合を入れて川口に対し3球目を投げ入れた瞬間

───今まで感じたことのない電撃が澤田の体内に突き刺さる感覚に陥る

川口は三球三振を喫し、田口が澤田に返球しようとした矢先、田口は顔色が変わる

マウンド上で澤田は肩を押さえて蹲っていた。
顔は苦悶の表情、額から溢れ出る脂汗

「澤田ーーー!」
田口はマウンド上に駆け寄ると衝動的に叫んでしまう。

会田高校のベンチから扇が飛び出してくる。
…どう考えても澤田は続投不能だろう。澤田は扇に抱えられベンチに下がり、

無情の投手交代を告げられた。

結局試合は澤田を欠いた会田は後続が打ち込まれ逆転負けをしてしまった。

一方場面はかわり神奈川県ではすでに試合が終わったのか白瀬達は帰りの電車の中だった。
白瀬は携帯をいじくりながらとあるニュースに目が止まり
「なにっ!?」
と声が出てしまった。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/08 16:00  No. 50    
       
第50話〜決勝戦始まる〜

白瀬の目に止まったのは「会田高校・澤田拓一(3年)負傷降板」という記事だ。

記事によると
「プロ注目の会田高校3年の澤田拓一は春日部中央高校との試合中4回表の川口を三振に打ちとった直後肩を押さえてマウンド上に蹲った、その後マウンドに戻らず負傷降板となった。
怪我の状況次第ではプロ注目右腕から手を引く球団が多そうだ。」

白瀬はやや落ち込んだ表情を見せる
「澤田…悔しいだろうな…怪我もそうだがチームも…」
白瀬は負傷した澤田に同情するかのような口調で言う。

「淳、気持ちは分かるが…明日勝とうぜ」
影浦は白瀬を慰めるかのようにポンと肩を叩く

翌日の横浜地方はこれ以上にない快晴で決勝に相応しい天気とも言える。
横浜スタジアムは決勝のチケットを買い求める客が暑い日差しの中朝からずっと並んでる客もいる。
横浜スタジアムはシーズンより高校野球決勝のほうがよく入ると皮肉られるがどうやらそれも嘘ではなく紛れも無い「事実」のようだ。

氷水高校が守備練習終わる頃、いつの間にか開門の時間になったのか球場の外で待っていたお客がゾロゾロと入ってくる。

橘は客席を見渡したながら
「凄い人…今からこんな中で試合やるの…?緊張するよ…」
橘は足がやや震えている感じがした。

「まぁ、流石は神奈川県大会決勝と言うところだね…」
高橋も客席を見渡す。

決勝の対戦相手である新横浜高校と守備練習が入れ替わる形で氷水は一度ベンチに下がる

白瀬は守備練習を始める新横浜を見ながら
「新横浜高校…昨日の試合見て改めてここ相手には油断できんというのは分かった…だが俺が打たれなければいい話だ!」
白瀬は自らを奮い立たせるように言う

今日の試合には新横浜高校の生徒、氷水高校の生徒も見に来ているのを見ると決勝戦というのを実感させられる。

大橋は野球部全員集め話を始める
「え〜、後もう少しで今年の神奈川県大会決勝が行われます、相手はご存知の通り名門校の新横浜高校です。ですが、ここまで来たらどこが相手かも関係ありません、後1つ勝って!甲子園に行きましょう!悔いのない試合で勝ち上がって全国へ行こう!」
大橋は力強く言う。

20分後両校がホームベース上に整列した。

「「よろしくお願いします!!」」

試合前の挨拶が終わり、いよいよ決勝戦が始まる。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/16 01:31  No. 51    
       
第51話〜試合開始〜

「守備につきます新横浜高校、投手大野君、捕手高野君、一塁中津君、二塁小川君、三塁迫田君、遊撃蓑田君、左翼中野渡君、中堅河野君、右翼後藤君」
ウグイス嬢が守備位置を投手から順に読み上げていく。

マウンドでは大野が高野にボールを投げ込み投球練習を行っている。
ミットにパシーンといい音がなるボールが何球も続く

客席は横浜スタジアム名物であるみかん氷を食べる人や、団扇や扇子で少しでも暑さを和らげようとする客が多い。

「1回表、氷水高校の攻撃は…1番、セカンド橘君」
ウグイス嬢がアナウンスするとともに橘はバッターボックス手前で一度お辞儀してからバッターボックスに入る。

「プレイ!」
定刻より5分遅れの12:05にプレイボールがかかる。

横浜スタジアムに鳴り響くサイレンは今までのとはやや違う特別な感じに橘は聞こえた。

大野は投球フォームに入り、ゆっくりと第1球目を投げ込む。

「ットラーイッ!」

橘は打ちに行くが手が出ずに見逃してしまう。

『この子の足が脅威なのは初戦と2回戦で知られている。…でもね。』
高野はマスク越しから橘を見上げる。

そして少しすると立ち上がり守備陣に守備位置を伝達する。

この季節にスポーツはただでさえきついのに防具をつけている高野は倍暑く感じるだろう。

新横浜の守備陣は少しずつ少しずつ前へ出てくる。
一塁手と三塁手が投手の位置と同じ位置まで出て、二塁手、遊撃手は定位置よりやや前、レフトは元々ショートがいた位置にセンターはセカンドベースの後ろ、ライトはセンターの定位置で構える。

『超極端な前進守備…』
橘は守備位置を見ると顔を曇らせる。

しかし、守備位置を見ると内野は6人、外野は1人。
センターの頭を越えれば橘の足なら余裕でランニングホームランだが…。

高野は再び座り、大野にサインを送る
『…橘君だっけ?かわいそうだけど…君には外野は1人で十分なんだ…。』
高野は橘を同情するような眼をするが、やってることはエゲツがない。
しかし、それも橘の打撃成績を見れば仕方ないのかもしれない。橘は今大会わずか1安打、それも内野安打。
打率に直すと.045と1割にも満たない数字である。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/16 01:57  No. 52    
       
第52話〜屈辱の橘シフト〜

大野は腕をだらんとさせて、高野のサインに頷く
『まだ1年で初の公式大会の決勝でこんなことされたらかわいそうだよね、敵ながら同情するよ、けどよ…』
大野は橘にやや同情しながら橘に対し2球目を投げ込む。

橘はムキになってフルスイングするもバットに当たらず空振りしてしまう。

「ストライクツー!」
球審の判定が橘の心に強く突き刺さる。

大野は高野から返球を受けながら
『けどさ、投手から見ると打者がこうアンパイだとちょっと楽なんだよな…』
大野は薄ら笑みを浮かべていた。

橘に悪いと思いつつ、まずアウトを計算できる打者がいるだけ投手にとってこれほど楽なことはない。

「うぅ〜、あのシフトなんだよ〜和巳ちゃん(橘)がかわいそうだよぉ!ねぇ!甘奈もそう思うよね!?ね?」
3塁側に氷水高校の応援に来た同校の女生徒である。早坂恵理はぶぅ〜と頬を膨らませていた。

甘奈は「え?私!?」というリアクションをとってから恵理の方を向く
「…ごめん、私野球詳しくないから…分かんないよ。たまにお父さんが見ているのをチラッと見るだけだから…そうね、野球好きの恵理が言うならそうなのかもね…。」
甘奈はやや口を濁すように言う。

しかし、2人共と遠くから見ると生徒とはわかりにくいぐらい日焼け対策を施していた。

「たっちー…」
茜はベンチでスタンドで見ている恵理と甘奈と同じことを思ったのか心配そうな顔で橘を見守る。

『なんだよこれ…なんなんだよ…』
橘は心の中でなんども同じ言葉を繰り返す。

大野は橘に対し3球目を投げる。

3球目はドロンと落差の大きいカーブだ、橘はバットを出さずに見逃す。

「ボール!ボールワン!」
大野のカーブボールはやや高めに外れ、ワンボールとなる。

橘はホッと胸を撫で下ろすが顔は笑ってないし、どちらかといえば辛そうな顔をしていた。

『…悪いな、1年…でもこれも経験だと思ってくれ!』
新横浜の監督小田はベンチで足を組みながら冷静に宣教を見つめる。

大野は橘に対し4球目を投げ込む。

『僕を…僕をなめるな!』
橘は半ギレになりながら大野の4球目を力強く引っ張る。

しかし、打球は橘シフトにまんまと引っかかり、サードゴロとなる。

橘は歯を食いしばり俯きながらベンチへと戻る。
ベンチに俯きながら戻る橘の小さな体はやや震えているように見えた
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/16 02:33  No. 53    
       
第53話〜消沈の橘〜

屈辱的な極端な前進守備、橘シフトにひっかかりサードゴロに倒れた橘は俯きながらベンチへと戻ってきた。

橘は影浦にポンと慰めるかのように背中を叩かれる。

橘は元気なくベンチに座り込み、俯く。
『なんで…どうして…どうして、どうしてなんだよ…今まで野球やってきたあんなこと…どうしてなんだ』
橘は頭の中が思考停止してしまっているのか言葉のレパートリーが極端に少なくなっていた。

橘が俯いているといつの間にか攻撃が終わっており、気持ちの整理がつかないままセカンドの守備位置へとつく。

高橋は守備位置に向かいながら白瀬に話しかける
「淳、出来るだけセカンド方向に打たれないようにしてくれ。」
「わかってる、…だが無茶言うな、打たせて取ることはなんとかできるがセカンド方向に打たせるなってのは無茶ありすぎだぞ…」
白瀬はやや肯定しつつも高橋に反論する。

白瀬はワインドアップから影浦に向けて投げ込み、投球練習を行う。

「1回の裏、新横浜高校の攻撃は1番ショート蓑田君」

1番の蓑田が打席に入るとガラリと会場が変わったような錯覚に陥る。

まるで、ここは音楽館か?と。

その錯覚の実態は新横浜高校ブラスバンド部の美しい演奏が原因である。
新横浜高校ブラスバンド部は全国でも有名である。
野球部にそのブラスバンド部の応援がついているというのは、非常に心強い相棒だ。

しかし、白瀬はブラスバンド部の威圧感のある演奏に興味ないからのように淡々と投げ込み簡単に蓑田を追い込む。

白瀬は影浦のサインに頷き、3球勝負で行こうと蓑田に投げ込む、しかし蓑田は白瀬のスライダーにくらいつき、セカンド方向へと飛ばす。

橘は必死に打球を取りに行く、しかし送球しようした矢先に手から汗なのか、緊張からなのか滑ってボールを落としてしまう。

スコアボードにはE4と表示され、蓑田の出塁に喜ぶ1塁側の大声援が橘の耳に鳴り響く。

白瀬は仕方ないという顔で橘にアイコンタクトを取る。橘は折れそうな心をを必死に繋ぎ止める。

「2番ライト後藤君」

後藤は打席に入るやいなや白瀬の初球を強引に引っ張って打つ。
打球はまたしても橘の方へ転がる

橘は捕球にややもたつきながら送球する。

しかし、送球は無情にもショート池田の頭を越え、レフト方向へ転々とする。

橘は俯き下唇を噛む。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/16 11:26  No. 54    
       
第54話〜1塁3塁のピンチ〜

守備が上手い橘がまさかの連続エラーでピンチを作ってしまう。

やはり、橘シフトにより心を折られかけて直後にセカンド狙われて2回続けてエラー…、それに加え負けられない決勝戦、そして新横浜高校の大応援が響き渡る。
橘はこれほど辛いことはないだろう。

「『やはり、あいつの言うとおりセカンドはまだ厳しいか…俺も狙って打たれてるわけではないがな…』橘!ドンマイドンマイ!リラックスして、落ち着いて」
白瀬はエラーをして落ち込んでる橘の方を向いて橘を励ます。

橘は軽くお辞儀するが、今の橘にとってからみればその白瀬の激励が胸に突き刺さるほど辛い。
橘の頭のなかでは励ましてくれているのは分かるが逆に追い込まれいている、そんなような心理的状況に陥ってしまう。

「3番サード迫田君」

迫田は右打席に入り声を上げる。

『こっからが問題だぜぇ、淳!』
影浦は迫田を見上げながらここからが難関だと判断した。

『問題はこいつからだな…今の橘からするとここで俺がランナー返したらあいつは確実に…潰れる。ただでさえ、潰れてかけているのに必死に自分で折れた心を食い止めている、だが、不用意に打たれた俺があいつを追い詰める原因になった1つでもある』
白瀬はランナーに目で牽制しながらここからどうするべきか最善の策を考える。

そして、迫田に対し第1球目を力強く投げ込む。
迫田は打ち返そうと打ちに行くがバットが空を切る。

『ちっ、速いな…』
迫田は舌打ちする。

白瀬は迫田に考える暇を与えずに即座に2球目をテンポよく投球フォームに入る。
2球目も速球が外角高めにパシン!とミットにいい音をたてながら決まる。

白瀬が3球目を投げようと投球フォームに入った瞬間、後藤は1塁からスタートし、迫田も白瀬の球を弾き返そうと打ちに行くが、ボールは迫田のバットから逃げるかのようにカクンと落ち、バットは空を切る。
影浦は捕球すると即座に2塁ベースカバーに入った池田に投げ込む。

際どいタイミングだったが、僅かに影浦の送球が勝り、三振ゲッツーとなりこれで2アウトだ。

「4番セカンド小川君」
そして、プロ注目のスラッガー小川が打席に入る。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/22 17:19  No. 55    
       
第55話〜白瀬対小川〜

小川が左打席に入ると観客の目線は一斉に小川に集まる。
高校3年間で打った通算本塁打は45本塁打を記録し、上位指名が確実と言わしめる逸材だ

白瀬は小川を見つめながら
『…今年の夏の大会は調子いいが…一時期調子を落としたと聞く。ま、だからと言って気は抜けないが…気負いすぎてもいけないが…面白い』
白瀬はフッとマウンドで軽く笑みを浮かべる。

白瀬は影浦のサインに2回クビを横に振り、3回目でようやく頷く。

投球フォームに入り、白瀬の右腕からボールが放たれる。
小川は足を上げ、白瀬の白球を打ち砕こうとフルスイングで打ち向かう。

しかし、白瀬のストレートは小川のバットに当たらずにミットに入る。
小川のスイングスピードは早く、空振りした瞬間に心地の良い風と風を切った音が影浦の耳に聞こえてた。

影浦は白瀬にサインを送るがまたしても白瀬は首を横に振る。

『まさか…淳!お前…ちっ、打たれても責任もとらんし知らんぞ俺は』
影浦は白瀬の意図に気づき半ば諦め気味に白瀬の要望通りに投げさせるようにサインを送る。

白瀬はスッと足を上げ、投球フォームに入り腕を力いっぱい全力で振り、ボールを投げる。
小川は白瀬の速球に力負けしないようにさっきより始動を早くする。

しかし、それでも白瀬の速球に振り遅れバットは空を切ってしまう。

『この俺が…速球に2球続けて空振りだと…?俺は真っ直ぐに強いんだぞ!?ふざけるなよ』
小川はやや自分に苛立つ

白瀬は3球目もストレートにこだわり、ストレートを投げ込む。

『なめるな!』
小川は白瀬の3球目を打つもののバックネットにある金網にあたり「ガッシャーン」という音が響く。とともに客席からは「おぉ〜」という声が上がる。

白瀬と小川の力勝負に応援に詰めかけた客は視線が釘付けだ。

白瀬はとことんストレートに拘り、またしても力押しで小川をねじ伏せようとする。

小川は5球目を捉え、心地の良い金属音とともに打球も美しい曲線を描くがわずかにファールとなってしまう。
白瀬と小川の勝負に1球ごとに歓声が上がる。

白瀬は歯を食いしばり力いっぱい6球目を投げ込む。

小川は白瀬の6球目を打ち砕こうとするが、白瀬の直球はまるでバットから逃げるかのように僅かにホップしたように見えた。

小川のバットは空を切り、白瀬は力で小川をねじ伏せた。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/23 00:48  No. 56    
       
第56話〜影浦シフト〜

白瀬の6球目はとある球団のスカウトが持っていたスピードガンに154kmと自己最速を上回る数字を計測されていた。
「小川を見るために来たが…あの投手も悪くないかもな…まっすぐはいい。」
そのスカウトはノートに何かを書き込んでるようだ。

「よし、いいぞ!白瀬!よく抑えた。」
大橋は白瀬を嬉しそうに出迎える。

「…小川の時のこだわりは正直焦ったぜ…でもまぁ、よくやったぜ」
影浦は苦笑しながら白瀬とグータッチする。
嬉しそうな顔を浮かべるものが多いなか、橘は1人憂鬱な表情でベンチに戻る。

「2回の表、氷水高校の攻撃は4番キャッチャー影浦君」

左の大砲が小川なら右の大砲は影浦と神奈川県大会では騒がれた4番対決、偶然にも小川を打ちとって直ぐに回ってきたのがこの影浦だ。
炎天下の神奈川県大会、どうやら見どころは多そうだ。

『うちの小川を双璧の右の大砲影浦勝一か…高校では目立った成績ではないがツボに入った時の打撃は驚異的だな…』
高野は守備陣に合図を送り、自ら守備位置に座り、大野にサインを送る。
新横浜の守備陣はやや後ろに下がり左よりに少しずつずれ、二塁手がセカンドベースの真後ろファーストが一塁と二塁の中間にいるという影浦の長打に特化した影浦シフトを敷く

影浦はそのシフトを見ると軽く舌打ちをする。
『ちっ、まーた影浦シフトか…こいつにゃあ嫌な思い出もあるが…まぁ、もう慣れっこだがよ…相変わらず姑息なんだよ高野は、あん時のこと思い出すじゃねぇか』
影浦は常日頃から長打力をマークされて影浦シフトという引っ張りに警戒したシフトを敷かれることが多く、影浦自身一度それで打撃を崩したことがある。

「高野といい、監督の小田といい、頭が良すぎるな…うちの各選手の特徴ごとにシフト取りやがって、それを実行できるバックも流石は強豪校と言ったところか…」
大橋は気難しい顔をしながら戦況を見つめる。

球場の温度はおそらく簡単に40度近くまで上がっているであろう。
今日に限って無風、風が吹いても生暖かい熱風しかふかない。

そのため、両軍とも体力を大きく奪われながら試合を行っている。
試合はまだ2回が始まったばかりだ。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/23 01:21  No. 57    
       
第57話〜大野対影浦〜

決して心地の良い風ではないが、風がふき、砂埃が舞い上がる。

砂埃が収まり、プレーが再開すると「おぉ〜」と盛り上がる。その原因は何なのか?

大野の方に視線を向けると大野は軽く笑みを浮かべながら影浦に対し直球勝負を大胆に予告した。

高橋はベンチで苦笑しながら
「淳、彼…大野は君と小川の直球勝負に対向する気なんじゃないのかい?」
高橋は大野の直球勝負の宣言を見ながら言う

白瀬はフッと笑い
「…いや、それもあるかもしれないが…自身があるだけだ。直球だけであいつを抑える自身を…」
白瀬は影浦は抑えられる可能性が高いというニュアンスで高橋に答える。

白瀬の言葉通り、影浦は小川とは違い速球に振り負けることが多々あり、影浦はカッとしやすい性格。大野と高野のバッテリーはそこを読んだのであろう。

大野が投球フォームに入ると影浦はグッとバットを力強く握る。

大野の左腕から白球が投げ入れられる。

宣言通り直球が投げ込まれる
影浦は対抗してフルスイングするが、バットに当たらず高野のミットにボールは入る。

大野は2球目も直球を投げ込む、影浦はやや振り遅れボテボテなゴロがファールゾーンに転がる。

影浦は早くも追い込まれながら際どいコースの直球はつまりながらもカットしながら粘る。

粘っているうちにボール球も増えてきて、カウントをフルカウントまで持ってきた。

『…制球難なところで粘られてるな俺…』
大野は苦笑しながら高野からの返球を待つ。

真ん中高めに甘く入った直球を影浦は完璧に捉える、しかし僅かに左にきれ、ファールとなる。

『あっぶねぇ〜』
大野は胸を撫で下ろす

影浦の痛烈な当たりに新横ナインはど肝を抜かれたであろう。

『…打ち損じてくれて助かったぜ影浦…カットはしているがやはり頭はカッカッしているようだな…」
高野は不敵に微笑む

『うぜぇな、しかし今の打ち損じるとは…ったくあいつにもイライラするし、今の仕留め切れなかった自分がうぜぇ』
影浦は先ほどに比べてもイライラしているのは分かる。
まるでこの暑さで茹だって湯気が出そうな、それくらいイラツイているように感じる。

大野は投球フォームに入り影浦に対し12球目を投げ込む。
影浦は打ちに行くが、どまんなかの直球に完璧に振り遅れ空振り三振に倒れてしまう。
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ロックされています   Re: 頂点を目指せ  名前:アチャ  日時: 2013/09/29 00:56  No. 58    
       
第58話〜ピンチ〜

試合は膠着状態のまま、6回まで終わる。
白瀬はランナーを再三出しながら、要所をきっちりと締めるピッチングで得点を与えず、逆に大野はここまで被安打2とほぼ完璧に氷水打線を封じ込めている。

時間は2時を指し、未だに日差しは衰えるどころか強さをますばかり、おそらく今部屋にいてテレビをつけたら熱中症で○人病院へ搬送されたという報道が出てもおかしくない。

「7回裏、新横浜高校の攻撃は1番ショート蓑田君」

新横浜の切り込み隊長蓑田が打席へと入る。しかし、蓑田は白瀬と相性が悪く、今日はここまで3三振を喫している。

白瀬はこの回、初球は内角にスライダーを投じる。
蓑田はのけぞってボールから避ける。

「ボール!ワンボール!」

白瀬は影浦から返球を受けると帽子を取り、汗を拭う

白瀬は蓑田に2球目を投じる、蓑田は白瀬のボールをしっかりと見ながらスッとバットを出す。
コツンとしっかりとバットに当たり、まるで芸術のように転がる、高橋が捕球し、送球しようとするも既に蓑田は1塁を駆け抜けていた。

「…意表を突かれたか。くそ」
白瀬は疲れからかやや顔から余裕が消えてきている。

「2番ライト後藤君」

白瀬は影浦のサインに頷き、しっかりと腕を振り、この試合100球目を後藤に投げる。
やや高めにスゥーと入り、後藤は見逃さずにしっかりと振りぬく
振りぬいた打球はレフトフェンスに直撃し、もう少しでホームランという当たりであった。

しかし、蓑田はホームに帰ってこず、3塁で止まってしまう。
蓑田の脚力を考えれば余裕でホームを陥れることはできたのだが…一先ず氷水にしては助かっただろう。

『気落ちしている場合じゃない…ここをしっかりと抑えなければ…』
白瀬はしっかりと抑えなければと気合が入る、逆に気合が入りすぎていないか心配になるほどだ。

「打てー迫田ー!」 「ここで決めちまえー!」
新横浜の応援スタンドからは迫田に声援が飛ぶ。
いや、声援というよりは合唱に近い。

「お前も続け、迫田。ここで俺とお前で点を取るぞ!」
小川は迫田と一言二言かわす。

「3番サード迫田君」

「っしゃあああああああああ!行くぜぇ!」
迫田は声を出しながら気合を入れ、打席へと向かう。
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