Re: ズダダン! ごらく部 その8 寓話投稿 名前:ファイター・ドクトリン 日時: 2018/01/30 23:17 修正5回 No. 5
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「なんだ,そのくだらない質問は。そもそもである。『くだらない』という日常でありふれている言葉の意味について,その定義について,わざわざ論題に挙げることが私には不思議に思える。お前は『くだらない』という言葉の意味を日常において心得ているのか,それともそうではないのか。心得ていないのならば,お前は結局何も知っていないのではないか。これこそ,『エイロネイア』だ!」ソクラテスは,せせら笑いながらそう言いました。 それに対してソクラテスは反論します。 「君はエイロネイアという言葉の用法を心得ていない。私は何もくだらない質問をしてはいない。そもそも,お前は私の質問に答えることが出来ていないではないか。それこそ,エイロネイアではないか」ソクラテスは高笑いです……。
……,さてさて,ここいらで,読んでいる皆さんは頭がこんがらがってきていると思います。どっちがソクラテスなのでしょう。どっちがどっちなんでしょう。どちらがソクラテスであるべきなのでしょう。一体どちらが自分自身を知っていて,「無知の知」を知っているのでしょうか……。
二人のソクラテスの議論は,延々と続きました。日が暮れてしまいました。そんな二人の能書きを聞いていた周りの聴衆の目は,大変白かったそうです……。
そうこうしているうちに,もう一方のソクラテスは,気が付いたら姿を消してしまっていました。
……,ん? どっちのソクラテスが消えたのでしょうか。結局どっちがどっちなのでしょうか。どっちも本物だったかもしれず、どっちも偽物であったかもしれません。ソクラテスは,途方に暮れてしまったそうです。
後々の話になります。人望を失い,弟子にもそっぽを向かれたソクラテスは,アテネ国家の秩序を乱そうとしたという罪に問われ,毒杯を仰いで自殺しました。みとったのは,悪妻だったそうです。
……、やれやれ,なんともはや。これは典型的なパラドックス,逆説の話です。このお話は勿論,史実に反しています。けれども,皆さん,私も哲学を学ぶものとしてつくづく思うのですが……。「無知の知」ってのは一体何なんでしょうかね? 考えれば考えるほどに堂々巡りになってしまって,私は困ってしまうことがよくあります。その度に、思考停止になってしまいますよ。
続きます。
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