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ロックされています  in ホークス  名前: ねこた  日時: 2012/07/17 23:56    
      
こんにちは。ホークス好きです。久しぶりな方もいるかと思います。

更新はゆるゆる不定期になると思います。

生暖かい目で見ていただければ幸いです。
記事修正  スレッド再開
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/19 23:44 修正4回 No. 9    
       
第八話 目標

俺達は今ホークスの選手として練習に励んでいる。

ただし、二軍。

「まあいきなり一軍に入れるとは思ってないぜ」

「今後の目標は開幕一軍だな、赤城。」

「もちろんそのつもりだぞ?」

そして初めての実践登板となるオープン戦では先発として投げる予定だ。

するとコーチに呼ばれた。

「赤城、小野、二人ともこっちで投げてくれ。今お前らがどんなバッテリーか知りたい。」

「「はい。」」

(やっと…全力で投げられる)

ドラフト一位がどんな球を投げるかに他の二軍の選手も興味があるらしく、ベンチの前あたりに人だかりができている。

「よし、全力で投げてみてくれ。スピードガンもあるぞ」

その言葉を聞いた瞬間、明と勝の表情は引き締まる。

そして投球体勢に入る。

ボールの縫い目に指をかけ、それを頭の上に移動させる。
足が上がる。いわゆるオーバースロー。

腰が鋭く回転し、土ぼこりを巻き上げる。

そして指先から今にも浮き上がりそうな程強烈なスピンがかかったストレートが放たれ、赤城のミットに吸い込まれる。

「156km……」

それに驚いていないのは、おそらく明と勝だけだろう。
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/20 22:27 修正1回 No. 10    
       
第九話 オープン戦

今日のオープン戦は、俺にとって初めての登板となる。

二軍の選手を見回してみると、一際目立つ巨大な選手がいることに気付く。

確か…今年ドラフト二位の垣谷だったと思う。

すると向こうも気付いたようで、

「小野どん、今日からよろしく頼むとです」

「あー…えっと、垣谷さんですよね」

「そうどす。三番・レフトで出させてもらっとります。」

「じゃあ、これからよろしくね」

そして彼が握手をするためか、手を差し出してくる。

その手はマメだらけで、相当な努力をしてきたのだと思えた。


スタメン(二軍)・vsオリックス
1・大内(遊)
2・正田(二)
3・垣谷(外)
4・小久保(一)
5・赤城(捕)
6・近藤(三)
7・福田(外)
8・相原(DH)
9・桐山(外)
P・小野
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/20 23:14 修正2回 No. 11    
       
第十話 登板

一回表。オリックスの攻撃。


先頭打者は足の速そうな右打者。

俺はいつものオーバースローからボールを投げる。持てる力を全てボールに乗せる。

土ぼこりが巻き上がり、赤城のミットから鈍い音が響く。

「ストライク!」

打者は呆気にとられたような表情になった。

「154km…何だあのピッチャーは…打てる気がしない」

そして第二球。今度はアウトコースいっぱいの152kmの直球。空振りを奪った。

第三球。

ど真ん中に、バットよりも速く、赤城のミットにボールが突き刺さる。

「ストライク!バッターアウト!」

そしてその後のバッターも凡打に打ち取り、三者凡退という最高の形の立ち上がりとなった。

一回裏。ホークスの攻撃

「任せてくれよルーキー君。楽に投げられるように先制点を軽く奪ってあげるよ」

その言葉通り、初球をセンターに弾き返す。

さらに盗塁でノーアウト二塁。

正田は送りバントを成功させ、ワンアウト三塁。外野フライでも先制点だ。

そして垣谷がバッターボックスに入る。

(ここで先制点を取って小野どんを援護するとです!)
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/20 23:32 修正2回 No. 12    
       
第十一話 垣谷の実力

ワンアウト三塁。バッターは垣谷。

しかし垣谷は初球の真ん中ストレートに手を出さなかった。

第二球でもバットを振らず、あっというまに追い込まれる。

そして第三球。完全に外した球。アウトコース高めに意図して投げたらしい。

これを打つやつは悪球打ちだな、と小野が何気なく考えていたとき。

グワァラゴワガキーン!

というとんでもない打球音で現実に引き戻される。

しかし垣谷の打球には高さがあまり無い。外野の頭を越すくらいだろう、と見積もっていた。

だが小野の見積もりは甘かった。

垣谷の打球は高度を下げることなく、ぐんぐんと伸びていく。

そしてバックスクリーンに直撃した。

なんてパワーの持ち主なんだ。

垣谷はゆっくりとダイアモンドを一周する。

これで二点先制だ。

「垣谷!凄いな、ライナーでホームランだ!」

「いいや、小野どんを援護したかっただけどす。」

「でも、何で真ん中は打たなくて、ボール球を打ったんだ?」

「おいどんは真ん中より、遠い方が打ちやすいとです」

垣谷はいわゆる悪球打ちのようだ…しかし打ってくれてるので文句は言えない小野であった。
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/21 21:55  No. 13    
       
第十二話 初めての危機

一回にホークスが垣谷の本塁打で二点を先制したが、相手の先発は立ち直ったようで二回からは三安打しか許していない。

対する小野も抜群の球威を持つストレートで二塁を踏ませない。

しかし、八回表。バファローズの攻撃。

今まで失投をしていなかった小野が、甘い球をど真ん中に投げてしまったのだ。

「もらった!」

乾いた打球音がグラウンドに響く。

センターの垣谷が打球を追っていたが、やがて足を止め、行方を見送った。

スタンドに白球が吸い込まれる。

今までゼロが並んでいたスコアボードに「1」が表示される。

そして、ホームベースを踏む。

二対一。リードは一点に縮まった。

「タイムお願いします!」

赤城がマウンドに駆け寄ってくる。

「小野、お前疲れたんだろ」

「いや、まだ大丈夫だ」

「いいや、疲れた顔してるだろ。変化球投げろよ」

「…いや、直球でいく」

そして小野は八回を投げ、一失点で切り抜け、勝利投手となった。

しかし赤城は不安を抱えていたのだった。
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/21 22:20  No. 14    
       
第十三話 開幕一軍

「赤城、小野。もうお前らはここに来なくていい」

突然、二軍監督にこう言われた。え?解雇なの?

「あー、悪い。言い方が悪かったな。明日から一軍に合流してこい」

「え?つまり…」

「開幕一軍おめでとう。暴れてこい!」

「「はい!」」

なんと開幕一軍が決定したのだ。

ヤフードームにて

「やっと戻ってこれたな…って小野、あの外国人投手誰だ?」

赤城が指さす先には、大柄なピッチャーが投球練習を行っていた。

「ああ、助っ人のサイモン投手だろ」

「小野と同じ速球派だな」

挨拶しようとしたが、ある問題が発覚した。

日本語通じるのか?

すると、

「コンニチハ!サイモントイイマス!ヨロシクオネガイシマス!」

「ナイストミーチュー…って日本語!?」

「ソウデスガ?」

なんとサイモン投手は日本語が通じるようだった。
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/21 22:32 修正1回 No. 15    
       
第十五話 助っ人

その後は、サイモン投手がメジャーにいた頃の話や、ホークスの話で盛り上がった。

「デハ、ソロソロレンシュウニモドリマス」

「頑張ってください。」

「ソッチモガンバッテネ!」

そしてサイモン選手はマウンドに戻っていく。

ベースに足を引っかけて転んだのは見なかったことにしておこう。


その後、開幕メンバーが発表された。

1・大内(遊)
2・本多(二)
3・松田(三)
4・ペーニャ(DH)
5・内川(外)
6・赤城(補)
7・垣谷(外)
8・小久保(一)
9・長谷川(外)
先発・摂津 武田 小野 山田 大隣 サイモン
中継ぎ・神内 森福 藤岡 ファルケンボーグ
抑え・馬原 岡島
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/22 22:58  No. 16    
       
第十六話 開幕、そして

開幕してからホークスは三連勝。最高のスタートを切ることができた。

そして、今日は俺が登板する予定になっている。

相手はロッテ。投手力と機動力に長けている。

一回表、ロッテの攻撃

先頭バッターは早川。塁に出したくないバッターだ。

俺は赤城のミットに直球をたたきこむ。

「ストライク!」

155km。立ち上がりにしては速い球だ。

(良い球を投げるね…)

第二球。今度はカットされてしまったが、追い込んだ。

第三球は真ん中にストレート。

見送り三振に打ち取った。

そして後のバッターも打ち取り、仲間の援護を待つ。

しかし相手は唐川。長い投手戦の始まりだった。
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/25 20:10 修正1回 No. 17    
       
第十七話 動く試合

八回裏、ホークスの攻撃。

これまでホークス、ロッテ合わせてヒット五本という緊迫した投手戦が続いている。

スコアボードにずらりと並んだ0の文字がそれを示している。

先頭バッターは松田。これまで唐川に完璧に抑えられている。

(小野の頑張りにオレ達が応えないでどうする!)

一度、二度と軽くバットを振ってから打席に入る。

その目には確かな意志がさながら燃える炎のように宿っていた。

唐川が大きく振りかぶり、初球を投じる。おそらく今日一番の直球だろう。

しかし松田は最初から狙っていたかのように、それ以外は眼中に無いかのように、

ベンチにまで聞こえるかと思うほどにバットを振り抜いた。

快音。

それは目で追う必要が無いくらいの飛距離だった。

ワンテンポ遅れてホークスカラーのスタンドが沸き上がる。

松田は、それに応えるかのように右腕を高く掲げた。

「全員野球」と刻まれたリストバンドを着けた右腕を。

1対0。松田の一振りで試合が動いたのだった。
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/25 20:27 修正2回 No. 18    
       
第十八話 募る不安

九回表、ロッテの攻撃。一点のリードを守りきれば勝ちという場面。

先頭バッターは里崎。長打力には定評がある。

ここまではヒットを許していない。

ワインドアップからの一球目。

154kmの直球がストライクゾーンぎりぎりに収まる。

(確かに速い…だが直球だけで抑えられるほどプロは甘くない!)

第二球もさっきと同じコースに直球。

さっきと違うところがあるならば、里崎のバットから快音が響いた、ということだろう。

「……っ!打たれた!?」

ノーアウト一塁。リードが一点しかないだけに、なんとしてでも抑えたい。

しかし、次のバッターに送りバントを決められると、次のバッターには犠牲フライを許してしまった。

ツーアウト三塁。打たれるか、抑えるか。そのどちらかしかない場面。

内野手、そして赤城がマウンドに寄って来る。

「小野!もういい!勝つために変化球を投げてくれ!」

「うるさい!直球だけで抑えてみせるさ!」

「でも…だんだん打たれてるじゃないか!」

「赤城…そんなに俺が信頼できないのか?」

「違う!」

「なら…っ!黙ってボールを受けてくれりゃいいんだよ!」
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/26 19:56  No. 19    
       
第十九話 亀裂

「……っ!…わかったよ、勝手にしろ」

赤城はまるで興味を失くしたかのように声のトーンを落とした。

「暴投だけはすんなよ」

気が抜けたような声でそう言い、ホームに戻っていく。

「なあ、ルーキーくん。もっと…言い方とかあるんじゃないか?」

しかし心配してくれている、大内選手ら内野陣を半ば強引に守備位置に戻らせる。

(何にもわかっちゃいない…俺には直球しかないんだよ)

もし俺が一人でこの場にいたなら、きっと泣いていただろう。

しかしプロ意識のためか熱くなった目頭を押さえ、無理に涙を止める。

(これでいいんだ…これで勝ち上がって来たんだ…)

あとワンアウトなんだ。

誰に聞こえることなく、自分に言い聞かせるように呟く。

バッターは伊志嶺。一打サヨナラの相手にはしたくない。

俺は一呼吸置いてからモーションに入った。

俺には、これしかないんだ。

そして全力でボールを放る。もうスピードなんて気にしていられない。

快音。いや、正確には聞きたくなかった音が響く。

センターに伸びる放物線は、まるで俺の敗北を秒読みしているようだった。

そんなとき

白球を追う一つの影が見えた。
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/26 21:18  No. 20    
       
第二十話 辛勝

ボールを追う巨大な影。その正体はセンターを守っていた垣谷だった。

捕れば勝利が決まる。

「小野どんに…勝ってもらうとですっ!!」

フェンス際。垣谷がこちらを向いた。しかし打球には届かない。

フェンスの向こうにボールが落ちる。と、誰もが予想する。

しかしその予想は外れることとなる。

(絶対に…捕るどす!)

跳んだ。垣谷の身長が二倍になったかのような大ジャンプ。

そして、グラブにボールが収まるときの乾いた音が響く。

垣谷は尻で着地してしまった。しかしボールはがっちりとグラブに収まっている。

「…アウト!ゲームセット!」

場内が揺れるかのような大歓声。

勝ったのだ。プロ入り初勝利を小野は掴んだのだ。


しかし、主役であるはずの小野の姿は見えなかった。
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/26 22:56 修正1回 No. 21    
       
第二十一話 再起を目指す男

小野は、試合が終わり誰もいなくなったヤフードームにいた。

今日の試合は勝利投手になることができた。

しかし、勝った気がしない。そんな心の中だった。

マウンドに足を進め、自分のボールをポケットから取り出す。

そしてそのボールを、ヤケクソ気味に、全力で投げた。

溜めていた感情が言葉となって溢れ出す。

「何で…何で通用しないんだよ!何が足りないんだよ!」

何度もボールを放る。それはまるで八つ当たりのようだった。

そしてもう一球投げようとしたところで、

「小野君。もうやめておきなよ。怪我するよ?」

という声が掛かった。

その声の主は川口選手だった。

彼は六年前にエース候補として投げていたが、二年目の怪我が響き、今は二軍にいる。

「せっかく良い球投げられるんだ。肩大事にしなよ。」

「でも、もっと強くならないと…」

「強くなる前に大事なことがあるだろう?」

「……?」

言っている意味がわからない。

「まあ、気づくまでに時間がかかるかもね。でも、君ならきっと思い出してくれるはず」

「思い…出す?」

この言葉の意味を俺が理解するのは、まだ先のことだった。
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ロックされています   150参照ありがとう!  名前:ねこた  日時: 2012/07/27 19:05  No. 22    
       
番外編 一打席勝負

今日はプロ入りしてから初めてのオフ。つまり何もすることがない日だ。

そんなとき、俺のケータイが震えた。

(誰だろう?)

そして通話ボタンを押し、携帯を耳に当てる。

「もしもし、小野です。」

「ああ、雪姫だ。今日は暇か?」

一般男子はこれをデートの誘いとして受け取るだろうか。

しかし、俺は雪姫が野球バカなのは知っている。

「ああ。暇だが?」

「なら丁度いい。駅前に新しくできたバッティングセンターに行かないか?」

やっぱり予想通りとなった。

「いいぜ。今からでいいか?」

「なら、駅で待ち合わせよう。」

そう言って電話は切れた。

十分後…

「雪姫すまん。待ったか?」

「いいや、今来たところだよ。」

雪姫はハーフパンツに半袖Tシャツという、可愛さより動きやすさを重視した格好だった。

そこであることに気が付く。

「ん?髪、後ろでまとめてるんだな。」

「うっとおしいからね。ポニーテールなんていつ以来だか」

似合っているとは思うが、やはり素直に口には出せない。

「それじゃあ、雪姫の言ってるバッティングセンターに行くか」

そして二人で肩を並べて歩き出した。
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ロックされています   150参照ありがとう!  名前:ねこた  日時: 2012/07/27 19:17  No. 23    
       
番外編 一打席勝負(2)

五分ほど歩いただろうか。

大きな建物が目に入る。

「ここか?」

「そうだ。早く中に入ろう」

そして急かされながらドアを引く。

「うわ…広いな」

軽く二十打席はあるだろう。野球少年からサラリーマンまで、みんな打撃に夢中になっている。

「じゃあ私は適当に140kmくらいのに入るから、フォームのアドバイスをしてくれるか?」

言っておくが140kmは簡単に打てる球ではない。

「打てるのか?もう少し遅いのが…」

「大丈夫。慣れだ」

そう言いながら自分用のバットを構える。

「いやいやさすがに…」

快音。

「まぐれだって。たまには当たるよ」

また快音。

「………。」

またまた快音。

そのあとも快音を響かせ、雪姫は満足したようだ。

「フォームについて俺が教えることは無いよ」

「そうか」

「上手かったよ。驚いたさ」

「でも…小野の球を…打ちたい」

「え…?」
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ロックされています   150参照ありがとう!  名前:ねこた  日時: 2012/07/27 20:05 修正1回 No. 24    
       
番外編 一打席勝負(3)

河川敷にて。

「雪姫、ホントに全力でいいんだな?」

「ああ。おもいっきり投げてくれ」

雪姫の頼みで、特別に一打席勝負することになったのだ。

「わかったよ…行くぞ!」

力を抜かず、全力で初球を投じる。

雪姫はバットをぴくりとも動かさなかった。

「テレビで見るより速いね…」

「当たり前だろ、体感しないと分からないんだからな」

続いて第二球。全力の直球をど真ん中に。

雪姫の振ったバットに阻まれ、後ろにボールが飛ぶ。

「タイミングは合ってきてるのだが…」

「まさか当てられるとは思ってなかったよ…だけど次で最後だ」

最速最高の直球が走る。打たれる気なんてさらさら無い。

しかし…

「もらった!」

しなやかに体を回転させ、バットがボールに力を加える。

晴れ渡る空に金属音が響いた。


そして…

「チョコパフェ一つ」

「俺はコーヒーで」

俺は喫茶店でおごらされる羽目になった。

(雪姫…こいつ一体何者なんだ?)

一打席勝負は雪姫の勝ちに終わった。
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/30 11:29  No. 25    
       
第二十二話 過去

俺は、直球しか投げることができない臆病なプロ野球選手だ。

高校時代…

「やったな、小野。これで二人ともレギュラーだな。」

「ああ。二年生では俺達だけだもんな」

俺はこの高校で甲子園に行けるか、と聞かれたらならば、行けると即答するだろう。

それくらい先輩たちとの仲が良く、チームも明るかった。

そして七月。ついに甲子園にあと一勝と迫った。

「小野、今日も変化球で奪三振ショーを見せてくれよ」

「はい!監督!」

しかし相手のチームも勿論本気だ。赤城のタイムリーで一点取っただけで、後は打線が沈黙した。

迎えた九回裏。これを抑えれば甲子園。

一つ、二つと簡単にアウトを取り、あと一人。

しかし、そこから四球で走者を出してしまった。

「小野…次の打者は変化球が通用するか…」

「大丈夫だ、抑えてみせる」

そして赤城はホームに戻る。

そして得意のフォークで空振りを誘う。

しかし

(所詮こんなもんか…打てるな)

次の瞬間、ボールはスタンドに吸い込まれていた。

サヨナラ負けだった。
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/31 18:38  No. 26    
       
第二十三話 好敵手

俺は、打たれたというより先輩達の夏を終わらせてしまったという罪悪感に頭を悩ませていた。

ここ数日、ろくに寝られていない。

先輩達は俺をフォローしてくれるが、それがかえって辛かった。

あてもなくブラブラと町をうろついたあと、河川敷のバッティングセンターに入る。

バットを握っていれば、気分が軽くなると思ったからだ。

闇雲にスイングし、とてもバッティングとは言い難い無様な格好を晒していると、

「腰の回転が甘い」

いきなり、指摘を受けたのだ。

こいつのことは知っている。隣の市のスラッガーの大宮だ。

「ちょっと来い」

「え!?ちょっと引っ張るなよ」

そしてベンチに二人並んで腰掛ける。

口を開いたのは大宮だった。

「あの試合、残念だったな」

「何だよ。見てたのか」

「いい変化球を投げる投手がいると聞いたからな」

認められているのか、正直喜んでいいのか分からない。

「ただ…一ついいか?」
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/07/31 18:46  No. 27    
       
第二十四話 拒絶

いきなり切り出されたので、こっちとしても返事に困る。

「お前の野球には…足りないものがある。」

それが何だか俺には分かる。分かるさ。でも。

「悪りぃ。今日は帰る」

強引にバッティングセンターから出ていく俺を、大宮は止めなかった。

帰路の途中、大宮の言葉を思い出す。

分かる。大宮は俺の為に言ってたんだ。

でも…でもよ?

どこに投げても打たれる、一方的なゲームを。

俺はどうやって楽しめばいいんだ?
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ロックされています   Re: in ホークス  名前:ねこた  日時: 2012/08/03 19:10  No. 28    
       
第二十五話 過去

昔は純粋に野球が楽しかったんだ。小学校の頃にやっていた草野球は、本当に楽しかった。

でも、野球一筋で生きてくるにつれ、自分の技術が向上するにつれて、

野球は、勝つためのスポーツになっていたんだよ。

八年前。

「なんでゆきはそんなにカーブがまがるんだよ。ずるいぞ」

「これは【ゆきカーブ】っていってわたしだけのボールなんだよ」

「なら、それの投げかたおしえてよ」

「だめ。わたしだけのひみつ」

「それ、【ゆきスライダー】とか【ゆきフォーク】とかのときも言ってたよ」

「小野はストレートが速いからいいじゃない。それこそおしえてよ」

「えへへ、ないしょだよ」

「小野はずるいよ」

「む、ずるくない。でも【ゆきフォーク】の投げかたをおしえてくれたらいいよ」

「……うん。わかった」



今の俺も、八年前の俺も、どっちも真っ直ぐだけを追ってたんだ。

途中で変化球に逃げたけど。

また、今日も登板だけど…

何か、足りないような。
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