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記事閲覧  プロ野球・鯉の陣!U  名前: 広さん  日時: 2012/10/21 18:00 修正26回 HOME  
      
【プロ野球・鯉の陣!U】
〜プロローグ〜
広島東洋カープに1位指名された18歳、川井隆浩。彼の夢であったプロ野球を舞台に
笑いあり、熱狂ありの燃える試合を繰り広げる!
あの男の電撃トレード、ギャラを巡っての大騒動、主力の不振。まさに人生、森羅万象!!

※本小説は閲覧のみとなっております。作者以外の書き込みを固く禁止します。
【目次】
>>1   第1話・新たなる鯉伝説
>>2   第2話・隆浩の憧れ、カープの4人衆登場!
>>3   番外編・大波乱ギャラ騒動
>>4   第3話・お金に恵まれた(?)休日
>>5-8  第4話・オープン戦
>>9-12  第5話・独特の技術
>>13   第6話・新しい仲間
>>14-18 第7話・越えなければならない滝
>>19-20 第8話・立ち上がれ大引!
>>21-25 第9話・対中日戦
>>26   第10話・な・ん・だ・と―――――っ!?
>>27   第11話・大波乱
>>28-29 第12話・対喜多川戦
>>30-32 第13話・進化した喜多川
>>33-37 第14話・喜多川の新球種
>>38-40 第15話・歓喜
>>41-44 第16話・協力
>>45   第17話・ムラッ気の28歳
>>46   第18話・休養日
>>47-48 第19話・大鞆の打撃師匠
>>49-52 第20話・その男、マックス・サムス
>>53-55 第21話・レイズの獰猛な鷹、マックス・サムス登場!
>>56-64 第22話・対巨人戦
>>65-66 第23話・Mr.iron man
>>67-70 第24話・死球
>>71-85 第25話・He is new read-off man
>>86-91 第26話・帰ってきた助っ人
>>92-94 第27話・怪物、天海陽介降臨
>>95-96 第28話・天性のセンス、飯田海翔復活
>>97-98 第29話・暴れ馬
>>99-111 第30話・最速の称号
>>112-115 第31話・ホームスチール!?
>>116-120 第32話・終盤戦
>>121-127 第33話・ルイスと沢村
>>128   第34話・大引のルーツ
>>129-138 第35話・決着
記事修正  スレッド終了
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/04/29 02:25 修正3回 No. 60    
       
「パ、パームだ…」
隆浩が顔色を変えて呟いた。あまりの変化量に、さすがの大引もなかなか言葉が出なかったが、
しばらくして正気を取り戻した大引は、汗を垂らしながら飯田のもとへ歩いていった。
「飯田、あれは打てなくても仕様がない…気を落とさずに戦うんだ」
「は、はい……」
しかし、打てなかった飯田はやはり気落ちしているようだ。力なく返事をするとベンチへ倒れこむようにへなへなと座った。
「飯田さん…」
隆浩は飯田を心配しながら弱く呟いた。

「せやけど、打てへん球でもないわな」

その時だった、いきなり後ろから見たことのない顔のユニフォーム姿の人物が話しかけてきた。
「あ、あなたは…?」
隆浩は、誰なんだ?と言いたげな顔で言った。
「おぅ、オレは二宅(にやけ)ちゅうモンや」
「二宅さん…? あの〜ファンクラブの方ですか?」
二宅と名乗る男は、半分呆れ顔で言い返した。
「お前…オレの事知らんのか? 新米2軍投手コーチ、二宅」
その時、神庭にこちらの話が聞こえたようで、ガタッと立ち上がったかと思うと、二宅へ向かって早足で歩いてきた。
「し、師匠!」
「え? 師匠?」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/04/29 05:06 修正2回 No. 61  HOME  
       
「神庭さん? し、師匠って一体?」
「ほれ、広島のナックルボーラー『ニヤケ』のことですのー」
「え!? あ、あの伝説のナックルボーラー!?」
伝説のナックルボーラー・ニヤケ。
隆浩が高校1年の時に引退した、通称・変化球王。
パームの変化量とナックルの変化を融合した『ビクトリーパーム』の第一人者である。
ビクトリーパームの長所として、パーム以上の変化量を誇り、
ナックルのように空気抵抗で揺れ、打者の目を欺く、というものだった。
しかし、その性能ゆえ、決して容易に習得できるものではない。
かと言って、相当な投げ込みをしたからといって習得できるとも限らない。
限りなく恵まれたセンスと努力が必要なのである。
しかし、ビクトリーパーム最大の短所は、とてつもなく球質が軽い事にあった。
誰もが目を疑う高性能な変化球の為、当時かなりの脚光を浴びたビクトリーパームだが、
ジャストミートされたときの飛距離は相当なものだった。
かつて、あの長嶋茂雄、王貞治とも対戦した二宅だが、
長嶋と王に、合計でビクトリーパームを5発場外に運ばれているのである。
弱点を見抜かれ、直球派にコンバートしようとしたが、
もともと技巧派だったがために、直球の伸びが今一つだったのである。
そして、プロ野球人生17年目の夏、引退を表明したのであった……
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/05/12 19:41  No. 62    
       
「せやけど、あのパームにも弱点はあるで」
二宅は、相川の方を向いてニヤリと笑みを浮かべた。
「え? そ、そんなこと分かるんですか?」
飯田が信じられないような顔をして聞き返した。
二宅は見てみろよ、と呟きながら、2番・御村を指差した。

カキッ!

「ああ、だめだ。また外野フライだ…」
飯田が肩を落として呟いた。しかし、しばらくして飯田はある事に気付いた。
「ん? 待てよ? 普通バットの先に当たって外野まで飛んでいくか?」
それを聞くなり、二宅は待ってましたと言わんばかりの顔で言った。
「そうや! 相川のパームはかなりの変化量を追求した挙句、ボールの回転が中途半端になって軽い球になってもーたんや!」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/05/13 20:14  No. 63    
       
「そ、そうか! 変化量は多いけど球が軽い、要するに当てに行けば攻略は難しくないって事ですね!」
「そうや! 次からミートを心がけて打ってみぃ! そないしたら打てる! そして勝てる!」
二宅はそう言うと、さっさとベンチを出て行った。

試合は4回裏に突入した! そしてバッターは二宅にアドバイスをもらった1番飯田。
相変わらず切れ味のいい変化球を駆使し三振を量産している相川に対し、ここまで0対0。
果たして、飯田のこの打席で広島へ流れを寄せる事が出来るか!?
(飯田は今日俺のパームに太刀打ち出来とらん! ここもパームで翻弄して三振や!)
相川はいかにも楽勝というような表情を浮かべながら足元を均し始めた。
この時、飯田は頭の中で自分に、大丈夫大丈夫と繰り返し言い聞かせていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜回想〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「そうや! 次からミートを心がけて打ってみぃ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(とにかく球に当てる…余計な力を抜いてコンパクトに…球に当てることさえできれば…)

ビシュッ!!
シュルシュル……

(打てる!)

カキィ――ン!!

「な、なんやて!?」

飯田の打った打球は、軽く振り抜いたとは思えないほど鋭かった。
最初はレフトフライと思われた打球だったが、軽い相川のパームは打ってもなかなか落ちてこない。
段々とスタンドとボールとの距離が迫ってくる。

・・・

ガコォン!

飯田の打った打球は、空を飛ぶ一本の矢の如く、巨人側のスタンドへ突き刺さった。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/05/16 18:09 修正1回 No. 64    
       
「な、なんやて…俺の球が打たれた…?」
ここから相川は崩れ始めた。2番、御村にフォアボール。3番隆浩にもセンター返しを浴び、
さらには大引にも死球を与えてしまった。
「相川が崩れ始めたな…」
健太が腕を組んで呟く。その後ろのドアから、二宅が忘れ物をしていたらしく帰ってきた。
二宅は忘れ物のバッグを担ぐと、すぐさま相川に目を向けた。
「おぅ、どうやら飯田が突破口を見つけたみたいやな」
二宅は軽く笑みを浮かべ、清水の元に歩いていった。
「監督、ほな俺は帰るわ。」
「おう、お疲れ。また好きなタイミングで来てくれよ」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/05/21 19:10  No. 65    
       
〜第23話・Mr.iron man〜

飯田の本塁打から突如崩れ出した相川は、5回6失点で降板、
その後も巨人の追い上げはなく、6対0で試合は終了。工藤が今季初となる完封勝利を達成した。

〜〜〜〜〜〜〜〜試合の翌日〜〜〜〜〜〜〜〜

試合の翌日、カープの選手達が集められた。
清水は、全員が集まった事を確認して話し始めた。
「昨日の試合はなかなか良かったぞ。特に飯田のあの一発でチームに流れがグッと寄ってきた!」
その言葉を聞いた飯田は、多少照れながら頭を触った。
「そこで、この様な試合が続くようにコーチを呼んだ!」
その言葉を聞いた瞬間、選手達は騒然となった。
「大引さん、どんなコーチなんでしょうかね?」
飯田がすかさず大引に言った。しかし、流石の大引も、そこまでは分からない。
「う〜ん…誰だろうなぁ?」
しばらくして、清水はその場を静まらせ、新しいコーチを呼んだ。
ベンチの奥からけっこうゴツい男性がグラウンドへ入ってきた。その男を見た大引は、首をかしげながら言った。
「ん? なんか見た事がある気がするな…」

「俺の名は衣笠智秋(きぬがさ ともあき)! これからビシビシやっていくからよろしくな!」

「あ――っ! 思い出した! 広島東洋の衣笠2世、熱血漢で涙もろい!」
「涙もろいは余計じゃ!」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/05/25 22:05  No. 66    
       
「さ、みんな練習するぞ〜」
大引がチームを率先して練習を始めた。地味に無公表だが大引はキャプテンである。
軽く柔軟を終えた後、チームの選手それぞれに練習メニューが配られた。そのメニューを見て、飯田は何かに気付いた。
「ん? な、なんか練習量が多くなってないか?」
その言葉を聞いた隆浩は、すぐさまメニューに目をやった。
「ほ、本当ですね…なんか増えてます…」
ちなみに、このメニューは衣笠が考案したものである。

〜野手〜
・ダッシュ100本
・ベースランニング50周
・休憩10分
・キャッチボール
・シートノック80球
・近距離ノック50球
・フォームチェック30分
・素振り1500本
・フリーバッティング1時間
・ベンチプレス
・広島市一周
・ダウン

〜投手〜
・広島市一周
・キャッチボール
・投げ込み1時間
・休憩10分
・投げ込み1時間
・近距離ノック80本
・打球反応練習50本

となっている…
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/05/31 18:13 修正2回 No. 67    
       
〜第24話・死球〜
新コーチ、衣笠智秋の練習を乗り切り、今日から6月に入った。交流戦の時期だ。
段々と暑くなっていくこの季節。若き鯉たちは、一体どう成長していくのだろうか。

「……だ! 今日のスタメンはこのメンバーで行く。今日は交流戦の第一戦だ! 気合い入れて行け!」

ハイッ!

今日の相手は西武ライオンズ。3〜7番まで全員パワーが凄い重量打線で相手をたたみかけ、
今現在勝率.694を記録しているパ・リーグの首位である。

プレイボール!

『1番・センター、飯田』
そのアナウンスと共に、飯田が打席に歩いてきた。
飯田は打率.392。未だ好調を維持し続けている。
相手投手は洞爺湖高校から2位指名を受けて入団した駒井(こまい)。
その第一球目。鋭い直球が飯田のインローをかすめる。ストライクだ。
(かなりコントロールがいいな…そのうえ球もそこそこ速い…)

駒井は足を高く上げ、身長を活かして思いっきり振り下ろした。

ビシュッ!

ズバァ―――――ン!!

ボール!

(あんな高いリリースポイントからポンポン投げられると打ちにくいな…)

そして、駒井は間髪空けずに第3球目を投じた。

ビシュッ!!

その時だった。

ガンッ!!

ヘルメットの破片が飛び散る。飯田の後頭部に147km/hのストレートが直撃したのだ。
飯田は後ろに倒れこんだ。ヘルメットは当たった衝撃でヒビが入り、ホームベース上に転がり落ちた。

「飯田!」
「飯田さん!」

ベンチから大引と隆浩が出てきた。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/06/01 08:40  No. 68    
       
「飯田! 大丈夫か! 飯田!」
大引が飯田の体をゆする。観客は呆然となり、投手の駒井はマウンド上にへたり込んでいた。
「健太! 救急車を呼んでくれ!」
清水が叫ぶ。飯田の意識がもうろうとしている。
「わ、分かりました!」

こうして飯田は最寄りの病院に搬送された…

カープの精神的な支えである飯田が抜けたチームは、打線は沈黙、投手陣は踏ん張れず、6-0で完封勝利を許した…
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/06/01 11:00 修正1回 No. 69    
       
病院のベッドで飯田は寝ていた。そして、試合終了後に清水と大引が見舞いにやってきた。
清水は、飯田の様子を見ていた医者の後藤田に話を聞いていた。
「先生、飯田の様子はどうなんでしょうか…?」
後藤田は、片手を軽く上げて、大したことはないと呟いてから言った。
「大丈夫です、特に脳に損傷はありませんし、安静にしていれば3日足らずで出場は可能ですよ」
「そうですか…ありがとうございます」
しばらく飯田の病室で椅子に座っていると、飯田が目覚めた。
「起きたか…飯田すまん、今日の試合負けちまったよ…」

「試合…? なんの試合ですか…?」

「え?」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/06/09 09:37 修正3回 No. 70    
       
「おい飯田…何も思い出せないのか?」
飯田は俯きながら言った。
「すいません…何が何だか……」
清水と大引、飯田の3人は、病室で長い沈黙の時を過ごした…

飯田と清水が病院を出た頃、2軍投手コーチの二宅は、清水からの電話を取った。

「な、なんやて!? 飯田が記憶喪失!? な、なにがあったんや!?」
電話の内容を聞いた二宅は、飯田の記憶喪失に対して驚いていた。
「うんうん…そーか……ほんで飯田は試合に出れそうなんか?」
『いや、まだ分からん。野球のルールを覚えているか…それにかかってるな…』
「そーか…一応みんなには知らせとくわ」

そう言って二宅は電話を切った…
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/06/10 19:06 修正2回 No. 71    
       
〜第25話・He is the new lead-off man〜

「な、なんですって!?」

この一言が首脳陣控室の中に響く。
この声を発したのは栗原だ。
「い、飯田をこのまま試合起用するって…正気なんですか監督!」
清水は軽く手のひらを上げ、栗原を止めてから答えた。
「ああ、正気だ栗原。いくらなんでも、あいつが抜けたら困る」
栗原は間髪あけずに反論する。
「しかし…! 飯田は記憶喪失で野球のルールに対する反応が曖昧です! 足の速さには問題ありませんが…」
「それならいいだろ」
清水が途中から口を挟む。
「足に問題がないのなら、せめて代走でも使えるだろ! あいつの走力は相手のペースを狂わせる事が出来るんだぞ!」
「し、しかし…」
「大丈夫だ、全責任は俺にある。それにあいつ自身、記憶を失っても何故か野球だけは大好きだと思えると言ってるんだ!」
清水と栗原の間に長い沈黙が訪れ、しばらくして栗原が出した答えは…
「…分かりました。監督を信じます!」
「ありがとう栗原!」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/06/15 14:38  No. 72    
       
その頃ベンチでは、休憩している大引と隆浩が座っていた。
「しかし…飯田が1番から離脱か…飯田の分も、俺たちが頑張らないとな」
大引は頭をかき回しながらバックスクリーンの方向を向いている。
「そうですね…飯田さんが通常通りに野球が出来ない分、僕らが頑張らないとBクラス転落もあり得ますからね…」
隆浩は膝に手を置きながら俯いた。
「だが大丈夫だ。隆浩、お前は甲子園で何度もピンチを体験してきているはずだ。…去年のお前の甲子園を思い出せ」
隆浩は、しばらく目を閉じて俯いていた…
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/06/15 18:06 修正1回 No. 73    
       
しばらくするとベンチの中に清水が入ってきた。
清水は隆浩を見つけると、隆浩に言った。
「おい隆浩。今日の1番打者、行けるか?」
なんと、今日の先頭打者に隆浩を抜擢してきたのである。
「ぼ、僕が1番打者ですか!?」
隆浩は驚き、喜びながらも不安を隠せなかった。
飯田が築き上げた実質チーム2の一番打者を自分なんかが打っていいのか。
…一番多く回ってくる1番打者をやりきれるか。

これには流石の大引も驚きを隠せなかった。いくら隆浩には一目置いているとはいえ、
カープ打線の中で一番重要と言っても過言ではない一番打者に隆浩を抜擢するとは思ってもいなかったのだ。
隆浩は正直引き受け辛かった。もしも結果を残せずに飯田に恥をかかせてしまう事が怖かったのだ。
悩む隆浩に、清水は言った。
「正直俺も迷ったよ。飯田の代わりに1番を打てる奴がいるのか。…1番を打てるのはお前しかいないんだよ!」
その瞬間、隆浩の中で何かがみなぎった。

――そうだ。今打てるのは俺しかいない!
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/06/19 18:15 修正2回 No. 74    
       
「監督、俺やります!」
隆浩のその言葉を聞き、清水はにやりと笑みを浮かべ、大声で言った。
「川井隆浩、1番センター!」


こうして、隆浩がトップバッターとして打席に立つ初めての交流戦が始まった。
今日の相手はソフトバンク。好調な投手陣が光り、2位につけている。

『1番、センター・川井。背番号07』
そのアナウンスを聞いたカープのファン達はどよめいた。

「川井が一番なのか?」
「飯田はどうしたんだよ」

やはり1番は飯田だと思っていたのか、いつまでたってもスタンドはどよめいている。
「…やはり観客は飯田のケガをまだ知らんようだな」
打撃コーチの栗原が、ベンチから身を乗り出して言った。
一方の隆浩は、飯田の代わりに1番をやりきってやろうと必死の思いで打席に立っていた。
そして第一球目、137キロのストレートが隆浩の胸元を通り過ぎる。ボールだ。
相手投手の石川は、少し間隔を空け、第二球目を投げた。
135キロ程と思われる直球が、真ん中低めに投じられた。隆浩にとっては絶好球だ。
隆浩は正確に、かつ鋭くバットを振った。
そのとき、直球が突然軌道を変え、鋭く落ちた。フォークボールである。
135キロ、石川のフォークボールに、隆浩のバットは空を切った。
次は何が来る?ストレートなのか変化球なのか。
以前までは、石川のフォームが変化球と直球とで微妙に違っていたため、大体予測はついた。
しかし、今の石川は違う。直球と変化球との微かなクセを直して来ている。
こうなると、ただでさえコントロールとスタミナのある石川からヒットを打つのは難しい。
隆浩は、これまでにない重圧を感じていた。なぜなら、この打順は本来の自分の打順ではない。
飯田という先輩の打順なのだ。本来の3番なら、こんなに緊張することはなかった。
隆浩は初めて、1番打者に座る者の緊張感と重圧を味わった…
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/07/11 14:28  No. 75    
       
隆浩はなんとか落ち着こうと必死に自分に言い聞かせるのに精一杯になっている。
こんな状況では、打つどころかバットに当てるのも無理な気がする。
……はっきり言って監督が何を考えているのか分からない。

ストライク!

そうこう考えているうちに、いつの間にかカウントは1ボール2ストライクとなっていた。
追い込まれた。このままでは三振になってしまう。恐怖が頭の中をよぎる。
そして第四球目、インコースの高めに遅いカーブが投じられた。
隆浩は、体を思い切り回転させ、レフト方向へ弾き返した。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/07/12 17:41  No. 76    
       
しかし、レフト方向に飛んだ打球には高さがなく、ショート正面のライナーとなってしまった。
「ああ〜…ショートライナーか……」
大引が額の汗を拭いながら言った。清水は表情を変えていないが、大引の表情はかなり厳しそうだった。
やはり隆浩にトップバッターは早すぎたのではないか、ベンチ内のほとんどの選手がそう感じていた。
隆浩は、俯いたまま無言でベンチへ入ってきた。
「隆浩、大丈夫だ。まだ第1打席目だ。次の打席で打ってやれ」
声をかけたのは石井。さすがは中堅と言ったところだ。
隆浩は、「すいません」と弱々しく言った後、
ヘルメットとバットをベンチへ立て掛け、腰をおろした。

「監督、また来たで〜」

ベンチの入り口から、なにやら聞いた事のある関西弁が聞こえる。
そう、神庭に投手としての知識を教えた二宅である。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/07/28 20:04 修正4回 No. 77    
       
「飯田が段々ルール覚えてきたから連れてきたで」
二宅の言葉と同時に扉から飯田が入ってきた。
「飯田、まずはベンチの雰囲気に慣れてくれ」
そう言って清水が飯田の肩をポンと叩く。
二宅は、しばらくして隆浩が一番に起用されている事、
そしてあっけなく三振している事に気付き、ヒョコヒョコと軽い足取りで隆浩の横に座った。
「なあ隆浩、お前、正直いつもなら打てとった球打てへんかったからヘコんどるやろ?」
いきなり真剣な表情に変わった二宅が話しかける。
「ハハ…なんだか打てないんですよね〜…」
隆浩は無理に笑みを浮かべて答えた。…今は正直話を避けたい。
そんな隆浩に、二宅はまたも表情を緩めて言った。
「ええか? 知っとるやろーけど、1番打者は第一打席目は大体打たん。
せやけど、それは自分の後を打つ打者が打てるように球筋を見ることを重視しとるからや。
と言う事はやな、バットに当てて、しかもライナーまで打てたとなると…相当凄いってこっちゃ!」

二宅の言葉、太陽の如し。
この時、隆浩の中で何かが晴れた。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/08/01 17:54  No. 78    
       
広島の先発は、現在最多奪三振争いのトップに立っている工藤。1、2回裏の相手の攻撃を、
4安打されながらも踏ん張って無失点に抑え、味方の援護を待つ形となった。
試合は3回表、7番のサムスからの打順。
サムスは、ここ2試合ほどヒットを打つ事に苦しんでいたが、
今日はその不調を嘘のように感じさせるかのように、芯で軽くセンター前へ運んだ。
ここで打席に立つのは8番の原田。打率3割と良い内容の成績を見せている。
清水は、とにかく1点を、という考えで原田にバントをさせ、
1死2塁と得点圏にランナーを進めた。
そして、9番の工藤が打席に立つ。
観客は、もしかすると工藤の腕力ならタイムリーを打てるかもしれないという声もあったが、
軽く内野ゴロであっけなくアウトとなった。
そして、この試合の流れを左右するこのターニングポイントに、この男の名がコールされる。

『1番・センター 川井 背番号07』
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/08/04 10:30 修正1回 No. 79    
       
正直打てるとは思えない。未だ1番のプレッシャーと戦っている状況だ。
しかし、4年間不動の1番を張ってきた飯田の方がプレッシャーは大きかったはずである。自分を信じて打席に立った。

初球、第2球目はボール。第3球目は外角一杯にストライクとなり2ボール1ストライク。
バットが振れない。まるで腕が金縛りになったようだ。
その時、隆浩は二宅に言われたある言葉を思い出した。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『次の打席、楽しんでこい!』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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