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記事閲覧  プロ野球・鯉の陣!U  名前: 広さん  日時: 2012/10/21 18:00 修正26回 HOME  
      
【プロ野球・鯉の陣!U】
〜プロローグ〜
広島東洋カープに1位指名された18歳、川井隆浩。彼の夢であったプロ野球を舞台に
笑いあり、熱狂ありの燃える試合を繰り広げる!
あの男の電撃トレード、ギャラを巡っての大騒動、主力の不振。まさに人生、森羅万象!!

※本小説は閲覧のみとなっております。作者以外の書き込みを固く禁止します。
【目次】
>>1   第1話・新たなる鯉伝説
>>2   第2話・隆浩の憧れ、カープの4人衆登場!
>>3   番外編・大波乱ギャラ騒動
>>4   第3話・お金に恵まれた(?)休日
>>5-8  第4話・オープン戦
>>9-12  第5話・独特の技術
>>13   第6話・新しい仲間
>>14-18 第7話・越えなければならない滝
>>19-20 第8話・立ち上がれ大引!
>>21-25 第9話・対中日戦
>>26   第10話・な・ん・だ・と―――――っ!?
>>27   第11話・大波乱
>>28-29 第12話・対喜多川戦
>>30-32 第13話・進化した喜多川
>>33-37 第14話・喜多川の新球種
>>38-40 第15話・歓喜
>>41-44 第16話・協力
>>45   第17話・ムラッ気の28歳
>>46   第18話・休養日
>>47-48 第19話・大鞆の打撃師匠
>>49-52 第20話・その男、マックス・サムス
>>53-55 第21話・レイズの獰猛な鷹、マックス・サムス登場!
>>56-64 第22話・対巨人戦
>>65-66 第23話・Mr.iron man
>>67-70 第24話・死球
>>71-85 第25話・He is new read-off man
>>86-91 第26話・帰ってきた助っ人
>>92-94 第27話・怪物、天海陽介降臨
>>95-96 第28話・天性のセンス、飯田海翔復活
>>97-98 第29話・暴れ馬
>>99-111 第30話・最速の称号
>>112-115 第31話・ホームスチール!?
>>116-120 第32話・終盤戦
>>121-127 第33話・ルイスと沢村
>>128   第34話・大引のルーツ
>>129-138 第35話・決着
記事修正  スレッド終了
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2012/12/17 18:15  No. 20    
       
その頃大引は、車を出そうとしていた。親が入院している病院を訪ねるためだ。

ブゥ――ン

大引(・・・親父・・・・)

30分ほど運転し、大引は病院にたどりついた。

ガラガラッ

父「・・・健太・・・?」

大引「あ・・・だ、大丈夫か?」

父「・・・・お前、練習は?」

大引「休んだに決まってるだろ。こんな時に練習なんか出来るかよ・・・。」

父「何で休んでるんだよ・・・!」

大引「え!?」

父「練習に戻るんだ、健太!」

大引「でも・・・!」

父「王貞治の55本を超えるには、練習が必要だろう!」

大引「記録よりも・・・記録よりも命の方が大切じゃないのかよ!!」

父「そうさ!命は大切だ!だがお前は言っただろ!55本以上打って、俺を勇気付けるんじゃなかったのか!?」

大引「!!」

大引(そうだ・・・今まで俺は何をやってたんだ・・・親父を助けるためにあんなことを言ったんじゃないか!)

父「分かったんなら練習だ!車置いて、球場まで走ってこい!」

大引「おう!」


タッタッタ・・・

大引(これで心のモヤモヤが晴れた・・・これから思いっきりプレーするのみ!そして王貞治の記録を塗り替える!)

大引が改心しました!

大引はミートが5上がった!
大引は肩力が3上がった!
大引は守備力が3上がった!
大引はエラー回避が3上がった!
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2012/12/18 17:04  No. 21    
       
〜第9話・対中日戦〜

大引「皆集合〜。なんか監督が呼んでる。」

清水監督「なんかじゃねーよ。まあいいや、皆知っているとは思うが、今日は中日との試合だ。」

飯田(俺知らなかった・・・。)

隆浩(飯田さん・・・僕もですよ・・・。)

清水監督「そんでな、今日の先発は鷹田、お前が行け。」

鷹田「ハイ!」

清水監督「よし。今日の打順を発表するぞ。」

1番、センター 飯田
2番、ライト 隆浩

隆浩「えっ!?俺が2番ですか?」

清水監督「お前はもう十分試合も経験したしそろそろ、と思ってな。」

3番、ファースト 石井

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

清水監督「これで行くからな。」

ハイッ!

清水監督「よしゃ、解散〜。」


飯田「やったなヒロ!2番じゃねえか!」

大引「そろそろ起用され始めたんじゃないのか?」

隆浩「そ、そうですか?」

大引「当たり前だよ。」

御村「ヒロ〜、やったじゃねーか♪」

隆浩「あ、御村さん。」

御村「それで〜これから何の練習するんですか?」

大引「俺は筋力。」

飯田「右に同じ。」

隆浩「決まってないです〜。」

御村「そんじゃ、みんなで筋力トレーニングしようぜ。」

大引・飯田・隆浩「おう!!」

隆浩のパワーが1上がった!
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2012/12/21 20:44  No. 22    
       
中日ドラゴンズ 対 広島東洋カープ

      試合開始!!

中日の先発は倉田態、パームとカットボールが武器の実は超実力派ピッチャー。

倉田「実はって何だよ!?畜生!」

1番・センター・飯田

飯田(さて・・・倉田はまずどこへ投げる?)

倉田(飯田相手にインコースは厳禁だ。まずはアウトローのパームで様子を見よう・・・か。オッケー!)

ビシュッ!

ヒュルヒュル・・・

飯田(パームか・・・。)

バシーン!

ストライ――ク!

飯田(さすが倉田はコントロールがいいな。あいつなら多分次はカットボールだろう・・・。)

倉田(外角高めにカットボール・・・よし分かった!)

ビシュッ!

ククッ!

飯田(来た!カットボール!)

カァ――ン!

清水監督「おっ!!」

隆浩「行ったか!?」

・・・・・バシーン

アウトォ!

大引「ああ〜惜しいな〜。ライト後方のフライかぁ。」

飯田「くそっ!」

隆浩(よし!飯田さんの分も俺が打つ!)

倉田(コイツは・・・そうだ、ドラフト1位指名された川井隆浩だ。)

隆浩(初めて対戦するけどさっきのパームは凄かったな・・・俺はストレートを狙っていこう。)

ビシュッ!

ヒュルヒュル・・・

隆浩(パ、パームだ!)

バシーン!

ボール!

隆浩「ふぅ〜。」

隆浩(助かった・・・。しかしベンチから見たパームより大きく変化するなぁ。そりゃあ飯田さんも簡単に打てないな。)

倉田「審判、タイム!」

審判「タイム!」

倉田「松下!ちょっときてくれ。」

倉田はキャッチャーの松下をマウンドに呼んだ


松下「倉田、どうした?」

倉田「松下、この川井との勝負、真ん中で勝負させてくれ。」

松下「な、なんだって!?」

倉田「大丈夫だよ、変化球も混ぜるから。」

松下「わ、分かった。」

審判「プレイ!」

倉田「いくぞ川井君!!」

隆浩「えっ?は、はい!!」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2012/12/21 22:06 修正2回 No. 23    
       
ビシュッ!!

グオオッ!!

ズッバ――ン!

ストライ――ク!

隆浩「は、早い・・・。」


ドワアアアアアアアアア――――ッ!!
スタンドから鼓膜が破れそうなほどの大歓声が聞こえてきた。

大引「な、なんだ!?何があったんだ!?」

飯田「・・・お、大引さん・・・あれは・・・。」

大引「なんだ・・・・え?な、なんだって!?」

なんと、スコアボードに表示されていた球速は・・・

        『157Km/h』

隆浩「ひゃ、157キロ!?」

清水監督「むう・・・。」

前田健「速いな・・・。」

ビシュッ!

隆浩「うおおっ!!」

バキィ――ン!

ファ――ル!

隆浩「バットが・・・折れた・・・。」

倉田(よく当てたな、隆浩!だが、これで・・・)
倉田「終わりだあああっ!!」

ビシュッ!

隆浩「うっおおおお―――っ!」

バッキィ―――――――ン!

大引「なにっ!?バットが粉々になっただと!?しかもあのバットは折れにくいアオダモ製なのに!」

飯田「で、でも打球はどこですか?」

大引「はっ!そうか!打球は!?」


・・・・・・・・・パリ――ン!

倉田「・・・え?」

      『161km/h』

     パラパラッ・・・(ガラスが落ちる音)

大引「は・・・。」

清水監督「は・・・・。」

飯田「はいったぁ――――――――っ!!」

ドワアアアアアアアアアアアアア――――!!

実況「ホームランです!川井、倉田の渾身の161キロストレートを球場のライトに叩き込んだ―――っ!!」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2012/12/22 17:50 修正1回 No. 24    
       
倉田(ハハッ、まさか打たれるとは思わなかったよ。やるな、川井隆浩・・・。)

隆浩(すごい・・・大引さんも愛用しているアオダモ製のバットを粉々にするなんて・・。)


タン!

ホームイン!

飯田「よーし!よくやったヒロ!」

大引「凄かったな!」


清水監督「161キロ・・・か。」

前田健「はい。あ ん な 奴でも今はかなり速くなりましたよ。」

倉田「あんな奴ってなんだよ!畜生!バカにしやがって!!」

前田健「あ、聞こえてたのね。」

倉田「聞こえたわコノヤロー!あんな奴って強調しやがって!」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2012/12/23 23:41 修正1回 No. 25    
       
試合は現在4回!相変わらず倉田のパームとカットボールと速球は相手打者をもて遊ぶように次々と三振を量産。現在の奪三振数は5!ここで、1打席目はボールを見極めてこの打席に賭ける大引!

大引(さて・・・隆浩に打てた倉田の球・・・俺に打てないハズはないが速球か変化球かフォームが違わないために読みづらい。飯田もそうだったが変化球と見せかけての速球攻めはなかなか打てない・・・ここは狙いを絞るしかない・・・!)

ビシュッ!

ズバ――ン!

ストライ――ク!

大引(外角低めにストライク・・・相変わらず読めない。ここは・・・。)

ビシュッ!

大引(来たっ!)

カキィ―――ン!
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2012/12/24 03:03  No. 26    
       
〜第10話・な・ん・だ・と―――――っ!?〜

実況「試合終了ー!カープ、圧勝!」

倉田「はぁ・・・・。」

一体何が起きたのかを説明しよう!

〜〜〜〜〜〜〜4回〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カキィ―――ン!

倉田「なに―――――――!!?」

ガコォ―――ン

実況「ホ―――ムラ――ン!!カープまたしてもホームラ――ン!」

その後、気落ちした倉田は4回9失点でマウンドを降り、そのまま今に至る・・・
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2012/12/25 23:21 修正4回 No. 27    
       
〜第11話・大波乱〜

大引「皆集〜合〜。なんか監督が話があるってさ。」

清水監督「なんかじゃねーって言ってるだろ。」

ザザッ

清水監督「まあいいか。さて、驚くとは思うが、『トレードに成功した!』」

隆浩「ほー。」

飯田「ほー。」

大引「ほー。」

御村「そんで誰なんすか?」

清水監督「横浜DeNAから沢村だ!」

大引・飯田・隆浩「ええっ!?」

清水監督「先発投手が不足していたからチームにいすぎた抑え2人を交換したんだ。」

大引「むう・・・まさか横浜のエース沢村がウチに来るとはな・・・。」

飯田「戦力補強に成功したって事ですね。」

隆浩「戦力補強イベント多すぎでしょ・・・。」

沢村「よっ!飯田に大引さんだよな。これからよろしくな〜。」

飯田「おう、よろしく。」

大引「ところで沢村、なぜお前はトレードを受け入れたんだ?」

沢村「横浜には2軍に送らないといけないほど先発があふれてるんです。だから中継ぎ・抑え不足で・・・。」

大引「なるほど。だれも志願しないなかでチームの為にトレードに出た、というわけか。」

沢村「はい、そうです。まあ広島に入団したからには広島の為に尽くしますよ。」

大引「お前・・・なかなかいいヤツだな。」

新しくチームに沢村を迎え、戦力が上がった!
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/02/14 19:12 修正1回 No. 28    
       
〜第12話・対喜多川戦〜
交流戦を間近に備えた5月。ここで、広島にとってまさに宿敵と言える、阪神タイガースとの試合が組まれていた。前回、喜多川の微妙なコントロールと変化球になすすべもなく倒れた隆浩たちだが、これで勝てば晴れてリベンジが果たせる。選手達の士気も最高潮だった。
「ついに戦えますね、喜多川と!」
隆浩がワクワクしながら言った。実際に喜多川との対決経験がない隆浩だったので、他の選手の誰よりも打つのを楽しみにしていた。そんな隆浩に、石井が喜多川の球について言った。
「あいつの球は滅茶苦茶打ちづらいぞ隆浩。ストライクに絶妙に入るかと思ったらカットボールやシンカーで芯を外され、ボールから微妙に入ってくるシンカーはかなり打ちづらい。変化量が多い方が打ちやすいと思ったのはこれが初めてだよ」
隆浩は、はいと返事を返すと、フリーバッティングをやりにグラウンドへ出た。

カキィ――――ン!
カキィ――――ン!
カキィ――――ン!

(行ける! 今日のバッティングは絶好調だ!)
隆浩はこの日に備え、充分な睡眠、かなりの練習を積んできた。その好調のピークがまさにこの日だった。
「ほほ〜、ヒロもそろそろ本格起用出来るかもしれんな!」
清水監督が関心、関心、とつぶやきながら、隆浩のもとへ向かった。その清水の目は、何かを決心したようだった。そして、驚くべき事を隆浩に言った。
「隆浩! お前、3番を打ってみる気はないか?」
「ええっ!?」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/02/14 19:51  No. 29    
       
「じょ、冗談でしょ監督・・・?」
隆浩が苦笑いしながら清水に聞く。それに対し、清水は笑いながら答えた。
「冗談なんかじゃねーよ。お前は今日、喜多川と戦うために誰よりも真剣に練習に取り組んで来たろ?その半端ない努力で2番なんてとても打たせられるかよ。」
清水がなおも笑いながら言った。しかし、その顔には、なぜか説得力があった。そして、隆浩は迷わずに3番を打つ事を選んだ。

「ええ〜っ!?そ、それは本当ですか監督!」
大引が驚きながら清水に言う。
「ああ、本当だよ。石井には悪いが、あいつが半端ない努力をしているのに、2番なんか打たせたら失礼だろ。あいつは打てる。俺は信じてるんだ。」
その言葉に、大引も石井も、チームメイト全員が納得し、隆浩を3番として正式に打順に組み込んだ。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/02/15 19:10 修正1回 No. 30    
       
〜第13話・進化した喜多川〜
時間は午後4時。ついに試合が始まった。阪神の喜多川はマウンド上で自信に溢れた顔で軽く肩慣らしをしている。
「あいつ・・・前よりもノビがある球を投げてないか?」
大引がぼそっと言う。その言葉を聞いた石井は、よく喜多川の投球練習を見て言った。
「確かにノビが良くなってますよ喜多川の奴。それに相変わらずコントロールもいいですね。捕手の指定したコースに推定で誤差2センチ以内で入って来てます」
石井がぞっとしながら腕を組んだ。
「俺たちだけじゃなく、喜多川も成長してたって訳か・・・。今日の試合も厳しくなるぞ・・・」
大引が厳しい顔つきで言った。

「プレイボ――ル!!」

審判の声とともに、両軍ベンチの視線は、喜多川と1番打者である飯田に移った。
喜多川は大きく振りかぶり、力強く第一球目を投じた。キャッチャーミットに弓矢のような鋭い球が突き刺さる。飯田は、喜多川の球のノビが良くなっているのを確信し、再び構えた。
(大丈夫だ・・・球をよく見て当てて行けば打てない球じゃない)
飯田は自分に言い聞かせた。そして第二球目。

キィン!

ファ――ル

飯田はアウトローのきわどい速球をおっつけてファールにした。前回と比べて球の球威までも上がっている。飯田の手はビリビリとしびれた。

「やっぱり威力がある球だな」
ブルペンから投手コーチの健太が帰ってきた。
「あ、前田コーチ。やっぱりって喜多川の球を打った事あるんですか?」
隆浩がベンチから立って聞いた。
「いや、勘が当たっただけだ。喜多川は足腰が強い。それに腕の振りだってすごく早いだろ。球が重いはずさ」
隆浩はなるほどとつぶやきながら、自分のバットをボックスから引っ張り出した。

キィン!

ファ――ル

飯田もなんとか打ってやろうと必死に食らいついている。初回ながら、マツダzoomzoomスタジアムは大歓声が響いていた。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/02/15 19:54  No. 31    
       
間をあけて喜多川は第4球目を投じた。その球は、インハイのきわどいコースに入ってきた。その球を、飯田は振りぬいたのである。

カキィ――――ン!!

両軍ベンチは総立ち。打球の行方を追った。
しかしあとひと伸びがない。レフト後ろのフライに終わった。カープの応援席からはたくさんのため息が聞こえた。

キィン!

パシッ

アウト!

2番の御村はどん詰まりのファーストフライに倒れ、ついに隆浩の出番がやってきた。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/02/17 13:20 修正1回 No. 32    
       
隆浩は頭の中で、大丈夫、大丈夫と繰り返しながらバッターボックスに入った。隆浩はワクワクしていながらも冷静だった。そして、しっかりと足場を固め、バットを構えた。
そして第一球目、隆浩はタイミングをつかむために見送った。喜多川の140キロ前後の速球がストライクゾーンを通過する。隆浩は大体のタイミングをつかむと再び構えた。
(やっぱりノビがある・・・芯でとらえないと飛ばないぞ・・・)
隆浩はそう思いながらも、大丈夫と頭の中で繰り返す。そして喜多川は第2球目を投じた。喜多川の投げたボールは、外角低めにきわどく入ってくる。隆浩はバットを思いっきり振った。しかし、少しずつボールが外へ逃げていく。カットボールだ。隆浩は辛うじてファールで逃げたが、隆浩にとても重たい緊張感がかかった。その緊張感とは、以前石井が経験した、変化するかしないかを見破らないといけない緊張感だった。隆浩は思った。石井でさえ打ち破れなかった緊張感を、自分なんかが打ち破れるのか、と。その時、ベンチから声がかかった。石井の声だ。
「隆浩――! お前なら打てるはずだ! 今日のお前のバッティングは絶好調じゃなかったのかー!?」
石井はただ励ましたつもりだったのだが、隆浩にとっては勇気を奮い立たせる一言となった。そして第三球目、喜多川はインハイのきわどいボール球を投げた。隆浩はボールの回転と速度を見極めた。そして出した結論は・・・
(カットボールだ! 入ってくる!)
隆浩の推測通り、ボールはインハイへ入ってきた。そして隆浩は、思いっきりバットを振りぬいた。

カキィ――ン!

白球は喜多川の頭を越え、センター前に落ちた。隆浩はついに打ったのである。たった一本のヒットだが、広島のベンチは歓喜に包まれた。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/02/17 20:53  No. 33    
       
〜第14話・喜多川の新球種〜
隆浩のヒットで流れが寄ったものの、初回は結局無得点で終わった。0対0のまま試合は進み、ついに9回までやってきた。今日無安打の飯田、なんとしても塁に出る、と粘って粘って7球目になんとかライト前に落とす。2番御村のバントも決まり、打順は3番の隆浩!今日は2打数の1安打。そのうちアウトになった方はピッチャーライナー。隆浩は、タイミングをだんだんとつかんで来ていた。唯一ヒットを打った隆浩を前に、喜多川と捕手の阪井はマウンドで話し合っていた。
「喜多川、新球種を試すぞ」
阪井が喜多川の肩に手を置きながら言った。そして阪井は位置に戻ると、審判にすいません、とつぶやき、試合を再開した。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/02/18 19:56  No. 34    
       
隆浩は肩の力を抜き、ゆっくりと構えた。喜多川はマウンド上で不気味に笑うと、第一球目を投じた。150キロ前後の剛速球がストライクゾーンを通過する。なんということだろうか、9回だと言うのに球威が少しも落ちていない。それどころか球速が速くなっている。それに喜多川の目は、まさに打たれないと言う自信に溢れていた。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/02/19 18:09  No. 35    
       
喜多川はロージンの粉を手につけると、深呼吸をして第二球目を投じた。アウトコース一杯に速球が入ってくる。しかし、そこから微妙に曲がった。カットボールだ。隆浩はバットを止め、ボールで逃れた。そして第三球目、インハイのストレートを隆浩は叩く。しかしぐんぐんと切れていきファールとなった。
(喜多川、使うぞ新球種を)
キャッチャーの阪田が正確にサインを出し、コックリとうなずいた喜多川は、第四球目を投じた。なんと、140キロのボールが真ん中低めの甘いコースに入って来た。隆浩は見逃さずにその球をジャストミート・・・するはずだった。しかし、その球が見たこともない変化をしだした。140キロのストレートにブレーキがかかり、ストンと滑り落ちてきたのだ。芯を外された隆浩は空振りし、あえなく三振に倒れてしまったのである。
この球にスタンドは呆然、そしてベンチは騒然。
「あ、あの球は・・・」
飯田が汗を流しながらつぶやいた。変化球の知識があまりない飯田に対し、キャッチャーのため変化球に詳しい大引が説明し始めた。
「フォッシュだな。日本球界ではあまり知られていないから驚くのは当たり前だろうな。横回転で、ブレーキがかかりながら滑り落ちる特殊な変化をする球だ。だが、喜多川のフォッシュはかなりキレがいいし変化量も多い。打つのは難しいぞ・・・」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/02/20 19:32 修正2回 No. 36    
       
喜多川の新球種フォッシュに、カープ打線はついていけず凡退。ついに9回の裏へと突入した。
阪神のベンチの士気は上がり、多くの広島ファンがこの回で終わってしまうかもしれないと誰もが思ったほどだった。
広島先発の鷹田は、スローカーブと変化量が多くキレがいいフォークで何とか抑えてはいるが、
打線3順目となってだんだんと投球パターンも読まれ始めて来ていた。隆浩はなんとなく嫌な予感がしていたが、まさにその通りになった。
阪神の三番打者でキャッチャーの阪田が鷹田のフォークを初球攻撃。レフト前のクリーンヒットとなりノーアウト1塁となる。
しかも4番の三塁手、城岡(しろおか)にライトオーバーの打球を打たれた。幸い城岡の足が遅かったため二塁打にはならなかったが、ノーアウト1、3塁の大ピンチとなった。
ここでスクイズでもされたら、簡単にサヨナラになってしまう。ここで監督の清水は鷹田を諦め、先発で抑えも出来る工藤にマウンドを託した。
工藤は前回、工藤カットで9球の完全三者三振を成し遂げている。ここで、チームの勝敗は工藤にかかった。
そして第一球目。ブルペンで作った肩で151キロを記録。ムードの低い選手達のムードを上げた。そして第二球目を投じた。
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/02/22 19:46 修正3回 No. 37    
       
工藤の第二球目、なんと相手打者の構えがヒッティングの構えからバントの姿勢に変わった。スクイズだ。
工藤の威力のある球に押され、後方のバントフライになった。三塁走者は塁に戻り、
打ちあげた打者はバッターボックスで、落ちてくれと言いたげな顔で打球の行方を見た。
大引はキャッチャー後方のフライを追いかける。だがかなり捕るのは難しい。大引の足で、果たして追いつけるのだろうか。
「お、大引さん! 危ない!」
ファーストの石井が叫ぶ。あの球を捕ると、アウトにはなるが、金網で出来たバックネットに激突してしまう。
「うおおおっ!!」
大引は気合を入れて頭から捕りに行った。3万人の大観衆の目は、大引のグラブにくぎ付けになった。

飛球を捕る音と同時に、金網に激突した音がスタジアム中に響いた。
しばらくして大引が立ち上がり、審判にグラブを見せた。その中には、スタジアムの土で茶色になっていた白球が、しっかりと掴まれていた。

アウト! アウトォ―――――!!

この瞬間、3万人の大観衆から敵味方関係なく大歓声が響いた。大引は捕った。
数々の名捕手に恐れられていたあのファールフライを、大引は捕ったのである。体を張って・・・
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/02/24 18:26 修正6回 No. 38    
       
〜第15話・歓喜〜
工藤の剛速球で、相手の5番打者をファールフライに打ち取った。しかし、工藤は自分の肩に違和感を覚えていた。ブルペンで投げ込んでいた時から
気にしてはいたが、大したことは無かったためそのまま登板した。そして相手打順は6番井上。違和感を覚えながらも全力投球する。
高めにきわどくボールになった。第二球目もインハイに高く外れ、球が早くも浮いてき始めた。
工藤に異変があると判断した大引は、審判にタイムを告げると、マウンドに駆けて行った。
「工藤、お前もしかして肩が痛いんじゃないか?」
大引は目を細めながら言った。
「だ、大丈夫ですよ大引さん。ほ、ほら!」
工藤は笑いながら大雑把に肩をぐるぐる回してみせた。しかし、大引には分かっていた。肩に違和感がある事を。
「隠すな工藤。お前は一軍の守護神なんだぞ」
「う・・・」
工藤は黙り込んだ。そして、しばらくしてから言った。
「ブルペンに入った時から違和感があったんです。でも、大したことはなかったのでそのまま登板したんですよ」
「そうだったか・・・よし工藤、お前、今日はちょっと休んだ方がいい」
大引は冷静にベンチを見ながら言った。しかし、工藤は反対した。
「いえ投げます、俺は守護神ですから。チームに迷惑をかけることはできません!」
この言葉に大引は厳しく言った。
「何を言ってるんだ工藤! お前が肩を壊せばそれこそ大迷惑だ! お前は守護神なんだろ? 今日壊して残りの試合で投げれなくなったらどうするんだよ!」
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記事閲覧   Re: プロ野球・鯉の陣!U  名前:広さん  日時: 2013/02/26 18:26 修正2回 No. 39    
       
大引は工藤を見つめながら続けた。
「俺は高校時代キャッチャーをやっていた。そしてある日の試合での事だった。エースの投手が肩の痛みを訴えたんだ。俺は大したことはないと続投させたんだが、それが大間違いだったんだ! あと一人で勝利と言う時にエースの肩が悲鳴をあげ、野球というスポーツの道を諦めざるを得なくなった。だから! お前をアイツの二の舞にさせたくない!」
工藤はこの言葉を聞き思った。投げられるだけでも幸せなことだと。そして工藤は降板を選んだ。
「大引さん、俺が間違ってました。肩が回復したら、この試合の分を自分の最高のピッチングで取り戻します!」
そういって工藤はベンチに戻った。

広島東洋カープ 選手の交代をお知らせいたします 
ピッチャー 工藤に代わりまして 神庭 背番号24

「よっしゃあ―――! ワシの出番ですのー!」
ベンチから威勢よく神庭が飛び出してきた。
「な、なにぃ!? あ、あいつピッチャーも出来たのか!?」
神庭はなんと世にも珍しい二刀流だったのだ。さらに、しっかりと変化球も習得していた。
「驚きましたよ監督。代打の切り札である神庭がピッチャーも出来るなんて」
投手コーチの健太が苦笑いしながらつぶやく。
「あいつは金の話になるとどこでも志願するからな・・・」
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