Re: プロを目指せ 名前:アチャ 日時: 2015/11/11 23:32 No. 140
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第140話〜怠らぬ努力〜
「フッフッ」
新年1月1日。朝3時50分。外がまだ暗い中紅は走りこみをしていた。 外の気温は5度を下回り、北風も強い。
口から出る息は白く、耳も赤い、寒さの証明だ。
なぜ新年早々紅は走りこんでいるのか。それは久々に投球してもイマイチ不満があったからだ。当然投げ込みも必要だが下半身を徹底的にいじめつけてから投球練習をする紅にとっては走りこみは必須項目だ。
納得がいかなかった。己に納得したくなかった。年末最後の練習で投手を務め、被安打0に抑えたものの己のボールに納得はできなかった。力のある強打者ならいとも簡単に弾き返されたであろう。まだその程度の甘さだ。球威がほとんどなくコントロールのいい球はそこに来ると詠まれたら一巻の終わりだ。と紅は考える。
『いいところまではきた。だがまだまだ不足はしている。怪我をしてチームに迷惑をかけた。先輩方を甲子園に導くことはおろか奴らとも全然試合ができてなかった。最後の1年。夏だけでも俺はチームを導き、頂点に輝く。俺の力で。そのためには鍛錬が必要。失った時間を取り戻しそれ以上のパフォーマンスを発揮するには…そして二度とあんな記事は書かせはしない。…いいや、書かれたのは構わん。現状事実だ。だが夏には、いやそれ前に俺が頂点に立ってやる。必ず…』 紅は平静を保ちつつも脳裏にある記事が浮かんでくる。
それは弟である祐樹が購読している野球雑誌のある記事だ。
そこにはこう書かれていた。故障により輝きを失い新平成の怪物紅優生の時代は終わりを告げ、時代は影野成瀬の2トップに移り変わったともいえよう。という見出しとともに白黒写真ではあるが地区大会で優勝を納めマウンドでガッツポーズをする会田高校の影野と土佐高校の成瀬が移りだされていた。
過去にこだわらず今現在将来しか興味ない紅とっては過去の栄光などどうでもいいことではあるが怪我を理由に時代を終わったことにされるのは紅にとって屈辱以外なにものでもない。怒りはない。現状の自分が物が立ってる。だが時代は終わってもいなければ始まってもいない。新たな高校野球の時代を作るのは誰になるのか。
ようやく夜が明けたのか日が昇ってくる。初日の出だ。坂を上る紅の後ろに紅く輝く初日の出。
初日の出に照らされる男はいつもにまして輝かしく見えた。
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