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ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 06:37
皆さんに私から、重大な告知をしなければなりません。ついに私は決意しました。私が自分の家の印刷機で紙に刷っていた小説の第1章から第9章までを、可能な限り毎日、このズダダンに発表したいと思います!このパワプロファイターこと「タカハシユウジ」が! この小説、その名も「イーグルスの星」!
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Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 15:15 修正2回
No. 77
大声で自分が投げたい球をバラしてしまった。味方と相手共に唖然。当然、藤原も原田もそうだ。マスコミも唖然。監督とコーチたちはあまりにものこの事態に驚きの顔を隠せなかった。そんな秀行に、木村は怒りをあらわにした。
「秀行殿、拙者は確かに新参者でござる! だが、自分もプロだ! 今のそなたのナメきった発言は聞き捨てならぬ! 見事なまでに打ち返して見せようぞ!!」
河田はこの事態を重く見ざるを得なかった。彼はマスクを取り、秀行のもとへ駆け寄った。そして河田は言い放った。
「おい、秀行! お前少し生意気だぞ!! 新米のお前は先輩のある俺のサインに従えばいいんだよ! わかったな!」
しかし、秀行は間髪入れずに反発した。
「いや、河田さん、失礼ですがあなたのリードは間違っています! 木村さんは今、打つ気満々で力んでいるように見えて、実はどんなクサいコースの遅い球でも食らいついてテキサスヒットにしてしまう技術があります。もし、今俺の弟の正が女房役だったらアンタのようなサインは絶対に出さない! 要するに、河田さんのよりも正のリードの方がはるかに優れている!! とにかくカットボールです! そして、これから俺が予定投球回数に達してマウンドを降りるまで、この俺がサインの主導権を握ります。いいっすね! それに……」
「なんだ?」
「俺の球は『打たれない自信』がありますから!!」
「……!」
河田は憤慨したような表情を浮かべたが、何も反論することができず、恥ずかしそうな表情を浮かべたながら、しぶしぶと戻っていった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 15:19 修正1回
No. 78
ヤケクソになった河田は内角で高さが半ばにミットを構え、バンバンッ! と拳で叩いた。思いっきり来い! と言う意味だ。秀行は「フッ」と笑った。そして、渾身のカッターを木村の内角めがけて投げ込んだ。
「もらったでござる!」
木村はフルスイングした。しかし、秀行のカッターのキレ味は誰もが予想だにしていなかったようなものだった。案の定、えぐられた。
グシャーン!!
バットが粉々にへし折れた。ピッチャーゴロだった。
「うう……、無念、無念……だ!」
木村は一塁を踏むまでもなくベンチに悔しさで体を震わせながら、戻っていった。一方の秀行はしたり顔を浮かべた。そして、心の中で叫びたいような高揚した表情をも浮かべた。
紅白両軍、首脳陣、そしてマスコミからは盛大な拍手や歓声が沸き起こった。一部始終をキャッチボールをしながら見ていた三田は「やるなぁ」と薄笑いを浮かべてつぶやいた。そして、三番の榎本葵は、秀行の宝刀「高速カーブ」の三連投にまったく歯が立たずに、空振り三振を喫して紅組の一回表の攻撃は終わったのだった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 15:22
No. 79
これで、第八章は終わりです。次がいよいよ第九章です。三田吉男の出番がやってきます。期待していてください!
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 15:25
No. 80
第九章
紅組の攻撃は終わり、白組ナインはベンチに戻ってきた。秀行が駆け足で戻ってくると、ベンチを温めていた先輩たちから頭をバシバシたたかれ、手荒く祝福された。
スゲーな! おめぇ! 投げる球バラしといて、バットをへし折るなんてよ!
さすが甲子園のスターだぜ!
このっ! 超絶技巧投手め!!
特に、藤原と原田が秀行に押し寄せてきた。
「秀行君、キミはどうやってあんな球投げるんでありんすか!? コントロールも相変わらず凄いでありんす!」
「ほんとに羨ましいよぉ〜。僕もあんな球投げてみたいなぁ」
秀行と藤原、原田はこのイーグルスの仲良し三人組だ。秀行は親友二人からの祝福にさすがに笑みを隠せなくなった。
「ありがとう! 二人とも。でも……」
「「でも?」」
「まだ……、俺のノルマは終わってないんだ。さっき、マスコミに言った『公約』を果たさなきゃならない。いや、それ以前に俺の目標だからな! とにかく、三田には負けないぞ!」
「その意気でありんす! 秀行君!」
「あと2回、頑張れ!」
秀行は、ありがとう! と二人に感謝した。そして、水を少し飲んで、ベンチで一息ついた。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 15:29 修正1回
No. 81
これから、白組の攻撃が始まる。紅組の先発投手の三田はゆっくりと腕を回しながら、マウンドへ向かっていた。一方、1番打者の岩尾はのほほんとした表情で打席に向かっていった。緊張感は、はたから見ると全然ないように思えた。だが、三田はそんな彼に全然油断していなく、むしろ警戒していた。
「コイツは……、一番気をつけなければならん相手だろう……」
そうつぶやいた。
岩尾は、ゆったりとしたフォームで左打席についた。ちなみに彼は右でも打てるので、スイッチヒッターである。三田と岩尾が相対した。運河捕手がサインを出した。三田は頷いた。そして、目をキッとさせて、第一球を投げた。
「これでもくらえ!」
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 15:34 修正1回
No. 82
いきなり持前の、落差の大きいフォークだった。しかし、岩尾は平然と見送った。真ん中低めギリギリだった。
「……、ボール」
主審はそう判断した。
「なに!?」
思わず、三田は声を上げた。ボールは若干一個分外れたのだ。それを見ていた秀行は「俺だったら今の、入れてたよ。三田」とニッとしながらつぶやいた。
「むぅ〜ん」
相変わらず岩尾はこんな口調でぽわ〜んとしている……様に見える。とにかく、選球眼が普通の選手よりも突出して優れているのも、彼の特徴である。運河は首をかしげざるを得なかった。
運河は内角高めの直球を要求した。少し甘めだ。三田はそのサインに「チッ!」と舌を鳴らさざるを得なかった。でも、彼のコントロールからしたら仕方がない。そして、うなずいて、投げた。しかし……。
ポコーン!
岩尾はいとも簡単にこの球をさばいてのけた。結果はレフト前ヒットだった。岩尾は無表情に一塁を踏んだ。
「……、くそ!!」
三田は大きな声で吐き捨てた。運河は仕方なさそうに首を横にぶんぶんと振った。
ノーアウト、ランナー一塁の場面になった。次は、二番の藤田だ。彼も足が速い。しかもバットコントロールが抜群で、非力ながらも逆方向に強い打球が打てる打者だ。そして彼は一軍でも活躍している準主力であり、今は二軍調整中だ。三田は、岩尾の足の速さは承知していたのでセットポジションになり、クイックで投げようと考えていたところ……。
「おい! 三田! 気をつけろ!」
運河の叫び声だった。三田はすぐさま一塁を見た。
「なんだ……!? このリードは……」
三田は愕然とした。それも無理はない。なぜなら、ランナー岩尾のリードはヤクルトスワローズの比屋根選手や、巨人の往年の韋駄天である鈴木選手に匹敵するぐらいの大きなものだった。4メートルは離れている。それはまるで、「どうぞ、けん制して見なさい」と挑発している様だった。三田は彼に最大の注意を払った。チラチラ、チラチラ……。バッターの藤田に集中できない。そして、ついに三田はヤケクソぎみになった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 15:37 修正1回
No. 83
三田は怒り狂った顔をして、勢いのまま全力でけん制した。しかし!
シュタタタッ! ズザー! 岩尾はアウトにならなかった。三田はショックを隠せなかった。明らかに動揺している様だった。運河は彼のもとへと駆け寄ろうとしたが、思いとどまり、ストレートのサインを出して、外角低めにミットを構えた。三田は、ドギマギしながら投げようとしたところ、ついに、岩尾が走り出した! 運河は急いで立ち上がり、極端に外角高めに直球を要求した。三田は無我夢中でクイックして投げた。そして、運河無志太郎は強肩を発動した。
「うおおおお!!!」
バビューン!!
しかし……、球審はポーズをとるまでもなく、「セーフ」と言った。三田と運河は「バカな!?」と言いたいような顔になった。三田は思わず口走った。
「クイックで投げてあんなに外したのに、いとも簡単に盗塁されるなんて……」
ノーアウト、ランナー二塁に局面は変わった。秀行は事の成り行きを冷静に観察しながら、キャッチボールをしていた。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 15:43 修正2回
No. 84
「ファーボール」
藤田は四球で歩いた。
ノーアウト、ランナー一塁二塁だ。
そして、打撃センスに定評のある中島俊哉がゆっくりと打席に入ってきた。一方、ベンチでは新固がこのような三田を心配し、ネガティブになっていた。
「三田はもうこの時点でふらふらだニャー。間違いなく中島に甘い球を痛打されて、一点や二点は取られれるのニャー。ニャーロー? 監督」
だが、木本の見かたは違った。
「いや、三田をよく見てみろ」
「え……、お!? おお!」
新固は驚いた。そして、秀行も感じていた。
「三田の……、様子が変わった!」
秀行は確信して言った。三田は、マウンドで仁王立ちし始めた。何かが変わった。このピンチが、三田を覚醒させた。彼には、何か得体の知れないオーラがまとわりはじめた。この状況のときの自分の心境を、三田はあとで次のように語っている。「その時、私の心に火が点きましてね。そう。『……、ここまでは前座だ。見ていろ、秀行』ってね。そう心の中で思いました」
三田は自ら運河にサインを送った。
運河はそれに大きく驚いた。だが、サインを承認し、内角低めに構えた。三田は叫んだ。
「くらえ! 俺の伝家の宝刀の一つを!!」
シュルルルル!
見た目は普通の直球に見えた。センスのある中島は、難なく対応しようとした。しかし……。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 15:48
No. 85
その球は、鋭利な刃物のように、鋭くズドーン! と落ちた。中島は見送らざるを得なかった。いや、とても打てそうになく、手が出なかったのだ。球審はその球に身震いしながら判定した。
「ス……、ストライ―ク!」
これこそ、三田の魔球の一つ、その名も「降臨」である。スプリット・フィンガー・ファーストボールよりも速く、鋭く、そして重く落ちるのだ。三田の顔は得意満面の笑みを浮かべていた。そして、秀行に目をやる。それはまるで「どうだ! 見たか! 秀行よ!」と、言わんばかりの。この球を見たとたん、中島は体をぶるぶる震わせた。なんと恐怖感を感じたのである。彼は空振り三振に終わった。全球が「降臨」だった。
秀行はキャッチボールどころではなく、三田を脅威の念で見つめざるを得なかった。
「すごい……。俺よりも強力な魔球を持っていたなんて知らなかった……」
その後、三田は普通のフォークと降臨を見事に使い分けて、四番の雪、五番の横川も三振に仕留め、
三者連続奪三振と言う形で、大ピンチをしのいだのだった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 15:51
No. 86
これで、公約通り、第一章から第九章まで終わりました。第十章以降はただ今設定作業中なので、しばらくお待ちください。以上です。ありがとうございました。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/14 13:31 修正2回
No. 87
第十章
一回の裏が終了した。三田は堂々とした足取りでベンチへと帰ってくる。彼の表情はとても誇らしげにも見えた。いや、実際誰にでもそう見えたのである。それはあたかも「アフリカの大草原に君臨する『百獣の王』になったように。
しかし、まだ一回の表裏が終わったばかり。勝負の幕はついさっき開き始めたに過ぎない。二回の表が始まる。間もなく。白組ナインは颯爽とグラウンドに走っていく中で、秀行は胸に手を当てながら静かにマウンドに向かっていた。一人闘争心を秘めながら。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/14 13:33 修正1回
No. 88
秀行はマウンドに登った。そしてゆっくりと、威風堂々と右バッターボックスに向かう褐色の大男に目をやる。その男、今や楽天の主砲として君臨している「テレーロ」である。秀行は彼を見るなり、驚愕した。
デカい。テレビで見るテレーロよりもでかい!なんて筋肉してるんだ!?
その時秀行は、ユニフォーム姿からでもテレーロの筋骨隆々としている肉体に脅威の念を抱いていた。
一方のテレーロは若干18歳の若造を見るなり、いきなり目で威圧してきた。そんな彼の「威圧感」にさすがの秀行もビクッとした。しかし、すぐにメンタルを修正できるのも彼の長所だ。秀行はまたこころの中で自分と戦っていた。そして、ぶつぶつと呟く。
ダメだダメだ! 秀行しっかりしろ! こんな強打者一人ぐらいでビクビクしてはいられないんだ! 俺は今まで、横田とか多くの強打者と高校時代にしのぎを削ってきたじゃないか。しかも、プロではこれまでとは比べ物にならないぐらいの「猛者」と沢山当たることになるんだ! だから…、だから…、テレーロ如きと勝負するだけで、びくつくわけにはいかない! 戦え! 戦うんだ! 何故なら俺は、絶対に負けない「超絶技巧投手真上秀行」なのだから!
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/14 13:36 修正2回
No. 89
今度は秀行が逆にテレーロを睨み返した。これから紅組の四番「豪力」テレーロと「超絶技巧」の秀行の戦いが始まる。
プレイ!
球審が告げた。秀行はまず、今の風の強さと向きを確認。風速は大体レフトからライトへ横に5mといったところである。
「よし!」
秀行はすぐさま河田にサインを送った。そして、秀行は大きく振りかぶって投げた。しかし……。
豪快で乾いた打球音だった。逆方向の強く大きな打球だ。間違いなくホームラン性である。チームメイトと首脳陣の多くは、思わず一斉に「やばい!!」と大きな声を出した。一方の河田は「ほら見ろ」とつぶやき、ほくそ笑んだ。しかし、当の打たれた秀行の顔は極めて冷静だった。それも無理はない。何故なら、風がレフトからライト方向へ真横にビュービューとふいていたからである。テレーロの大飛球はみるみるうちにきれていって……、そのままポールのはるか右側へときれていったのであった。
秀行はしたり顔を浮かべた。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/14 13:39 修正2回
No. 90
結局テレーロはその後、秀行の緩急自在の投球術にキリキリ舞いにされて、最後は空振り三振に終わった。だが、秀行はその勝利の余韻に浸ることなく次の打者に目を向けた。五番の稲田直人である。彼は軽く素振りをしながら、ゆっくりと左打席に入ってきた。秀行は深く考えたあと、サインを送った。河田は了承。内角高めの直球をビシッと決めるつもりである!
大きく振りかぶって投げた。スピンのきいた伸びのある直球である。その時だった。
「あ、やっぱりな」
秀行は投げた瞬間、思わずつぶやかざるを得なかった。稲田はバントを仕掛けてきたのである。明らかにセーフティーバントを仕掛けるつもりだ。この場合、稲田がセーフティーバントを仕掛けるのならば、三塁側へは転がせてはならない。ここは内角高めのストレートを投げてポップフライを打たせて、キャッチャーフライにしてしまったほうがいい。しかし、万が一それが失敗したとしても一塁側に転がる可能性が大きいから、あとは雪のチャージと秀行ののカバー次第ということである。まさに、予想通りだったのである。打球は一塁線に転がっていく。
「うおおりゃー!」
雪はいつもの女らしさからうって変わって、もの凄く男らしい怒号を放ちながら猛チャージしてきた。
ドスドスドスドス!
雪は打球をとって振り返った。が、すでに稲田は一塁近くまで。
「ユキちゃん!」
その声に気付いた雪は、急いでカバーに入っている秀行を見た。彼は無我夢中で、秀行に向かって送球。しかし、逸れてしまった。
「くそぉ!」
秀行は必死に体を伸ばして何とかとったが、時すでに遅し。稲田は一塁に到達したのだった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/14 13:43 修正1回
No. 91
「……」
秀行は無言になってしまった。しばらく、静かで暗い場の雰囲気に。雪はその場の状況を何とか変えようとせざるを得ず、秀行の所に歩み寄り、申し訳なさそうに「ごめんねぇ〜」とオネェ口調で詫びた。
「秀行く〜ん、ワタシの悪送球のせいで……、ワタシ守備下手なのよ〜」
秀行は、その雪のフォローで大分気が楽になったのだった。嬉しかったのだ。
「いいんですよ、ユキちゃん。でも……」
「でも?」
雪はきょとんとする。
「あなたのミスはこの俺が取り返して見せます!」
雪が矢が心に突き刺さったような表情を浮かべた。自信満々の目つきで雪に言ってのけた秀行。雪にとってはそんな彼がカッコよくてカッコよくて、心臓がバクバクバクバクし始めた。
「秀行くん……」
「ん? なんすか?」
秀行が疑問を呈したその刹那だった。
「カッコイイイイイーーーーーー!!!! ワタシの彼氏になってー!」
雪が急に抱きついてきた。笑い声が球場全体を包む。細い秀行は、そのパワフルな巨体に締め付けられながら気色の悪い思いをしたのだった。しかし、「すみません」と言ってしまうと、彼を傷つけることになってしまう。
「ユキちゃん、やめて! やめてください! 申し訳ないですけど、俺そんな趣味ありません!」
すると、雪は、みるみるうちにショックで青ざめた顔になり、「ああぁ……。そうなの。そうなのね……。ごめんね。秀行くん普通の男の子だもんね……」
雪はとぼとぼと守備に戻ろうとしていたところ……。
「ユキちゃん、すみません。悪気はなかったんで……。今はとにかく試合に集中しましょう!」
秀行のせめてものフォローだった。雪はそんな彼を見て、再び惚れたような表情を浮かべたのだった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/14 13:47 修正1回
No. 92
周りの空気は落ち着きを取り戻した。秀行は再び集中し始めて、六番の島内宏明に相対する。彼はまだ無名の若手選手である。成長途上だ。だが、秀行やその他新人、若手同様将来が期待されている。秀行はチラッとランナーの稲田に目をやる。ベースから3〜4メートルは離れていると秀行はみた。普通の投手なら、稲田のような俊足のランナーが出塁するといちいちチラチラと目が行くものだが、秀行にはそんなことをする必要がないと思うくらいの自信があった。
秀行は一気に二つアウトを獲るため、ゲッツーを狙おうと思った。守備陣形も当然、ゲッツーシフトである。
秀行はカットボールのサインを出した。河田もそれに従う。
これでもくらえ! と言わんばかりに、カッターを投げた。しかし、島内はそれを読んでいたのだった。
カーン! と乾いた音が響き渡った。打球は二塁の頭上へ。
「何だと!」
「フン!」
秀行と河田は双方声を出した。だが、二塁手は横浜DeNAからやってきた藤田一也である。藤田は思いっきりジャンプした。
「藤田さん!」
思わず秀行は叫んだ。頼みます! 取ってください! 藤田さん! 球場全体が息を飲む。一方の三田は「これは……」と声を漏らすのみだった。結果はどうなる?
バシィッ! と、強い音がした。取った。取ったのだ。ダイビングキャッチのファイン・プレ―。白組が沸いた。秀行は右手を少し上げ、グッと握りしめる。一方の稲田はこのような事態を予想だにしていなかったので、慌てふためいて帰塁しようと猛ダッシュ。だが、藤田は送球もうまかった。雪のファースト・ミットに正確に収まる。それとほぼ同時に、稲田はヘッドスライディングを仕掛けた。が……。
「アウト!」
一塁塁審がそう告げ、見事にゲッツーにしてのけたのだ。藤田の手によって。二回の表が終わった瞬間、行く末を見守っていた木本は何度もうなずき、拍手。秀行は「藤田さん、ありがとうございます!」と、ねぎらった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/14 13:50
No. 93
これで、第十章は終わり! ありがとうございました。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/08/09 14:54 修正2回
No. 94
第十一章
三田は放心していた。信じられなかったのだ。自分が投げている時と、秀行が投げている時とは、まるで違うのだ。何が違うのか。何が。それは一目瞭然なのだった。双方の守備の動きが全然違うのだ。三田の方は、ただ、淡々と守っているようにしか見えないのに、秀行の方は、何か、「得体のしれない何か」が、乗り移っているようだった。まるで士気が違う。魂が違う。白組の魂がぼうぼうと燃え盛っているのだ。紅組にはそれはない。三田は立ちつくして、思わず呟いた。
「真上秀行という男は……、味方に火をつけさせる天才なのか……?」
紅組ナインが一斉に守備に着きに散らばっていく。三田は、物思いにふけりながらマウンドに向かった。ピッチャーマウンドに登ると、あたりを見回した。
「やはり違うな……」
三田は小さく声に出した。それも仕方あるまい。やはり違う。一目しただけでも違う。違いすぎる。味方の目が淡白なのだ。三田は、心細くなった。まるで心がシャープペンシルの芯の様に。
「本当に、俺は秀行に勝てるのだろうか……」
さすが運河は、様子を察し、マスクを外してマウンドにかけよってきた。
「三田、お前どうした? 大丈夫か?」
「あっ、いや。大丈夫です……」
三田は咄嗟に、そう返した。女房役に無駄な心配をかけるわけにはいかないと思った。しかし、運河には何もかもがお見通しであった。
「な〜に強がりを言っているんだ、お前は!」
運河は、三田の胸を片手でボンッと押し、さらに怒気を強める。
「お前はな、イーグルスの将来をしょって立つかもしれない投手なんだぞ! ……、さては秀行に押されているからって、及び腰になっているんじゃあないだろうな? そんなら荷物をまとめて郷(くに)に帰ったらどうだ?! 俺はなぁ、今のような状態ではリードはしていられないぞ! しっかりしろ!」
普段、穏健でウケのいい運河がここまでいうのはまれなことである。三田自身、女房役の気持ちが痛伝わってきた。そして、我に返った。
「そうですね。運河さんの言うとおりです。まだ勝負は終わってないんだ! 何故なら俺にはまだもう一つの……」
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/08/09 14:56 修正2回
No. 95
そうこうして、試合が再開された。白組六番の河田寿司が、打席に立った。彼はとても苛立っている。何故ならば、当然のこと、秀行にお株を奪われてしまったからである。若干十八歳の、プロ選手として産毛が生えている程度の若造に、サインの主導権を奪われてしまって、しかもそれが功を奏しているからなおさら歯がゆくて、悔しい。
三田は打席の河田に精神を集中させた。河田の眼光は鋭かった。明らかに長打を狙っていることが、すぐにわかる。そんな打者を打ち取るには緩急自在の投球術がモノを言うのだが、あいにく三田はまだそのような術をもっていない。直球とフォーク系しか持っていない。三振を奪うために、宝刀の「降臨」をむやみやたらに使ってしまったら握力を消耗して、スタミナが急激に減る。リードする運河も、対策は一つだけだった。直球とフォークのコンビネーションしかないということだ。三田の落差の大きいフォークならば、直球を交えれば空振りをとれる可能性が高い。それを信じるしかない。
運河は内角低めの直球を要求した。三田は首を縦に振った。渾身のストレートを振りかぶって投げた。平凡な直球だ。しかし、河田のフルスイングによって放たれた打球は、案の定、乾いた打球音を球場全体に響かせ、打球は右中間を破っていった。そして、転々と転がっていく。河田は悠々と二塁ベースを踏んだ。三田は厳しい表情に。次の打者は絶対に抑えなければならない。今、バッターボックスに向かってくる相手は、元大リーガーだ。
「ついに来た……」
そう。岩村明憲である。体格が恵まれた彼の体は、まさに「大リーガー」であったことを物語っているのだ。しかし、三田は、何か変だと感じた。
「ん? 岩村さんの様子が変だ」
岩村の表情は暗かった。
「何か、悲壮さを感じるな……。どうしたんだ?」
三田がそう言葉に出すのも何ら不思議ではなかった。岩村の顔には、何か得体の知れないような焦燥感と悲壮感がにじみ出ているのだった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/08/09 14:59
No. 96
彼、岩村は、東京ヤクルトスワローズの主軸打者として名をはせた後に、晴れて大リーガーとなった。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本代表にも選ばれ、日本の二連覇にも貢献した猛者である。しかし、それからが地獄の始まりであった。打てない。打てない。打てない……。何度もマイナーリーグ落ちを経験した。 そんな中、星野監督率いる楽天イーグルスに拾われたのである。日本に帰ってきた、その暁に、「大リーガーとしての意地」を見せたいと、意気込んだ。しかし、打てずじまいだった。もう、彼は、かつての岩村ではなかった。「ツバメの主砲・岩村」はどこへ行った。「大リーガー・岩村」は何処へ? 世間ではそうささやかれた。岩村は絶望の淵に追い込まれていたのだった。
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