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ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 06:37
皆さんに私から、重大な告知をしなければなりません。ついに私は決意しました。私が自分の家の印刷機で紙に刷っていた小説の第1章から第9章までを、可能な限り毎日、このズダダンに発表したいと思います!このパワプロファイターこと「タカハシユウジ」が! この小説、その名も「イーグルスの星」!
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Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/05 10:54
No. 57
秀行は、新固の隣にいる男に目をやった。彼は無精髭で表情はのほほんとしている。髪はぼさぼさのいかにもさえない男である。その男が前に出て話し始めた。
「あのぉ、僕がぁ、二軍打撃コーチの七転八倒太(しちてん・ばっとうた)だどーん。よろしくだどーん」
話し方もなんともさえない。
「君たちはぁ、二軍選手だけど一応プロだからぁ、僕はたまにアドバイスおくるけどぉ、自分で考えて練習しろー。プロだからそれくらい出来るよねぇ。終わり」
秀行たち新人はまたがっかりした表情である。
「オッホン!」
また木本の咳払いである。
「七転君は、こう見えてもアドバイスは適格であり、我がイーグルスの打撃育成には一役買っているのだ! 君たち選手たちは彼の言うことを信じるように! 次は守備走塁コーチの紹介だ。太腹、前へ」
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/05 11:00
No. 58
背の低い腹の出た男が出てきた。男は前へ出ると、いきなり大声で捲くし立てた。
「チミたち! 私が太腹走一朗(たはら・そういちろう)だ! 知っている者もいるだろうが、私は現役時代には韋駄天の如き走塁と、ダイナミックな外野守備で名をはせたのだこの野郎! お前らはプロだがまだまだ一軍では通用しない実力だこの野郎! 練習は容赦しないぞ、心してかかれこの野郎!」
秀行はそんな太腹の話に圧倒されてしまった。
太腹は球界でも名を知れた「鬼コーチ」である。彼の練習はスパルタである。選手達の中にはそんな練習についていけない者が多い。しかし、そうだからこそ伸びていく選手も多いのだ。次はトレーニングコーチの紹介である。いかにもオネェっぽい若者が出てきた。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/05 11:03
No. 59
「はぁーい! 私が田野慎吾(たや・しんご)でーす! 私っ関係ないけどっエステティシャンでもあるの! 君たちの肌をスベスベにしてみせまーすっ! 勿論本業も頑張るから悪しからず! 慎吾ちゃんって呼んでね! 以上でーす!」
すると、雪が巨体を揺らして喜び始めた。
「いやぁ〜ん! 慎吾ちゃんス・テ・キィーん! 私の肌もスベスベにしてくれるのー?」
「そうよ! ワタシ、プロだからっ! 世間でも評判なのよ〜」
「いや〜ん! 私嬉しくて困っちゃう〜!」
雪と田野はすっかり意気投合した。
「ウォッホン! ゴホン!」
木本はまた咳払いをした。
「これにて、二軍監督および同コーチ陣の紹介を終わる。これからはすぐに練習だ! 心してかかれ。 解散!」
秀行はあっけにとられたと共にこれからの不安を口にした。
「こんなコーチたちで、俺たち楽天の二軍はどうなっていくんだ? 先が思いやられる。先が思いやられる……」
「まったくでありんす」
藤原は相槌をいれる。しかし、これが楽天イーグルスの二軍なのだ。選手と時間は前に進むしかないのだ。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/05 11:08
No. 60
投手陣の投げ込みの時間。
シュルルル! スパーン! 小気味よいミットの音がブルペンに轟く。秀行のボールの音だ。背番号15が報道陣のフラッシュで輝く。やはりスターだ。ほかの投手たちよりも断然注目度が違う。後ろで観ていた新固と木本が微笑んでいる。
「やはり真上君は素晴らしいな。新固君」
「そうですにゃ。監督」
秀行は楽しそうに投げ込みをこなし、この日は100球を投げ込んだ。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/05 11:22
No. 61
この日のメニューが順調に終わり、秀行は風呂に入った後で部屋でくつろいでいた。何気なくテレビをつけると、秀行は目を見張った。横田真司だ。日本テレビ系列で深夜帯に放送されているスポーツ番組「Going」に出演している。宮崎サンマリンスタジアムでインタビューを受けている。
「横田……」
秀行は彼に見入った。男性インタビュアーが話し始めた。
「巨人軍のゴールデンルーキーである横田真司選手です! 横田選手、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
横田は清々しい笑顔だ。
「どうですか? 初めてのキャンプは」
「いやあ、とても楽しかったですよ! チームにも溶け込めましたし」
「原監督が貴方を直々に一軍に抜擢を伝えたということですが」
「想定の範……、いや光栄に思いましたよ! ホントに。原監督がボクの実力を認めて下さったということですから!」
「原監督が明後日の愛のノックに横田選手を指名したということですが」
「本当に光栄の至りですよ! 守備力がつけば、打撃の上達にもつながりますから」
「貴方のライバルである真上投手は二軍スタートとなりましたが」
「真上君がね。でもじきに一軍に上がってくるはずです。ボクは彼から早くホームランを打ちたいですから」
「では、最後に今年の目標を!」
「ええ。まず手始めに小笠原さんからファーストのポジションを奪ってレギュラーになり、巨人を5年ぶりの優勝、日本一に導いて新人王にもなっちゃいますよ! ハハハッ!」
こんちくしょう!!!
秀行は怒りが収まらず床にリモコンを強く思いっきり叩きつけた。
「何であいつなんかがっ! いきなり一軍だと?! 畜生!!!」
秀行に火がついた。
「俺は横田には絶っっ対に負けない! 日本シリーズで待ってろ!」
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/05 11:25
No. 62
これで、第五章は終わりです。ありがとうございました。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 09:07
No. 63
第六章
イーグルスの久米島春季キャンプは中盤に差し掛かっていた。ここまでは一軍と二軍共に怪我人が出ず、まさに順調なキャンプを送っていた。中でもファンやマスコミの注目をさらっていたのは背番号15のゴールデンルーキー、そう真上秀行である。
シュルルル! スパーン!
秀行の投げるボールが小気味よくブルペン中に響き渡る。新固コーチは秀行の投げる球をこのように評している。
「秀行の投げる球は球持ちの良いフォームから繰り出されているので打者から見たら突然ボールが来るかんじだにゃー。直球は球速じたいは平凡なものの、伸びがあって特にコントロールがいいにゃ。変化球も多彩だし、特に高速カーブの切れ味は抜群! 直球同様コントロールも良いのであとは線の細い体さえ鍛え上げれば間違いなくイーグルスの柱になれる投手。俺はそう思うんだにゃー」
ここまでの秀行の首脳陣に対する評価はうなぎのぼりで、二軍の紅白戦の先発起用も予定された。調整は順調だ。しかし、そんな秀行は調子には乗っていなかった。
そんなある日のこと……
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 09:12
No. 64
二軍はこの日のメニューを終え、帰りのバスへと選手たちが向かっていた。秀行は何事も無しにバスの中に入ろうとしていたところ……、
「秀行!」
秀行は一瞬驚いたが、聞きなれた声だった。ふと、振り向いてみると、なんと目の前に春生がいるではないか。秀行は思わず大きな声を出した。
「春生っ!」
「秀行、久しぶり!」
春生はニコニコ笑顔で嬉しそうに返した。選手たちは何やら驚いている様だった。
なんだなんだ? 秀行の知り合いか?
ただのファンではないようだな。
なんか可愛くないか? 俺はタイプだぞ!
そんな声が選手たちの間に飛び交った。
「何でありんすかぁ? その可愛い娘は? もしや秀行君のアレでありんすか?」
そうニヤニヤ顔をしながら藤原は秀行に話しかけてきた。
「バッバカ! そんなんじゃねぇよ!」
秀行は顔を赤らめながらかたくなに否定した。
春生はそんな秀行を見て「ふふっ」と笑った。
秀行は当然の疑問を春生に問うた。
「ところで春生、お前どうしてこんなところにこれたもんだな?」
すると春生は真顔で返した。
「なんでよ〜、私、大学AOで受かったってことメールしたでしょ? 暇ができたからここまで飛んできて君に会いに来たってわけよ」
「あっああ……」
と秀行。
春生はAO入試で仙台のある大学に入学が決まっていた。彼女は秀行のキャンプを観たいが一心で受験勉強の追い込みに励み、ついに大学の合格を果たし、一人で一路ジェット機で久米島に乗り込んできたのだ。
そして春生は秀行に少しさみしそうに話しかけた。
「秀行、私ね、明日で帰らなきゃならないんだ……」
「そうか、せっかく久しぶりに会えたのに……」
「でも、大丈夫! 私四月から仙台に住むんだ。だから秀行の試合には応援に行ける!」
「そうなのか! それは心強いな!」
秀行はほっとした。そして春生は一言言った。
「だから……、頑張ってね!」
秀行は一瞬顔を赤らめた。
「ああ、頑張るよ!」
秀行は快くそう返すと、春生は嬉しそうに笑い、名残惜しそうに手を振りながら去っていった。秀行も手を振りながら彼女を見送った後、皆に促されてバスに乗りこんだ。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 09:16
No. 65
ホテルのなかにて
「なあ、藤原君、今日の調子はどうだったんだよ?」
「まあまあでありんすかねぇ。原田君はどうだったんでありんすか?」
「ぼっ僕は監督が見ていたからつい緊張して……、全然ストライク入んなかったよお……」
「はは! まあ原田君はまずそのアガリ症を直さない限り支配下にも入れないな」
「なんだよう。秀行君、ひどいじゃないかぁ」
こんな感じで秀行、藤原、原田は廊下で立ち話を楽しんでいた。
するとそこへ……
「おいおいおい! てめぇらぁ」
なんとも聞くといかにもテンションがさがるような声が聞こえた。
「なぁ〜に三人で仲良くくっちゃべってんだぁ? あ〜ん」
秀行達の先輩の選手である嫌名八津夫(いやな・やつお)27歳である。嫌名はズケズケとこちらに向かって来た。三人はひそひそと話し始めた。
秀行「うわぁ、来たよ来たよ嫌名先輩」
藤原「嫌でありんす。また使いっパシリにされるでありんす」
原田「やだよ〜。どうしよ〜」
嫌名はニヤニヤしながら続けた。
「なんだなんだお前ら〜。先輩に対してなんか文句あんのか〜? ねぇんだったらアクエリアス買ってこいや! この野郎共!」
原田の足を蹴った。それを見た秀行はそんな嫌名の理不尽な行動に怒りを覚えた。
「先輩っ!」
秀行は怒りで強い口調でつっかかった。
「あん? 何だよ」
「悪いが何で俺たちがアンタに使われなけれゃならないんすか!」
「うん?」
「しかも後輩だからって人の足を蹴るなんてことは許されません! 原田君に謝ってもらおう」
「んだとお!」
「しかもあんたはいつもそうだから万年二軍でくすぶってるんだろ? 少しはその性格を直せ!」
秀行のその一言で嫌名は逆切れした。しかも、自分が一番気にしていることを一年坊主に堂々と指摘されてしまったのだ。
「んだとてめぇ!! スターだかなんだか知らんが、一年坊主が先輩に盾突くとは何ごとだコラァ!」
嫌名は拳を挙げた。
「危ないでありんす!」
「うわあ! 秀行君!」
藤原と原田は悲鳴を上げた。秀行は歯を食いしばった。
その時だった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 09:19 修正1回
No. 66
「こらっ! 嫌名!」
その男は嫌名の腕を掴んだ。
「ウッ! 運河先輩」
嫌名は言葉を詰まらせた。嫌名を黙らせたその男は運河無志太郎(うんが・なしたろう)先輩、29歳である。
「嫌名、先輩だからと言って後輩を虐めていいというワケではないぞ! 早くここから立ち去れ!」
運河先輩は嫌名をそう叱責した後、嫌名はしぶしぶと去って行った。
「大丈夫か? 三人とも」
運河はそう三人に優しく声をかけた。秀行たち三人は彼に感謝した。
「ありがとうございます! 運河先輩!」
「本当に助かったでありんす!」
「お礼に何かさせてくださいぃ!」
すると運河は「ハハッ」と快く笑いながら三人をたしなめた。
「いやぁ、いいんだいいんだ! 当然のことをしたまでさ。君たち後輩には楽しく野球をやってほしいからな」
このように運河先輩は後輩ウケが良いイイ先輩である。
そうこうをしていると、木本二軍監督が「おーい、運河ぁ!」と大声を出しながら走ってきた。
「おい、運河、お前最近調子いいようだな! 明日一軍に招待されるぞ!」
「えっ?」
運河先輩は突然喜びを爆発させた。
「いいいいやったー! やったぞー 嬉しーい! 21世紀に入って初めていいことがあったぞー!」
秀行たち三人は思わず「はっ?」と声を出した。あっけにとられてしまった。
運河は有頂天になりながら三人に話し始めた。
「キミ達! いやあ人生何が起こるか分からないぞ! 信じていれば良いことがあるぞー! わかったな? じぁあな!」
運河先輩はルンルン気分でその場から去ろうとした次の瞬間!
グキッ!!
「ウッ! ウワ―!」
「運河せんぱーい!」
三人は思わず運河に駆け寄った。その後、彼は検査で半月板を損傷したことが発覚し、運河先輩の一軍昇格は頓挫してしまったのであった。お見舞いに行った秀行たちは終始がっかりしていた。肝心の運河は笑っていたが。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 09:22
No. 67
これで第六章は終わりです。皆さん、ありがとうございました。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 12:12
No. 68
第七章
イーグルスの春季キャンプも半ばである。この日の練習が終わってから、一軍と二軍の首脳陣はホテルの大部屋を借りて、真近に迫った紅白戦で誰を起用するか話し合いが始まろうとしていた。初めに星野一軍監督が口を開いた。
「今日みんなに集まってもらったのは他でもない。明日の紅白戦は今後のイーグルスの戦いの展望を占うものでもある。一軍と二軍それぞれに分かれてやってもらう。問題は誰を重点的に使うかだ。ワシと木本は大体決めているが、今から最終的な調整をしたいと思う」
すると、初めに佐藤一軍投手コーチが発言した。
「監督、私は長谷部君の先発起用を推したいと思います。彼は制球力こそ悪いものの、変化球、直球とも威力が素晴らしく、何かきっかけがあれば伸びるはずです。ここは彼にチャンスを!」
「フム……。確かにアイツはまだ伸びしろがあるからな。そもそも入団当初は鳴り物入りで入ってきた五輪予選日本代表の一員だった。指揮をしていたワシもそんな彼の球には見惚れていたよ。それにまだまだ若いし……」
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 12:15
No. 69
すると、そこへ誰かが「そうかね? そんなもんかね」と。田淵幸一(たぶち・こういち)ヘッドコーチである。田淵は続けた。
「確かにアイツは素質はあるが、つい数日前の投げ込みで『肘に違和感があります』とか言ってたな。ホントに怪我が多すぎる。だから伸びないんだよあいつは! 他にも伸び盛りの若いのが仰山いるし、そいつらに重きを置いて使うべきではないか?」
そんな田淵に三輪バッテリーコーチが「見捨てるんですか?」と一声かけると、「見捨てるんじゃない。他の若手をだな!」とまくし立てた。
「まあまあ二人とも」
星野はそんな田淵と三輪を宥めながら。星野は木本に話を振った。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 12:18
No. 70
「ところでだな、木本。二軍の方はどうなんじゃ?」
木本は神妙な表情で答えた.。
「はい。我が二軍の選手たちはダイヤの原石が非常に多いです。特に今年の新人たちは目を見張るものがあります。おそらく昨秋のドラフトの勝者は我が球団でしたでしょう。私は彼らを使ってみたい!」
「秀行の調子はどうだ?」
「それはそれはもう……、初めから絶好調です。紅白戦の初戦からすぐ先発で3イニングは投げさせたい」
「おお! そうかそうか」
星野はホクホク顔である。
「ただ……」
木本は何か付け足したそうだ。
「何や?」
「真上君以外にも私が注目している投手がいるのですが……」
「誰だ?」
「三田吉男です。総合力こそ平凡ではありますが、落差のあるフォークボールは光るモノがあります。しかも彼は社会人時代に先発も何試合か経験しているらしいので是非とも三田君も先発で真上君と投げ合わさせてみたいです!」
「ほほう、それは楽しみやな!」
星野は笑顔だ。それからも議論は長く続いたが、なんとか最終調整を終えた。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 12:23
No. 71
翌朝、紅白戦当日
「いよいよでありんす! キンチョ―するでありんす!」
藤原はトレイの肉に箸をつつきながら、大声を出した。
「結果だせるかなぁ〜。どうしよう〜」
原田はあがりすぎて食事がなかなかのどに通らない。二軍の選手達、特に新人選手や若手選手の気分は最高潮であった。一方、秀行はというと、黙々と食事を摂っていた。そんな秀行に原田が話しかけた。
「秀行君、君は今日白組で先発らしいケド、どう? 緊張する?」
「今食ってんだから静かにしていてくれ!」
秀行にすごい形相で捲くし立てられた原田は驚き、物をのどにつっかえてしまった。この日の試合の先発メンバーが選手達にはすでに言い渡されていた。
白組(二軍)
一番 遊撃 岩尾結 二番 二塁 藤田一也 三番 ライト 中島俊哉 四番 一塁 雪正男 五番 センター 横川史学 六番 捕手 河田寿司 七番 三塁 岩村明憲 八番 レフト 神保貴宏 九番 投手 真上秀行 その他控えには藤原外野手など
紅組(二軍)
一番 一塁 嫌名八津夫 二番 二塁 木村大樹 三番 センター 榎本葵 四番 レフト テレーロ(調整の為) 五番 三塁 稲田直人 六番 ライト 島内宏明 七番 遊撃 西田哲朗 八番 捕手 運河無志太郎 九番 投手 三田吉男
このような感じである。しかし、原田は疑問を持ち、藤原に質問を振った。
「紅組の先発メンバーに運河先輩がいるね? 運河さんって半月板やったばかりじゃなかったっけ?」
「いい質問でありんす!」
藤原は声を大きくした。
「運河先輩はこの間の半月板損傷からなんとギリギリ間に合ったんでありんす!」
「うわぁ、すんごい回復力」
秀行は開いた口が開かなかった。
「そうでありんす! ある意味幸運でありんす!」
そのころ白組の四番を任された雪は、興奮してガツガツ食いながら巨体を揺らしていた。
「キャー! うそー! ワタシ四番四番! 頑張っちゃうーん! 秀行君を援護するの!」
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 12:27
No. 72
朝食が終わり、試合前の練習が始まろうとしていた。選手達が球場に入ってきたところ……。
バシャバシャバシャッ!
一斉に報道陣のフラッシュが放たれた。先発する秀行が目当てだった。一人の記者が秀行に質問した。
「真上投手、いきなりの先発抜擢ですが、今の気持ちは!?」
すると、秀行は大口をたたいた。
「三回無失点に抑えて見せます!」
おおおお!
報道陣は興奮した。一部始終を聞いていた藤原と原田は動揺した。
「うわぁ、言っちゃった言っちゃった! 秀行君言ってしまったでありんす!」
「すごい勇気だよぉ」
「僕たちなんかにはとても言えないでありんす! 本当に秀行君は何もかも並じゃないでありんす!」
「これはこれは、本当に結果出さなきゃやばいよ〜」
すると、三田が二人に割って入った。
「真上め……、見上げた根性だ。感心するよ」
「「三田さん……」」
「確かに真上はスーパーなんだろうよ。ただ、だからと言って結果を残せるとは限らない。所詮18のガキだからな! 今日の試合、勝つのは俺だ!」
この試合、白組秀行と紅組三田の構図が出来上がった。二人が本格的に火花を散らす時が来た。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 12:30
No. 73
これで、第七章は終わりです。皆さん、お読みいただきありがとうございました。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 15:06 修正1回
No. 74
第八章
白組の選手達は一斉に守備につき、紅組の選手達は攻撃の準備を始めた。
すると、選手達一同、首脳陣、マスコミやカメラマンが一斉に悠然とマウンドに登る一人のルーキーに注目した。その姿は真上秀行。カメラのフラッシュが瞬く間にパシャパシャパシャッ! と光った。
彼の背中の背番号15が眩しく見える。これは、スターの光だ。秀行は、マウンドに着くと、「フゥーッ」と息をはき出した。そして、周りを見わたした。そして、壮大な決意を抱いたような厳な表情を浮かべた。
白組ベンチからは、藤原と原田の声援が聞こえてきた。
「秀行くーん! 負けるなでありんすー!」
「絶対結果残すんだよー」
一方、観客席は、いくら「ゴールデンルーキーのデビュー戦」とはいっても、所詮は二軍の紅白戦なので,まばらである。殺到しているのはメディア関係者だけだ。しかし、秀行はそんなことは一切気にしていなかった。捕手のミットをめがけて投げることだけ。結果を残すことだけ。そして、何よりも、3回を無失点に抑えることだけ……。それが、三田に勝つため。いや、それはただの踏み台に過ぎないのだ。いずれは偉大なる先輩、エースである田中将大を超えて日本一の投手になり、最終的には、横田に再び勝ち、巨人を倒し、イーグルスを日本一に導く力になることだ。紅組の一番打者の嫌名が屈伸をして、軽くスイングし、秀行を鋭い眼光で見つめている。だが、ニヤニヤしている様にも見えた。そして、嫌名は右打席に立った。球審が告げた。
「プレイボール!」
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 15:09 修正1回
No. 75
試合がついに始まった。打席で構えている嫌名はせせら笑いを浮かべた。
「おいぃ! 真上秀行ぃ! プロの洗礼を浴びさせてやるぜぇ」
しかし、秀行にはそんな彼の言葉にはびくともしなかった。バッテリーを組んでいる捕手の河田寿司は、嫌名の苦手コースである内角高めを要求した。球種は指定しなかった。秀行はそこであることを思いついた。だが、それを心にしまい、首を縦に振ってゆったりとした球持ちの良いフォームで大きく振りかぶって投げた。
しかし、河田は驚愕した。(やばい!)ボールはど真ん中に入っていくスライダーだったのだ。
「ひゃっはー! もらったぜ!」
乾いた音が響き渡った。二遊間に鋭いゴロが転がった。味方達、首脳陣、マスコミなどは「だめだ! 抜ける!」と思わず偶然にも同時に叫んだ。しかし、秀行は平然としていた。
シュタタタタタタ!
ショートの岩尾の俊敏なる速さの足だった。彼はいとも簡単に打球に追いつくと、そのまま一塁に送球した。
「アウト!」
塁審は告げた。余裕のジャッジだった。この彼のファインプレーに多くの報道陣がどよめいた。
「ううううううう! 糞野郎! 折角の失投がぁー!」
嫌名は思わず叫んだ。
秀行は岩尾に声をかけた。
「岩尾君、ありがとう1! 恩にきるよ!」
一方岩尾は、「むぅ〜ん」と声を発する程度だった。何事もなかったかのようにおっとりしている。でも、守備で結果を残したのは間違いない。首脳陣は高く評価するはずである。実は、秀行はわざと岩尾に見せ場を作るために甘いコースに「失投」したのだった。しかも、嫌名は二軍では「ゴロキング」として名の通っていることを把握していた上で……。それだけの賢さとしたたかさを持ち合わせているのも真上秀行なのである。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/06 15:11 修正1回
No. 76
次は、二番の木村大樹と相対する。木村は左打席に着くと、秀行に言い放った。
「秀行どの、拙者はそなたとは戦いたくなかった。しかし、今はサバイバルでござる! チームメイトだろうがなんだろうが、容赦はせぬ! 武士の血を引き継ぐ者の誇りを胸に、いざ勝負!」
秀行も言い返した。
「木村さん、あなたがそう言うのならば、俺も負けません! こちらも容赦しませんよ! 打てるもんなら打ってみろ!」
二人は闘士を燃やした。特に、木村は打つ気満々だ。捕手の河田はそんな彼をはぐらかすために、「サークルチェンジ」のサインを出し、外角低めギリギリのボールゾーンを要求した。河田は、先ほどの秀行の「失投」は偶然の産物だろうと解釈していたので、彼の精密なコントロールを買っているのである。しかし、秀行は首を横に振った。河田はもう一回同じサインを出した。だが、また駄目だと。そんなやりとりが何回も続いた。打席に立っている木村はイライラし、球審に「タイム!」と言って、間を取った。そして、数秒間気持を整えた後、また打席に戻った。一方、女房役の河田も腹が煮えくり返りそうな顔つきである。秀行も表情こそ変えてなかったが……。河田はもう一回、同じ変化球のサインを出した。だが、とうとう秀行は業を煮やし、とんでもない言葉を大声で発した。
「河田さん! 違うよ! 『カットボール! カットボール!』」
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