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ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 06:37
皆さんに私から、重大な告知をしなければなりません。ついに私は決意しました。私が自分の家の印刷機で紙に刷っていた小説の第1章から第9章までを、可能な限り毎日、このズダダンに発表したいと思います!このパワプロファイターこと「タカハシユウジ」が! この小説、その名も「イーグルスの星」!
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Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 06:50 修正1回
No. 1
イーグルスの星 タカハシユウジ
プロローグ
この物語、それは一人の部落民の投手の波乱万丈の人生を描いたものである。自らの運命に抗え! 秀行!
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 07:09
No. 2
第一章
話は数年前のドラフトの日にさかのぼる。
この物語の主人公、真上秀行(まがみ・ひでゆき)は母校である誠城高等学校の部室の部屋にあるテレビで部員仲間と一緒にドラフト会議の中継を見ていた。この年のドラフトは異例の地上波全国生中継であった。なぜなら、この年のドラフトは二人の高校生選手が全国的に注目されていたからだ。
その二人とは皆城高校の横田真司(よこた・しんじ)一塁手、そして真上秀行である。この二人は甲子園を沸かせた二大スターである。横田は高校通算本塁打70本を放った。真上は高校三年の時、誠城高校を春夏連覇に導いたエースである。この二人は高校野球史に刻まれる数々の名勝負を繰り広げてきた。
その二人がプロ志望届を提出。真上は巨人入りを志望、一方の横田は「プロ球団ならどこでも」と表明していた。巨人は真上を一巡目指名すると明言。彼と巨人は相思相愛と世間ではそういわれていた。
周りはさすがにドラフトということもあって緊張に包まれていた。秀行の弟でキャッチャーとして彼とバッテリーを組んでいた正(まさし)も固唾をのんで中継を見ていた。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 07:17
No. 3
各球団が一巡目の指名を始める。
「ついに始まったか」
秀行が小声でつぶやく。
「ついに始まるね、兄さん」
「ああ」
正と秀行は言葉を交わす。部員たちは勿論巨人が秀行を一位指名すると思っていた。
数球団の競合になるだろうとの下馬評通り巨人の前に三球団が彼を指名した。
「当然ジャイアンツは俺を指名するはずだよな、
俺は将来巨人のエースになるんだ!」
「そうだね、兄さん」
また二人は短く言葉を交わす。しかし、二人はまだ知らない。この巨人の指名が誰もが予想できない結末を迎えることになり、秀行の運命を大きく変えることになろうとは。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 07:26
No. 4
ドラフト会議場のビジョンが映し出され、司会者が名前を告げる。これが運命の始まりだった。
「第一巡目選択希望選手、読売、横田真司。内野手、皆城高校」
真上兄弟と部員たちは唖然とするしかなかった。周りは騒然。
「嘘だろ……」
秀行は頭が真っ白になり茫然自失するしかなかった。四球団の競合の末、秀行の当たりくじを引いたのは星野仙一監督だった。つまり東北楽天ゴールデンイーグルスだった。前年は五位、ここ数年Bクラスが続いている球団である。
この後の秀行に対する記者会見が設定されたが、質問にまともに答えることができなかった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 07:37
No. 5
数日後、学校の休み時間、秀行がおもむろに廊下を歩いて教室に戻ろうとしていたところ、後ろからかすかな話し声が聞こえてきた。その声の主の一人は親しい友人である。秀行はこの何気の無い会話に衝撃を受けることになる。
あのさぁ、真上が何で巨人に指名されなかったか知ってるか?
ああ、知ってる。あいつ、被差別部落民だからだよ。読売に載ってたよ。
仕方ねえよな、あんなご身分じゃ。天下の巨人軍にエタがいるんじゃカッコがつかないよな? だべ? だべ?
そうだよな、あいつは所詮エタだからな。ハハハハ。
まだ、第一章の途中で中途半端ですが、ここでいったん終わらせておきます。続きは、今日中に書きますので、しばらくおまちを。(もしかしたら、第一章分全部は今日中に発表できないかも……。すみません。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 09:34
No. 6
>>5
の続き
秀行は大きな打撃を受けた時のようなめまいを覚えた。顔面は蒼白。まさか自分の親友がこんなことを言うなんて! 裏切られた気分だ。彼とは中学時代からの仲であった。一緒にゲームもした。一緒に笑いあった。試験が近い日は勉強も教えてやった。それなのに、それなのに、こんな言い方をされるとは……。
秀行はすぐさま職員室前の新聞置場まで駆け出した。そして、息を切らしながら読売新聞にある自分の記事を探す。
「あった……」
秀行はそう声を漏らした。記事は巨人オーナーのインタビューだった。そして彼はこんなことを発言していたのだ。
真上みたいな部落出の者が巨人に入ったらどうなるかね、ワッハハハ!
秀行の顔はみるみる紅潮し、泣き出さずにはいられなかった。秀行は走った! 家までいちもくさんに走った! 家に入るなりいきなり窓ガラスを割った。食器を壊した。テーブルを倒した。何もかもめちゃくちゃにするしかなかったのだ。秀行は泣きじゃくった。まさか、まさかここまで露骨に差別を受けることになるとは。しかも憧れてきた巨人に。今まで小さな差別は受けてきた。しかし、秀行は持前の強さで乗り越えてきたのだった。
夜になり部活から正が帰ってきた。
「ただいま、兄さん!」
彼がそう言った直後、家の中のすさまじい光景が目に入った。そして、倒れた食器棚の隣に立ちすくんでいた秀行を目撃した。
「一体どうしたんだよ、兄さん!」
正はたまらず駆け寄った。しかし、正が見たのは目が節穴の様に暗く死んでいて抜け殻のような秀行の姿だった。そして秀行は正にこう呟くのであった。
俺は……、どんなに活躍しても一介の部落民に過ぎないのか。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 09:53
No. 7
それから秀行は学校を休みがちになり食事ものどがとおらない状態が何日か続き、一か月ほど経ったある日の午前、二人を乗せた車が真上家に向かって走っていた。乗っていたのはイーグルスのスカウトマン、そして野村克也だった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 10:46 修正1回
No. 8
「野村さん、いよいよ指名の挨拶ですね」
「ああ、そうやな」
二人は短く言葉を交わす。
「しかし……、真上君は首を縦に振ってくれるでしょうか? 元々巨人志望ですからね。うちみたいな弱小球団に入団するなんて考えてもいないでしょうに」
スカウトマンは心配そうに話す。すると野村はこうつぶやいた。
「どうなるんやろなぁ……」
しばらくして真上の家に着いた。そのたたずまいに二人は驚いた。それは和の雰囲気を醸し出している。二階建てで、敷地と庭が非常に広い。家屋の横にある木々は紅葉に彩られていた。そして玄関までの道は石畳で敷き詰められている。
「なんと……、立派なもんや……」
野村はそうつぶやきながら、感心していた。
スカウトマンは玄関のインターホンを押す。出てきたのは正だった。
「はい、どなたですか……、え!」
正は驚いた。目の前にはあの野村克也が立っていたからだ。正は野村が来るとは思ってもいなかったのだから、動揺は隠せなかった。
「野村さん……、ですよね?」
「そうや」
二人はそう言葉を交わすと、スカウトマンが「秀行君はいませんか? 指名の挨拶にまいりました」と言った。
「分かりました。今兄を呼びます」
正はそう言い、二人を客間まで案内した後、秀行を呼びに二階へと小走りで登っていく。しばらくして秀行が正に連れられてきた。彼の足取りはとても重い。そんな秀行の表情を見て野村は思わずつぶやいてしまった。
「いかん。目が死んでおる」
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 10:57
No. 9
あの日から秀行は自分の部屋に引きこもりがちになり、のたうちまわってばかりいたから目が死んでいるのは当然だった。
「兄さん、ほら、野村さんとスカウトマンさんが挨拶に来たよ」
「……」
彼は何も言わない。表情は暗いままだ。
正は秀行をソファに座らせるように促し、お茶を用意しに行った。
……
しばし、沈黙が続き、部屋は重い空気に包まれる。スカウトマンは一体何を話せば良いか懸命に言葉を探していた。そのような中、野村は開口一番こう言った。
「秀行よ……、つらいか?」
「……」
秀行は何も言わず、うつむいている。野村は、悟った。今の秀行にはこう言い放つしかない。それで目覚めさせるしかないと。
「見返してみないか?」
「え?」
そして、野村は強く言い放った。
「お前を差別した世間と巨人を見返してみろ!」
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 11:09
No. 10
その怒号にスカウトマンは仰天し、お盆に茶を乗せて中に入った正もびっくりして、危うくこぼしそうになった。
「分かったな?」
野村は秀行にそう優しくぼやいた。
それからしばらくして、野村とスカウトマンは車に乗り帰路に着いた。
「野村さん、ビックリしましたよ。あんなに大きな声で……」
スカウトマンは野村に諭すように言った。
「でも、効果はあったようだな」
野村は自信ありげにぼやいた。
「彼の目つき……、変わったぞ!」
彼の言うとおり、秀行は自信を取り戻していた。目には大きな隈ができ、深く窪むほどに暗く落ち込んでいた。しかし、少年の目には強い決意と闘争心が沸々と沸いていたのだった。
「これで、秀行は間違いなく将来うちのエースになるはずや」
野村は車中で薄く笑みを浮かべた。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 11:17
No. 11
その日の夜、秀行は正とともに庭に出た。夜空は満点の星空。そして、秀行は星々を指さし、声を張り上げた。
「俺は差別なんかに負けない! 俺は、俺は……、俺を差別した世の中と巨人に思い知らせてやる! 俺は巨人を倒す! 俺は負けない! そしてあの星々の様に燦然と輝いて見せる!」
それは、のちに「イーグルスの星」と呼ばれる投手の始めの一歩であった。その星は部落差別という日本の古代から連綿と続く暗部に対する戦いの印だ。秀行はこれから自らの宿命を背負いながら、苦難で険しいいばらの道を歩んでいくことになる。真の戦いはこれから始まるのであった。
第一章 終わり。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 17:52
No. 12
第二章
イーグルスの新人選手入団発表の日がやってきた。秀行のプロ野球選手としての門出の日である。秀行は一路新幹線で仙台に向かい、タクシーで球団事務所へと移動した。彼は少々緊張していたが、わくわくもしていた。
「ここがイーグルスの事務所か」
秀行はそう独り言を言い、入り口に向かう。するとそこへ、走ってきた人とドンとぶつかってしまった。
「いてて……、すみません。けがはないですか?」
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 18:07
No. 13
「僕は大丈夫でありんす。心配しないでいいでありんす……」
「ん、その声は……」
秀行は気づいた。
「あ、君は……」
ぶつかった相手も気づいた。
「もしかして藤原君か!?」
「そういう君は真上君でありんすか!?」
二人は嬉しそうに話し始めた。
「藤原君! 久しぶりだなあ、何年振りだろう?」
「中学時代以来でありんす!」
「そうかそうか、ところで何で君がここに?」
「僕も楽天に指名されたでありんすよ。六巡目でありんす」
秀行は驚いた。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 18:10
No. 14
「えー! 知らなかった! 君もプロ野球選手になったんだ」
「ドラフト中継最後まで見ていなかったんでありんすか、ひどいでありんす」
「ごめんごめん、全然気づいてなかった。そんな余裕なかったからさ」
秀行にぶつかった相手は藤原良高(ふじわら・よしたか)という名前で、秀行の中学時代の親友である。坊主頭で分厚い淵なしのメガネ、そして「〜でありんす」という口癖は変わっていない。秀行はそんな藤原のことがとても懐かしいと思った。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 18:14
No. 15
「でも驚いたよ。あの足だけが取り柄で補欠の君がプロ野球選手か!」
秀行は中学時代、足が速いことだけが取り柄で万年補欠だった藤原がプロ野球球団に指名させたことが驚きだった。
「あれからいっぱい努力したんでありんすよ。見くびらないで欲しいでありんす。ドラフトの日以来サインの練習も沢山したでありんす。活躍したら女の子にモテモテ! 楽しみでありんす!」
「そんなところも変わってないな、お前」
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 18:18
No. 16
秀行は藤原の肩をポンポンと叩いた。と、秀行は「あっ!」と声を上げる。
「そんなことより、記者会見の時間が来る! 時間がない! 急げ急げ!」
「そうだったでありんす! 早くしないと遅刻でありんす!」
二人は駆け足で事務所に向かった。
そして入団会見の時間が来た。秀行ら新入団選手たちは続々と会見場に集まってくる。そこには星野監督もいた。記者達からのインタビューが始まった。もちろん最初は秀行からだ。さすがに高校野球のスターだ。辺り一面にフラッシュが放たれる。ます最初にこんな質問が飛び出してきた。
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