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ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/23 06:37
皆さんに私から、重大な告知をしなければなりません。ついに私は決意しました。私が自分の家の印刷機で紙に刷っていた小説の第1章から第9章までを、可能な限り毎日、このズダダンに発表したいと思います!このパワプロファイターこと「タカハシユウジ」が! この小説、その名も「イーグルスの星」!
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Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/25 20:28
No. 37
「お前が新人王? 笑わせてくれる! 獲れるかよ」
三田である。
「お前なんか一生2軍でくすぶってろよ!」
「なんだと!」
そして三田はそそくさと立ち去って行った。記者達も動揺したようだった。秀行は三田の暴言に怒りを覚え追いかけ報道陣の前で三田に突っかかった。
「おい! 三田! 三田吉男!」
「なんだ、先輩に呼び捨てとは。エタは長幼の序を知らんのか?」
三田は怪訝そうな顔つきで返した。
「お前なんかに先輩と呼びたくない! 先ほどの発言を謝罪してもらおう」
すると三田は笑って返した。
「ハハハ! 謝罪? 話にならんね。では俺はこれからクールダウンをするから失礼する」
三田は立ち去ろうとした。
「おい待てよ!」
憤慨した秀行は三田を追い、殴りかかろうとした。そこへ、藤原と雪が割って入ってきた。
「秀行君、よすでありんす!」
「そうよ! 喧嘩はよしなさいよ!」
二人は秀行を止めた。
「もう、二人とも、どうしたのよ?」
雪はそういうと、三田は無視して去って行った。そんな彼に秀行は怒鳴った。
「三田、俺はお前なんかに負けない! 先に一軍に上がるのは俺だ! 俺は絶対楽天のエースに上りつめてやる! 見てろよ」
三田は鼻で笑って立ち去っていった。明日は投手はブルペンに入る予定だ。そこで秀行と三田は隣同士で投げ合うことになる。秀行の初めての合同自主トレは波乱の幕開けとなった。
第三章終わり ありがとうございました。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/26 22:15
No. 38
第四章
秀行ら楽天のルーキーは二日目のトレーニングにいそしんでいた。今はランニングの最中である。そんな中であった。
おおー、ざわざわ、ざわざわ……
報道陣の様子が何かおかしい。騒がしい。それに秀行たちは気付いた。
「何の騒ぎでありんすかねえ?」
藤原はそう秀行に話しかけた。
「さあ、何だろう?」
秀行も疑問を口にする。
秀行らは報道陣の群がるところにチラッと目をやる。すると川又と岩尾を除いた彼らはとても驚愕した。
「おい……、嘘だろ」
と三田。
なんと現れたのは星野仙一監督だったのだ。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/26 22:19
No. 39
「ほ、星野監督でありんす!」
と藤原。
「本当だよ! 監督が来たよ! どうしよう……」
と原田はおどおどした。
「きっと視察に来たに違いないでありんす!」
藤原は語気を強めた。一方秀行は、監督が来たことにわくわくし始めていた。秀行はそうだな……、と藤原に返すと語気を強めた。
「よし、アピールのチャンスだ!」
監督が直々に練習の視察に訪れたということもあり、秀行たちはより力を入れてトレーニングに励み始めた。キャッチボール、ノック、ベースランニング。はつらつと動く選手達を見て、星野はホクホク顔だ。
「皆、良い動きをしているな! 順調順調!」
そう言葉を漏らした。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/26 22:22
No. 40
しばらくすると、投手陣はブルペンに入り、野手陣はマシン打撃に入った。星野はまずブルペンの様子を見に行った。秀行と三田は隣合わせ。三田の隣には原田だ。まだ自主トレの段階である。星野はせいぜい投手たちは五割くらいの力で投げるだろう。そう思っていただろう。だが、彼のそんな予想は簡単に覆されることになった。星野はブルペンに着くなり投げ込みの様子を見た途端、唖然とした。
「なっなんやなんや!?」
バシンッと、強い音が響きわたる。
なんと、秀行と三田は火花を散らせるがごとくほぼ全力で投げ込みを行っていた。軽く投げている原田をよそに、二人の目の色は明らかに違うのだ。闘争心に溢れすぎている。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/26 22:24
No. 41
「こら! 真上、三田! 時期を考えろ! そんなに飛ばしたらアカンで!」
星野は思わす怒鳴る。しかし二人は聞かない。すると、秀行は何か思いついた。
「監督」
「何や?」
「見せたいものがあります。大変失礼とは思いますがバッターボックスに立って構えてくださいませんか?」
「何やて!」
「いいですから。とにかくお願いします」
「ほう」
せかす秀行を星野は面白いと思い、右打席に立って構えた。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/26 22:27
No. 42
何事だ? 真上投手は何を見せるつもりだ? ざわざわ、ざわざわ……
居合わせている報道陣がどよめきだした。三田も興味を持ち投球を中止して成り行きを静観することにした。
秀行はキャッチャーにコースを指示し、ボールを投げる。ゆったりとしていて球持ちがよいフォームだ。
「ほう……」
星野はそんな秀行の投法に感心した。そして、秀行の手からボールがリリースされた。
「うわっ!」
星野は驚いた。なんと秀行の投げた球は星野の頭部にぶつからんがごとく襲いかかってきたのだ。周りは一瞬途端に緊迫した。ゴクリと誰もが息を飲んだ。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/26 22:30
No. 43
しかし、
キュッ! ククククッ! ギュルルル!
球は星野の頭部に当たる直前で急に大きく外角低めに逃げ、そのまま捕手の構えていた通り、ミットに収まった。驚異的なキレとコントロールだ。これぞ、秀行の宝刀「高速カーブ」である。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/26 22:32
No. 44
おおおー! ざわざわ、ざわざわ……、パチパチパチパチ……
周りにいた報道陣は歓声を上げた後、拍手した。一方の星野は腰が抜けて尻もちをつき、原田は目を丸くし、三田は厳しい表情を見せた。この出来事を、星野はのちにこう語っている。
これはとんでもない化け物がウチに入ってきたぞ!
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/26 22:35 修正1回
No. 45
この日の練習も無事に終わった。秀行は藤原と話しながら球場を出ようとしていた。するとそこへ三田が二人の目の前にずかずかとやってきた。
「おい、真上、藤原、待て!」
三田は声を荒げた。
「藤原、俺と一打席勝負しろ!」
藤原は思わず驚愕してしまった。どうすればいいか迷った。そばにいた秀行はそんな彼に一声かけた。
「藤原君、やってみろよ!」
この一声は秀行にとっても藤原にとって最大のエールだ。藤原は決意する。
「この勝負、受けるでありんす!」
いい声である。そこに通りすがりの星野はそのやり取りに興味を持ち、この勝負を観ることにした。三田はブルペンキャッチャーを呼び、藤原が右打席に立った。審判は木村が務めることになった。三田はゆっくりとマウンドに向かい、立つとギッと藤原をにらんだ。気弱な藤原は一瞬ひるんだが、星野監督が後ろで観ているのでこれは絶好のアピールチャンスである。気を引き締めた。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/26 22:39 修正1回
No. 46
「さあ、行くぞ!」
三田はそう声をだし、二人の一打席勝負が始まった。三田の一球目、振りかぶって投げた。シュルルル! 内角ギリギリの直球。速さと伸びは平凡だ。藤原は見送った。
「ストライク!」
審判木村はストライクの判定だ。疑念に満ちた表情で、木村の方に向いた。続いて第二球目を三田が投げた。これも直球、外角高め。
「ボール!」
実は、三田の球種は直球とフォークしかない。それは藤原自身、頭に入っている。彼のタイミングの取り方は、明らかにフォーク狙いである。しかし、その後も三田はフォークを投げなかった。いつ彼はそれを投げるのか。藤原の裏をかくような投球で、スリーボールツーストライクまで勝負は進んだ。次が最後の一球だ。三田は投げた。見た目はど真ん中の半速球だ。しかし、藤原はそれがフォークだとわかっていた。
もらったでありんす! 思わず声に出てしまった。
藤原は思いっきりフルスイングした。しかし……、ボールの落差が予想以上だった。
「ストラックアウト!」
藤原の空振り三振で勝負は終わった。うずくまる藤原を木村と秀行が励ます中、三田はしたり顔で藤原、秀行、星野を見た後でゆっくりとマウンドを降り、そのまま意気揚々を去って行った。星野は目を丸くして黙って拍手し、秀行は厳しい表情を浮かべた。実は三田は秀行ばかりにいいところを持っていかれたくなかったのだ。この日は結局のところ、秀行と三田のアピール合戦となった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/26 22:43
No. 47
翌日、狗鷲寮にて。
朝、秀行の部屋に秀行と藤原、原田がいた。藤原は当日のスポーツ報知を近くのコンビニで買ってきて三人で読んでいるところだ。新聞の一面には大きく秀行の写真が載っていて、「星野、腰を抜かす! 真上、驚異の高速カーブ!」と書かれていた。
「本当に秀行君はすごいでありんすねぇ。入団して間もなくでいきなり一面でありんす」
「そうだね。本当にすごいよ!」
藤原と原田はやや興奮していた。
「……」
しかし秀行の心境は複雑だった。スポーツ報知は読売新聞グループのスポーツ紙で、いわゆる「巨人びいき」の新聞だ。秀行は幼いころから、巨人で活躍し、報知の一面記事に載ることを夢見ていた。しかし、あのドラフト以来秀行にとって巨人は敵となったのだ。だが、皮肉にもそこの新聞のしかも一面に自分が載っているのだ。秀行は嬉しくなかったのである。彼は無言のままだ。と、
「うっ」
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/06/26 22:47
No. 48
「秀行君、どうしたでありんすか?」
「ごめん、二人とも。俺トイレに行くから」
秀行は急ぎ足で部屋を出て、廊下に出るや、ドーンと人とぶつかった。二人とも尻もちをついた。
「すみません、大丈夫ですか?」
「いやぁ、心配いらん! すまなかったのう」
ぶつかった相手は大事そうに紙に包まれた大きい箱を抱えていた。すると、秀行はその人の顔を見てはっとした。
「あっ、おやっさん!」
ぶつかった相手は狗鷲寮長の高崎進(たかさき・すすむ)という六五歳である。彼は選手達から人望が厚く、「おやっさん」の愛称で親しまれている。
「おお、秀行! 丁度良かったの。ほれ、これ」
高崎は抱えていた箱を秀行に手渡した。秀行は尋ねた。
「何ですか? これ」
「なぁに、開けてからのお楽しみじゃ。お前がスポーツ紙の一面に初めて載った記念にご褒美と思っての」
高崎はにこやかだ。秀行は恐縮した。
「すみません、ありがとうございます!」
「いやゃいやぁ、いいんじゃいいんじゃ。楽しみにしとれよ! ではこれで」
高崎はそういうとスタスタと去って行った。秀行はこの箱に何が入っているのだろうと思いつつも、藤原に箱を渡すと急いでそのままトイレに駆け出して行った。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/04 21:16
No. 49
秀行は用を済まし、トイレから出ようとしていた。すると、そこに三田が現れた。三田は秀行を見るなりせせら笑う。秀行は彼を睨んだ。三田は開口一番こう言った。
「まさかスポーツ報知に載るとは。皮肉だな」
「だから何だってんだよ!」
秀行はそっけなく返した。
「貴様が元々好きな巨人軍の新聞に巨人の選手を出し抜いてお前が載った感想はどうだ? 嬉しかろう」
三田は秀行を馬鹿にするようにせせら笑った。
「そんなのどうだっていいさ!」
秀行は激高した。
「俺は巨人に復讐すると誓ったんだ。そこの新聞に載ろうが載らないが俺には関係ない!」
「ほう……」
三田は納得したように、うんうんとうなずいた。
「なるほど。じゃあせいぜい頑張るんだな」
三田は最後に「どけっ!」と言い秀行をどかすと、そのままトイレに入って行った。そのような三田の態度に秀行は機嫌が悪くなり、ぶつぶつと三田の文句を言いながら部屋に戻って行った。
「ただいま」
秀行がドアを開けると、藤原と原田が口をもぐもぐさせていた。二人は秀行を見てギョッとした。
「なに食ってんだ? 二人とも」
見ると、箱が開いてあった。
「おい、何やってんだ!」
藤原と原田はあたふたし、藤原が口の中に入っている物を急いて飲み込んで事情を説明した。
「ごめんでありんす! 僕たち箱の中身が気になって開けてみたら、豪華なビスケットがいっぱい入っていたでありんす。あまりにも美味しそうだからつい……」
「そうだよ。とても美味しいよー」
原田は相槌を打った。秀行はそんな二人にほとほとあきれ返ってしまい、ふつふつと怒りが込み上げてきた。
「まったく……、お前らいい加減にしろー!」
秀行は二人に襲いかかり、藤原と原田は一目散に部屋を出て逃げだし、秀行はそのまま二人を追いかけて行った。その様子をたまたま見かけた高崎は「こらー! うるせぇぞ!」と三人を怒鳴りつけた。この日の自主トレでは秀行は終始不機嫌であった。そうこうして、楽天久米島キャンプの日が近づいて来た。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/04 21:20
No. 50
久しぶりの更新です。これで第四章は、ようやく終わりです。それができたのも、管理人さんや、皆さんのお力添えのおかげです。ありがとうございました。これからも「イーグルスの星」をよろしくお願いします。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/05 10:28 修正1回
No. 51
第五章
一月三0日、東北楽天ゴールデンイーグルス一行は仙台の大崎八幡宮本殿に向かっていた。仙台の中心街から少し離れているところにあるこの神社は、サッカーJリーグのベガルタ仙台も必勝祈願する所としても有名である。イーグルスの選手、コーチたち、そして監督はパリッとしたスーツ姿だ。皆引き締まった表情をしている。そのような中で、秀行は周りを見わたしていた。年輪のありそうな木々が立派に立っている。それらの中でも御神木は雄大で凛とした立ち姿であった。秀行は、それに見とれてしまった。
「これは神々しいな……」
思わずそう言葉を漏らした。
一同は境内に着くと、一斉に二礼二拍一礼し、シーズンの優勝そして日本一を祈願した。選手たちはそれぞれの思いを胸にしまい、シーズンの激闘を神に誓っただろう。タイトルを奪取したい。今年こそ復活したい。一軍に上がりたい。それらの願いを選手たちは絵馬に書いた。秀行は「新人王を取る」と大きく堂々とした字を書いた。
そして一同はバスに乗り、そのまま仙台空港へと向かっていった。
バスの中にて
藤原は秀行に話しかけた。
「秀行君、神社の絵馬に何を書いたんでありんすか? 『新人王を取る!』とでも書いたんでありんすか?」
秀行は、その問いにすぐに答えた。
「ああ。でも、新人王というのは祈って獲れるものではないよ」
「え?」
秀行は落ち着いた様子で話を続けた。
「新人王とか、その他のタイトル……、そして日本一というのは自ら取りに行くもんだ! 勿論巨人を倒すこともな! だろ?」
「ああ……」
藤原はそんなことを言ってのける秀行がとてつもなく立派に思えて、感心して言葉にならなかった。それからというものの、秀行はバスの窓の外の風景ばかりを見ながら考え事をしている様だった。藤原はそんな秀行を見て、物思いにふける表情を浮かべた。
一行は空港に着き、中でファン達の激励を受けた後にジャンボジェット機で一路久米島へむかった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/05 10:33 修正1回
No. 52
飛行機の中にて
「きゃー! きゃー! 空飛んでる! 飛んでる! きゃーきゃー」
オーバーにはしゃいでいるのは雪である。機内にいる人たちは迷惑そうな顔をしている。特に彼の前の席に秀行と藤原は座っていたのでさらに迷惑していた。
「うわー、ユキちゃんうるさいでありんす! 何とかならないんでありんすか?」
「ああ、このはしゃぎっぷりは異常だな。とても26歳の大人とは思えないよ……。なあ? 岩尾君」
「ぐごー」
前の席にいた岩尾は寝ていた。
「……」
秀行と藤原はそんな岩尾に絶句するしかなかった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/05 10:36 修正1回
No. 53
そして、久米島空港に到着。イーグルス一同は空港に入った直後、現地の人たちから大喝采を浴びた。ファン達から黄色い声援が飛び交っている。
マーくーん! テレーロー! 松井―!
秀行ー! 秀行―!
主力選手達への声援の中に自分の名前を聞いて秀行はとても嬉しそうな表情を浮かべた。高校時代から注目されて喝采を浴びていた秀行だが、やはりファンがいるということはありがたいものである。
と、隣にいた藤原と原田は秀行に声をかけてきた。
「秀行君、やっぱりすごいでありんすね。ゴールデンルーキーでありんす!」
「そうだねー。育成の僕とは大違いだよ!」
すると秀行は気分よくこう返した。
「ああ……。ファンっていいもんだな!」
その後、一同は整列し、久米島市長から激励の言葉を受け、星野監督は女性から花束を渡された。星野は堂々とした口調で、シーズンの日本一を目指し、「熱い闘志で闘う」とファンに誓ったのであった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/05 10:39 修正1回
No. 54
そして、キャンプの初日。早朝の散歩から始まった。眠い眼をこする選手も数人いたが、選手たちは元気よくコースを歩いた。カメラマンも同行している。横には海が見える。登り始めた朝日がとてもきらびやかである。秀行は、それに深く心酔した様だった。
終着点の浜辺に着くと、若手選手の声だしが始まった。シーズンの目標を誓うのだ。最初は、先発ローテーションの一角の投手である塩見からだ。
「今年もー! 二けた勝利をー! 目指してー! 頑張りまーす!」
堂々とした元気な声を出した。塩見は、すっかりイーグルスの先発の柱として定着している。なので、目標はかなり高めだ。それから、銀次、阿部、釜田などが続々と声だしをした。次はついに秀行の番である。
ざわざわ、ざわざわ……。
ゴールデンルーキーの声だしということで、カメラマンも、選手達も注目している。
秀行は緊張するどころか非常に堂々としていた。そして、自信満々の顔でこうぶちかました。
「今年はー! 絶対―! 新人王を獲って、チームを優勝に導きまーす!」
おおおおお!
周囲にいる選手達、報道陣は驚いた。そして、割れんばかりの拍手を送った。秀行はしてやったりの顔である。しかも、秀行はうぬぼれているのではないのだ。絶対やってやるんだ! 巨人を倒し、日本一に導くんだ! そのような決意である。星野監督ら首脳陣はそのような彼にホクホク顔だ。
次は、チームのエースである田中将大である。彼が出てきたとき、カメラマンは秀行の時以上に注目をした。その彼の雰囲気は、高卒新人の秀行の比ではない。さすが、沢村賞の大黒柱なのだ。秀行は身震いした。田中は声を発した。
「今年もー! 沢村賞を取ってー! イーグルスを日本一に導きまーす!」
おおおお!
チームメイトは雄叫びをあげた。
秀行をはるかに超える目標である。彼こそが、日本を代表するエース。田中将大なのだ。秀行はそんな彼に畏怖した。そして、大きな決意を抱いて呟いた。
「絶対田中さんを超える投手になってやる!」
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/05 10:46
No. 55
早朝散歩が終わった後は、一軍と二軍の振り分けの発表である。
「真上秀行! お前は二軍スタートだ!」
星野が秀行に告げた。何故だ! 俺が二軍だと……! 星野さんはあの俺のカーブを見ただろ! それなのに何故! 秀行は星野に食い下がった。
「何で俺が二軍なんですか!」
星野は真剣な面持ちでこう返した。
「今のお前の体はまだまだ子供だ! 下で徹底的に体を鍛えて結果を出して上に上がってこい! 新人王は来年以降に狙いなさい」
「……」
秀行は何も返す言葉がなかった。確かに、今の彼の体の線は細い。プロの選手として、一年間戦える体ではない。まさに「子供の体」なのだ。秀行は抵抗する心があったがしぶしぶ首を縦に振らざるを得なかった。
秀行の他、新人選手たちは岩尾、三田、雪、木村、藤原、育成登録の原田の二軍スタートが告げられた。唯一一軍スタートを勝ち取ったのは川又であった。
Re: ファイターの小説
名前:
パワプロファイター
日時: 2012/07/05 10:50
No. 56
練習開始の前に二軍の首脳陣の紹介が始まった。最初は二軍監督の自己紹介である。
「二軍選手諸君、知っている者もいると思うが、一応名乗っておく。私が楽天二軍監督の木本総太だ」
木本総太(きもと・そうた)、61歳である。
「君たち若い選手達は可能性に溢れている。だが、その才能が花開くか否かは無論君たち自身の努力にかかっている! これから将来イーグルスをしょって立つ戦力になる君たちに私たちは大きな期待をかけ、熱心に指導するが、君たち二軍選手達も真剣に野球に取り組んでほしい! 私からは以上だ。次は投手コーチ!」
隣にいる二軍投手コーチの紹介である。
「にゃー!」
その男は突然猫の鳴き声みたいな声を出した。
「俺が二軍投手コーチの新固先生(にゃんこ・さきいく)だにゃー! よろしくにゃー!」
秀行ら新人選手たちは唖然とした。それ以外の選手たちの中には、「また始まったか」とつぶやく者がいた。
「俺はピッチングの教え方にはとても自信があるにゃー! おみゃーらをどんどん伸ばして一軍に送り出してやるにゃー! ただ、にゃろめぇー! 練習はビシビシいくにゃー! おみゃーら覚悟するにゃー!」
選手達一同は唖然としてしまぅた。木本監督は「ウォッホン!」と咳払いをした後、「次は打撃コーチの紹介だ!」と告げた。
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